融資で資金調達するなら返済を踏まえた借入れの設定を!

資金を調達するとき、たとえば銀行からの借入れであれば当然返済することが必要です。

そのため、資金調達前に返済計画を立てておくことが必要ですが、どのくらいを借入れして実際に返すことができるか事前に確認する作業を行いましょう。

そこで、融資を受けて資金を調達するとき、返済を踏まえた金額の設定方法について解説していきます。

 

借入れによる資金調達で最も重要なこと

お金を借りて資金を調達するときに、最も重要になるのは資金使途です。

借りたお金を何に使うのかを明確にしておくことが必要であり、銀行などの金融機関で行う審査でも重要視される部分といえます。

漠然と資金を借り使っていけば、資金繰りの状況を見失い業績悪化とともに返済できなくなってしまいます。

そこで、まずは融資を受ける前に何のために資金が必要なのか明確にしておきましょう。

資金使途は具体的に決めておく

銀行からお金を借りるときには、必要な金額よりも多く融資を受けたいと考えがちです。

どのくらいまでであれば融資を受けることができるのか、借りることができる金額までは借入れしたいと考えてしまう経営者は少なくありません。

運転資金が欲しいとき、内訳など特にないというケースもあるようですが、その場合でも資金使途はできるだけ具体的に決めておくべきです。

資金繰りが厳しい状態なのでひとまず資金が必要という考えではなく、何に対する支払いなのか、いくら不足しているのか明確にしておくことが求められます。

経常運転資金を算出する

経常運転資金とは、

経常運転資金=売掛債権+棚卸資産-仕入債務

で算出することが可能です。

売掛債権には、売掛金や受取手形が含まれますし、仕入債務には買掛金と支払手形が該当します。

一般的に、売掛金などの入金は後、買掛金の支払いは先に発生しますので、上記で算出される金額は手元に残しておくことが必要です。

借入金月商倍率を算出する

借入金月商倍率とは、

借入金月商倍率=借入金÷月商

で算出可能です。

これは借入金が月商の何倍かを示す数値であり、銀行などの金融機関では返済余力を確認する指標として使います。

借入金が月商の3か月分までなら健全経営、6か月を超えればリスクが高いと判断されますが、どのくらい借りることができるかを判断する材料としても使えます。

簡易キャッシュフローの確認を

簡易キャッシュフローと呼ばれるのが、税引き後の利益と減価償却費を合わせた部分です。

銀行などの金融機関が審査で重視する数値でもあり、返済原資が見込めるかを確認する上で用いられます。

あくまでも「簡易」とある分、正確な数値ではありません。

売上高は計上されていても入金は翌々月、支払いは翌月ということが一般的だからです。

損益計算書の数値は実情とは異なるものですが、前期の損益計算書の実績を基準として算出することとなるため、過去の数値をベースにした考え方であることは認識しておきましょう。

お金を借りて資金を調達することはこれから先のことであり、今後の資金繰りをベースに判断した方がより正確な状況を知ることができます。

 

返済負担のない資金調達方法もある

資金を調達する方法はいろいろありますが、融資を受けて調達するのなら必ず返済可能な金額までに留めておくべきです。

もし今後の返済能力に不安がある場合には、お金を借りずに資金を調達できるファクタリングなども検討しましょう。

ファクタリングは、売掛金を売却して現金化し資金を調達する方法です。1か月や2か月先に取引先から入金される予定の売掛金を、先にファクタリング会社に売って前倒しで現金に換える方法です。

返済負担に苦しむことはないため、後の資金繰りも楽になりやすいといえるでしょう。

債務超過から復活するために欠かせないこととは?

債務超過とは資産より負債の方が多いことですが、プラスの財産をすべて現金化してもマイナスの財産が残ってしまう状態を示すため、復活させたいと考えてしまうものです。

そこで、債務超過から復活するためには何をすればよいのか、なぜ陥ってしまうのか知った上で改善する方法を確認していきましょう。

 

債務超過と単なる赤字は異なる

赤字とは、一定期間の損益がマイナスになっている状態をあらわします。

たとえば会社の1事業年度の損益は決算書の損益計算書に記載されますが、借入金や減価償却費などの合計が売上よりも多くなっている状態です。

債務超過は一定時点において、資産よりも負債が上回っている状態のことであり、どちらも倒産リスクを高めると感じてしまうでしょう。

確かに債務超過や赤字は会社経営を続ける上で好ましい状態とはいえませんが、すぐに倒産や破産に追い込まれるわけではありません

 

資本はプラスなのに債務超過というケース

決算書上の貸借対照表では資本がプラスのため安心していたものの、資産と負債を時価換算すると債務超過になってしまうケースもあります。

一般的な中小企業では、たとえば土地の金額は取得価額で計上しているはずですが、銀行などの金融機関が会社を評価するときにはそのタイミングでの時価で判断します。

土地の時価が取得価額より低い場合には、実質的には債務超過と判断されることもあるため注意が必要です。

 

債務超過から復活しなければ様々なデメリットが

債務超過に陥ってしまうと、信用力は低下し新たな取引先と契約したくても、見送られてしまう可能性もあります。

仮に債務超過の企業と契約を結んでしまうと、その状況から復活できず倒産してしまい、売上代金の回収不能となるリスクが高くなるからです。

また、主要な取引銀行と長年親密に付き合いがある場合でも、債務超過であることを理由に融資を断られる可能性も高くなります。

お金を貸した企業が返済資金を捻出できなくなり、期日に返してもらえなくなったり返済不能となったりすれば、貸し倒れとなってしまうからです。

債務超過が続くとデメリットしかないため、その状態から復活させていくようにしましょう。

 

債務超過を解消させ復活する方法

債務超過を解消させ復活するためには、資本を増やし当期純利益を計上できる状態にしなければなりません。

恒常化している赤字決算をすぐに黒字決算に復活させることは容易ではなく、特に深刻な債務超過であれば短期で解消することはより困難となります。

そこで、少しでも早く債務超過を解消し復活させたいのなら、次の方法を検討しましょう。

増資する

増やした株式を今の株主や新たな株主に買取ってもらい、資本を増やすことで債務超過は解消できます。

 

