資金調達に大きく関係する債権譲渡に関する法律の改正内容とは?
2020年4月1日からは、譲渡制限特約に関する部分を含めた債権法の改正により、資金調達が従来よりも円滑にできるようになりました。
改正となったポイントとして挙げられるのは、譲渡制限特約が付されていても債権譲渡は原則有効となるため、これまで特約の附帯によりファクタリングに利用できなかった売掛債権なども資金調達に活用できます。
ただその一方で、これまでは保護されてきた弁済の相手方を固定する債務者の利益は、債務者が元の債権者に対し弁済や供託をすることを認めることで、引き続き保護されます。
そこで、実際にはどのように資金調達がスムーズに行われることとなったのか、改正されたことによる企業のメリットなどをご説明します。
債権法を含め民法が改正された理由
民法のうち債権に関する規定については、1896年に民法が制定されて以来、120年にも渡り実質的な改正は特に行われていませんでした。
しかし社会や経済は大きく当時とは変わっているため、現在に対応できていない内容であることが問題だったといえます。
そのため一般の国民にも分かりやすい内容に改正されることとなったわけですが、改正されたのは契約に関する規定が中心となり、その1つが債権法です。
債権法改正による企業のメリットとは?
そもそも債権譲渡が行われる目的は、弁済期よりも前に債権を売却してその代金を得る資金調達や、債権を担保に融資を受けることなどといえます。
主に中小企業の資金調達で債権が譲渡されることが多いですが、改正前の民法では債権者と債務者との間で交わした契約に譲渡制限特約が付帯されていると、債権の譲渡を無効とすることが可能でした。
譲渡制限特約は、中小企業の円滑な資金調達の大きな妨げになっていたといえますが、この実情に対応したのが債権法の改正です。
本当に債権を譲渡して資金調達しても問題ないのか
譲渡制限特約が契約において付されているときでも、債権譲渡は有効とされたことは中小企業にとって喜ばしいことです。
しかし、取引先から特約違反を理由として、債権者・債務者間の契約解除とならないか心配になってしまうものでしょう。
この点について法務省では、改正法により債権譲渡での債務者の弁済先固定に対する期待は保護されていることを理由に次のような解釈をしています。
- 資金調達を目的で行った債権譲渡は、契約解除や損害賠償の原因にはならない
- 譲渡されたことによる特段の不利益がないにもかかわらず、取引を打切ったり解除したりという行為は合理性に乏しく、権利濫用などに該当する
さらに下請事業者と元請事業者の一般的な基準となる振興基準では、元請事業者に対して下請事業者との基本契約締結のときの努力義務を課しています。
- 譲渡または担保提供を禁じない内容とするよう努めること
- 債権譲渡禁止特約の解除の申出があったときには、申出を十分尊重し対応するとともに、申出を理由に不利な取扱いをしてはならない
- 禁止特約を解除していない場合であっても、報酬債権・売掛債権・その他の債権の譲渡の承諾に適切に努めること
消滅時効の期間も統一されている
消滅時効とは、債権が一定期間講師されないときにその権利が消滅してしまうことですが、これまでは10年間でした。ただし職業ごとに短期消滅時効が設定されていたり、商取引による債権は5年間になっていたり、非常にわかりにくかったといえます。
しかし今回の改正により、債権の種類にかかわらず消滅時効は統一されました。
債権の消滅時効は、
・権利を行使できることを知ったときから5年
・権利を行使できるときから10年
のいずれか早い時点の到来で完成しますので、こちらも注意しておくようにしてください。