資金の運用では安全性・流動性・収益性のどの要素を重視する?

資金を運用する金融商品には、安全性・流動性・収益性の3つの性格があるため、それらを理解した上で実践することが必要です。

どの金融商品にも安全性・流動性・収益性などの性格がある反面、これらすべてを兼ね備えた万能なものはないため、資金を運用するときに何を重視するかにより金融商品を選ぶことになるでしょう。

それぞれの金融商品が安全性・流動性・収益性のどれを重視した資金の運用となるのか、その内容を把握した上で決定するようにしましょう。

 

安全性・流動性・収益性のそれぞれに求められること

資金を運用するときには、安全性・流動性・収益性のどれを重視するかにより選ぶ金融商品が異なります。

それぞれの性格でどのようなことを求めることになるのかは、

  • 安全性…元金が目減りしたり予想外の損失を被ったりする可能性はないか
  • 流動性…必要なときに換金が可能か
  • 収益性…どのくらい収益を見込むことができるか

などです。

安全性を重視することとは

安全性とは元本保証のことであり、高い収益を見込むことができたとしても元本割れを起こすリスクが高ければ安全性は認められません。また、預金保険の対象かも金融商品の安全性を図る上での参考となるでしょう。

重視する項目

  • 元本保証の有無
  • 預金保険制度の保護対象か
  • 金融商品の提供主体の財務の健全性

流動性を重視することとは

流動性を重視するということは、いざお金が必要になったときにすぐに手元の現金を増やせるか求めることです。

お金が必要なときにすぐ引き出すことができない、または中途解約しにくい金融商品などは流動性を認められないといえます。

重視する項目

  • 満期の有無と中途解約の可否
  • 現金化できない期間(据置期間)の有無
  • 売買(取引)量(買い手の見つかりやすさ)

収益性を重視することとは

元金が保証されいつでも換金できたとしても、収益性を求めるなら高いリターンを得ることができる金融商品を選ぶ必要があります。

重視する項目

  • 期待できる利回り・値上がり益・為替差益
  • 価格変動・相場変動の大きさ

 

安全性と収益性は両立できない?

上記3つの要素すべてを満たす金融商品はありませんし、基本的に安全性が高い金融商品は収益性を確保することが難しくなります。

たとえば定期預金などは安全性が高いですが、投資信託などは運用次第で元本割れするリスクがあります。

しかし投資信託は運用に成功すれば高い収益を得ることができるのに対し、定期預金ではお金を増やすことはほとんど期待できません。

 

収益性と流動性も両立が難しい

安全性と収益性が両立されないように、収益性と流動性も両立が難しい関係にあるといえます。

一般的に収益性が高い金融商品は流動性が低いことが多く、たとえば流動性が高い金融商品である普通預金などは収益性がほとんど見込めないのに対し、流動性が低い債券などは普通預金よりも収益性が見込めるなどです。

 

流動性と安全性は併存が可能

これまで両立が難しい性格を述べましたが、唯一流動性と安全性は併存できる関係です。

たとえば普通預金などは、元本が保証される安全性が高い金融商品である上に、いつでも引き出しが可能な流動性の高さも維持できます。

運転資金やいざというときのために必要な流動性資金

企業経営において運転資金は欠かすことができず、さらに急にお金が必要となることも考えられます。

そのような場合には、換金性が高い流動性資金で備えておきましょう。

金融商品によっては一定期間換金できない制約つきの商品もあるため、事前の確認が必要です。

重視すべき要素運用目的や運用期間によってある程度決まるので、支出の予定が決まっている準備資金は安全性や流動性を重視し、使途の決まっていない余裕資金は収益性を重視した上で金融商品を選ぶとよいでしょう。

事業計画書を資金調達目的で作成するメリットと押さえておきたいポイント

銀行から融資を受けるとき、担当者に求められて事業計画書を作成する企業が少なくありませんが、資金を調達するときには必ず作成しておいたほうがよい書類といえます。

そもそも事業計画書を作成することで、企業がどこへ向かっているのか内外へ示すことが可能となり、資金を調達するときにも有利に運ぶと考えられます。

多種多様な融資制度で資金を調達するときにも事業計画書は大きな役割を果たすため、作成においてどのようなメリットがあるのか、どのようなことに注意して作ればよいのか把握しておきましょう。

 

事業計画書作成のメリット

事業計画書を作成する理由は社外へのアピール材料として以外にも、社内で事業計画を共有したいときに作ることもあります。

ただ多くが資金調達など、銀行融資・補助金・助成金・出資などで資金を提供してくれる相手に対し、これからの事業について説明することを目的とすることでしょう。

創業の際や新規で事業を開始するときなどには銀行から事業計画書を提出するように依頼されることがありますが、仮に求められなくても提出すれば担当者が自社を理解してくれやすくなります。

