中小企業がリスクマネジメントを実践する前に知っておきたいこと
企業経営で事業が成長していく過程の中では、様々なリスクに直面することになります。中小企業でも立ちはだかるリスクにどのように対応していくのか、しっかりマネジメントしていかなければならない状況です。
しかし、事業を成功させたいと考えていても、複雑化するリスクに何を行えばよいかわからない、そもそもどのようなリスクが潜んでいるか認識できていないということもあるようです。
そこで、リスクマネジメントはなぜ必要か、そもそも中小企業はどのようなリスクを抱えているのかをご紹介します。
リスクマネジメントの前に理解しておきたいこと
企業経営において、利益を100万円生みだすことと、100万円の損失の発生を防ぐことは同じ価値といえます。リスクマネジメントとは、この100万円の損失を未然に防ぐことであり、経営にかかわる危機を防ぐための管理を行うことです。
中小企業の場合、少しでも売上を向上させなければと営業活動ばかりに目を向けてしまい、足元のリスクへの対策は疎かになってしまいがちです。しかし、そのリスクに足元をすくわれることになると、せっかく売上を向上させても本末転倒という結果に至ってしまいます。
多種多様なリスクが潜み、複雑・多様化していることをしっかり理解しておく必要があるでしょう。
自社工場が火災で焼失したら?
もし、自社工場が火災で焼失したとしたらどうでしょう。火災保険に加入しているから、また工場を新しく建て直せば問題ないと思うでしょうか。
工場が火災でなくなってしまうと、事業を再開できる状況になるまで企業の生産活動は停止してしまいます。さらに保険だけですべてをまかなうことができるとも限らず、投入する資金も必要となります。
稼働できない間に取引先を失うことも考えられますし、従業員に対する給料も支払えなくなり、操業停止の危機にさらされることになるでしょう。
工場を建て直すことができれば丸く収まるというわけではなく、1つのリスクにより様々なリスクを引き起こすこととなり、結果として事業継続を断念しなければならなくなる可能性もあると考えておくべきです。
業績が順調でもリスクは存在する
仮に何も問題なく、業績が順調に推移していたとしても、規制緩和や消費者の需要が多様化などで社会の動き自体が変化し、企業経営に影響することも考えられます。どれほど業績がよくても、事業縮小や倒産というリスクにさらされている状態であることを認識しておかなければならないのです。
リスクマネジメントとは
企業経営は常にリスクと背中合わせの状態であると理解しておき、そのために何を行えばよいか考えるべきです。
リスクマネジメントとは、企業活動における悪影響を低減させるために、要因となる部分を特定し、資産や活動を保護するために必要な管理を行うことです。
企業活動におよぶ悪影響とは、経営損失をもたらす可能性のある不確実な要因のことですので、それは何か洗い出すことから始めましょう。
企業経営におけるリスクとは
リスクマネジメントにおいては、何がリスクとして潜んでいるかを把握することが重要になります。企業経営において考えられるリスクには次のようなものが挙げられますので、それぞれの内容を把握しておきましょう。
財産を損失するリスク
火災や爆発、台風や豪雨・地震などの自然災害、盗難などで生じる直接的な損害に関わるリスク
収入が減少するリスク
自社工場が罹災したことによる生産停止や取引先の倒産などで売上や利益が減少するリスク
賠償責任を負うリスク
たとえば新製品が商標権侵害にあたる商品名だったなど、他人の権利を違法に侵害したことにより損害を発生させたことで法律上の賠償責任を負うリスク
人的損失のリスク
経営者など役員、従業員のケガや病気などで信用を損失するリスク
ビジネスリスク
新規に参入した事業者により自社製品のマーケットシェアが低下するなど、新製品開発や海外進出など営業戦略上発生するリスク。さらに株式投資や商品取引、為替操作、融資など、資産運用上かかるリスク
中小企業を取り巻くリスクは多岐に渡る
主なリスクを挙げましたが、他にも中小企業を取り巻くリスクは多岐に渡ります。これらのリスクにどのように対策を講じていくのか検討することが求められますが、実際、多くの企業はこれらリスクに対して無防備な状態です。
経営者がリスク自体を認識できていなかったり、リスクはコストであることを認識できていないケースもあります。注意すればリスクは発生しないものだと、安全を人的な依存にすりかえてしまっていないでしょうか。
天災による被害や抱える損失はどうしようもないリスクだと考える方もいるようですが、対策によって発生する被害や損失を低減させることは可能です。
まとめ
それぞれのリスクにかかわる意識の持ち方や対応次第で、リスクが発生したときに企業経営に及ぶ危機も大きく異なってきます。少しでもリスクを回避・軽減させるために必要なのがリスクマネジメントです。
ただ、リスクを把握できても何を実施していけばよいのかわからないというケースもあるでしょう。このような場合、経営の専門家であるコンサルタントなどに相談するといったことも検討が必要です。
事業を継続するにあたり、結局は資金が十分あれば対応できるとも考えられますが、資金をどのように調達するかに合わせ、事業経営においての相談も可能なコンサルタントに相談することで、今行うべきことが見つかるかもしれません。ただしくリスクを管理するためにも、まずは相談してみてはいかがでしょう。