負債を資本へ振り替える

「Debt Equity Swap(デットエクイティスワップ)」という方法で、金融機関などの借入れを資本に振り替える方法です。株式を発行することにより、負債を減少させ資本を増やします。

資産を売却する

土地や有価証券など、保有する資産を取得したときの価額よりも時価のほうが高ければ、売れば売却益が出るため資本を増やす効果を見込むことができます。

 

根本的な解決のために

債務超過に陥れば金融機関から融資を受けることはできなくなり、資金繰りも厳しくなってしまいます。

取引先や仕入れ先などからも取引を断られ一層厳しい経営となるでしょうし、負のスパイラルから復活できなければ倒産や破産といったリスクを高めることとなってしまいます。

しかし上記のような債務超過を解消させる対策を実践しても、毎年の損益がマイナス続きであれば根本的な解決はできません。

債務超過を解消させ復活させるには、資本を積み上げ、利益を計上することが必要です。

損失を繰り返さない経営体制を作るため、日々の積み重ねや強い意志を持ち、抜本的に見直していくことになります。

借入金の情報が記載される財務キャッシュフローはどのような状態が望ましいか

借入れやその返済などの情報は、財務活動によるキャッシュフローに記載されます。

営業活動・投資活動を維持するため、どのように資金を調達し返したのかを示すのが財務キャッシュフローのため、借入金やその返済なども含まれるからです。

そのため、銀行などが決算書を見たとき、財務キャッシュフローの借入金などの情報があれることは好ましく感じてもらえないのでは…と考えてしまう者でしょう。

そこで銀行などが決算書を確認するとき、財務キャッシュフローはどのような状態が望ましいのか、借入金以外にどんな情報が記載されるのか徹底解説していきます。

 

財務キャッシュフローに記載されること

財務活動によるキャッシュフローとは、営業活動を維持するための投資に必要な資金調達・返済などのキャッシュの変動をあらわす項目です。

成長過程にある企業の場合、積極的に自己資金以上の投資などを行っていれば、借入れや株式による多額の資金調達で財務キャッシュフローはプラスになりやすいといえます。

財務キャッシュフローの記載されるのは主に、

  • 借入金返済による支出
  • 銀行から融資を受けたときの収入
  • 自己株式を取得したいかを支払ったことによる支出
  • 自己株式を売却したことで払い込みを受けたときの収入
  • 増資など株式を発行し払い込みを受けたときの収入
  • 株主に配当金を支払ったことによる支出

 

財務キャッシュフローはプラスとマイナスどちらが望ましいか

事業を継続させるため、会社を成長させていくためには資金を調達することは欠かせませんが、その方法が借入れや増資などの場合には財務キャッシュフローにその情報が記載されます。

財務キャッシュフローはプラスを表示しますが、借金があるからといってそれが経営の悪化を示すわけではないということです。

むしろ企業が成長局面にあり、借入れや増資などで資金を調達し、財務キャッシュフローがプラスであることは順調に資金調達できていることを意味します。

それは銀行や投資家から一定の評価を受けることが可能のなっていると判断できるでしょう。

そして企業が投入した資金を回収する段階にあるとき、営業キャッシュフローが潤沢であれば自己株式の取得や配当金の支払い、借入金の返済など余剰資金を充てていくこととなり、財務キャッシュフローはマイナスになりやすいといえます。

これらのことから、単に財務キャッシュフローのプラスとマイナスだけで会社の経営情報を判断できるわけではなく、営業キャッシュフローや投資キャッシュフローとのバランスや企業の成長段階なども踏まえることが必要です。

 

銀行はキャッシュフロー計算書のどこを重視する?

銀行から融資を受けようとしたとき、決算書の提出を求められると、キャッシュフロー計算書の数値で印象が悪化しないか気になるところでしょう。

実際、銀行は貸したお金を返せなくなる会社に対し、融資を実行しようとはしません。

返済能力を見極めるために、財務キャッシュフローだけでなくキャッシュフロー計算書全体を確認されることとなりますが、次のような場合は注意しておくようにしましょう。

仮払金・立替金・仮受金・預り金の過剰発生

仮払金・立替金・仮受金・預り金などの勘定科目は、どれも使途が不明確になる可能性が高めで、通常の経営では過剰に発生しないはずです。

仮勘定といった位置づけのため、あまり多く発生していれば、健全な経営や安全なキャッシュフローではないと判断される可能性も出てきますので注意しましょう。

フリーキャッシュフローを生み出す力

営業キャッシュフローと投資キャッシュフローは、フリーキャッシュフローという余剰部分です。

フリーキャッシュフローを多く生むことができていれば、借入れ後の返済資金に充てやすいため、返済能力の高さを示すことができます。

価値の高い資産の保有

不動産など担保として差し入れることが可能な価値のある資産を保有していると、いざというときには資産の売却により返済資金に充てることができるため、銀行も安心して融資を実行しやすくなるでしょう。

含み損の有無

銀行が決算書の貸借対照表の数字を確認するときには、その外側にある含み益や含み損を確認されます。

これは返済に充当できる部分であるからといえますが、たとえば株式や不動産など価値の変動がある資産は貸借対照表上では取得原価で計上されていることもあります。

しかし現段階の価値は時価であるため、取得価額と時価との差額がプラスかマイナスかが重要です。

価値が目減りしていれば含み損と判断され、返済に充てる部分が少なくなったことを意味します。反対に価値が高くなっていれば含み益とされ、銀行融資の審査でも有利となるでしょう。

経営者の個人資産の有無

会社の資産と経営者個人の資産は分けて考えることになりますが、仮に会社が銀行から融資を受けた後、法人の資産がなくなっても経営者個人の財産を返済資金に充てることは理論上できないとされています。

しかし中小企業が銀行から融資を受けるときには、経営者個人が会社の連帯保証人になるといった債務保証を求められることが一般的です。

もし会社が倒産してしまっても、一定の財産だけを確保したまま経営者が逃げてしまうことを防ぐためでもあり、業績向上に意欲を高めてもらうためとも考えられています。

 