今後の事業計画について、担当者に口頭で説明しただけではうまく伝えることができない上に、時間がかかってしまいます。

間違った情報が伝わってしまうこともあれば、本来伝えたいことを理解してもらえなかったことを理由に、たとえば銀行融資では審査が通らなくなる可能性も出てくるでしょう。

そのような場合、事業計画書を作成しておくことで、スムーズに事業の内容を伝えることができ、審査期間を短縮させることも期待できます。

経営改善を目的とした資金調達でも、今後の収益の見込みや具体策などを明確に示すことができれば、過去の数字だけにとらわれず将来を見据えた審査をしてもらえることになり、審査を通過する割合がぐっと上がります

 

資金調達を目的に事業計画書を作成するなら

資金を調達することを目的として事業計画書を作成するときには、銀行が必ず確認する項目を事前に押さえた上で作っていくことが大切です。

今後の計画だけ記載すればよいと考えず、数字以外の情報なども盛り込みながら、より具体性のある内容にまとめていきましょう。

たとえば、

  • 企業の沿革
  • 代表者や経営陣のプロフィール
  • 従業員(パート)の状況
  • ビジネスモデルの概要と商品・サービスの内容
  • 販売先・仕入先・外注先との取引条件
  • 市場環境
  • 競合状況
  • 自社の特徴や強み
  • 直近数年の業績についてコメント
  • 現在の問題点や課題
  • 新しく取り組む計画と具体的な施策
  • 借入金の資金使途とそれによる効
  • 収支の見通し
  • 資金繰り計画

などの項目を記載していくことで企業概要や今後の施策と数値計画を理解してもらいやすくなります。

数値計画は今後5年の数字を表にし、その実現の可能性について根拠が問われます。

特に1年程度の収支見込みは根拠がより問われる部分なので、裏付けとなる資料を添付したりデータを記載したりといった工夫をしましょう。

 

過度な脚色やバラ色計画はタブー

できるだけ審査にプラスの影響があるようにと、過度な脚色やバラ色計画を記載することはタブーです。

客観的な比較データや裏付けがないのに、競合他社よりも自社が優位にあると記載することや、市場や競合の分析が十分でないのに売上だけは右肩上がりに伸びる計画を立てることはしないでください。

仮に過度な脚色などで融資を受けることができた場合でも、来期決算書を提出したとき実際に結果が伴っていなければ信用を低下させ、銀行との良好な関係を築くことができなくなります。

客観的な根拠やデータに基づいた手堅く厳しめの事業計画書を作成したほうがよいといえるでしょう。

公共工事を受注する建設業者が担保・保証人なしで融資を受けたいなら

建設業が公共工事を受注するとき、担保や保証人なしで融資を受けたいのなら、「地域建設業経営強化融資制度」を活用できます。

地域建設業経営強化融資制度を活用することで、中小・中堅の建設企業が公共工事など発注者に対し有している工事請負代金債権を担保とし、事業協同組合や民間事業者から出来高に応じて融資を受けることができます。

さらに保証事業会社から保証してもらうことで、工事の出来高を超える部分も金融機関から融資を受けることができます。

 

地域建設業経営強化融資制度の特徴

地域建設業経営強化融資制度は平成20年11月から実施されており、請負金額から前払金など差し引いた金額の範囲借入可能となるのが特徴です。

令和8年3月末まで延長されている制度ですが、利用にあたり公共工事などの発注者が工事請負代金債権を譲渡することについて、承諾していることが必要となります。

制度の目的は中小・中堅建設企業の資金繰り円滑化

地域建設業経営強化融資制度とは国土交通省が中小・中堅建設企業の資金繰り円滑化を図るため創設した融資制度です。

  • 事業協同組合や一定の民間事業者が行う転貸融
  • 前払保証事業会社の債務保証

2つを組み合わせ資金が円滑に供給される支援をしてくれます。

公共工事請負代金債権を担保として事業協同組合や一定の民間事業者から融資を受け、保証会社から保証してもらうことで工事出来高を超えた未完成部分について、金融機関から融資を受け資金調達できます。

融資の対象となる建設企業と工事

制度の対象となる建設企業は、公共工事を受注・施工している元請中小・中堅建設企業です。資本金または出資総額が20億円以下であること、もしくは常時使用する従業員数が1,500人以下の企業が対象となります。

