事業支援Lab

タグ「管理」を含む記事

労務管理で欠かせない作成する帳簿と手続に関する基礎知識を徹底解説

2022年5月30日 / 事業資金

従業員に関する職場環境など管理する仕事を「労務管理」といいますが、担当するのでれば基礎知識として押さえておきたいポイントがいくつかあります。

従業員の勤怠・福利厚生などの労働に関する管理や、メンタルヘルスやハラスメントなどの対策など、労務管理で行う業務は多岐に渡るため一定の基礎知識がなければ徹底した管理ができなくなるからです。

そこで、従業員が安心して働くための職場づくりを責務とするともいえる労務管理について、作成する帳簿や手続に関する基礎知識を徹底解説していきます。

労務管理とは?勤怠管理と人事管理と異なる部分

労務管理で行う業務は、主に従業員の労働時間・福利厚生・賃金など労働に関することです。

従業員の労働時間や給与計算などを管理することを業務としますが、人事管理に含まれる人材雇用とそれに関連する人事考課や人材配置などの管理も、会社によって労務管理担当者が行うこともあります。

一般的に人事管理・労務管理・勤怠管理で行う業務は混同されがちといえますが、簡単にそれぞれの管理内容を分けると次のように管理する範囲が狭くなります。

  • ・人事管理 人材処遇の管理
  • ・労務管理 労使関係や労働条件などの管理
  • ・勤怠管理 労働条件のうち労働時間や休日などの管理

人事管理では、採用した人材を効果的に活用するため、会社規則や処遇を定め適切な運用を行うための管理を行います。

主な管理業務として、人材の採用・人事評価・人材育成・退職などの手続が挙げられますが、処遇も含めた人事に関する業務を担当します。

労務管理では労使の雇用関係や労働条件をメインに管理を行います。

労働時間・休日・休暇・賃金・賞与の他、社会保険や雇用保険などの福利厚生関連や賃金計算・管理も労務管理に含まれます。

労働基準法や男女雇用機会均等法などの法律に基づいた職場環境の整備していくことも重要な業務として挙げられるでしょう。

勤怠管理は労務管理の1つといえる管理であり、職場によってはそれぞれ分けて管理を行うこともありますが、いずれにしても従業員の勤務状況の把握・管理をメインに行います。

従業員の労働時間や残業時間、出勤・欠勤・遅刻・早退などを管理し、年次有給休暇取得状況の管理なども業務に含まれます。

労務管理で作成しておかなければならない3つの帳簿と必要な知識

労務管理では、従業員が働く上で様々なことを管理しなければなりません。

そのため管理する上で必要な複数の帳簿を作成することになりますが、具体的には次の3つの帳簿作成と管理を行う知識が必要です。

  1. 法定三帳簿
  2. 雇用契約書
  3. 就業規則

それぞれの帳簿と内容について説明していきます。

法定三帳簿

労務管理で作成する「法定三帳簿」とは、主に次の3つの帳簿のことを意味します。

  1. 労働者名簿
  2. 賃金台帳
  3. 出勤簿

それぞれどのような帳簿か説明していきます。

労働者名簿

従業員ごとの氏名・生年月日・住所などの情報をまとめた帳簿が「労働者名簿」です。

退職・解雇・死亡日を起算日として3年間は保存することが必要になっています。

賃金台帳

従業員に対し支払う賃金の情報をまとめた帳簿が「賃金台帳」です。

それぞれの基本給・手当などの種類とその金額、賃金の計算期間や労働時間数、控除などを項目ごとに記載していきます。

最後の賃金に関して記入した日を起算日として、3年間は保存しなければならないと決まっているため、たとえ退職した従業員がいても廃棄してしまわないようにしてください。

出勤簿

従業員の出勤状況を記録した帳簿が「出勤簿」です。

タイムカードの記録や情報をもとに、始業・終業時刻・労働日数や時間を記録した書類であり、最後の出勤日を起算日として3年間は保存しておくことが必要になります。

雇用契約書

雇用契約書は、人材を雇用する側である事業者と、雇用される側である従業員が、一定の労働条件のもとで結ぶ契約を証明する書類が「雇用契約書」です。

雇用契約書を作成するのは、

  • ・新卒や中途で人材を採用したとき
  • ・契約社員を雇用したとき
  • ・契約社員の労働契約更改時期

などです。

雇用契約書には主に次の項目を記載します。

  • ・労働契約期間
  • ・就業場所
  • ・従事する業務の内容
  • ・始業・終業の時間
  • ・交代制のルール
  • ・所定労働時間を超える労働の有無
  • ・休憩時間・休日・休暇
  • ・賃金の決定・計算・支払方法・締切日・支払日
  • ・昇給に関する事項
  • ・退職に関する規定