まとめ

借入金が増えたときや返済したときには、その情報が財務キャッシュフローに記載されることになります。

借金はできるだけないほうがよいと考える方もいるでしょうが、成長局面にあり融資を受けて資金調達した場合などはプラスを示すものです。

反対に投資した資金を回収する局面において、借入金の返済などが進んでいればマイナスを示しやすくなるでしょう。

注意したいのは手元のキャッシュが十分でなく運転資金を追加しなければならない状況で、財務キャッシュフローがマイナスになっているケースです。

これは、銀行から追加融資を受けることができない状態や増資が進んでない状況を示していると考えられます。

財務キャッシュフローがプラスとマイナスのどちらを示していれば良いと一概に決めることはできず、そのときの状況や他のキャッシュフローとのバランスにより判断することになります。

新型コロナの影響による資金繰り悪化で倒産?回避するために必要なこと

新型コロナウイルスの影響で資金繰りが厳しいという悩みを抱える中小企業や小規模事業者は少なくありませんが、このようなときだからこそ倒産を回避し事業を継続させていきたいものです。

国も中小企業・小規模事業者に倒産を回避してもらおうと、補助金・助成金・減税・融資などを政策として準備しているものの、隅々まで把握しにくく使い勝手がよいとはいえません。

それでも資金繰りを改善させるために資金を調達することは欠かせませんので、倒産を回避するために今中小企業にできることは何か把握しておきましょう。

 

経営に打撃を受けた業種も少なくない

新型コロナウイルス感染拡大から1年が経過しようとしている中、その影響は改善されるどころか中小企業などの資金繰りをさらに悪化させています。

倒産を回避するため、緊急措置として準備された融資制度や給付金などを使っても、まだ手元の資金が十分とはいえずこのままでは会社が潰れてしまう…と悩む経営者も少なくありません。

感染拡大を回避しようと、国は営業自粛や時短営業などを要請することとなり、その影響を直接受けることになった中小企業などは売上が減少してしまうこととなりました。

イベント関連会社や娯楽・商業施設、教育関係やスポーツ施設などの他、飲食業・宿泊業・小売業・サービス業などがその例です。

他にも世界規模で感染拡大してしまったことにより、原材料や製品などを調達できなくなった製造業や建設業なども大きな打撃を受けたといえます。

この場合には、国や自治体の融資制度や助成金などをうまく使いながら、手元の資金を枯渇させないようにすることが重要です。

しかし売上には直接的な影響が大きく出ておらず、顕在化されていないことで倒産危機に陥っていることに気がついていない事業者も存在します。この場合、気がついたときには手遅れとなり、倒産を回避できなくなる可能性が高いためより注意が必要です。

 

利益が出ていたため資金繰り悪化に気がつかないケースも

新型コロナウイルスの影響は様々な産業に及ぶこととなりましたが、売上が低迷している企業が多い中でも、それほど打撃を受けていない業種もあります。

このようなケースの場合、商品やサービスが順調に売れ利益も出ているから安心だと思っていたのに、気がつけば支払いに必要なお金がなく倒産してしまう…といった黒字倒産に注意しなければなりません。

倒産を回避するために必要なのは利益ばかりにとらわれず、手元の資金を枯渇させないことです。自社の入出金状況を常に把握しておき、キャッシュフローがプラスになる経営を心掛けていかなければ、黒字倒産は回避できません。

 

倒産を回避するためにもキャッシュフロー経営を

企業間取引では、商品を販売したときにその代金をその場で受け取るわけではなく、後日請求書を発送し数か月先に回収することが一般的です。

このとき発生した売掛金を売掛先から回収するまでの間にも、仕入代や人件費、借入の返済など様々な支払いは発生します。

そのため手元に支払いに充てるお金がなければ、会社は資金不足の状況を回避できず倒産してしまうことになってしまうため、帳簿上は利益が出ていても安心せず必要な資金が手元にあるか把握しておくことが重要です。

特に成長期にある会社では売上が急激に伸び、売掛金や在庫が膨らみがちのため、いくら黒字でも資金繰りが追いつかず倒産してしまうこともあると留意しておいてください。

 

資金繰りを円滑化させ黒字倒産を回避!必要なこととは?

黒字倒産を回避するためには、会社の入出金状況を把握すること以外にも、入金サイトは短く・支払サイトは長くすることを心掛けることも必要です。

仕入れ代などの支払いはできるだけ先に、売掛金の回収までの期間はなるべく短めに設定したほうが資金繰りは楽になります。

そして卸売業などの場合は一定の商品在庫を保有しておくことが必要ですが、過剰な在庫を抱えないようにすることも大切です。もし手元のお金が不足したとき、在庫を販売して現金化しようとしても時間がかかります。

売れ残るリスクもあるため、資金負担を重くしないためにも在庫管理を適切に行うようにしましょう。

最後に資金不足に陥ってしまわないためには、必要なタイミングでほしいお金を調達できるよう、銀行融資だけに依存せず様々な資金調達の方法を準備しておくことです。

銀行からお金を借りたくても、申し込みまでの準備や審査に時間がかかってしまい、必要なときに求める金額を準備できない可能性があります。

複数の資金調達から選べるようにしておくなど、資金調達先の多様化を図っておくことでスムーズにお金を準備できるようになるでしょう。

 

まとめ

新型コロナウイルス感染拡大により、様々な中小企業がその影響を受けてしまっています。中には倒産の危機に陥り、何とか回避させようと銀行に相談したものの、融資を受けることができず困っている経営者も少なくありません。

しかし資金調達の方法は銀行からの融資だけではありません。様々な方法がありますので、急な資金ニーズに対応できる方法も準備しておけば、いざというときに慌てず対応することが可能です。

新型コロナウイルスで増える倒産!法的手続きを必要としないために必要な対策とは

新型コロナウイルスの影響で倒産してしまった企業の数を確認すると、ニュースなどでも報道されていましたすでに全国で250社に上っている状況です。

ここ最近は倒産件数の増加ペースは緩やかになっているようにも見えますが、その背景には新型コロナウイルスによる資金繰り悪化を支援する金融機関からの融資などが要因といえます。

緊急事態宣言解除により事業が円滑に進んでいるわけではなく、今後も新型コロナウイルスにより倒産する業種は増加すると予測されていますが、どうすれば回避できるでしょう。

 

新型コロナウイルスで倒産してしまった企業数は?

