売上を計上した後は、一定期間分の売上分の代金を取引先ごとにまとめ、請求書を作成することになります。
ただ、支払期日を迎え、入金された売掛金の代金が、請求した金額より少ないなど、金額が合わないこともあるかもしれません。
入金された金額のほうが多い場合もあれば、少なく入金されてしまうこともあるでしょう。
多い場合には差額を返金すればよいだけかもしれませんが、少ない場合にはなぜ差額が生じているのか、その原因をつきとめなければなりません。
そこで、もし請求額と入金額に差が生じたときの対処方法をご説明します。
売掛金残高と入金額に差額が生じている原因
請求した売掛金の金額と、実際に取引先から入金されている金額に差額が生じている場合、次のようなことが原因と考えられます。
振込手数料が差し引かれていないか
もし入金された金額のほうが請求した金額よりも少ない場合には、振込手数料分が差し引かれている可能性があります。
振込手数料をどちらが負担するのか、双方が話し合い事前に取り決めておくことが必要です。
取引先件数が多い場合、振込手数料がかさめば負担も大きくなりますので注意しておきたい部分といえるでしょう。
売掛金と買掛金とで相殺されていないか
取引先に請求する金額と支払う金額があるなど、売掛金と買掛金がどちらも存在している場合には、代金が相殺されて入金されていないか確認してみましょう。
双方の検収日がズレていないか
締め日よりも前に商品を出荷していた商品も請求として含めていた場合でも、取引先では締め日より後で検収を行ったことでその分の金額にズレが生じていることもあるかもしれません。
単純な振り込み金額の間違い
単に取引先が振込金額を間違えている可能性も否定できませんので、原因不明のズレは確認したほうがスムーズです。
入金そのものが支払期日とズレている場合

売掛金の入金額にズレが生じているなら原因を追求すれば解決しますが、入金そのものが支払期日にされずに起こる入金ズレは避けなければなりません。
入金ズレが起きる原因は、取引先の資金繰り悪化、資金ショート、単に入金し忘れているなどいろいろな状況が考えられますが、いつ入金されるかわからない状態で待っていても自社の経営に悪影響を及ぼします。
1社に依存した取引は危険
1つの取引先に取引を依存している場合、その取引先からの売掛金が回収できなければ、新たな仕入れは行うことができませんし、様々な経費の支払いにも行き詰ってしまいます。
そうならないためにも、取引先は分散させておくこと、支払いサイトの長い売掛金などは事前に早期化させることなど検討が必要です。
適切な売掛金の管理が重要
取引先に請求した金額と入金された金額に差が生じることはめずらしいことではありませんが、金額がズレたままで放置しているとその後の会計処理に影響を及ぼしますし、資金繰りにも悪影響を及ぼす可能性があります。
いずれは修復して取引先が管理している買掛金の金額と、自社の売掛金の金額が合致する状態にしておかなければならないので、差額の内容はすぐに原因をつきとめ修復させるようにしてください。
なお、入金ズレが起きている場合には、先方に再度請求書を発送するなど、放置しないことが大切です。
もしそれまでに取引先が資金ショートしてしまい倒産すれば、売掛金は回収できないまま残ってしまいます。そうなると自社が行うべき支払いにまで影響することとなり、最悪の場合連鎖倒産してしまうかもしれません。
支払いサイトが長めの売掛金は特に注意し、ときにはファクタリングなど売掛金を早期で現金化できる手法を用いて先に資金を手に入れることも検討するようにしてください。
事業資金が必要になると、多くの方が銀行やビジネスローンなどからの融資を検討することでしょう。新規事業や事業展開においてすぐに資金を用意できないときに、このような資金調達法は非常に役立ちます。
しかし、融資を受けるには厳しい審査基準を満たすことが前提となり、また金利付きで返済していく必要があります。それらのデメリットやリスクを理解したうえで取り組まないと、後になって大変な思いをする結果になります。
そのような事態を避けるためにも、ご自身が何のために資金を必要とするのか、その目的をまず明確化していきましょう。今回は融資を受ける前に考えておきたい目的や使い方についてお話ししていきますので、これから融資による資金調達を検討されている方はぜひ予備知識としてご活用ください!
1.「何となくお金が欲しい!」では融資を受けられない

