2020年5月25日、それまで新型コロナウイルス感染症の影響により緊急事態宣言の状態が続いていた北海道・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県も、いよいよ緊急事態宣言解除となっています。
東京都では対策本部会議により、2020年5月26日午前0時から「新型コロナウイルス感染症を乗り越えるためのロードマップ」のステップ1へと移行し、本格的に緊急事態宣言解除後の生活に戻ることが期待されました。
しかし緊急事態宣言が解除されたからといって、人の流れは増えたもののすぐに元の生活に戻るわけではありません。
すでに資金繰りが悪化し、何らかの方法で資金調達しなければならなかったのに緊急事態宣言が発令されており、動くことができなかった経営者などもいることでしょう。
そこで緊急事態宣言による休業要請や営業自粛により、資金繰りが悪化している企業などが資金調達する際、どのような融資支援制度などがあるか把握しておきましょう。
緊急事態宣言で資金に困っていても銀行融資は受けにくい?
新型コロナウイルス感染症の影響で苦しい状態が続く企業などは少なくない状況であり、資金に困っていても銀行融資は期待できないとあきらめてしまう経営者もいるようです。
そこで金融庁も企業の資金繰り支援として、金融機関によるプロパー融資の残高を点検することとしています。
すでに政府は金融機関が貸し倒れリスクを負うことのない信用保証を拡充していますが、日本政策金融公庫の特別融資の実施や、万一倒産して返済が焦げ付いてしまったときに100%肩代わりしてくれる信用保証の仕組みの復活などがその内容です。
そして2020年5月1日からは、民間金融機関が行う実質無利子・無担保の融資も信用保証が組み込まれています。
そのため銀行などの民間金融機関は、自行がリスクを負わない融資にばかりを積極的に行い、銀行自前となるプロパー融資には消極的という声も聞こえている状況です。
これらの状況を回避するために、政府は2020年5月27日、公的な制度融資だけでなく機動的な銀行自前のプロパー融資をセットにして資金繰りに苦しむ企業を支援するよう強化していく方針としました。制度融資だけに偏っている状況の場合には検査の実施も検討されるようです。
一定のリスクを許容し機動的に企業を支援するべきと考えており、銀行自前のプロパー融資の残高点検によって、リスクがない場合のみ資金を貸す姿勢にはメスが入れられることになります。
その一方で、返済の順位が一般債権に劣っている劣後ローンは資本とみなすことを可能とすることを改めて明確にするようです。
劣後ローンの供給は、官民ファンドなどが中長期的に企業を支援する策として検討しています。それにより民間の金融機関が追加融資を行いやすい環境を整備し、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言発令前などには正常先だった企業で一時的に売上が低迷していても、不良債権という扱いにしなくてよい運用も改めて打ち出していくようです。
緊急事態宣言で休業要請を受け資金繰りが悪化してしまったのなら
新型コロナウイルス感染症により発令された緊急事態宣言とその延長により、休業要請や営業自粛となったことで業務を続けることができずいろいろな制限を受けることとなりました。
日本全国場所を問わず、売上低迷などで資金繰り悪化によりこのままでは倒産してしまう…という中小企業もけっして少なくありません。
政府はすでに緊急的な措置・対応策として、中小企業などの資金繰りを支援する無利子・無担保の新融資制度を開始しています。
無利子・無担保で融資を受けることが可能?