民間の信用調査会社である帝国データバンクの調査では、新型コロナウイルスの影響で破産など法的手続きをとり倒産に至った企業、そしてコロナにより事業を停止し法的整理を行う準備に入った企業は250社と公表しています。

中には大手では?と思われるような企業も含まれていますが、その多くが中小企業。世界的な感染拡大で、業種を問わずその影響は計り知れないものとなっています。

2020年5月には2000年以降、全国の企業倒産件数は288件と最小になりましたが、これは新型コロナウイルスの感染拡大防止の取り組みにより裁判所や弁護士事務所で行う業務が大きく縮小されたことが関係しているようです。

現在は経済活動が再開されつつあり、それまで停滞していた案件なども進行しています。そのため反動に加え、新型コロナウイルスによる事業への影響は今後拡大されると予想されることから、より中小企業などの倒産件数が増えることになるでしょう。

 

帝国データバンクにより公表された倒産件数

2020年6月17日時点での帝国データバンクによる新型コロナウイルス関連の倒産件数は、法的整理175件(破産153件・民事再生法22件)・事業停止88件となっています。

業種別でみるとホテル・旅館は41件で飲食店が39件、アパレル・雑貨小売店、食品卸・食品製造はそれぞれ16件、建設は10件でした。

ホテル・旅館業が最も多く、次いで飲食店やアパレル・雑貨小売店と続きますが、緊急事態宣言発令による外出自粛などの影響が大きく関係しているといえるでしょう。

そもそも新型コロナウイルス関連倒産とは、新型コロナウイルスを要因として倒産に至ったことを事業者や代理人である弁護士が認め、それにより法的整理や事業停止(弁護士に事後の処理を一任)したことを示します。

法人だけでなく、個人事業主や負債1千万円未満の倒産もその数に加えられています。

 

月別でみると6月は減少?

月別に確認した場合に、6月は4月・5月と比較すると倒産件数の増加ペースは緩やかになっています。状況が回復したわけではなく、先に述べた通り政府が経済支援策として実施している実質無利子・無担保融資などの制度を活用する事業者が増えたためといえるでしょう。

2020年6月19日からは都道府県をまたぐ移動自粛が全国で緩和されます。ただし観光や飲食業界・アパレル業・小売り関連などは大手・中小関係なく引き続き厳しい状況が続くと予想されるため、倒産件数は今後増えてしまうといえます。

 

新型コロナウイルスで廃業にいたらないために

企業が倒産してしまわないように、決算書の純利益ばかりに気を取られているのは危険です。

コロナショックのように、世界的にビジネス環境が急激に変わってしまうときには、たとえ利益が出ていて黒字だとしても安心できません。大手も中小も、アパレル関係や飲食関係など業種問わずキャッシュフローに目配りし、無理のない資金繰りを心掛けることが大切です。

決算書の営業損益や最終損益はプラスを表示していても、売上高として計上されている分の売掛金が回収できていなければ資金繰りは悪化します。

それにより資金や資本不足に陥れば、利益が出ているのに倒産してしまう黒字倒産を起こすことになるからです。

東京商工リサーチの調査では、2019年に倒産に至った545社の企業の約半数は黒字倒産という結果もあるほどなので、より注意が必要といえるでしょう。

 

景気が好調なわけではない

新型コロナウイルスの影響により、一時的に裁判所や弁護士による手続きが停止したことで倒産の手続きすら進められなくなりました。

景気の好調を意味しているのではなく、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の影響で法的手続きを担う裁判所の業務が縮小しただけのことです。

法的手続きを検討している企業も弁護士に相談したくても面会できない状況となったため、倒産への手続き自体が進まなかったことが影響していますが、今後手続きが進んでいけば倒産件数は増えていくこととなるでしょう。

 

コロナ倒産の特徴とは?

それに加え新型コロナウイルスによる倒産は、2019年までの倒産とは違った傾向を示しており、衣・食・泊の業界への影響の大きさが確認できます。

本来、倒産してしまう業種として挙げられやすいのは建設業・製造業・飲食店・運輸業などです。これらの業種は人材不足なども深刻な状況で、人手が足らず倒産してしまうケースも見られました。

しかし新型コロナウイルスにより倒産した業種で多いのは、ホテル旅館業・飲食業・アパレル業・食品製造業などです。

従来まで倒産の常連として挙げられていた業種とは、また違った種類の業界に打撃が発生している状況といえます。

固定費の割合の高い業種は危険?

新型コロナウイルスにより倒産してしまった企業で多いのは、固定費の割合が高いことです。

営業自粛などで休業を余儀なくされてしまうと、家賃や従業員への給料など高い固定費への負担が大きくなり倒産しなければならなくなった企業もみられます。

新型コロナウイルスにより倒産した業種ごとの固定費割合を確認すると、ホテル旅館業が70.0%・飲食店62.1%・アパレル業44.2%となっており、コロナ倒産と固定費率の高さは比例すると言わざるを得ません。

今後、第2波により再度緊急事態宣言が発令されてしまうと、その後の消費も抑えられることとなるので固定費負担に加えて大きな打撃となってしまうでしょう。

 

手元の資金を枯渇させない経営を

黒字倒産に至らないためには、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを足したフリーキャッシュフローの情報確認が必要です。

特に営業キャッシュフローとフリーキャッシュフローは注視し、長期で減少もしくは赤字の状況になっていないか確認し続けることが大切です。

キャッシュフローを確認すれば、業績や資金繰りなど企業の実態を把握できますし危機を回避できます。

そしてキャッシュフローから生まれた利益の質も確認できるので、仮に減益しているのなら本当に本業が悪化し事業の継続性が問われるほどの問題か読み解くことができるでしょう。

また、現金に着目する場合には、手元の資金だけでなく融資やローンなど借金に依存していないかも確認しておくべきです。

 

雇用の問題にはどのように影響する?