対象となる工事は出来高が2分の1以上の公共工事です。複数年度に渡る工事の場合には、最終年度の工事であり年度内に終了が見込まれる工事が対象になります。

なお、次の工事は対象に含まれませんので注意してください。

  • 債務負担行為に係る工事(最終年度で年度内終了見込み工事は除く。また、次年度に工期末を迎え、残工期が1年未満の工事も除く)
  • 繰越工事および繰越が見込まれる工事(前年度からの繰越工事で年度内終了が見込まれる工事は除く。また、次年度に工期末を迎え、かつ残りの工期が1年未満の工事も除く。)
  • その他、建設企業の施工する能力に疑義が生じているなど、債権譲渡の承諾に不適当といえる特別な事由がある工事

制度利用における手続の流れ

公共工事を受注・施工している企業が地域建設業経営強化融資制度を利用する場合には、工事請負代金債権を事業協同組合または一定の民間事業者に譲渡します。

工事請負代金債権を譲渡された事業協同組合または民間事業者は、債権を担保として建設業者に対し工事出来高の範囲で融資を行うための資金を金融機関から調達します。

この資金調達については(財)建設業振興基金が債務保証を実施し、保証事業会社の保証によって出来高を超える部分も融資が実施されます。

工事完成後、発注者から工事請負代金が支払われることとなりますが、融資額と保証に係る融資額を精算し残りが建設業者に返還される流れです。

 

厳しい経営環境に直面している建設業のための融資制度

急激な経済環境の変化や資材価格高騰などで、地域の経済を支える存在である中小・中堅建設企業は厳しい経営環境に直面しているといえます。

新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、資金調達の円滑化を推進するための制度は大切です。

地域建設業経営強化融資制度では、建設業者が有する工事請負債権の譲渡により融資を受けることができますが、自治体によって制度の流れなど異なる場合もあるため事前に確認しておくとよいでしょう。

コロナ融資での借入れた資金の用途には注意を!

新型コロナウイルス感染拡大で売上が減少してしまった事業者などの中には、コロナ融資でお金を借入れたというケースもあるでしょうが、その資金用途には注意が必要です。

コロナ融資は多くの例外を取り込み、積極的に借入れが可能となった制度といえますが、借りたお金の使い道である用途を間違わないようにしてください。

 

借入れた資金の用途を間違わないこと

新型コロナウイルス感染症の影響で、売上減少など業況が悪化したものの、中長期的には回回復・発展が見込まれる場合には「新型コロナウイルス感染症特別貸付」で借入れが可能です。

通常であれば融資を受けることが厳しかった資金繰りの厳しい会社でも、今回のコロナ騒ぎにより一千万円単位で借入れが可能となったケースもあるといえます。

しかし注意したいのは、それまで保有することのなかったお金が通帳に入金されたことで、つい気が大きくなり資金の用途を間違ってしまうことです。

不必要な金額の借入れができたときも同様に、本来の用途以外のお金の使い方をしてしまうなど、誤った用途を選ぶことは避けなければなりません。

 

申請した資金使途と異なる用途で使ってしまうと?

コロナ融資に限らず、金融機関から資金を借入れるときには資金使途についてこたえる必要があります。

事業資金であれば、運転資金か設備資金のどちらかで申込むことが一般的でしょう。

しかしいざ融資を受けた後で、申請したときの用途と異なるお金の使い方をしたときには、資金使途違反次回以降は融資を受けることが難しくなってしまいます

最悪の場合、借りたお金を一括返済するように求められてしまうため、注意してください。

仮に運転資金で借入れした場合

コロナ融資で借りた資金の用途として、多くの会社が運転資金で申込みをしていることでしょう。

運転資金でお金を借りたのなら、

  • 設備投資
  • 既存の融資や役員借入金の返済
  • 私的流用(代表者に対する貸付金や仮払金なども含む)

などの用途に使うと資金使途違反になります。

お金の使い道には会社ごとに事情もあるでしょうが、申請の際に伝えた用途以外では使えないと十分に留意しておくべきです。

 

コロナ融資の借入金は何の用途に使うべきか

もしコロナ融資で運転資金を用途とした借入れを行った場合には、

  • 企業防衛のための資金(赤字補填や赤字になったときの備えとして)
  • 経営改善のための資金(収益向上を前提とした支出や体制固めの支出など)
  • 市場適応のための資金(新商品・新サービスを開発し、新市場を開拓することに向けて)

といった使い道が考えられます。

今後どの程度の資金が必要になるかなど十分把握できず、不安があるのなら手元にできるだけお金を残しておくしかありません。

先にお金が出ていくものの、後からお金が増えることを前提とした支払いなども踏まえた上で、残すお金を計算しましょう。

市場環境に合わせて変化する必要がある事業の場合であれば、顧客ニーズに合った商品・サービスを開発していくことも必要です。

社会情勢に合わせ既存商品の見せ方を変えつつ、新たな市場開拓により売上を伸ばすこともできるでしょう。

既存の技術や商品を活かすことなく、まったく異なる市場に進出する多角化には多額の資金が必要となるため、ここにお金を投下し始めてしまうと企業防衛資金に手を付けなければならず資金繰りが悪化してしまいますので注意してください。

