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労務管理で欠かせない作成する帳簿と手続に関する基礎知識を徹底解説

事業資金2022/05/30

従業員に関する職場環境など管理する仕事を「労務管理」といいますが、担当するのでれば基礎知識として押さえておきたいポイントがいくつかあります。

従業員の勤怠・福利厚生などの労働に関する管理や、メンタルヘルスやハラスメントなどの対策など、労務管理で行う業務は多岐に渡るため一定の基礎知識がなければ徹底した管理ができなくなるからです。

そこで、従業員が安心して働くための職場づくりを責務とするともいえる労務管理について、作成する帳簿や手続に関する基礎知識を徹底解説していきます。

労務管理とは?勤怠管理と人事管理と異なる部分

労務管理で行う業務は、主に従業員の労働時間・福利厚生・賃金など労働に関することです。

従業員の労働時間や給与計算などを管理することを業務としますが、人事管理に含まれる人材雇用とそれに関連する人事考課や人材配置などの管理も、会社によって労務管理担当者が行うこともあります。

一般的に人事管理・労務管理・勤怠管理で行う業務は混同されがちといえますが、簡単にそれぞれの管理内容を分けると次のように管理する範囲が狭くなります。

  • ・人事管理 人材処遇の管理
  • ・労務管理 労使関係や労働条件などの管理
  • ・勤怠管理 労働条件のうち労働時間や休日などの管理

人事管理では、採用した人材を効果的に活用するため、会社規則や処遇を定め適切な運用を行うための管理を行います。

主な管理業務として、人材の採用・人事評価・人材育成・退職などの手続が挙げられますが、処遇も含めた人事に関する業務を担当します。

労務管理では労使の雇用関係や労働条件をメインに管理を行います。

労働時間・休日・休暇・賃金・賞与の他、社会保険や雇用保険などの福利厚生関連や賃金計算・管理も労務管理に含まれます。

労働基準法や男女雇用機会均等法などの法律に基づいた職場環境の整備していくことも重要な業務として挙げられるでしょう。

勤怠管理は労務管理の1つといえる管理であり、職場によってはそれぞれ分けて管理を行うこともありますが、いずれにしても従業員の勤務状況の把握・管理をメインに行います。

従業員の労働時間や残業時間、出勤・欠勤・遅刻・早退などを管理し、年次有給休暇取得状況の管理なども業務に含まれます。

労務管理で作成しておかなければならない3つの帳簿と必要な知識

労務管理では、従業員が働く上で様々なことを管理しなければなりません。

そのため管理する上で必要な複数の帳簿を作成することになりますが、具体的には次の3つの帳簿作成と管理を行う知識が必要です。

  1. 法定三帳簿
  2. 雇用契約書
  3. 就業規則

それぞれの帳簿と内容について説明していきます。

法定三帳簿

労務管理で作成する「法定三帳簿」とは、主に次の3つの帳簿のことを意味します。

  1. 労働者名簿
  2. 賃金台帳
  3. 出勤簿

それぞれどのような帳簿か説明していきます。

労働者名簿

従業員ごとの氏名・生年月日・住所などの情報をまとめた帳簿が「労働者名簿」です。

退職・解雇・死亡日を起算日として3年間は保存することが必要になっています。

賃金台帳

従業員に対し支払う賃金の情報をまとめた帳簿が「賃金台帳」です。

それぞれの基本給・手当などの種類とその金額、賃金の計算期間や労働時間数、控除などを項目ごとに記載していきます。

最後の賃金に関して記入した日を起算日として、3年間は保存しなければならないと決まっているため、たとえ退職した従業員がいても廃棄してしまわないようにしてください。

出勤簿

従業員の出勤状況を記録した帳簿が「出勤簿」です。

タイムカードの記録や情報をもとに、始業・終業時刻・労働日数や時間を記録した書類であり、最後の出勤日を起算日として3年間は保存しておくことが必要になります。

雇用契約書

雇用契約書は、人材を雇用する側である事業者と、雇用される側である従業員が、一定の労働条件のもとで結ぶ契約を証明する書類が「雇用契約書」です。

雇用契約書を作成するのは、

  • ・新卒や中途で人材を採用したとき
  • ・契約社員を雇用したとき
  • ・契約社員の労働契約更改時期

などです。

雇用契約書には主に次の項目を記載します。

  • ・労働契約期間
  • ・就業場所
  • ・従事する業務の内容
  • ・始業・終業の時間
  • ・交代制のルール
  • ・所定労働時間を超える労働の有無
  • ・休憩時間・休日・休暇
  • ・賃金の決定・計算・支払方法・締切日・支払日
  • ・昇給に関する事項
  • ・退職に関する規定