正社員ではなく、時間給で働くパートタイム労働者の場合には、上記の項目に加え次の4つの項目も記載しておくことが必要です。

  • ・昇給の有無
  • ・退職手当の有無
  • ・賞与の有無
  • ・相談窓口の担当者の部署・役職・氏名

就業規則

従業員を常時10人以上雇用する事業者は、労働基準法の規定に基づいて「就業規制」を作成することが義務付けられています。

就業規則を作成した後は、所轄の労働基準監督署長に提出しますが、後で就業規則の内容を変更するときなども届出が必要です。

就業規則に記載する内容は主に次の2つです。

  • ・絶対的必要記載事項
  • ・相対的必要記載事項

絶対的必要記載事項は、労使間で最低限共通の認識をもっておくことが必要な項目であり、必ず明記しなければならない項目として義務付けられています。

もう一方の相対的必要記載時効については、会社独自で制度を設けるときなど記載が必要となります。

絶対的必要記載事項に含まれる項目は以下のとおりです。

  • ・始業・終業の時刻
  • ・休憩時間
  • ・休日・休暇
  • ・労働者を2組以上に分け交替で就業させるときの就業時転換に関する事項
  • ・賃金の決定・計算方法
  • ・賃金支払の方法
  • ・賃金の締切・支払の時期
  • ・昇給に関する事項
  • ・退職に関する事項

労務管理で必要になる4つの手続

従業員が安心して働き続けることができるように、次の4つの手続も労務管理の業務として行います。

  1. 社会保険・雇用保険など各種保険加入手続
  2. メンタルヘルス対策の手続
  3. ハラスメント対策の手続
  4. 異動・休職・退職手続

それぞれの手続について説明していきます。

社会保険・雇用保険など各種保険加入手続

新たに従業員を雇用したときに、「社会保険」や「雇用保険」の加入手続を行うことも労務管理の仕事です。

社会保険は年金事務所または健康保険組合で資格取得の手続が必要となり、雇用保険はハローワークで手続します。

また、提出しなければならない書類は次のとおりです。

  • ・厚生年金保険 厚生年金保険被保険者資格取得届
  • ・健康保険 健康保険被保険者資格取得届
  • ・雇用保険 雇用保険被保険者資格取得届

メンタルヘルス対策の手続

労働契約法では、従業員に対し生命・身体の安全確保に配慮する義務があることが明文化されており、事業者はその労働環境を用意する「安全配慮義務」を負っています。

さらに労働安全衛生法により、従業員の健康を守るための「安全衛生管理」も義務付けられているため、職場の安全衛生を確保する措置や従業員の健康保持増進を図る対策などを講じることが必要です。

職場環境を整備するだけでなく、従業員の健康管理も労務管理の仕事として必要ですが、安全配慮義務を守るために次の4つをポイントとして押さえておくようにしましょう。

適性労働条件措置義務

従業員が過重労働を原因として心身の健康をこわしてしまわないように、労働時間・休憩・休日・休憩場所・人員配置など労働条件は適正に保たなければなりません。

過労死や過労自殺が社会問題化していますが、適正に労働時間を管理することは最も配慮すべきことです。

たとえ従業員が多く働いて残業代を稼ぎたいと申し出たとしても、事業者側が適正な労働時間を管理していく必要があるといえます。

健康管理義務

従業員に健康診断を受けてもらうことやメンタルヘルス対策を行うことなど、労働者の心身の健康を図るための状態把握と健康管理は欠かせません。

労働安全衛生法でも、雇用の際の健康診断と年に1度の定期健康診断や、深夜働く方や有害な環境で働く方に対する特定業務従事者健診を義務付けています。

また、健康診断を受診してもらえばよいだけでなく、その結果によってたとえば就業時間や就業場所の見直しといった適正な処置をとることも必要です。

適性労働義務

従業員の持病や過去の病歴、体調状態など考慮した上で業務配置することも必要です。

心身の不調などうったえたときや、持病により今の業務が厳しいという申し出があったのにもかかわらず、適切な対応を取らなければ安全配慮義務違反になる場合もあります。

業務配分の際には、今は健康でも身体不良を起こしてしまうリスクも考え、万一のときに適切な対応ができる体制を整えておくことも必要です。

看護・治療義務

従業員が業務によりケガを負ったときや病気になったとき、適切な看護や治療を行うことも必要です。

また、発症した可能性があるのにもかかわらず対応しない場合も問題となるため、従業員とコミュニケーションを図りながら異変があったときには医療機関を受診をしてもらうようにしてください

ハラスメント対策の手続

「パワーハラスメント対策」は2020年4月から法制化されており、労務管理業務として必要な措置を行うことが義務化されています。

職場でハラスメントが起きてしまうと、秩序が乱れ従業員の士気は低下するだけでなく、法令違反や安全配慮義務違反で従業員から損害賠償請求される可能性もあります。

また、ハラスメントがあった事実を公表しなければならなくなると、問題のある企業といった認識が広がり、社会的信用も低下してしまうでしょう。

ハラスメントの内容を従業員に周知し、ハラスメント行為に該当する言動はあってはならない方針を明確化し、管理監督者を含むすべての労働者に啓発することが必要になります。

具体的には、就業規則や社内報などにハラスメントに該当する言動を列挙し、該当する言動を禁止することを明確にしておくなどです。

ハラスメントの内容の周知・啓発は、形式的なものではなく労働者の人権意識を高めるために本気で取り組んでいかなければなりません。

そしてハラスメント相談を受けつける窓口を設けるときには、担当者に相談内容や状況に応じた対応が求められることとなり、ハラスメントとして判断するに至るか判断が難しいケースでも幅広く相談に応じ対応することが必要です。