 

まとめ

コロナ融資を希望しても、借入れできなかったという事業者もある中で、もしお金を借りることができたのならそのお金をどのような用途で使うべきか考える必要があります。

資金調達できたことに安心したり気が大きくなったりしてしまい、つい本来の用途と異なる使い方をしてしまわないように十分注意してください。

中小企業の資金調達は銀行融資に依存しやすいのに実は頼りにくい?

中小企業は資金を簡単に調達できる環境とはいえず、多くが銀行からの融資に頼りがちであるのに対し、実際にお金を借入れすることは厳しい状況にあります。

国内の銀行からお金を借りている企業の融資額を企業規模に分けてみた場合、どの規模の企業でもバブルが崩壊して90年代後半にかけて大きな落ち込みを見せています。

しかしリーマンショック以降は、大企業は回復傾向にあるのに対し、中小企業は横ばいの状態なので金融機関から融資を受け資金調達することは難しい状況です。

 

なぜ中小企業は融資を受けて資金調達しにくいのか

中小企業が銀行など金融機関から融資を受け、資金調達することが厳しいかというと、資金を貸し付ける銀行が中小企業を適切に事業性評価することが難しいからといえます。

確かに中小企業は上場企業のように決算書を公開する義務もなく、透明性が保たれていないため評価は困難になりがちです。

その結果、銀行はできるだけリスクの低い大企業に対し融資に応じるようになってしまい、中小企業には資金が回ってこない状況となっています。

 

民間銀行から融資を受けて資金調達することはできない?

金融機関から融資を受けて、資金を調達することが難しい場合には、たとえば出資や社債などで資金を調達する方法も検討しなければなりません。

しかし出資や社債で資金を調達することは、中小企業にとって現実的な方法とはいえないでしょう。

実際、規模の小さい企業ほど、資金調達の方法を銀行融資など借入れに依存しがちです。

ただ、中小企業であることを理由に銀行から融資を受けることができないわけではなく、担保の差し入れや、代表者個人または信用保証協会の保証を付ければ融資を受けることはできます。

銀行のプロパー融資のように、保証や担保を必要としない、事業性評価を伴った融資は期待できないといえるでしょう。

あくまでの銀行など金融機関のリスクを低減させた状態でなければお金を借りることは難しくなります。

 

融資を受けて資金調達するメリットとデメリット

銀行などから融資を受けることは負債を増やすことであり、言い換えれば借金が増えてしまいます。

無借金経営を望む経営者にとっては、返済負担が大きくなる借入れは避けたいと考えるものでしょうが、融資を受けて資金を調達することにはメリットもあります。

融資を受け資金を調達するメリット

融資を受けて資金を調達しても、第三者に経営権が渡ってしまうといったリスクは発生しません。

たとえば株式を発行し、投資家に出資してもらって資金を調達する方法では、株式の保有割合によって経営権を握られてしまうリスクが高くなります。

しかし融資を受ける方法であれば、返済が厳しくなったときに債権者が経営に関与してくるケースはあっても、そうでなければ経営の自由度は確保されます。

融資を受け資金調達するデメリット

融資を受けることは借金を増やすことなので、借りたお金だけでなく利息もあわせて返済しなければなりません。

さらに中小企業の場合には担保の差し入れや保証人をつけて融資を受けることがほとんどなので、会社が返済できなくなれば担保として差し入れた不動産などを失い、代表者個人が返済義務を負わなければなりません。

仮に代表者が返済できないときには、代表者も自己破産するといった事態に陥ることとなるでしょう。

 

民間の銀行から融資を受けて資金調達するのなら

借金はできるだけ増やしたくないと考えていても、設備投資事業拡大のときには銀行を頼らなければならないときも出てきます。

そのとき、経営に問題がなければ資金を調達しやすくなり、特に財務状況が良好であればプロパー融資にも応じてもらえることもあります。

ただしいずれにしても、金融機関と良好な関係を長期に渡り築いておくことが前提なので、信頼される会社経営を意識しておくようにしてください。

コロナ禍を乗り切りたい創業5年以内の企業が資金調達するときの注意点

事業を拡大させたいわけではなく小さな規模で安定経営を目指すだけでも、創業段階では資金調達が必要となることが多いですが、コロナ禍の現在ではいくつか注意点があります。