正社員ではなく、時間給で働くパートタイム労働者の場合には、上記の項目に加え次の4つの項目も記載しておくことが必要です。

  • ・昇給の有無
  • ・退職手当の有無
  • ・賞与の有無
  • ・相談窓口の担当者の部署・役職・氏名

就業規則

従業員を常時10人以上雇用する事業者は、労働基準法の規定に基づいて「就業規制」を作成することが義務付けられています。

就業規則を作成した後は、所轄の労働基準監督署長に提出しますが、後で就業規則の内容を変更するときなども届出が必要です。

就業規則に記載する内容は主に次の2つです。

  • ・絶対的必要記載事項
  • ・相対的必要記載事項

絶対的必要記載事項は、労使間で最低限共通の認識をもっておくことが必要な項目であり、必ず明記しなければならない項目として義務付けられています。

もう一方の相対的必要記載時効については、会社独自で制度を設けるときなど記載が必要となります。

絶対的必要記載事項に含まれる項目は以下のとおりです。

  • ・始業・終業の時刻
  • ・休憩時間
  • ・休日・休暇
  • ・労働者を2組以上に分け交替で就業させるときの就業時転換に関する事項
  • ・賃金の決定・計算方法
  • ・賃金支払の方法
  • ・賃金の締切・支払の時期
  • ・昇給に関する事項
  • ・退職に関する事項

労務管理で必要になる4つの手続

従業員が安心して働き続けることができるように、次の4つの手続も労務管理の業務として行います。

  1. 社会保険・雇用保険など各種保険加入手続
  2. メンタルヘルス対策の手続
  3. ハラスメント対策の手続
  4. 異動・休職・退職手続

それぞれの手続について説明していきます。

社会保険・雇用保険など各種保険加入手続

新たに従業員を雇用したときに、「社会保険」や「雇用保険」の加入手続を行うことも労務管理の仕事です。

社会保険は年金事務所または健康保険組合で資格取得の手続が必要となり、雇用保険はハローワークで手続します。

また、提出しなければならない書類は次のとおりです。

  • ・厚生年金保険 厚生年金保険被保険者資格取得届
  • ・健康保険 健康保険被保険者資格取得届
  • ・雇用保険 雇用保険被保険者資格取得届

メンタルヘルス対策の手続

労働契約法では、従業員に対し生命・身体の安全確保に配慮する義務があることが明文化されており、事業者はその労働環境を用意する「安全配慮義務」を負っています。

さらに労働安全衛生法により、従業員の健康を守るための「安全衛生管理」も義務付けられているため、職場の安全衛生を確保する措置や従業員の健康保持増進を図る対策などを講じることが必要です。