異動・休職・退職手続

従業員の異動があったときには、住所変更に伴う住民税や社会保険料・労働保険の手続が必要です。

住所の市町村に変更があったときには、給与支払者から市町村に「給与所得者異動届出書」の提出が必要とされています。

また、事業所単位で加入扱いになる社会保険も、元の事業所で「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を、新しい事業所では「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」をそれぞれの事業所を管轄する年金事務所に提出します。

労働保険は、新しい事業所を管轄する職業安定所に「雇用保険被保険者転勤届」を提出してください。

休職手続として挙げられるのは、育児休業・傷病休職・介護休職などの手続で、保険給付申請や傷病手当金の請求なども必要になることがあります。

退職手続については、社会保険や雇用保険の資格喪失届の提出、労働者名簿更新、退職手当の支給などが挙げられます。

従業員が退職した後に渡さなければならない書類もあるため、退職した後の連絡先なども確認しておくようにしましょう。

労務管理では勤怠管理・雇用契約・入退社手続など業務は多岐に渡り存在すると理解しておくことが必要です。

まとめ

企業が所有する経営資源であるヒト・モノ・カネのうち、労務管理は「ヒト」に関する管理を行う仕事です。

事業活動を広げ成長していくためには、人材の量や質を上げていくことが必要ですが、雇用している人材が増えればより管理は難しくなってしまいます。

いくつも事業所などを抱えており、転勤や人事異動などが発生する企業であればより困難となり、多く人を雇用する企業なら退職する人も出てくるためやはり適切な管理が必要になります。

いずれにしても労務管理では、雇用した人たちが安心して働くことのできる職場環境を整備することや、福利厚生など適切な状態で維持できる環境を整えることが必要です。

労務管理の仕事は表で活躍できる業務とはいえませんが、裏方で従業員をしっかり支えていく大切な役割を担います。

労務管理担当者に業務を行う上で必要になる基礎的な知識を身につけてもらうことは、事業者にとっても大変重要なことといえるでしょう。

タグ: , ,

労務管理の基本業務とは?適切に行うために重要な3つのポイント

2022年3月14日 / 資金繰り

労務管理とは、従業員の給与・勤怠・福利厚生などに関して行う管理全般であり、人を雇用する上では欠かせない業務です。

「働き方改革」が推進されていることで、非常に労務管理の役割も重要視されるようになりましたが、その基本業務と適切に行うためのポイントについて徹底解説していきます。

「労務管理」と「人事管理」の違い

会社経営などで人を雇用する際に必要となる「労務管理」は、人事管理と混同されがちといえますが、実際には異なった業務です。

人事管理で行うことは「従業員」に関しての全般的な業務ですが、労務管理従業員の「労働」に関しての業務を行います。

さらに人事管理従業員「個人」に対しての業務ですが、労務管理では「組織」に関する業務という面でも違いがあるといえるでしょう。

【労務管理で行う基本的な業務】

  • 給与計算
  • 勤怠管理
  • 社会保険・雇用保険手続き
  • 福利厚生業務
  • 安全衛生管理

【人事管理で行う基本的な業務】

  • 採用業務
  • 入退社手続
  • 人事考課
  • 人員配置
  • 教育・育成

人事管理では人材の育成や昇格など、従業員「個人」を対象として業務を行うのに対し、労務管理では労働条件や就業規則など組織「全体」の中で従業員を管理していきます。

労務管理の基本的な「目的」は生産性向上とリスクヘッジ

労務管理の基本的な「目的」は、生産性を向上させることとリスクを回避することです。

生産性を向上させるためには、雇用した人材の労働環境を整備し、安心して働ける場所づくりが欠かせません。

さらに働いた分に見合う賃金を支給するなど、給与管理も欠かすことができないといえるでしょう。

人材を有効活用するためにも、働く場所や給与に満足して働いてもらう環境づくりが大切です。

また、実際に働きだした後で約束と違った仕事や勤務時間だったなどといった労使間のトラブルなどのリスクを回避することも労務管理の目的です。

さらに仕事をしてもらうためには、社内のルールに従ってもらう必要があるため、就業規則や法令遵守を徹底させるためにも適切な管理が求められます。

他にも残業代未払いやハラスメント防止など、様々な目的で労務管理を徹底して行うことが必要といえます。

12の労務管理の基本業務

労務管理として行う基本業務は年間スケジュールに従い進めていくことになりますが、主に次の12の業務が挙げられます。

  1. 雇用契約書の作成
  2. 労働契約の締結
  3. 労働条件を変更する場合の管理
  4. 法定三帳簿の作成と保存
  5. 就業規則の作成・変更
  6. 社会保険・雇用保険の加入手続
  7. 勤怠管理
  8. 給与・賞与の計算
  9. 従業員の健康管理
  10. 職場環境の改善
  11. 退職手続
  12. 休職・異動の手続