創業時点では赤字続きや予想外の出費などが多く、資金を調達しなければならないタイミングが急に訪れることもあることに注意しましょう。

そこで、創業5年以内の時点ではどのような資金調達の方法があるか、注意したいことも踏まえ解説していきます。

 

企業が資金調達に悩む時期とは

企業の成長段階は、

  • 創業期…売上が発生していない段階
  • 成長初期…売上は計上されているものの営業利益は黒字化されていない段階
  • 安定・拡大期…売上計上され営業利益が黒字化した段階

に分けることができます。

資金調達が課題となりやすいのは創業期成長初期の段階であり、安定・拡大期では人材確保などが第一の課題となってきます。

しかし本来であれば補助金や助成金を活用する方法や出資してもらうことを希望していたのに、銀行などからの借入れに頼るしかなかったというケースもあります。

実際、安定成長型企業が成長初期に行った資金調達の方法で多いのは、

  1. 1.民間金融機関からの借入
  2. 2.経営者本人の自己資金
  3. 3.政府系金融機関からの借入
  4. 4.家族・親族、友人・知人等からの借入
  5. 5.公的補助金・助成金の活用

の順です。

創業5年以内の企業は利益が十分でない成長初期の段階といえます。この厳しい時期を乗り越えることができたとしても、事業を軌道に乗せるためには資金を調達しなければならなくなります。

安定・拡大期の段階でも、事業規模を拡大させるために設備投資や運転資金が必要となるため、資金調達が課題となりやすいことに注意してください。

 

資金調達の種類

資金調達の方法は次のように多様化していますが、会社が今どの成長段階なのか、何のために資金を必要とするのかなどにより手段を選ぶことが大切です。

  • 自己資金…法人の預金や役員の個人資産を充てる
  • 出資を受ける…ベンチャーキャピタル(VC)や個人投資家(エンジェル)・親や親族などから出資してもらう
  • 融資を受ける…民間金融機関・公的金融機関・親や親族などからお金を借りる
  • 補助金・助成金…国や地方自治体などの補助金・助成金を活用する
  • その他…社債発行・クラウドファンディングなど

いろいろな資金調達の方法があるため選び放題のように感じるでしょうが、実際には創業間もない段階で選べる方法は限られてきます。

資金繰りに苦労する経営者が多く、仮に厳しい時期を乗り越えることはできても、事業を軌道に乗せるための資金調達がうまくいかないといったケースもめずらしくないといえます。

 

新型コロナの影響を受けた企業が資金調達するときの注意点

新型コロナウイルス感染拡大は、飲食店・宿泊業・教育・学習支援業・運輸業など様々な業界にマイナスの影響を与えています。

そのため新型コロナウイルス感染症関連の融資制度なども用意されており、日本政策金融公庫などであれば創業後3か月の創業後間もない企業なども幅広く対象とされています。

しかし実際には採算が取れておらず軌道に乗っていない段階で、融資を受けて資金調達することは簡単なことではありません。

そのため融資を受けて資金を調達するのなら、

  • 創業後の業績推移
  • 新型コロナウイルスの影響と対応方法
  • 今後の収支見通し

などを計画書に盛り込み、金融機関や信用保証協会に納得してもらえる工夫を行いましょう。

コロナ禍を乗り切る力があると認められれば融資を受けることが可能となるはずなので、今後の収支見通しを実現できることを示すことが重要といえます。

取引先からの発注書や、最近の受注状況の推移など、数値の根拠を示すことができる書類を提出できれば説得力を高めることができます。

経営改善を図ろうとする小規模事業者をバックアップする融資制度とは?

会社を継続させるためには、悪化してしまった経営状況を改善させることが必要ですが、そのような小規模事業者を対象にした融資制度もあります。

M&Aや事業承継の実現の他、売上低下に資金繰り悪化などでも経営改善を図ることが必要ですが、資金調達手段として準備されている日本政策金融公庫の「マル経融資」についてご紹介します。

 

日本政策金融公庫の「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」とは

日本政策金融公庫のマル経融資(小規模事業者経営改善資金)では、商工会議所の経営指導のもと、経営を改善させたいと高い意欲がある方を支援する制度です。

商工会議所の推薦によって日本政策金融公庫から融資を受けることが可能となるため、商工会議所や商工会などから経営指導を受けている中・小規模事業者が対象となっています。

経営改善に必要な資金を無担保・無保証人で借入れできるため、運転資金や設備資金に困っているなら検討するとよいでしょう。

 

