日本政策金融公庫で審査を受けお金を借りることができれば、低い金利で長い返済期間において資金計画も立てやすいと考える経営者は少なくありません。
確かに民間の銀行の融資審査よりも比較的柔軟で、資金調達しやすい方法ではありますが、中には審査に通らず資金準備できないケースも見られます。
新型コロナウイルス感染症の影響で、スムーズに資金を調達したいという場面において、本当に審査に通るのだろうか…と考えてしまうものです。
そこで、日本政策金融公庫で融資を受ける際の審査において、なぜ審査に落ちてしまうのかその理由を事前に把握しておきましょう。
日本政策金融公庫の審査に通る確率は?
日本政策金融公庫は政府が100%出資し運営している公的な金融機関のため、民間の銀行の融資審査では難しい個人事業主や中小企業に対しても、積極的に資金の貸付を行っています。
新型コロナウイルスによる緊急的な措置として融資制度も設けていますし、他にも起業・開業し事業を始める上で必要な資金を用意するための創業融資などがあります。
いずれも借入れの条件を満たし、事前に準備しておけば審査に落ちる可能性を減らすこともできるでしょう。
創業融資では開業で必要な自己資金の他、事業計画書などの提出書類、面談における対策などをしっかり準備しておくことが必要です。
事業実績のない場合でも低金利でお金を借りることができる魅力の高い制度ですが、実際のところ日本政策金融公庫の融資審査に通過する確率は50~60%と言われています。
約半数の方が審査に通らず、資金準備できないまま終わってしまうようですが、開業の見通しに甘さが感じられ利益を生むことができず、いずれ返済されなくなるリスクが高いと判断されてしまうからです。
審査に落ちて資金準備に至らなくなる原因
日本政策金融公庫の融資審査に落ちてしまう原因として、主に次のようなことが考えられます。
信用情報に問題がある場合
個人事業主や法人の代表取締役の信用情報に何らかの問題があると、民間の銀行同様に日本政策金融公庫でも融資審査には通りにくくなってしまいます。
重視されるのはお金を貸した後、で期日を守り返済されるかであるため、事業実績がない状態で申し込みを行うのなら申込者の返済能力が判断材料として扱われます。
ただし開業において十分な準備ができており、事業を始めれば利益を生み出すことができると判断されれば、この限りではないようです。
いずれにしても個人の信用情報を必ず調査されることになるので、融資審査の段階でキャッシングやクレジットカードの利用に次のような履歴があれば審査にとおりにくくなると考えられるでしょう。
- 過去2年以内に複数回滞納している履歴がある
- キャッシングの債務がまだ残っている
さらに次の履歴がある場合には、ほぼ審査には通らないと考えられます。
- 過去5年以内に61日以上延滞した履歴がある
- 過去5年以内に債務整理をしたことがある
- 過去5年以内に強制的に解約されたことがある
- 過去10年以内に自己破産をしたことがある
長期に渡り延滞した記録が残っている場合や、債務整理や自己破産をしたことがある場合には、その履歴が異動情報として5~10年保管されることになります。
この異動情報が残っていれば、日本政策金融公庫の審査にはまず通りませんので、情報が消えた後でなければ資金の借入れは難しいと考えておくべきです。
税金や公共料金などに未納分や滞納が発生している場合
日本政策金融公庫の融資審査では、税金や公共料金の支払いが遅れている場合、通らなくなる可能性が高いといえます。
源泉徴収票または確定申告書、半年分の銀行口座通帳の履歴などから税金の支払状況などの確認が行われます。
所得税・住民税・法人税・事業税・消費税など税金の種類はいろいろありますが、国民健康保険や国民年金などの納付を確認する書類は求められません。
しかし未納や遅れなどがあれば、審査に不利になる可能性もあるため、他の税金同様に市役所や税務署などに相談しつつ解消しておくようにしてください。
電気・ガス・水道など公共料金の支払いも同様です。
自己準備が十分でないと通らない
日本政策金融公庫の創業融資は、申込前に創業にかかる資金総額の10分の1を自己資金で準備しておくことが必要という要件があります。
そのため融資を受ける希望金額の10分の1分、自己資金を準備できていなければ審査には通りませんので注意してください。
さらにこの自己資金は、見せ金のように一時的に銀行口座に入金し、準備していたように見せかけても認められません。
半年分の銀行口座履歴を確認されるので、一定期間より前から計画的に貯めておくことが必要です。
基本的には準備した自己資金の2~3倍程度の融資金額となることが多いので、仮に自己資金の10倍の融資を受けたい場合には取引してくれる企業や見込顧客が確定しているなど事業が成功する根拠を示すことが必要となるでしょう。
事業計画に矛盾がある場合
融資審査ではこれから始めようとする事業において、その計画書を提出することになります。