一般的には企業の倒産件数が増えれば失業者も増加すると考えられますが、確かに短期的に見ればそのとおりでしょう。ニュースなどでも新型コロナウイルスにより、大企業などの新卒採用への影響も報道されることがあります。

ただ、日本は企業の倒産・清算・廃業など企業数が減少してしまうことと雇用にはそれほど大きな関係がないことも明らかになっています。

どのくらいの規模の企業が倒産すればどのような影響が出てくるのか冷静に考え、倒産件数よりもなぜ倒産してしまったのか、その中身に注目しなければなりません。

中小や中堅企業も営業自粛などの影響は及んでいますが、小規模事業者の状況はさらに深刻です。ニュースなどでも報道されていましたが、外国から日本に訪れる利用客の減少などで、従業員への給料の支払いができず廃業にいたった観光業なども少なくありません。

小規模事業者を中心とした失業者が増えると考えられますが、小規模事業者の場合には節税を目的に配偶者などを従業員としてカウントしていることも多いので、実際に失業により困る人数はもっと少なくなるともいえるでしょう。

実際、1999年から2016年の企業数は減少していますが雇用は減っておらず、むしろ増えています。

今後進行する人口減少に対応するためには生産性を向上させることを検討しなければならないといえるでしょう。規模の小さい企業はある程度まとめながら、企業規模を拡大させていくといったことも必要になるとも考えられます。

 

まとめ

新型コロナウイルスにより倒産してしまう企業は今後さらに増えていくと予想されます。事業継続に向けて、手元の資金を増やすために融資制度などを活用する方法もありますが、借金に依存することが吉とはいえません。

雇用の問題などもあり、課題は山積みの状況ではありますが、新型コロナウイルスに負けず事業を続けていくためにも今を乗り切れる環境を整備していきましょう。

一時的に資金が不足しており、新型コロナウイルス対策として準備されている融資制度や給付金を活用する企業なども少なくありません。

しかしメガバンクなどは大手のみ対応であり、地方銀行などでも融資対応してもらえるとはかぎりません。

申込可能だとしてもすぐに入金してもらえるわけではなく、書類準備や審査に時間がかかり資金調達に間に合わないといった事態も起きています。

このような場合、保有する売掛金を売却して現金化するファクタリングを検討してみましょう。ファクタリング会社によりますが、早ければ即日現金化も可能となり、急な資金ニーズにもしっかり対応可能です。

融資を受ける時と違い、審査も柔軟なので新型コロナウイルスにより売上が低迷し、赤字経営となって悩んでいる事業者でも資金調達に活用できる可能性は高いといえます。

まだまだ新型コロナウイルスによる影響は続くと考えられますので、倒産といった最悪の事態に至らないための対策を考えていくことが必要です。

健全な事業にはキャッシュフローを重視した経営が重要!

会社が健全に経営を続けるためにはキャッシュフローに着目することが重要です。

決算書上の利益は、減価償却、棚卸資産や有価証券の評価方法などで変わってきますが、手元のキャッシュの流出入は事実をあらわすものであり、変わることはありません。

お金の動きに焦点をあて経営を行うことをキャッシュフロー経営といいますが、どのような経営方法なのか詳しくご説明します。

キャッシュフロー計算書を有効活用する

キャッシュフロー経営とは、儲けにより生みだした利益と、実際に残っているお金を把握することです。

キャッシュの流れを示すキャッシュフロー計算書では、利益とお金の増減がどのように関係するのか把握することができる内容となっています。

貸借対照表では財務状況、損益計算書ではどのように利益が生み出されているかを示しますが、キャッシュフロー計算書ではキャッシュがどのように調達されて何に使用されているかを表示するということです。

キャッシュフロー計算書の構造

キャッシュフロー計算書では、本業によって得たキャッシュの動きを示す営業キャッシュフロー、資産の売買などによるキャッシュの動きである投資キャッシュフロー、資金不足の事態にどうように資金を動かしたのかをあらわす財務キャッシュフローに区分されて表示されています。

フリーキャッシュフローを増やす経営努力を

投資キャッシュフローは通常マイナスをあらわしますが、本業によるキャッシュから投資に使用したキャッシュを差し引いた分フリーキャッシュフローです。

フリーキャッシュフローを増やすには、営業キャッシュフローを増やすことと、投資キャッシュフローの差し引き分を減少させることが必要ですが、このフリーキャッシュフローが多いほど経営が良好な企業であると判断されます。

フリーキャッシュフローを増やす経営努力を行っていきましょう。

儲けているはずなのに手元の資金が不足する理由

売上は向上して儲かっているはずなのに、なぜか手元にキャッシュが残らず資金繰りが苦しいと感じてしまうこともあるでしょう。

売上が伸びれば重要が高まり、殺到する注文に対応するため仕入れも増やすことが必要になります。仕入れが増えればその代金の支払いも多く発生することになりますが、その支払い期日は売上分が入金された後とは限らないからです。また、売上が伸びて利益が増えれば、その分税金の負担も増えます

勘定合って銭足らずという状態では、黒字倒産という最悪の事態を招きかねないのです。

手元のキャッシュを枯渇させないこと

キャッシュを生み出すことができなければ、いくら売上があがっていても会社は倒産してしまいます。

手元の資金が不足するなら銀行から借り入れればよいと思うかもしれませんが、お金を借りれば返済する必要があるため、返済資金を生むことができなければ結局事業は続けることができません。

仮に銀行から融資を受け、返済しながら事業を続ける場合でも、売上から利益を差し引いた残りを返済資金に充てることが求められます。

必要な資金を確保するためにはどのくらいの利益が必要になるのか計算し、実現できる範囲での売上計画を数値で検討していくことが必要です。

無理な投資は本末転倒に

安全な経営を続けたいなら、減価償却費と税引後利益の合計額の範囲に借入金の返済がおさまるような設備投資を検討しましょう。

事業を続ける上で設備投資なども必要なことですが、投資にお金をかけすぎてしまうことは好ましくありません。

投資とは、本来、本業で利益を生み出すために資金を投下することです。そのため、投資により経営が圧迫されてしまうのは本末転倒と言える行為になってしまいます。

まとめ

銀行融資を検討している場合でも、貸したお金を確実に返してもらうことができる企業にしか融資は行われません。

キャッシュフローがしっかり成り立っているのか判断されることになりますので、決算書上の利益だけにとらわれるのではなく、手元の資金を枯渇させない経営を行うようにしてください。

企業経営において重要なのは利益ではなくキャッシュフロー管理?