マル経融資を活用するとよいケース

経営改善を目的としたマル経融資は、仕入代金の支払い・手形決済資金・従業員の給与やボーナスの支払いなど運転資金としても活用できます。

また、工場・店舗の改装資金・車両・機械設備の購入など設備資金が必要なときにも活用可能です。

資金の使いみちが運転資金と設備資金、どちらの場合でも融資限度額は2,000万円となっています。

返済期間は、運転資金の場合は7年以内でうち据置期間は1年以内、設備資金の場合は10年以内で据置期間は2年以内です。

保証人、担保は不要ですが、利用するときには商工会議所会頭・商工会会長などの推薦が必要なので注意してください。

利率(年)は特別利率F(令和3年5月6日現在で年利1.21%)が適用されます。

 

新型コロナウイルス感染症による影響を受けている場合の特例措置

新型コロナウイルス感染症の影響を受けたことで、最近1か月間などの売上高または過去6か月(最近1か月を含む)の平均売上高が前3年のいずれかの年の同期と比べて5%以上減少している(同様の状況にある)場合には特例措置の適用が可能です。

通常の融資額に加え、別枠で1,000万円が加わり融資限度額とされます。

利率も、当初3年間は「特別利率F-0.9%(別枠の1,000万円以内)」で、4年目以降は特別利率Fが適用されます。

なお、「特別利率F-0.9%」の適用限度額は新型コロナウイルス感染症特別貸付の「基準利率-0.9%」の適用限度額に含まれますので注意してください。

特別利率F-0.9%の部分は中小企業基盤整備機構から利子補給を受けることで、実質3年間無利子での借入れが可能です。

また、返済期間は、設備資金が10年以内(うち据置期間4年以内(別枠の1,000万円以内))で運転資金は 7年以内(うち据置期間3年以内(別枠の1,000万円以内))となっています。

 

マル経融資の利用対象者とは

マル経融資を利用は、

  • 常時使用する従業員が20人以下(宿泊業と娯楽業を除く商業・サービス業は5人以下)であること
  • 最近1年以上事業を行っていること
  • 商工会議所・商工会の経営指導を原則6か月以上受けていること
  • 税金(所得税・県市民税・事業税・法人税)の滞納がなく完納していること
  • 日本政策金融公庫の融資対象業種であること

税金について、新型コロナウイルス感染症の影響により納税を猶予してもらっている場合には、別途相談するとよいでしょう。

なお、申し込みのときには次のような提出を書類することになるため、事前に準備しておくと安心です。貸付残高が1,500万円を超える場合には、下記の書類と別途、事業計画書が必要となります。

個人事業主の必要書類

  • 前年と前々年の青(白)色決算書及び確定申告書(控)
  • 税金の領収書または納税証明書
  • 見積書やカタログなど(設備資金の申し込みで必要)

法人の必要書類

  • 前年と前々年の青(白)色決算書及び確定申告書(控)(決算から6か月以上経過している場合は最近の試算表)
  • 税金の領収書または納税証明書
  • 会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
  • 見積書やカタログなど(設備資金の申し込みで必要)

借入利率次第で資金調達後の返済負担は大きく変わる!できるだけ低く抑えるには

金融機関でお金を借りて資金調達するときには、「借入利率」をできるだけ低く抑えたいと考えてしまうものです。

後の返済負担にも大きく関係する部分のため、まずは借入利率とは何か正しい知識を得ておくようにしましょう。

 

借入利率とはどのような意味か

「借入利率」とは、お金を借りたときに元金に対して支払う利息の割合のことです。「借入金利」と意味はほとんど同じですが、金融機関からお金を借入れたときの借入利率では、一般的に「年利」が適用されます。

年利とは借りたお金(元本)に対し、1年間でどのくらいの借入利息が発生するかを意味します。

よって借入利息は、

借入利息=借入元金×借入利率(年利)÷365日×借入期間

という計算式で算出できます。

たとえば100万円を年利15.0%で30日借りたときの借入利息は、

100万円×15.0%÷365日×30日=12,328円

です。

100万円を借りて1か月後に完済させるには、1,012,328円支払わなければならないということになります。

 

利息制限法による上限とは

借入利率は自由に設定できるわけではなく、利息制限法に従い次のように契約元金に応じた上限を守らなければなりません。

契約元金が10万円未満の場合…年20.0%
契約元金が10万円以上100万円未満の場合…年18.0%
契約元金が100万円以上の場合…年15.0%

銀行や消費者金融などの貸金業者は、上記の基準を超えた借入利率で金銭を貸し付けることはできません。もしもお金を借りたとき、この基準より高い割合が借入利率として設定されていれば闇金融業者である可能性が高いといえます。

 

どうすれば借入利率を下げることが可能?