その事業計画書の記載の中に、根拠なく急激に売上上昇を示す内容や、売上上昇でも仕入れや人件費が降下しているなど矛盾が生じる内容が含まれる場合、審査に落ちてしまう可能性が高くなるでしょう。
単に数字のみよく見せればよいという考えのもとで作成された事業計画書は、融資審査のプロの目をごまかすことはできないと留意しておくべきです。
面談で説明ができないと審査では不利
日本政策金融公庫から融資を受けようと申込後は、融資担当者と面談があります。その際、具体的にどのような事業を行うのか、融資を希望する理由など様々なことをヒアリングされることになりますが、申し込み者の人柄やこれから始める事業に対する想いなども確認されます。
しっかり説明ができないのなら、開始する事業内容が具体的にまとまっていないと判断されてしまい、ローン審査に通過できなくなる可能性があるので注意しましょう。
審査に落ちて資金調達できなかったときは
個人の信用情報に不安を感じるときには、下記のサイトから信用情報を確認しておくと安心です。
- クレジットカードやカードローンの信用情報 CIC(株式会社シー・アイ・シー)
- 消費者金融からの借入れなどの信用情報 JICC(日本信用情報機関)
- 銀行からの借入れなどの信用情報 全国銀行個人信用情報センター
日本政策金融公庫のローン審査に落ちた場合、当然民間の銀行に申し込みを行っても同じように融資を受けることができなくなる可能性は高いといえます。
なぜ審査に落ちたのか、その原因はどの金融機関でも教えてくれませんが、日本政策金融公庫も同様です。
先に述べた審査に落ちてしまう原因に該当する部分があるのなら、改善・解消させ審査に通る状況にしておきましょう。
再度申し込みをしたという場合、最低でも6か月経過した後でなければ審査に通らないと考えておくべきです。
そこで、再度日本政策金融公庫から資金の借入れを目指し審査を受けるなら、次の対策を行っておきましょう。
別途資金を準備して自己資本比率を上げる
小口の資金しかない場合、親族や友人など個人的にお金を融資してくれる方がいれば、借りて自己資本比率を少しでも上げておきます。
審査に通った後で通帳からお金を引き出すことはできるので、準備段階として数か月前からできるだけ多くのお金を集め、自己資金として準備しておくのも方法といえます。
また、個人的に所有する家や車・機械・設備などを会社の資産にして自己資本比率を上げることもできます。本来なら役員借入金として扱われる部分ですが、中小企業の役員借入金は資本金と同様に扱ってもらえることもあるので、自己資本比率を向上させることにつながります。
ただし自己判断で行うと粉飾決算と判断される可能性もあるため、専門家に相談をしながら検討するようにしてください。
保証協会付き融資など検討できないか相談してみる
日本政策金融公庫のローン審査に落ちた後で、民間の金融機関から融資を受けることは難しいと考えられますが、担保として差し入れる資産がある場合や信用保証協会を保証人とする借入れなら審査に通る場合もあります。
民間の銀行は営利目的で運営しているため、万一お金を貸した相手が返済不能となったとき、貸し倒れになることだけは避けたいと考えるものです。
しかし返済資金として充てることができる担保がある場合や、信用保証協会から保証してもらうことができる場合には、もし返済できなくなってしまっても銀行は痛手を被ることが少なくなります。
比較的審査に通りやすくなるはずなので、相談してみるのも方法の1つといえるでしょう。
資金調達のコンサルタントに相談する
資金の調達方法は日本政策金融公庫の貸付制度に限ったことではなく、様々な種類や方法があります。
他にも実行できる資金の準備方法はないか、資金調達を専門とするコンサルタントに相談してみるのも方法といえるでしょう。
また、日本政策金融公庫からお金を借りようとすると、いろいろと準備しなければならない書類なども多く、知識がなければ事業計画書なども作成できないことがあります。
この場合も、税理士など専門家とのネットワークが確立されているコンサルタントであれば、適切な対処法を伝えてもらうことができるでしょう。
ただしコンサルタントの資金調達の支援実績や発生する手数料などを確認し、優良で安心できる相手か判断し相談・依頼するようにしてください。
まとめ
これから事業を始めようというタイミングで、新型コロナウイルス感染症の拡大など想定していたとおり計画が進まなくなったと感じる方もいることでしょう。
その中で資金準備ができなければ法人設立や事業開始もできないという場合、日本政策金融公庫の貸付制度を活用したいと考えてしまうものです。
しかし申し込みを行えば必ず審査に通るわけではなく、開始する事業で利益を生みだし、返済資金をそこから充てることができると認められることが必要になります。そのためにも事前に準備を行い、着実な資金調達につなげていくようにしましょう。
なお、日本政策金融公庫では借金の借り換えなどに充てる資金の貸付は行っていませんので、その点は認識しておくようにしてください。