日本政策金融公庫などでは、実質的に無利子・無担保で融資を受けることのできる新型コロナウイルス感染症特別貸付が開始されています。
融資を受けた事業者は、特別利子補給制度の適用を受けることとなり、実質3年間において無利子で資金を借りることが可能です。
中小事業は最大3億円・国民事業6千万円を限度とした融資制度で、特別利子補給制度が適用される上限は中小事業で最大1億円・国民事業では3千万円になっています。
中小事業と国民事業の違い
日本政策金融公庫では中小企業事業・国民生活事業・農林水産事業など種類がわかれていますが、新型コロナウイルスや緊急事態宣言などの影響で特別融資の対象となるのは国民生活事業と中小企業事業です。
国民生活事業とは、平均融資額が600万円程度の小規模事業や個人事業主を対象とした事業のことで、飲食店や工務店など地域の事業主などが対象です。
対する中小企業事業は、融資期間5年以上の長期間の貸し付けが主となる、資本金1千万円以上などある程度事業規模の大きい中小企業などに対して行う融資事業です。
中小企業事業は通常であれば有担保融資を行うことになりますが、新型コロナウイルスによる特別融資では要件を満たすことで無担保融資が可能となります。
中小規模事業者や個人事業主なども、本来の融資限度額は600万円程度になりますが、政府による特別融資では担保なしで最大6千万円まで融資を受けることができることが特徴です。
緊急事態宣言の影響などで利用できる新型コロナウイルス感染症特別貸付の特徴
日本政策金融公庫などは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて売上低迷など業況が悪化してしまった中小企業や個人事業者を対象とし、融資枠とは別枠で新型コロナウイルス感染症特別貸付が創設されています。
融資を受ける企業などの信用力や担保の有無には関係なく、一律金利で無担保であることが大きな特徴で、融資実行後3年間まで0.9%金利を引き下げるという内容です。
新型コロナウイルス感染症特別貸付を利用できるのは
緊急事態宣言による休業要請や営業自粛など、新型コロナウイルス感染症の影響を受けてしまったことで一時的に業績が悪化した企業や個人事業者は少なくありません。
そこで、これらの事業者の中で次のいずれかに該当する場合には新型コロナウイルス感染症特別貸付の申し込みが可能です。
- 業歴が1年以上で直近1か月の売上が前年または前々年の同期と比べて5%以上減少している場合
- 業歴が3か月以上1年1か月未満で直近1か月の売上高が次のいずれかより5%以上減少している場合 ①最近1か月を含む過去3か月の平均売上高②令和元年12月の売上高③令和元年10~12月の売上高平均額
特別利子補給制度とは
新型コロナウイルス感染症により緊急事態宣言が発令され、休業要請や営業自粛などで資金不足となっている状態では、たとえお金を借りることができても返済負担が重くのしかかることを懸念する声もあります。
特に利子が発生すれば元金だけ返せばよいわけではないため、後々資金繰りが苦しくなるのでは?と不安になってしまうものですが、今回の特別貸付で融資を受けた事業者などに対して利子補給の対象です。
利子補給とは、行政が特定融資を行った金融機関に対しして利子の一部または全額を給付する制度となっています。
融資を受けた中小企業や個人事業主が特別利子補給を受けるには、次の要件を満たすことが必要と認識しておきましょう。
- 個人事業主(フリーランスを含む)要件なし
- 小規模事業者(法人)売上高▲15%減少
- 中小企業者(上記以外の事業者)売上高▲20%減少
なお、小規模事業者とみなされる要件としては、製造業・建設業・運輸業・その他業種は従業員20名以下であることが必要です。卸売業・小売業・サービス業なら従業員5名以下であれば小規模事業者となります。
緊急事態宣言で民間金融機関でも実質無利子・無担保の融資を受けることが可能に
緊急事態宣言が発令され、休業要請や営業自粛などを理由とし、資金難で事業を続けることが難しくなった企業や個人事業主も少なくない状況といえます。
経済産業省は新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、中小企業などの資金繰りを支援するための措置強化を対策として打ち出している段階です。
信用保証制度を利用した都道府県など各地域の制度融資補助のために、民間金融機関でも実質無利子・無担保で融資を受けることができます。
民間の金融機関でもワンストップによる手続きが可能となる制度なので、政府も資金繰りに困り早く資金調達しなければならない中小企業などを支援していくために実施するとしています。
緊急事態宣言などで利用できる融資の制度の内容は?