貸金業者などからお金を借りるとき、適用される利率として表示されているのは上限金利と下限金利です。4.5%~17.8%といった形式で表されていることが多いですが、適用される利率は審査次第といえます。

担保や保証人などを差し入れることができ借入金額も大きく、さらに申込者の信用力が高めで貸倒リスクが低く、確実に元金と利息を回収できると判断されれば、適用される利率も下がります。

初めて取引をする相手や、100万円未満のお金を借りる場合であれば、一般的には上限金利に近い割合が設定されることが多いはずです。

 

借入利率は信用度の高さで決まる

お金を借りるときには、誰もが借入利率はできるだけ下げたいと考えるものですが、適用される割合は信用力の高さが大きく影響します。

貸倒リスクが高ければ借入利率も高く設定されてしまいますが、特に最近のカードローンなどは「スコアリング審査」により信用力を数値化させ判断することが多くなっています。

スコアリングされる項目は、

年齢
職業
勤務先
勤続年数
雇用形態
年収
居住形態
金融商品利用実績

などです。

スコアリングによる数値が高いほうが有利ですが、スコアリング審査の結果を含め審査内容は公表されません。

ただし貸倒リスクが低い順として考えられるのは、

公務員・大企業→中小企業→零細企業・個人事業主

という順番です。

さらに自営業ではなく会社に勤務している場合でも、

正社員→派遣社員・契約社員→パート・アルバイト

といった順に貸倒リスクは低いと判断されます。

年収が高く、勤続年数が長く、さらに過去に延滞や債務整理などの金融事故がない方であれば信用力は高いと認められるでしょう。

 

まとめ

融資を受けてまとまった資金を調達できればうれしいですが、返済のときに支払う利息は少ないほうがよいと考えてしまうものです。

そのため、借入利率は下限金利が適用されるほうが望ましいといえますが、初めて取引するときには上限金利が適用されることが多いと認識しておきましょう。

なお、たった数%という違いが後の返済負担を大きく変えることになり、借入期間が長くなればその差はさらに拡大します。

お金を借りて資金調達するときには、無理な返済計画を立てないことを基本とし、高すぎる借入利率で融資を受けると後々資金繰りが悪化しやすいことを留意しておいてください。

融資を受けるために重要な与信など金融機関の判断基準とは?

銀行などの金融機関では、資金の借入れの申込者に返済能力があるかなど、与信を審査で確認します。

そのため銀行から融資を受けるためには、お金を貸してよい相手だと与信を証明しなければなりません。

ただ金融機関の窓口にお金を貸してほしいと相談にいっても断られる可能性が高いため、融資を受けるための与信について押さえておきたいポイントをご説明します。

 

簡単に融資を受けることはできない

融資を受けて資金調達できれば、不動産や自動車の購入、事業拡大や設備投資など様々な目的に資金を使うことができます。

会社を経営し続ける上で資金調達は欠かせませんが、無条件に銀行から融資を受けることはできず、返済能力などについて厳格な審査が行われた上で判断されます。

特に中小企業の場合、担保を差し入れることを求められることが多いため、簡単に融資を受けることはできないと認識しておきましょう。

融資のキーワードはこの3つ

金融機関の融資担当者は、様々な事業者から融資相談を受けているため知識や経験も豊富です。

その上で融資審査を行うこととなりますが、特に「属性」「与信」「担保価値」は重視されることになります。

 

属性

属性とはその事物に属する性質のことで、銀行融資の場面では申込者の社会的・経済的な背景を指しています。

個人であれば、年齢・性別・居住地・家族構成・勤務先・年収など、対象者の性質や特徴を把握するための情報のことです。

それにより社会的・経済的に置かれている立場などを判断し、お金を貸してよいか、貸す場合にはいくらまで可能か判断します。

会社が借入れをする場合にも、会社の基本情報(事業内容や規模・従業員数など)・財務内容(資本金や業績など)・代表者情報(代表者の経歴など)・取引先情報(仕入れ先や販売先など)様々な項目が確認されます。

与信

与信とは信用を供与することであり、いくらまでならお金を貸すことができるか査定することと言い換えることができます。

たとえば企業間取引においても、掛け売りでは売掛金が発生し、回収して現金化されるまでの間が「与信」です。

製品を提供し、代金を回収するまでの間を信用の供与=与信といいます。

新規の取引先と契約するときも、既存の契約先と取引を続ける上でも与信管理は重要ですが、銀行も同様に与信は大切な項目です。

それに加えて、属性から導き出された要素による評価だけでなく、貸し付けたお金と返済分として入金されるお金の差がプラスになると予想されれば融資可能と判断されます。

担保価値

銀行などの金融機関が中小企業に対し資金を貸し付ける際、重要視されるのは担保として差し入れる対象の価値です。

多くの場合、不動産を担保として差し入れることを求められますが、物件の価値はいくらなのかが重要となります。

担保価値に対して融資する割合をかけた融資限度額に属性に基づいた与信金額を合算し、融資金額の上限が決まってくるといえます。

 