それぞれどのような基本業務があるのか、その内容を説明していきます。

雇用契約書の作成

新入社員や中途採用の従業員が入社したときや、契約社員やアルバイトなどを雇用したときには「雇用契約書」の作成が必要です。

新入社員は4月に雇用することが多いですが、終身雇用制度ではなくなりつつあることで転職市場の活況がみられます。

そのため積極的に中途採用を進めている企業などは、年間スケジュールに関係なく社員や従業員が入社することとなり、その都度「雇用契約書」を作成することとなるでしょう。

「雇用契約書」には、使用者である企業と雇用される社員(従業員)が、労働条件について合意した内容を記載します。

労働条件は原則、労働基準法により労働契約締結時に書面で明示することが必要とされていますので、必ず作成してください。

労働契約の締結

使用者である企業と雇用される従業員が雇用関係を結ぶ契約「労働契約」といいます。

「労働契約」を結ぶときには、労働契約法で定められている次の5つの原則に従うことが必要です。

  • ①対等な立場での合意
  • ②均衡への考慮
  • ③仕事と生活の調和への考慮
  • ④信義に従い誠実な行動
  • ⑤権利の乱用はしない

さらに採用の際には雇用する従業員に対し、就業時間や賃金などどのような条件で働いてもらうか記載した「労働条件通知書」を交付しなければなりません。

があります。これは、就業時間や賃金など、契約に必要な情報を記した書類です。具体的な記載事項については労働基準法で規定されているため確認しておくとよいでしょう。

労働条件を変更する場合の管理

当初、労使間で決めていた労働条件を変更するときには、労働契約を締結するときと同じように企業と従業員との間で合意することが必要です。

昇給など従業員にとって不利益になると考えにくい条件の変更については暗黙で合意を得たと見なすことができる場合もありますが、反対に給与減額など従業員の不利益につながる変更のときには本人の合意が必ず必要となります。

なお、たとえ従業員がから合意を得ていたとしても、労働基準法に反する労働条件の変更や適用はできないため注意してください。

法定三帳簿の作成と保存

企業に作成と保存が義務付けられている「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3つの帳簿「法定三帳簿」といいます。

この3つの作成と保存については、法令で記載項目と保存期間の定めがあるため、こちらも確認しておくようにしてください。

就業規則の作成・変更

企業が常時10人以上の従業員を使用するときには、労働基準法で「就業規則」の作成・届出が義務づけられています。

そのため「就業規則」の作成義務がある企業は必ず作成し、労働基準監督署に届出を行っておくようにしましょう。

また、就業規則を変更するときにも届出が必要になります。特に法改正が多い4月などは、就業規則の内容が適切なものとなっているか、業務実態に即した内容となっているか確認しておくようにしてください。

就業規則に記載しなければならない内容には、

  • ・絶対的必要記載事項
  • ・相対的必要記載事項

の2つがあります。

絶対的必要記載事項は必ず記載が必要ですが、相対的必要記載事項は会社で定めのある事項を記載することになるため、いずれにしても記載漏れがないように確認しておいてください。

就業規則を変更するとき、その内容が従業員の不利益となる場合には、従業員から同意を得ることも必要です。

社会保険・雇用保険の加入手続

「社会保険」は、健康保険・国民年金など従業員が生活する上で起きるいろいろなリスクに備えて加入するための公的な保険です。

「労働保険」は、労災保険や雇用保険など労働に関する公的な保険であり、いずれも従業員を雇用するときだけでなく、退職するときや育休取得の際などにも申請・変更手続が必要となります。

パート雇用している従業員でも、正社員の4分の3以上の時間働いている方など一定要件を満たす場合には「社会保険」の加入対象となるため注意しましょう。

る従業員は、「正社員の4分の3以上の時間勤務している」などの要件を満たした従業員が社会保険は所轄の年金事務所・企業が加入している健康保険組合で手続を行い、雇用保険は所轄のハローワークで資格取得手続が必要です。

勤怠管理

従業員の日々の勤務実態を管理すること「勤怠管理」といいます。

  • ・始業・終業時刻
  • ・時間外労働時間数
  • ・深夜労働時間数
  • ・休日労働時間数
  • ・年次有給休暇付与・使用日数
  • ・遅刻・早退・欠勤

などの記録を業務として行い、データは適切な管理が必要です。

勤怠管理を行う台帳を作成し、賃金支払いの際に必要な事項を都度記入していくことが労働基準法で義務付けられています。

給与・賞与の計算

給与は支給額から控除額を差し引いて算出しますが、基本給と残業代で構成されます。

勤怠管理情報から正確に求めることが必要であり、支払いの記録は台帳として保管することが義務付けられています。

控除額は社会保険や所得税など保険料や税金類が対象です。控除分は税務署や年金事務所に納めることも忘れないようにしてください。

賞与は就業規則や賞与規定に基づいた計算が必要です。

従業員の健康管理

「安全衛生管理」は労務管理業務の1つですが、労働安全衛生法で事業場の安全衛生確保に向けた措置や、従業員の健康保持増進を図る健康管理を講じることが義務付けられています。

