公共工事を受注する建設業者が担保・保証人なしで融資を受けたいなら

建設業が公共工事を受注するとき、担保や保証人なしで融資を受けたいのなら、「地域建設業経営強化融資制度」を活用できます。
地域建設業経営強化融資制度を活用することで、中小・中堅の建設企業が公共工事など発注者に対し有している工事請負代金債権を担保とし、事業協同組合や民間事業者から出来高に応じて融資を受けることができます。
さらに保証事業会社から保証してもらうことで、工事の出来高を超える部分も金融機関から融資を受けることができます。
地域建設業経営強化融資制度の特徴
地域建設業経営強化融資制度は平成20年11月から実施されており、請負金額から前払金など差し引いた金額の範囲で借入可能となるのが特徴です。
令和8年3月末まで延長されている制度ですが、利用にあたり公共工事などの発注者が工事請負代金債権を譲渡することについて、承諾していることが必要となります。
制度の目的は中小・中堅建設企業の資金繰り円滑化
地域建設業経営強化融資制度とは国土交通省が中小・中堅建設企業の資金繰り円滑化を図るため創設した融資制度です。
- 事業協同組合や一定の民間事業者が行う転貸融
- 前払保証事業会社の債務保証
の2つを組み合わせ資金が円滑に供給される支援をしてくれます。
公共工事請負代金債権を担保として事業協同組合や一定の民間事業者から融資を受け、保証会社から保証してもらうことで工事出来高を超えた未完成部分について、金融機関から融資を受け資金調達できます。
融資の対象となる建設企業と工事
制度の対象となる建設企業は、公共工事を受注・施工している元請の中小・中堅建設企業です。資本金または出資総額が20億円以下であること、もしくは常時使用する従業員数が1,500人以下の企業が対象となります。
対象となる工事は出来高が2分の1以上の公共工事です。複数年度に渡る工事の場合には、最終年度の工事であり年度内に終了が見込まれる工事が対象になります。
なお、次の工事は対象に含まれませんので注意してください。
- 債務負担行為に係る工事(最終年度で年度内終了見込み工事は除く。また、次年度に工期末を迎え、残工期が1年未満の工事も除く)
- 繰越工事および繰越が見込まれる工事(前年度からの繰越工事で年度内終了が見込まれる工事は除く。また、次年度に工期末を迎え、かつ残りの工期が1年未満の工事も除く。)
- その他、建設企業の施工する能力に疑義が生じているなど、債権譲渡の承諾に不適当といえる特別な事由がある工事
制度利用における手続の流れ
公共工事を受注・施工している企業が地域建設業経営強化融資制度を利用する場合には、工事請負代金債権を事業協同組合または一定の民間事業者に譲渡します。
工事請負代金債権を譲渡された事業協同組合または民間事業者は、債権を担保として建設業者に対し工事出来高の範囲で融資を行うための資金を金融機関から調達します。
この資金調達については(財)建設業振興基金が債務保証を実施し、保証事業会社の保証によって出来高を超える部分も融資が実施されます。
工事完成後、発注者から工事請負代金が支払われることとなりますが、融資額と保証に係る融資額を精算し残りが建設業者に返還される流れです。
厳しい経営環境に直面している建設業のための融資制度
急激な経済環境の変化や資材価格高騰などで、地域の経済を支える存在である中小・中堅建設企業は厳しい経営環境に直面しているといえます。
新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、資金調達の円滑化を推進するための制度は大切です。
地域建設業経営強化融資制度では、建設業者が有する工事請負債権の譲渡により融資を受けることができますが、自治体によって制度の流れなど異なる場合もあるため事前に確認しておくとよいでしょう。