職場環境を整備するだけでなく、従業員の健康管理も労務管理の仕事として必要ですが、安全配慮義務を守るために次の4つをポイントとして押さえておくようにしましょう。

適性労働条件措置義務

従業員が過重労働を原因として心身の健康をこわしてしまわないように、労働時間・休憩・休日・休憩場所・人員配置など労働条件は適正に保たなければなりません。

過労死や過労自殺が社会問題化していますが、適正に労働時間を管理することは最も配慮すべきことです。

たとえ従業員が多く働いて残業代を稼ぎたいと申し出たとしても、事業者側が適正な労働時間を管理していく必要があるといえます。

健康管理義務

従業員に健康診断を受けてもらうことやメンタルヘルス対策を行うことなど、労働者の心身の健康を図るための状態把握と健康管理は欠かせません。

労働安全衛生法でも、雇用の際の健康診断と年に1度の定期健康診断や、深夜働く方や有害な環境で働く方に対する特定業務従事者健診を義務付けています。

また、健康診断を受診してもらえばよいだけでなく、その結果によってたとえば就業時間や就業場所の見直しといった適正な処置をとることも必要です。

適性労働義務

従業員の持病や過去の病歴、体調状態など考慮した上で業務配置することも必要です。

心身の不調などうったえたときや、持病により今の業務が厳しいという申し出があったのにもかかわらず、適切な対応を取らなければ安全配慮義務違反になる場合もあります。

業務配分の際には、今は健康でも身体不良を起こしてしまうリスクも考え、万一のときに適切な対応ができる体制を整えておくことも必要です。

看護・治療義務

従業員が業務によりケガを負ったときや病気になったとき、適切な看護や治療を行うことも必要です。

また、発症した可能性があるのにもかかわらず対応しない場合も問題となるため、従業員とコミュニケーションを図りながら異変があったときには医療機関を受診をしてもらうようにしてください

ハラスメント対策の手続

「パワーハラスメント対策」は2020年4月から法制化されており、労務管理業務として必要な措置を行うことが義務化されています。

職場でハラスメントが起きてしまうと、秩序が乱れ従業員の士気は低下するだけでなく、法令違反や安全配慮義務違反で従業員から損害賠償請求される可能性もあります。

また、ハラスメントがあった事実を公表しなければならなくなると、問題のある企業といった認識が広がり、社会的信用も低下してしまうでしょう。

ハラスメントの内容を従業員に周知し、ハラスメント行為に該当する言動はあってはならない方針を明確化し、管理監督者を含むすべての労働者に啓発することが必要になります。

具体的には、就業規則や社内報などにハラスメントに該当する言動を列挙し、該当する言動を禁止することを明確にしておくなどです。

ハラスメントの内容の周知・啓発は、形式的なものではなく労働者の人権意識を高めるために本気で取り組んでいかなければなりません。

そしてハラスメント相談を受けつける窓口を設けるときには、担当者に相談内容や状況に応じた対応が求められることとなり、ハラスメントとして判断するに至るか判断が難しいケースでも幅広く相談に応じ対応することが必要です。

異動・休職・退職手続

従業員の異動があったときには、住所変更に伴う住民税や社会保険料・労働保険の手続が必要です。

住所の市町村に変更があったときには、給与支払者から市町村に「給与所得者異動届出書」の提出が必要とされています。

また、事業所単位で加入扱いになる社会保険も、元の事業所で「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を、新しい事業所では「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」をそれぞれの事業所を管轄する年金事務所に提出します。

労働保険は、新しい事業所を管轄する職業安定所に「雇用保険被保険者転勤届」を提出してください。

休職手続として挙げられるのは、育児休業・傷病休職・介護休職などの手続で、保険給付申請や傷病手当金の請求なども必要になることがあります。

退職手続については、社会保険や雇用保険の資格喪失届の提出、労働者名簿更新、退職手当の支給などが挙げられます。

従業員が退職した後に渡さなければならない書類もあるため、退職した後の連絡先なども確認しておくようにしましょう。

労務管理では勤怠管理・雇用契約・入退社手続など業務は多岐に渡り存在すると理解しておくことが必要です。

まとめ

企業が所有する経営資源であるヒト・モノ・カネのうち、労務管理は「ヒト」に関する管理を行う仕事です。

事業活動を広げ成長していくためには、人材の量や質を上げていくことが必要ですが、雇用している人材が増えればより管理は難しくなってしまいます。

いくつも事業所などを抱えており、転勤や人事異動などが発生する企業であればより困難となり、多く人を雇用する企業なら退職する人も出てくるためやはり適切な管理が必要になります。

いずれにしても労務管理では、雇用した人たちが安心して働くことのできる職場環境を整備することや、福利厚生など適切な状態で維持できる環境を整えることが必要です。

労務管理の仕事は表で活躍できる業務とはいえませんが、裏方で従業員をしっかり支えていく大切な役割を担います。

労務管理担当者に業務を行う上で必要になる基礎的な知識を身につけてもらうことは、事業者にとっても大変重要なことといえるでしょう。

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