年1度定期健康診断やメンタルヘルスチェックを実施することなどが必要であり、常時50人以上従業員を雇用しているときには労働基準監督署に定期健康診断結果を届出なければなりません。

また、産業医の選任や衛生管理者の選任など、安全衛生管理体制を整備することも義務づけられています。

労災認定や損害賠償責任など労使間でトラブルになることもあるため、それらのリスクを回避するためにもしっかりと従業員の健康維持に向けた取り組みを行うようにしてください。

職場環境の改善

先にも述べたとおり、事業場となる職場環境を改善させることは重要ですが、主に次のような取り組みが必要です。

  • ・長時間労働を抑制する
  • ・安全と健康を確保する
  • ・仕事と生活を両立させる
  • ・ハラスメントを防止する
  • ・高年齢者・障がい者・女性などの活躍を推進させる

特にハラスメントの防止については、労働施策総合推進法の改正で2020年4月から「パワーハラスメント対策」が法制化されています。

企業はハラスメントなどがあった場合には、必要な措置を講じることが義務化されているため注意してください。

必要な措置を講じなければ是正指導の対象となることを念頭に置き、十分な対応を検討しておきましょう。

退職手続

従業員が退職するときには、社会保険・雇用保険の脱退手続の他、労働者名簿の更新や退職手当支給なども必要です。

  • 社会保険は退職日から5日以内に年金事務所および健康保険組合へ
  • 雇用保険は退職日翌日から10日以内にハローワークへ

それぞれ資格喪失届を提出することが必要です。

ハローワークが「離職票」を発行した後は、退職した従業員に渡すことが必要となります。

資格喪失手続が遅れてしまえば離職票の発行も遅れることになるため、転職を予定している従業員などが手続できず困らないよう、早めに行うようにしてください。

また、就業規則で退職手当の規定をしているときには、退職した従業員に退職金を支給します。

休職・異動の手続

従業員が、

  • ・育児のための育児休業
  • ・ケガや病気などを理由とする傷病休職
  • ・家族の介護を理由とする介護休職

などの休職手続を行う場合には、社会保険料・雇用保険料の変更手続の他、給付金や手当金などの申請・請求手続も必要です。

従業員が転居を伴う転勤をするときには住所変更が必要であり、給与支給額が大幅に変わるときにも社会保険料の報酬月額変更届の提出が必要となりますので、忘れず手続してください。

労務管理の基本業務を適切に行うための3つのポイント

労務管理の基本業務を実際にどのように行っていくべきか迷うこともあるでしょう。

「働き方改革」の施行により、これまでの事業場や働き方を見直さなければならないときが来たともいえます。

職場環境を改善させることで従業員が働きやすさを感じることができ、モチベーション向上や職場活性化へとつながり、結果として生産性向上や業務効率化につながると考えられます。

実際に仕事をしている従業員が快適な職場環境だと感じなければ意味がないため、働く者の視点や意見を取り入れるために、面談やアンケートを実施し現場の声にも耳を傾けるようにしましょう。

適切に労務管理の基本業務を行う上で、次のことをポイントとして押さえておくことをおススメします。

  1. コンプライアンス遵守に向け最新情報は常に入手する
  2. 専門家に依頼する
  3. システム導入も検討する

それぞれのポイントについて説明していきます。

コンプライアンス遵守に向け最新情報は常に入手する

労務管理のほとんどが法令と密接な関連がある業務のため、手続に不備や漏れなどあれば法令違反につながってしまうリスクがあります。

そこで、ミスなく業務を行うための細心の注意を払い、関係する法令が改正されたとき新たな制度が導入されたときに対応できるように、最新の情報を常に入手するようにしてください。

専門家に依頼する

もしも労務管理を自社だけで行うことが難しいと感じたときには、専門家に相談し助言やサポートしてもらうことも方法の1つです。

自力で解決しようとしても、労務管理の対象は幅広いため、適切な内容で管理ができなくなる可能性があります。

解決できない部分は専門家に頼り、自社で対応できる部分は自社で行うなど、臨機応変な労務管理体制を整備することも必要です。

システム導入も検討する

労務管理では様々な情報をそれぞれの項目に分けて記録・保管することが必要です。

そのため人事管理システムや勤怠管理システム、給与計算システムなど便利なITツールもうまく活用することにより、業務負担を大幅に軽減させることができます。

必要な条件を入力すれば自動的に算出されるため、職場環境改善につなげるためにも便利なツールは有効活用するようにしましょう。

タグ: , ,

労務管理は難しい?主な仕事内容と担当に向いている人の特徴

2022年2月7日 / 資金繰り

人事の仕事といえば「労務管理」ですが、1つの業務だけではなく幅広い職種が含まれてるため、難しいといわれています。

労務管理を任せるにはその難しい業務を担当してもらうためにも、保有する能力や適性などの見極めが重要です。

そこで、事務の中でも難しいといわれている労務管理の主な仕事内容と、担当に向いている人の特徴などについて解説していきます。

人事・労務の最近の動向

2019年4月、高度プロフェッショナル制度が施行され、多様な働き方を支援するための「働き方改革」が進められるようになりました。

様々な業界や業種、企業などでも「働き方改革」に対する取り組みを進めていく動きが活発化していますが、労務管理においても意識を高めることが必要です。

たとえば長時間労働を見直しすることや、新型コロナウイルス感染拡大の影響によるテレワークの推進産休・育休制度時短勤務等関連制度を充実させるといった対応が求められています。