具体的には信用保証制度を利用した都道府県などの制度融資に対して国が補助を行うことによって、実質無利子・無担保・据置最大5年となる融資を可能とする内容です。
それに加え信用保証料を半額もしくはゼロになり、現在利用している信用保証付き融資を実質無利子融資に借換えることもできます。
融資を受け資金調達した事業者の金利や返済負担を軽減することを目的としており、民間の金融機関を窓口としたワンストップによる手続きという迅速性を高めることも可能としています。
2020年5月1日からそれぞれの都道府県で開始されていますが、一部の都道府県では一旦は事業者が利子分を負担し、後で支払った利子分が事業者に返還されることで実質無利子となる仕組みになっていることもあります。
融資を受ける対象となるための要件
次の売上減少の要件を満たしており、セーフティネット保証4号・5号・危機関連保証のうちいずれかの認定を受けていることが必要です。
- 個人事業主(事業性のあるフリーランス含む小規模の事業主)売上高▲5%で保証料・金利ゼロ
- 小・中規模事業者(上記除く)売上高▲5%で保証料1/2 売上高▲15%で保証料・金利ゼロ
なおセーフティネット保証5号の業種は、2020年5月1日をもち、全業種を指定しています。
融資の特徴
融資金額の上限は3千万円で据置期間は最大5年間無担保とし、補助期間における保証料は全融資期間、利子補給は当初3年間実施されます。
セーフティネット保証・危機関連保証の有効期限を延長
セーフティネット保証制度4号とは、自然災害など突発的な災害で起きた売上などが減少している中小企業者を支援する措置のことです。
地震・噴火・台風などの突発的な自然災害により、経営の安定性が保たれず支障をきたしている中小企業者の資金供給を円滑化するための制度です。
災害救助法が適用された場合や都道府県から要請があり必要があると認める場合には、信用保証協会が通常の保証限度額と別枠で借入債務の100%を保証する制度となっています。
経済産業省は新型コロナウイルス感染症により影響を受けている中小企業などの資金繰りを支援する措置として、セーフティネット保証4号の発動を決めています。
そのため、新型コロナウイルス感染症で売上減少など影響を受けた中小企業などは一般保証と別で保証を利用できます。
そしてセーフティネット保証制度5号は指定業種に属する事業を営み、最近3か月間の売上高等が前年同期と比べたとき5%以上減少している中小企業などが対象です。
危機関連保証制度は金融取引に支障をきたしており、金融取引を正常化するための資金を必要としている場合の措置です。
原則、最近1か月間の売上が前年同月と比べて15%以上減少しており、さらにその後2か月間を含む3か月間の売上が前年同期と比較したとき15%以上減少することが見込まれる場合が対象となります。
東日本大震災やリーマンショックなどの危機的な状況において、全国・全業種を対象とし信用保証協会が通常の保証限度額(2.8億円)およびセーフティネット保証の保証限度額(2.8億円)とは別枠(2.8億円)で借入債務の100%を保証します。
新型コロナウイルス感染症により緊急事態宣言が発令され、休業要請や営業自粛などの措置が講じられました。
多数の中小企業がこの保証制度を利用することが見込まれていますので、認定窓口が混雑することが予想されます。
そのため事業者の利便性を確保する観点から、令和2年1月29日から7月31日までに認定を得た事業者については、従来は30日間である認定書の有効期限を令和2年8月31日まで延長するとしています。
まとめ
新型コロナウイルス感染症により、緊急事態宣言が発令され、休業要請や営業自粛などの影響で事業を続けることができなくなった中小企業や個人事業主は少なくありません。
売上は低迷し手元の資金は不足してしまい、このままでは倒産や廃業に追い込まれると窮地にたたされている事業者も少なくないことでしょう。
このような場合、うまく活用できる制度も設けられていますが、実際には融資の申し込みを行ってもすぐに資金を調達できるとは限りません。
所定の審査などがあるため事業資金を調達できなかったというケースもあるようですし、すでに多数の中小企業などが申し込みを行っており、審査が完了するまで一定時間も要しています。
もし融資制度を活用した資金調達を検討するのなら、一時的な資金繰り改善のためにファクタリングを活用してはいかがでしょう。
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融資実行まで時間がかかる場合にも活用できる方法なので、手元の資金が枯渇してしまう前に検討することをおすすめします。