資金循環統計からわかることは日本の預貯金への依存度の高さ
日本銀行の調査統計局では、四半期ごとに「資金循環統計」を作成し、3か月後に速報・6か月に確報を公表しています。
資産循環統計とは、国内の金融資産・負債の推移について、企業・家計・政府など経済主体ごと金融商品ごとに包括的な記録を行った統計です。
この資産循環統計から確認できることは、日本人の資産保有は預貯金で行う割合が高いことです。
しかし預貯金は安心・安全と考えられるその反面、実は大きなリスクを抱えていますので、あらためて資産循環の結果からどのようなリスクがあるのか確認しておきましょう。
資産循環統計とは
日本銀行が公表している資金循環統計は、
- 金融取引表(金融取引によって生じた期中の資産・負債の増減額)
- 金融資産・負債残高表(取引の結果、期末時点で保有される資産・負債の残高)
- 調整表(金融資産・負債残高表と金融取引表の間の乖離額)
の3つの表で構成されます。
この統計を利用することで、それぞれの経済主体の四半期末時点の金融資産残高などが把握できます。
たとえば「個人金融資産 1,800兆円」といった言葉を耳にすることもあるでしょうが、これは資金循環統計の金融資産・負債残高表の家計部門の資産残高によるものです。
日本人は金融資産を預貯金で保有する傾向が高い
日本人は金融資産のほとんどを預貯金で保有しているといえますが、実際、資金循環統計からみた2020年9月末時点の個人金融資産は1,901兆円でしたが、その約54.3%にあたる1,034兆円が現金・預金でした。
たしかに預貯金は安全性の高い資産と考えられがちですが、リスクも存在するため必ずしも安心できるとは限りません。
預貯金で資産を保有するメリットとデメリット
預貯金を資産として保有するメリットは、
- 1,000万円までは元本が保証される
- 定期預金は強制的にお金を貯めやすい
- 普通預金は自由にお金を引き出しやすい
ことです。
預貯金は「預金保険制度」や「農水産業協同組合貯金保険制度」などの対象であるため、1金融機関につき普通預金と定期預金の合計1,000万円までの元本・利息は保証されます。
金融機関が経営破たんしてしまった場合でも、1,000万円までであれば元本と利息は保護される点は安全性が高いといえます。
そして定期預金は預入期間を1か月から10年の間で設定することが一般的なため、満期を迎えるまでは簡単に引き出しができず、強制的にお金が貯まりやすくなります。
反対に普通預金はいつでも預金・引き出しが可能な自由度の高さが魅力です。
しかしデメリットとして、
- 金利が低い
- インフレリスクを受けやすい
といったことが挙げられます。
ひと昔前であれば、預貯金として資産を保有していれば5~6%の金利が適用され、預けているだけで資産が増えていました。
しかし現在は定期預金に預けても金利は0.002%などかなり低く、預貯金を運用に活用できなくなっています。
そして物価が上昇すれば、預貯金に預けているお金は実質目減りすることになるでしょう。
仮に100万円預貯金に預け入れている場合、現在であれば1,000円のモノを1,000個購入できます。
しかし5~10年経った後、その商品が1,000円から1,200円に値上がりした場合、預け入れている100万円で購入できるのは約833本に減少します。
5~10年後に預貯金の金利で預け入れているお金が増えていればよいですが、今の金利ではそれも期待できません。
政府は物価の前年比上昇率2%を目標として金融政策を実施するなど動いていますが、新型コロナウイルス感染拡大による影響もあり、今後どのような変動を見せるかわからなくなっています。
将来インフレが起きれば預貯金の価値は目減りすることは避けられませんが、金利も上昇する可能性が出てくるためインフレ自体が悪いこととも言い切れません。
ただ、お金=貨幣の価値はずっと同じではないことは認識しておき、何で資産を保有するべきか先を見据えて考えることが大切です。