近年では障がいを抱える方や女性の積極雇用に退職者再雇用などの対応も求められていますが、いずれにしても人材育成や組織づくり重視しつつ、経営戦略を理解した現場の課題を抽出・解決が必要とされる傾向にあるといえます。

どちらも難しい?「労務」と「人事」の違い

そもそも労務管理は「人事」の仕事の1つといえますが、厳密には「人事」と「労務」は同じではありません。

ただ、規模の大きな企業でなければ、人事労務担当者は同じ方が担当することが多いといえるでしょう。

人事と労務の特徴と違いは次のとおりです。

  • ・人事…人材の採用・育成・評価・異動・昇進・転勤などに関連する業務を主に担当し、企業の評価が高まるように慎重に人を選ぶ業務を担当します。
  • ・労務…労働環境・福利厚生管理などが主な業務で、従業員が働きやすい環境を作るための業務を担当します。

人事は人材の雇用や育成に関する仕事がメインとなり、採用活動・社内研修・配属先決定など社員確保・育成・異動などが主な業務です。

人材の適性を見極め不平等にならない采配を行いつつ、組織を活性化させていく配置などを検討します。

これに対し労務管理では、経理が担当する業務に近い内容が多く、給与計算・社会保険料手続なども担当することになります。入退社手続や労務トラブルなどに対応することもありますが、主にデータを取り扱う仕事が多いといえるでしょう。