企業経営において、利益と耳にすると何となくイメージはできても、キャッシュフローとは何なのかイメージや説明が難しいと感じる方もいることでしょう。

利益に注視して企業経営を続けることはもちろん重要ですが、それ以上に重要なのがキャッシュフローです。そこで、キャッシュフローとはそもそも何を示すことなのか、利益と何が違うのかご説明します。

 

企業経営におけるキャッシュフローとは

手元の現金や預金のことをキャッシュといい、流れのことをフローといいます。そのためキャッシュフローとはお金の流出入のことですが、企業経営においてこのキャッシュフローに注視しておくことは非常に重要です。

商品を仕入れればその代金を支払うことが必要ですが、仕入れた材料などを使って商品を作り、その商品を販売して売上があがればその代金を受け取ることができます。

入ってきたお金で仕入れ代金を支払い、その他、家賃や水道光熱費、給料などの経費も支払うという流れを管理していかなければ、お金が不足して支払いができなくなってしまうでしょう。

 

支払いと入金のタイミングのズレ

お金が入ることはキャッシュイン、反対に出ていくことをキャッシュアウトといいます。キャッシュインからキャッシュアウトを差し引いた収支キャッシュフローと考えればわかりやすいですが、キャッシュフローは常にプラスになるとは限りません。

なぜなら仕入れや給料などの支払いは、商品などを販売してその代金が入金される前に発生するからです。

キャッシュフローがマイナスになる場合、資金調達によりお金を補充することが必要になります。

 

利益とキャッシュフローは一致しない

利益は、売上から費用を引いて計算します。

小売業や飲食業などは現金商売なので、顧客に商品を販売した場合、商品と引き換えで現金を受け取ることができます。しかし企業間では現金で取引されることはほとんどなく、1か月分など一定期間分に発生した取引分をまとめて請求し、後日入金してもらう掛取引が主流です。

ただ、会計処理上、商品を販売した段階で売上として計上されることになるので帳簿上は黒字をあらわしますが、まだ入金がされていないことで売掛金のまま残っており、実際のキャッシュフローは利益よりも少ない状態になりがちです。

会計上の利益とキャッシュフローは必ず一致するわけではないと理解しておきましょう。

 

必要な運転資金が増えればキャッシュフローはマイナスに…

事業を営む上で必要な資金を運転資金といいますが、

運転資金=売掛債権(売掛金など)+棚卸資産(商品の在庫)-仕入債務(買掛金など)

という計算式で算出できます。

そのため、売掛債権が増えたときや棚卸資産が増えたとき、仕入債務が減ったときは多く運転資金が必要となるのでキャッシュフローはマイナスとなります。

キャッシュフローをプラスにしたいなら、商品を販売した後の売掛金を早く回収すること、仕入した後にできるだけ早く販売して在庫を増やさないようにすること、仕入れ代金はできる限り支払期日を遅く設定することが必要といえます。

 

その他キャッシュフローがマイナスになる要因

必要な運転資金が増える以外に、キャッシュフローがマイナスになるなど悪化する要因として挙げられることは、

  • 設備投資に費用を掛け過ぎること
  • グループ法人に対する貸し付けなどお金を生まない出費

などです。あわせて注意しておくようにしましょう。

 

まとめ

現金の出入りであるキャッシュフロー管理をしっかり行い、会計上の利益とは必ずしも一致するわけではない点も理解しておきましょう。そのため、利益が出ていてもキャッシュフローがマイナスになることもあるのです。

会計処理上の結果、利益が出ずに赤字でも企業は倒産しませんが、キャッシュフローがマイナスになれば会社は倒産してしまいます。キャッシュフローがマイナスにならない管理を行うようにしてください。

自由に使える現金であるフリーキャッシュフローを増やそう!

キャッシュフローは、営業活動によるキャッシュフロー投資活動によるキャッシュフロー財務活動によるキャッシュフローの3種類があります。そして事業を営む上で、もっとも注視しておきたいのが自由に使うことができる現金を示すフリーキャッシュフローです。

 

なぜフリーキャッシュフローが重要なのか

企業が事業活動を行う上で、商品を販売した代金を得たり、仕入れにかかった費用を支払うなど、お金の出入りであるキャッシュフローが発生します。

この事業活動で発生した営業活動によるキャッシュフローと、投資によるキャッシュフローを足したものがフリーキャッシュフローです。フリーキャッシュフローとは、借り入れや増資などで資金を増やしたり、借金の返済などの財務活動を含まない、純粋な事業活動だけで生じたお金の収支といえるでしょう。

借入金がある場合、その返済資金が不足し新たな借り入れを行うことは、本当の返済が行われているとはいえません。借入金を本当に減少させるための原資は、純粋な事業活動だけで生んだフリーキャッシュフローから充てられるべきなのです。

 

現金が増えたらキャッシュフローは増える?減る?