最近ではクラウドファンディングの台頭により、知名度さえ上げれば必要な資金を得られる世の中になってきています。ただ、事業ではなく個人の欲しいものや単なる希望で寄付金を募る人も多くなっていることから、それだけにクラウドファンディングへの風当たりが強いことも事実です。すべてがそうだとは言い切れませんが、安易な気持ちでお金を集めるのにはそれ相応の厳しさが伴います。
融資に関しても同じことで、「何となくお金が欲しいから」という理由では現実を動かせません。実際に融資を受けるには厳しい審査と詳細な事業計画書の提出が求められることから、その負担の多さを実感せざるを得ないでしょう。そこで、ご自身がなぜ融資を必要とするのか、目的をしっかりと考える必要があります。
融資の目的は主に5つ
例えば銀行で融資を受ける際、何の目的で資金が必要になるのかを必ず問われます。実際に審査に通る事業者の答えを参考にしてみましょう。
事業展開
新しいビジネスを始めたり新店舗をオープンさせたり、現在の事業をさらに大きくする場合、「事業展開」としての目的となります。収益性が見込める事業展開であることが必須条件です。
つなぎ融資
事業としての成長スピードを上げたいときに、手持ちの資金が足りない場合があります。このときには次の売り上げや入金が確定するまでの「つなぎ融資」として、銀行からの融資を利用することができます。
チャンスを活かすため
思いがけないビジネスチャンスがやってきているにもかかわらず、資金が足りない場合にも銀行からの融資が役立ちます。ビジネス展開にはそれぞれ適した時期があり、時期を逃してはチャンスがつかめないので、ここで「チャンスを買うため」の融資目的が生まれます。
返済実績としての信頼材料
銀行からの審査に通り、きちんと返済できたという実績は、事業者にとっての大きな信頼材料となります。後からさらに大きな融資に挑むための安心材料として、初歩的な融資に臨む事業者は少なくありません。
急な資金不足を補うため
取引先からの入金が遅れるなどで、従業員の給与などの経費に資金を回せない場合、融資を活用するケースもあります。これは事業者としてはもっとも避けたいケースとなりますが、どうしても困っているのなら融資を活用してみましょう。
ご自身の資金確保の目的に以上の5つがあるかを考えてみましょう。
2.融資を受けやすい借り入れ目的と、受けにくい借り入れ目的
銀行でもビジネスローンでも、融資を受ける場合には審査が必要です。特に銀行融資では面接と事業計画書の提出が求められ、銀行側の基準を満たしていなければ不合格となります。
事業者の信頼性や返済能力の有無に加え、資金の使用目的も大きな懸念材料です。ここでどのような目的であれば審査に通りやすいかを見ていきましょう。
運転資金や設備資金ならば受け入れられやすい
運転資金や設備資金として運用する場合は、銀行側にも好印象を与えるでしょう。
事業者としては普段から潤沢な資金を用意しておきたいものですが、現実にはなかなか難しいケースがほとんどです。取引先からの未払いや突然のトラブルなどで資金が枯渇することが多いのに加え、仕入れや経費などで支払いが必要になるというケースが非常に多いためです。
そのような状況下で運転資金や設備資金が足りない場合には、銀行からの融資が有効な手段となります。きちんとした経営基盤が整っているのであれば返済能力を証明できるので、銀行による審査にも通りやすくなります。
ご自身の展開する事業に収益性があり、それに加えて社会に貢献するようなメリットがあれば、銀行としても喜んで資金援助に応じるでしょう。
赤字への対処や受け入れられにくい
これに対し、単なる業績不振で赤字が発生した場合には、銀行融資を受けにくくなります。
突然のトラブルによって経営基盤に悪影響をもたらされたのであれば事業者に落ち度はありませんが、経営能力の欠如による赤字は事業者自身の責任です。赤字を埋めるための融資は認められず、また、借り入れの返済のために融資を申請するなどはまさに論外です。
銀行側はこのような事業者を「返済能力がない、信頼できない相手」と見なします。事業者がだれであれ、銀行にとっては「融資した金額を金利付きでしっかり返してくれるか」が懸念材料となるため、それに対応できない事業者とは最初から関わりたくないのです。
ビジネスローンであれば使い道はある程度自由になりますが、こちらでは金利が高くなるため、返済に苦労することにもなります。また、ビジネスローンでも事業以外の使用は認められていないので、その点はあらかじめ注意しておきましょう。
3.目的以外の使用は禁止されている!

融資を受ける際に気をつけてもらいたいことのもう一つは、「目的以外の使用をしないこと」です。申込書や事業計画書以外の用途に使った場合は「資金使途違反」となりますので、十分に気をつけてください。
「資金使途違反」とは
「資金使途違反」とは、借り入れ当初の目的以外に資金を活用することです。申し込みや審査の時点で使い道は決定しているので、それに反する形での使用が発覚すると違反になります。
「資金を別の目的で使用しても、発覚する心配はない」という楽観視は禁物です。融資後、銀行は月ごと・年ごとに企業の決算書を確認していて、使用使途違反がないかを確認しています。同時に経費を計算する際には領収書の保管も求められるため、例え嘘をついてもすぐに発覚してしまいます。
発覚次第罰せられることも
資金使途違反が発覚され次第、銀行によって厳しい罰則が科せられます。追加融資が難しくなったり全額返済を求められたりなど銀行それぞれで対応が異なりますが、この先事業を続けるうえで大きな支障となりうることを覚えておきましょう。また、悪質な嘘をついた場合はさらに厳しい処分を受けることになります。
モラルを守った使い道で融資を活用していくことがベストであり、当然の義務です。
事業を進めるうえで資金は不可欠なツールとなりますが、援助を受ける前にその目的と今後の展望までしっかりと確認、イメージをしておきましょう。融資を受けた場合に何に使うのか、どうやって返済していくのか、資金がなくても事業を動かしていく方法はないかなどを慎重に考え、後悔しないように準備を進めていくべきです。また、使用目的をまもるなどというモラルも守り、安全かつ堅実な資金運用を進めていきましょう。
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