人事も労務も従業員の人生に関わる職務であり責任が重大な難しい仕事といえるため、担当者の人選は十分な見極めは重要といえるでしょう。

労務管理で必要な7つの業務

労務管理では、社会保険や雇用保険などの手続以外にも、労務に関連する複雑なトラブルの相談を受けることや解決への取り組みなども担当します。

具体的には次の7つの業務を担当することとなるでしょう。

  • ・入社・退職手続
  • ・福利厚生業務
  • ・勤怠管理
  • ・給与計算
  • ・社会保険手続
  • ・安全衛生管理
  • ・労務トラブル相談

それぞれどのような業務か説明します。

入社・退職手続

従業員が入社するときだけでなく、退社するときにも雇用保険や社会保険など様々な手続が必要になります。

また、会社ごとに独自の福利厚生を導入しているケースでは、手続の量や幅は広がることとなるでしょう。

労務管理では、従業員ごとの保険適用などを行い、働く環境を整備していくことが必要です。

福利厚生業務

福利厚生を充実させることで、従業員の満足度や仕事に対するモチベーションを高めることができます。

ただ、福利厚生を充実させるほど労務管理の仕事も増えていくといえますが、たとえば社宅・家賃補助・残業食事代などの支給については給与計算の際に手続するなどです。

外部の福利厚生サービスを利用するときにも、従業員の要望などヒアリングし、自社に適した制度か検討するといった作業も必要になります。

勤怠管理

勤怠管理とは、従業員の出欠確認・遅刻早退・残業時間の管理・有給取得の管理などです。

すべて従業員の給与に関係するため、正確に把握し管理していくことが必要になります。

出欠確認や残業時間の計算などの方法は会社により異なるでしょうが、就業規則や賃金規定に沿った形式で行うことが必要です。

給与計算

従業員に支払う給与を計算することも労務管理で重要な業務ですが、ミスがあれば会社に対する信用にかかわることになります。

給与計算ソフトなどを使用することが多いでしょうが、そもそも入力ミスがあれば間違った賃金を支払うことになってしまうため、正確に作業することが必要です。

さらに扶養家族がいる従業員の場合、その人数によって源泉徴収税金額も変わるため、変更があったときには忘れず伝えてもらうことも必要になります。

他にも寡婦(夫)であるか、障がいの有無などでも税額は変わるため、毎年社員の状況を確認し給与計算に反映させるようにしましょう。

1年間で支払った給与と賞与において、徴収した源泉徴収税額と実際の所得税額を調整し、正しい税額を納めるための年末調整も労務管理で行う仕事の1つです。

年末調整は難しいと感じる方も多いため、必要であれば顧問の税理士に依頼するといった対応も必要となるでしょう。

社会保険手続

労務管理で行う社会保険手続とは、健康保険・年金・雇用保険・労災保険などの加入・脱退手続です。

従業員のうち40歳以上の方は介護保険への加入も必要となりますが、手続が遅れれば手元に健康保険証が届くまで時間がかかってしまいます。

退職した後で従業員が失業保険の手続を進めることができなくなるなど様々な問題が発生してしまうため、正確に漏れや抜けのないよう行うことが大切です。

なお、健康保険料と厚生年金保険料は定期的に見直しされているため、計算や提出書類の作成なども必要になります。

安全衛生管理

会社で働く従業員が健康な状態で働くことのできる環境を整備することや、対策を検討し実践することも労務管理の仕事です。

労働災害が起きてしまえば、被害を受けた従業員から損害賠償請求される可能性もあります。

そのような状況を作らないためにも、労災を防ぐ仕組みづくりや万一発生してしまったときの対応、健康診断の実施やストレスチェックなども定期的に実施することが必要です。

なお、従業員に年1度の健康診断を受けてもらうことは義務化されているため、速やかにそれぞれの制度に沿った健康診断の案内と受診手続が求められます。

さらに安全で快適な職場環境を整備するには、労働安全衛生法に基づいた安全衛生管理が必要です。

健康診断の結果をもとに、医師から意見を聞いて従業員に通知することや、必要に応じて保険指導を行うなど従業員の健康を守る業務も行うようにします。

産業医と面談可能となる体制の整備なども、労務管理で行う業務と認識しておくべきでしょう。

労務トラブル相談

労働基準法に基づき労働時間を厳守していた場合でも、部下の立場である授業員が上司からサービス残業を強要されていることや、恫喝や暴力といったハラスメントなどが起きていないとも限りません。

上司の命令に逆うことができず、ストレスを溜めれば生命にかかわる事故が起きる可能性もあるため、労務管理では労務トラブルの相談窓口としての役割も担当します。

相談された内容次第で、上司にヒアリングを実施し他の部署への異動や、就業規則に基づく罰則を与えるといったことも必要です。

労務管理を担当する上であるとよい資格

労務管理は難しい仕事のため、を誰に任せるべきか担当者を選ぶときには保有している資格にも注目しましょう。

保有していると労務管理を任せやすい人材と判断しやすいのは主に次の資格です。

  • ・労務管理士
  • ・社会保険労務士

それぞれどのような資格か説明します。

労務管理士

労務管理士とは、企業の労務管理の中でも従業員に関する仕事を任される専門家であり、労働基準法や労務管理に関する専門的知識を習得して適正な職場環境を構築することのできる人材育成を目的とした民間資格です。

労務管理士の資格を保有している人材であれば、従業員の採用から退職までの一連の労務に関する業務を把握しているため、安心して業務を任せることができます。

人手不足で労務管理を担当する人材を育成することが難しい場合でも、労務管理士を保有している方であればスムーズに業務を進めることができるでしょう。

社会保険労務士

社会保険労務士とは、社会保険や労働関連の法律の専門家であり、人事や労務管理を行います。

社会保険労務士法に基づく国家資格であるため、企業が成長するために必要な「カネ・モノ・ヒト」のうち、「ヒト」に関する専門家といえます。

会社に代わり労働関連法令・社会保障法令に基づいた書類を作成することや、労務管理・社会保険に関する相談にも対応することのできる職種なので、社会保険労務士資格を保有する人材であればより安心して労務管理を任せることができます。

難しい労務管理を行う担当者に求められる4つのこと

労務管理を任せる人材選びでは、保有する資格だけでなく適性も注目したほうがよいでしょう。

主に労務管理担当者に求められることは次の4つです。

  • ・地道に正確に作業できること
  • ・守秘義務とセキュリティ意識の高さ
  • ・コミュニケーション能力の高さ
  • ・法律への学習意欲の高さ

この4つをクリアできる人材であれば、難しい労務管理もしっかり担当してもらえるといえますが、それぞれどのような内容か説明していきます。

地道に正確に作業できること

労務管理で担当する業務は、いずれも地道で正確に行う作業ばかりです。

たとえば給与計算などは働いた時間や適用される控除などを従業員ごとに把握する必要があり、給与計算ソフトに入力するときにもミスなく漏れなく進めなければなりません。

少しの計算ミスや見落としなどで支給する賃金が変わるため、間違いがあれば従業員からの信頼は失われてしまい、会社の評価を落とすことになります。

たとえ単純な作業であっても、地道にコツコツと、正確に行うことができる人材でなければ労務管理は任せることができないといえるでしょう。

守秘義務とセキュリティ意識の高さ

労務管理で扱う情報は従業員などの個人情報がメインとなります。

従業員の給与額だけでなく、家族構成や障がいの有無などプライベートな情報なども多く扱うことになることを理解し、本人以外に漏らさないことが必要です。

仮に情報漏洩が起きれば、従業員同士に関係が悪化してしまったり精神的な苦痛を与えたりといった可能性もあります。

さらに個人情報の扱いがずさんであることを理由に、従業員から訴えられてしまうリスクも高くなるでしょう。

労務管理を担当する方には、守秘義務を守る口のかたさと、高い情報セキュリティ意識が必要です。

コミュニケーション能力の高さ

労務管理の仕事は、担当者が事務作業を黙々とこなすイメージがあるかもしれませんが、実際には他部署と連携することも求められます。

事務作業以外にも、たとえば労務トラブル相談窓口としての役割も担うため、コミュニケーション能力が求められるといえるでしょう。

状況を整理し、わかりやすくまとめて責任の所在を明確にしていく能力が必要です。

発生しているトラブルの内容を審査しつつ、誰に対し注意をするべきか、処分を与えることが必要なのかなど決めなければなりません。

臨機応変に状況に応じた対応ができる判断能力などもなければ務まらないといえるでしょう。

そしてトラブルに見舞われた従業員の相談相手として、思いやりを持ち相手の気持ちを汲み取りながら、トラブル解決に向けて動くことのできる行動力も必要になります。

法律への学習意欲の高さ

労務管理で行う業務は、いずれも法律に関連する仕事ばかりです。

そのため労働基準法など基本的な法律はもちろんのこと、改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)など社会情勢変化に伴う法改正を踏まえながら把握しておくべき法律の理解も求められます。