注意しておきたい金融機関の融資基準

金融機関の融資基準についても注意しておく必要があります。

たとえば土地の評価については時価額の70%、建物の経済的耐用年数を計算するときは鉄筋コンクリートでも30年にするなど、金融機関ごとに内部で基準を決めています。

そして融資基準は経済状況により変更になるため、ずっと同じではありません。

評価の見直しだけでなく、最低限必要とする自己資金比率にも注意が必要となり、たとえば融資については自己資金20%以上などの基準が設けられています。

与信評価と担保評価を合わせれば1億円を超えるため、その金額であれば融資を受けることができると考えていても、自己資金20%以上という基準が設けられていれば8千万円しか借りることはできませんので注意してください。

赤字決算で手元の現金が少ない会社がスムーズに資金調達する方法とは?

事業継続には運転資金が欠かせませんが、手元のお金が少ない会社の場合、資金を調達しなければなりません。

しかし赤字決算では銀行から融資を受けて資金調達することは難しく、乏しい目の前の現金でどのように会社を続けていけばよいのだろうと頭を悩ませることとなるでしょう。

そこで、もし赤字決算の会社がお金の少ない状況に悩み、資金調達することを考えるならどうすればよいのか解説していきます。

 

 

赤字決算で手元のお金がない状態とは?

会社経営において、現金は人の身体でたとえれば血液と同じです。血液が不足したり薄くなったりすれば、人は貧血で倒れてしまいますが、会社の資金不足も事業を傾かせてしまいます。

血管が詰まり血液が循環しなくなれば生命を落とす危機にさらされますが、会社経営でもお金が循環していることが必要です。

赤字決算とは、収入を支出が上回り利益ではなく損失が発生している状態ですが、決算書が赤字でも会社は倒産しません。

倒産してしまうのは資金が枯渇し、仕入れ代金や従業員の給料、固定費や借入金の返済などの支払いができなくなったときです。

たとえ赤字でも資金さえ枯渇しなければ、倒産することはなく事業を継続できるため、あきらめず資金調達することが必要といえます。

 

 

赤字の会社は銀行から資金調達ができない?

銀行から融資を受けて資金を調達する場合、必ず会社の決算書を提出するように求められます。

赤字決算ではまず審査に通らないと考えておくべきですが、決算書が赤字の場合でもすべてがネガティブな理由でマイナスになっているわけではありません。

たとえば創業したばかりの会社の場合、初期投資などの出費がかさみ、まだ実績が十分でないため赤字になっているケースなどです。将来的に黒字化させることが見込まれるなら、たとえ赤字でも融資を受けて資金調達できることもあります。

もし税金を納めたくないという理由で意図的に赤字を出している場合、その事実を金融機関の担当者に知らせたとしても融資は断られてしまいますので、決算書の操作はしてはいけません。

 

 

赤字の会社がスムーズに資金調達する方法

会社の決算が赤字だとしても、融資可否は金融機関により異なるためあきらめてはいけません。

都市銀行などから融資を受けることは難しくても、地方に密着した信用金庫や信用組合政府系金融機関である日本政策金融公庫からであれば借入れが可能なケースもあります。

特に新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けるなど、特殊な理由で赤字になっているのなら、信用保証協会が別枠で保証してくれる「セーフティネット保証制度」も利用可能です。

融資を受けて資金調達できる会社とそうでない会社

起業したばかりの会社や災害などで突発的に赤字になった会社、資本金額が高く経営を続けられるだけの体力がある会社であれば、一時的な赤字とみなされ銀行から融資を受けて資金調達できる可能性も出てきます。

反対に融資を受けることが難しいのは、決算書の赤字が連続している会社や節税目的で故意に赤字決算している会社、借入れたお金の使途が運転資金という場合です。

資金調達の方法は銀行融資だけじゃない!

資金調達する方法は銀行融資だけではないため、赤字決算の会社でも活用できる方法はあります。

基本的に赤字決算では融資審査に通りにくくなるため、お金を借りずに資金調達する方法を検討するべきです。

この場合、売掛金を保有しているのなら、ファクタリング会社に売却し現金化するファクタリングを利用しましょう。

利用の際には手数料もかかりますが、取引先から回収するまで1~2か月待たなければならない売掛金を、早ければ即日現金化できることは大きなメリットです。

手元のお金がない状態で不安を抱えている会社の場合、もっと早く売掛金が入金されれば…と考えてしまうものですが、ファクタリングならお金を借りず資金調達できますのでうまく活用することをおすすめします。