見積もり後に注意したい!資金調達契約書のチェック項目
見積もりを出してもらった後は、いよいよ契約書にサインします。
ところが、契約書や見積もりの内容が複雑で、
「どこの項目をチェックしていいかわからない」
お悩みの方も多いのではないでしょうか。
今回は、見積もりから契約書にサインするまでに、チェックすべき項目たちをご紹介。契約後に後悔しないように、それぞれのポイントを解説します。
チェック項目1:手数料はいくらか?
手数料がいくらなのかは、確実に書面で確認すべき項目です。特に手数料の交渉を行った場合は要注意で、
〇 交渉結果が見積もりや契約書に反映されているか
〇 見積もりと契約書で手数料の額が違わないか
〇 手数料の大きさは適切な金額か?
このように、双方の認識に差が出ていないかを確認しましょう。契約書にサインしてから「変えてくれ!」と頼むのは、後の祭りというしかありません。
チェック項目2:いくら入ってくるのか?
当然ですが、最終価格も必ずチェックしましょう。ファクタリングは手数料が8割がたのコストを占めますが、
〇 司法書士依頼料などの登記コスト
〇 着手金や見積もり費用などの取引コスト
〇 掛目による買取部分の範囲
上記のような項目により、実際に受け取ることができる金額は変動します。
特に登記コストや取引コストは取引債権の金額が小さい場合、大きな影響を与えます。手数料と合わせて計算して、「最終的な実質コスト」を導き出しましょう。
極端な話ですが、コストや掛目の影響により「A社とB社で実質的な手数料が逆転してしまった」というケースも見られます。
チェック項目3:入金期日
「いつ入金されるか?」もファクタリング契約では非常に大切です。
「急いで資金が必要なのに、入金はかなり先…」
これでは、ファクタリング取引を行うメリットが減少します。納期をあいまいにしままではいけません。見積もり時はもちろん、契約前においても必ず訪ねましょう。
契約書に納期が書かれているかは、何をおいてもチェックすべき「最優先項目」です。当サイトでは繰り返し「手数料と納期のバランスが大切」と訴えています。
ファクタリングにおいて両者は、取引条件を決定づける、最も大きな項目です。
チェック項目4:債権の特定
簡単に説明すると、「どの債権を取引するのか?」を特定するための項目です。
継続取引を前提とした取引の場合、個別項目を記した見積もりや契約書とは別に、その業者との取引全体の大枠を定める、総合契約書のようなものを作成するケースもあります。
少し難しい表現で書かれている場合も多いのですが、
〇 譲渡する債権はどんなものか? → 買取債権の特定
〇 営業利益で得た債権に限定する → 債権転売を禁止
このように債権の特定を行い、転売債権の取引を対象外とするなど、取引の健全性を保つための内容です。
チェック項目5:取引形態の特定
取引形態も必ずチェックしましょう。ファクタリングは「2社間」と「3社間」で、まるで性質が異なるため、
「見積もり相談時に話した内容が、契約書に書かれているか?」
は確認すべき部分です。
実際の契約書では、3者間ファクタリングの定義の詳細を定めます。
契約書の文言に「債務者より債権譲渡の承諾を取り付ける~」等の記載がある場合は要注意。これは取引先に対して債権譲渡を通知する、つまり3社間ファクタリングに該当します。
「2社間だと聞いていたのに、契約書は3社間だった!」
ファクタリング業者の視点に立つと、2社間と3社間では回収リスクがまるで異なります。
有体に言ってしまうと、同じ手数料で取引できるなら、「3社間の方が圧倒的に業者側に有利」です。
そのため、2社間をにおわせつつ、実際には3社間取引を行う契約書を用意する、悪徳業者の被害例も。こうした業者とトラブルにならないためにも、取引形態の項目はしっかりとチェックしましょう。
チェック項目6:2重契約の排除
ファクタリング業者は「債権の2重譲渡」を、最も強く警戒します。そのため、「2重譲渡を防ぐ」ために、顧客側に制限を課すのが普通です。
〇 類似契約を行う場合は、業者側の承諾を得ること
〇 取引の利益が妨げられる契約を禁止する
などの趣旨が盛り込まれます。
債権の2重譲渡は、昔からあるトラブルです。資金繰りに窮するあまり、同じ債権を2つの取引相手に売り渡してしまうわけですね。
普通に取引をするならあまり意識する必要はありませんが、不明点は必ず業者に尋ねましょう。なお、この項目は見積もりにはほとんど記載されず、契約段階になってはじめて反映される部分です。
チェック項目7:承諾通知の方法
業者が取引先に対して、債権譲渡の通知を行うことを記載しています。
債権譲渡を有効にするためには法律上、「債務者の承諾」または「確定日付のある譲渡通知」が必要です。
そのため、業者は顧客に対して、
「取引先に債権の通知を行いますよ~」
と契約書の項目に記載します。
ただし、この契約内容からは具体的に「どのような方法で通知するのか?」を読み取ることができません。
譲渡通知は自社が直接関わらないので、ここでトラブルが起きては大変です。
〇 どんな書面を送るのか?
〇 取引に対する説明はしてくれるのか?
場合によっては、通知書面の雛形を見せてもらっても良いでしょう。顧客側の視点では「債務者=取引先」。気を使ってあまりある部分です。
なお、当然ですがこの項目は2社間ファクタリングでは問題になりません。3者間ファクタリングを行う時に注意しましょう。
チェック項目8:償還請求権の有無
償還請求権は、いわゆる「リコース」のことを意味しています。
(償還請求権については過去のコラムにて解説しております。興味のある方は閲覧してみて下さい)
ここでリコースを簡単に説明すると、
「取引した債権が回収できない時は、お金を返して下さいね」
と業者側が顧客に対して、一部の返還を要求できる権利です。
なお、2社間ファクタリングは基本的に「ノンリコース」が前提であり、償還請求権の設定は行いません。
ところで、償還請求権を設定することで「手数料を値引き」を行う業者も存在します。ただし、実際にどれくらい値引きされるかは業者によって異なるため、
〇 償還請求権の具体的な内容(全部または一部など)
〇 値引きによる見積もりの違い(どれくらい減額されるのか?)
契約書にサインする前に、見積もりの数値差を比べることが大切です。
チェック項目9:その他注意点
2社間ファクタリングを得意とする業者は大半が「中小企業」ということもあり、悪徳業者が紛れ込みやすい環境です。
そのため、契約書や見積もりに不審な点がないかは欠かさずチェックすべきであり、見落としてしまうと大変なことになります。
〇 ファクタリングを偽装した担保融資ではないか?
〇 担保や保証人を要求していないか?
〇 消費税や使途不明金などの不審な見積もり項目はないか?
安心して取引を行うためにも、最低限このあたりは確認しておきたい部分です。
ビジネスに契約書の確認は欠かせませんが、ファクタリングにおいても同様です。見積もりや商談を通じて契約の内容について話し合い、契約書に正しく反映されているかをしっかりとチェックしましょう。
資金調達はコストや納期が大切ですが、業者との信頼関係なくして成立するものではありません。契約書にサインしたのちは、お互いに誠実に履行することが重要です。