融資を受けるときに経営者が連帯保証人になっていると起きる問題とは?
新型コロナウイルス感染拡大の影響などで、銀行から融資を受けたいけれど連帯保証人を求められた経営者も少なくないはずです。
しかし融資を受けて手元の資金を確保したものの、連帯保証人となった経営者に万一のことがあれば…と考えると安心してお金を借りることは難しいといえます。
実際、融資を受けた後で連帯保証人となった経営者に万一のことがあった場合、経営者の家族にどのような影響があるのかご説明します。
もし連帯保証人になっている経営者が亡くなったときは?
たとえば経営者に配偶者や子もいる中で、新型コロナウイルス感染拡大による資金需要の高まりから経営者が連帯保証人となり、銀行から追加融資を受けたとします。
しかし経営者が突然亡くなってしまい、コロナ禍の影響を受けて事業継続も難しく、清算することになったとします。
会社で返すことができない連帯保証債務があると、それは連帯保証人だった経営者の遺族が相続されます。
仮に経営者が住宅ローンで家を購入している場合には、団体信用保険に加入していれば家族が返済義務を負うことなく、家を残してもらえます。
ただ、配偶者などが経営に関わっていなければ会社の借金が相続の対象になると知らず、思わぬ負債を相続することになってしまうでしょう。
この場合、会社の借金をどうすればよいのか家族を悩ましてしまいますが、次のAとBうちどちらかを選ぶことになります。
A 相続放棄
経営者の遺産のすべてを相続することを放棄すれば、連帯保証債務を負うことはなくなります。ただし、家やその他預金・現金などの遺産も相続できなくなってしまいます。
B その他の遺産で会社の借金を返済する
住宅ローンの負担がなくなった家を相続した場合には、その売却代金と遺産として残された預金や現金で連帯保証債務を返済するという方法もあります。
信用保証協会付の融資なら安心?
経営者が連帯保証人となるのではなく、信用保証協会の保証付き融資であれば、何かあっても信用保証協会が借金を肩代わりしてくれると思いがちです。
確かに融資を受けて返済が滞ると、債務者に代わり信用保証協会が銀行に弁済してくれます。
ただ、これで連帯保証債務がなくなるわけではなく、今後は信用保証協会に対する弁済義務が発生することになりますので注意してください。
第三者保証人を求められることは少ない
以前までは、信用保証協会付き融資の申し込みで求められる連帯保証人は、会社や経営に関係のない第三者であることが必要でした。
しかし2006年3月に中小企業庁から通達があり、信用保証協会が行う保証制度では、経営者本人以外の第三者を保証人として求めることを原則禁止としています。
さらに2011年7月に金融庁から出された通達でも、金融機関からのプロパー融資では経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とするとしています。
ではなぜ、銀行は経営者に対し融資を受ける際の連帯保証人になることを求めてくるのかというと、主に次のことが考えられます。
経営者に対する規律付けとして
仮に会社が倒産しても、経営者は引き続き資産を十分に保有し続けることができるとしたら、銀行への返済が不能となって倒産しても問題ないと考える経営者も出てくる可能性があります。
そこで、万一資金を貸し付けた会社が倒産してしまったときに備え、経営者に連帯保証人となるように求めてくれると考えられます。
融資を受けたい会社の信用力を補完するために
業績や財務内容が良好でない会社は、信用力が低いとみなされ銀行から融資を受けにくくなってしまいます。
しかし、その会社の経営者個人には十分に資産がある場合、もし貸し付けた資金が返済できなくなったとしても経営者を連帯保証人にしておけば保有する資産から返済してもらえる可能性が出てくるからといえるでしょう。
経営者を連帯保証人にして融資を受けるのなら
コロナ禍で売上や利益を含め、経営の先行きに見通しが立たなくなっている会社は少なくありません。
数年は返済を据え置き、5~10年で完済させるような返済計画で銀行から融資を受けている経営者もいることでしょう。
しかし売上が上がらない状況の中、返済原資を生み出すことも一苦労のため、数年間は借入残高が減らないことも考えられます。
会社の連帯保証人になっている経営者は、連帯保証債務から家族を守ることができるよう、資金繰りを改善させる経営を考えていくことが必要です。