現金が増えたらキャッシュフローが減るという話を聞いたことはないでしょうか。通常、現金が増えるということはキャッシュフローも増えるのではないのだろうか?と思うかもしれません。

ただ、資金を調達する場面で見た場合には、ある一定の項目を前提として、現金を増やすことはキャッシュフローを減少させることに繋がりますので、その内容をご説明します。

先にも述べたとおり、企業本来の営業活動で獲得したキャッシュフローから、事業を続けるために投資に充てたキャッシュフローを差し引いたものがフリーキャッシュフローです。

キャッシュフローは、

キャッシュフロー=営業利益×(1-実効税率)+減価償却費-投資-△運転資本

で計算することができます。

利子費用はひとまず無視して、借金がないと仮定したケースでのキャッシュフローです。

この計算式の中で運転資本に注目してみましょう。

運転資本の定義は、

  • 運転資本=売上債権+棚卸資産-仕入債務
  • 運転資本=流動資産(現預金以外)-流動負債(借金以外)
  • 運転資本=流動資産-流動負債(借金以外

などのパターンがありますが、現金が増えるとキャッシュフローが減少することに関係するのは、この3つのパターンのうち「運転資本=流動資産-流動負債(借金以外)」のケースです。

事業を運営する上で必要な資金は、在庫などと同じく資金が拘束されていると判断し、運転資本に含めることが必要という考え方です。

そのように考えれば、本来の運転資本とは、

  • 運転資本=流動資産(余剰現金以外)-流動負債(借金以外)
  • 運転資本=運営上必要とする現金+売上債権+棚卸資産-仕入債務

となります。

事業を運営する上で必要な現金を拘束される資金と考えた場合、この部分を正確に測定することは容易でないこともあるでしょう。

その理由は、これまで実際にかかった金額や比率などを用いて考えるのか、一時的に保有する現金も含めるのかなど、どこからどこまでが余剰現金なのか線引きが難しいことが挙げられます。

そこで、実務上は多少の誤差まで気にするのではなく、これまで通り運転資本の定義で計算することとなるでしょう。

ある程度は妥当性の高い形に持っていき、実質的な運転資本のうち、運営に必要な資金としてどこまでかを含めて考えていきましょう。

 

本来の企業の力で事業を継続するために

フリーキャッシュフローは、事業活動から獲得したお金の中で、自由に使っても良い部分です。

経営者の判断で使途を決めることができるので、戦略的に事業展開する際の源泉となったり、借金の返済資金に充てて健全性を高めたい場合の原資にすることもできます。

外部機関を頼らずに資金を獲得して事業活動を続けたいなら、フリーキャッシュフローを最大化できる企業努力が必要です。

企業のキャッシュフローを左右するのは損益分岐点?その意味とは

企業経営で重要なのは利益を生むことですが、企業は商品やサービスについてコストをかけて顧客に提供し、その対価を代金として受け取り、利益を出します。

そのため、利益を出すことができる売上高である損益分岐点を知っておくことはとても重要なことですが、この損益分岐点こそ企業が達成しなければならない最低限の売上高です。

そして企業経営で重要なのはキャッシュフロー。この損益分岐点とキャッシュフローはとても密接な関係にありますので内容を確認しておきましょう。

 

損益分岐点とは

損益分岐点とは利益も損失も出ず、収支が合致する売上です。ちょうど損失か利益か分かれる部分であるといえますが、損益分岐点を基準とすれば、売上高が多くなれば利益、少なくなれば損失が発生します。

損益分岐点での売上は利益がゼロなので、利益は生みませんが損もありません。
もちろん、利益を獲得するために商品やサービスを販売・提供しているわけですが、赤字でも黒字でもならないいわゆるプラスマイナスゼロの時点です。

損益分岐点を越えた売上分は、限界利益額分の黒字が増えていきます。

 

損益分岐点の考え方

損益分岐点で利益を考える場合には、費用を変動費固定費に分けて考えます。

売上の増減には関係なく発生する固定費に含まれるものとして、従業員の固定給や事務所の地代家賃などが挙げられます。

変動費は売上の増減により比例する費用なので、材料仕入れや従業員のインセンティブなどの人件費、外注費などが該当します。

売上-(変動費+固定費)=利益

となるわけですが、プラスマイナスゼロの状態とはこの利益がゼロの状態なので、売上高から売上を獲得するためにかかった変動費を差し引いた利益が限界利益を出すには、

売上-変動費=限界利益

となります。

 

損益分岐点の算出方法

損益分岐点を算出するには、

固定費÷{1-(変動費÷売上高)}=損益分岐点

となります。

よって、

固定費÷(1-変動比率)=固定費÷限界利益率=損益分岐点

という計算式が成り立ちます。

 

「固定費÷限界利益率」が損益分岐点となるということ

固定費以上に売上が上がったとしても、売上のすべてが利益にはなりません。変動費もかかるので、限界利益部分しか残りませんがこれが限界利益率です。

仮に固定費が100万円、限界利益率が0.25だとした場合の損益分岐点を求めると、

100万円÷0.25=400万円

です。

仮に利益の目標を20万円としていた場合に必要な売上高を知りたいなら、

20万円÷0.25=80万円

となり、損益分岐点である400万円80万円を合わせた480万円が利益目標を達成するために必要な売上高であると計算できます。

また、

  • 固定費を削減すること
  • 変動費を減らし限界利益率を上げること

などによっても目標達成に繋がるでしょう。

 

損益分岐点だけではだめ!キャッシュフローに考慮も重要

会社を経営する上で必要なのは、損益分岐点に加えて、キャッシュフローも考慮していくことが必要です。

むしろ、利益より重要であるともいえます。借入金の返済や未払分の支払いなどは、資金の範囲内におさめなければキャッシュフローは悪化するからです。

新しく事業を始める場合などは、利益計画における損益分岐点だけでなく様々な支払いが滞らないような資金計画が非常に重要となってきます。

これらの支払いは利益から充てていくことになるので、利益が計上されていない状態で返済や未払分の支払いが続いていると資金はいずれショートします。

 

まとめ

企業経営の目的は利益を生むことです。しかし、利益にばかりとらわれてしまうと、手元の資金が不足してしまい、資金ショート、最悪の場合には倒産に至ってしまう可能性があります。

利益計画と資金計画は緊密な関係にあることを理解し、キャッシュフローににおける損益分岐点についても把握しておく必要があるといえるでしょう。

黒字倒産を防ぐにはキャッシュフローを改善させる経営が重要!

決算書上は利益が出ているのに倒産してしまう企業もありますが、その一方で赤字決算なのに倒産せずに事業を続けることができている企業も存在します。

キャッシュフローを改善させなければならないと悩んでいた企業なのに、なぜ倒産しないのだろうと疑問を感じる場合もあるでしょう。

これは、会計上の収益と費用が現金の入出金と一致していないことを理由としていますが、キャッシュフローが改善できていないとこのような減少が起きてしまいます。

企業が生き残り健全な経営を続けるためには、キャッシュフローを改善させプラスを維持することが欠かせません。

そこで、黒字倒産が起きる理由やキャッシュフローを改善させるために重要なことをご説明します。

 

黒字なのに倒産する企業がある理由

損益計算書上は黒字だから何も問題ないと安心している企業もあるようですが、会計上の売上(収益)は商品やサービスを販売・提供した時点での計上です。

この代金が回収されているかは別問題で、入金されるまで2か月ほどの期間があいてしまうことが一般的であることを認識しておきましょう。

その一方、材料や製品などを仕入れるための代金、従業員に対する給料などは売上による代金を回収する前に支払うことになります。

このような売掛金などの関係により、会社の売上高と手元の現金が一致しないことが、黒字でも倒産してしまう要因です。

損益計算書の利益にばかり目を奪われるのではなく、その差により手元のお金が不足するリスクを認識し、キャッシュフローを改善させる努力をしていきましょう。

 

改善できなければ倒産?

企業が倒産してしまう状態とは、支払わなければならない債務を自己資金でまかなうことができず、さらに支払いに充てる資金も調達できず経営が行き詰まった状態を示します。

その後、銀行取引停止処分を受ける、または裁判所に破産手続きを申請するといったことで、事実上の倒産に至ります。

売掛金や手形など、売掛債権が回収できず仕入れ代金や経費などの支払いに充てるお金がなくなれば、資金ショートしてしまい倒産してしまうということです。

特に手形は現金として入金されるまでの期間が長いので、多く保有してしまうと資金繰りは悪化しやすくなります。そのため最近では手形による企業間取引は少なくなり、同じ売掛債権でも掛け取引が主流となりました。

ただそれにより、売掛金が多く発生するようになっており、手形ほどではありませんが回収までの期間に資金繰りが悪化しやすい環境を作っています。

大切なのは手元のお金を枯渇させないために増やすことと、キャッシュフローを改善させることですので、未回収の売掛金や手形を保有しすぎないようにしましょう。

 

キャッシュフローで把握できることとは

企業が注視しておきたいキャッシュフローとは、売掛金の入金や経費などの支出といったお金の流れのことで、キャッシュフローがマイナスにならないように改善させることが重要です。

売上が増えればいずれは入金が増えますし、コスト削減によって支出を抑えることもできます。売上増加や費用削減により利益は増加するので、一般的にはキャッシュフローも改善するでしょう。

ただ売上が増えればその分、生産しなければならない商品の数も増加するので、仕入れ量も大きくなってきます。

せっかく売上が伸び順調に事業が進んでいる中で、仕入れ代金や経費の支払いができなくなれば黒字のまま倒産してしまうのです。

反対に売上が低迷しているのに在庫ばかりが増えてしまっても、保管・管理や人件費にコストがかかりキャッシュフローを悪化させます。

借入金が増えすぎても利息負担は増えますし、取引先からの代金の支払いに手形が多く用いられていると、現金を手にするまで時間がかかりやはり資金繰りに影響すると認識しておくべきです。

 

損益計算書上の利益の違い

把握しておきたいのはキャッシュフローと利益との違いです。収益は入金、費用は支出と深い関係がありますが、それぞれ計上するタイミングの違いを理解しておくべきです。

売上は商品を出荷したタイミングで計上するので、この時点で利益は増えます。ただ、売上に対する代金が回収されるのは支払サイトを経過した数か月後です。

それぞれのタイミングの間に発生する支払いに不足が生じことになるので、キャッシュフローを悪化させない、むしろ改善させるために管理を行うことが重要といえるでしょう。

 

赤字でもキャッシュフロー次第では倒産しない

黒字なのに倒産してしまう企業がある一方、赤字なのにずっと倒産せず事業を継続できている企業もあります。

いくら損益計算書上は赤字でも、手元に支払いに充てるだけの資金があれば企業は倒産することはありません。

そのため倒産してしまわないためには、現金資産や流動性の高い資産を多く保有すること、融資を受ける際に担保として差し入れるだけの価値の高い資産を持っておくことなどが必要です。

ただ、事業を営む目的は利益を出すことなので、ずっと赤字状態のままではいずれ倒産してしまうかもしれないと留意しておくべきでしょう。

 

改善させるために必要なこととは?

毎月家計の収支を家計簿などで管理することで、無駄な出費によるお金の流出をなくし、貯蓄を増やすことが可能になるなどお金の流れを改善させることができます。同様に事業を営む上でも、流出するお金と流入するお金の流れ=キャッシュフローを改善させ、現金が不足しない財務管理を行うことが必要です。

そして経営においてキャッシュフローを改善させるためには、仕入れ代金の支払いはできるだけ先延ばしにして、売上代金はなるべく早く回収することが重要となります。

支払いを少し待ってほしいと取引先に交渉し、快く応じてもらえれば何も問題ないでしょう。しかし実際には取引先の都合もあるでしょうし、無理にお願いしてしまうとよほど経営や財務状況が悪化しているのだろうと勘繰られてしまう可能性もあります。

もし未回収の売掛金を多く保有していて、代金が入金されるまでの間の支払いに充てる資金不足に悩んでいるのなら、その売掛金を早期に現金化できるファクタリングを検討してみてはいかがでしょう。

まとめ

銀行から借入したくても、たとえばリスケ中の場合やカードローンを利用しすぎており、審査で通らないという場合もあるでしょう。しかしファクタリングなら、このような場合でも利用可能となると考えられます。

ファクタリングという方法であれば、手元の売掛金を減らすこととなり、現金が増えるためキャッシュフローは改善しやすくなります。

ビジネスや営業で、いくら売上を増やすことができ、儲けがでていたとしてもその代金が手元に届かなければ意味がありません。

キャッシュフロー改善で大切なのは売掛債権を未回収のまま保有しすぎないこと、手元のお金を増やすことと認識しておいてください