給与計算などにおいても、税金や社会保険に関連する法律について知っておかなければ、正しい手続ができません。

労務管理の業務に関連する法律は多岐に渡るため、法律について学習することが苦痛に感じない学習意欲の高い方のほうが向いている仕事といえるでしょう。

まとめ

労務管理は事務の中でも難しい仕事といわれており、誰でも担当者として任せることはできません。

そのため適した人材を厳選することが必要ですが、何を重視するべきか把握しておき、経営戦略を理解した問題解決につながる職場環境整備に貢献できる人材選びを行うようにしましょう。

タグ: , ,

労務管理はなぜ必要?その重要性と業務改善に向けた対策を解説

2022年1月28日 / 事業資金

従業員の労働条件や労働環境整備など、いずれも「労務管理」で行う業務ですが、生産性を高めるためにも欠かせない必要なことです。

そこで、具体的に労務管理ではどのような業務を行うことになるのか、業務改善に向けて取り組むときにどのような方法を実践していくべきなのか解説します。

労務管理とは

「労務管理」で行う業務は多岐に渡りますが、従業員の労働条件や賃金、福利厚生など労働に関することを管理する業務です。

従業員が高い水準でパフォーマンスを発揮するために必要なことといえ、

  • ・効率的な管理で生産性を向上させること
  • ・コンプライアンスを順守しリスクを回避すること

といった2つの「役割」を担います。

労務管理で行う6つの業務

労務管理で行う具体的な「業務」とは、主に次の6つです。

  • ・就業規則の作成管理
  • ・労働条件と契約の管理
  • ・勤怠・給与の管理
  • ・福利厚生の管理
  • ・従業員の健康管理
  • ・業務改善に対する管理

それぞれどのような業務内容なのか説明します。

就業規則の作成管理

「就業規則」とは、労働者の給与や労働時間などの労働条件、労働者が守らなければならない職場での規律やルールなどをまとめた規則です。

労働基準法で、パート・アルバイトを含め常時10人以上の従業員を使用するとき、「就業規則」を定め届け出ることが必要となっています。

労働条件と契約の管理

従業員の雇用・交付・昇進・転勤などのタイミングで、労働条件に伴った諸手続が必要になることがあります。

給与の金額が変わったときには給与計算ソフトへの入力も変更することが必要であり、従業員を雇用したときには労働条件通知書を発行するといった契約業務も必要です。

勤怠・給与の管理

従業員の出退勤時間・遅刻欠席の有無・休暇取得など、正確に整理し管理することが必要です。

時間外労働の管理

時間外労働に対して「割増賃金」が発生しますが、通常の賃金の2割5分以上が必要です。

休日労働割増賃金は3割5分以上深夜業2割5分以上など、働く時間の長さや時間帯により「割増率」を組み合わせ正しい賃金を算出できるように管理しましょう。

年次有給休暇の管理

2019年4月1日からは、10日以上の年次有給休暇が付与される従業員に対し、毎年5日間年次有給休暇を取得させなければならない義務づけられています。

休憩時間の管理

「休憩時間」は、使用者の指揮命令下を離れ従業員が自由に行動できる時間です。

労働時間6時間を超えるときの休憩時間は45分以上、8時間を超えるなら1時間以上休憩時間を与えることが必要とされています。

給与の管理

「給与」を計算するときには、従業員それぞれの雇用契約や労働条件を踏まえ、勤怠状況や割増賃金などすべて確認することが必要です。

社会保険料の管理

「社会保険料」は従業員すべて一律で算出できるわけではなく、賃金に変更があれば新しい保険料額を適用する月額変更届を提出することも必要であり、年に一度は算定基礎届などを提出するなど重要性の高い業務といえます。

福利厚生の管理

福利厚生には、

  1. 法律で定められている法定福利…社会保険加入の手続、年金事務所への届出など含む
  2. 社内で定められている法定外福利…社宅の用意・育児支援・特別休暇など

の2種類があり、どちらも適切な管理が必要です。

従業員の健康管理

従業員が安心し、安全に働くためには、健康診断やストレスチェックなどを実施するための管理も重要性が高い業務といえます。

健康診断の実施

労働安全衛生法では、従業員に「健康診断」を受けさせることが必要とされています。

定期健康診断は1年1回実施します。

雇用したときや特定業務に就いている方を対象とした健康診断など、適切に健康診断を受けることができる管理運用が必要です。

ストレスチェックの実施

職場での業務や環境が従業員に強い不安やストレスを与え続けたとき、精神的に不調をきたす方は少なくありません。

そこで、2015年12月から従業員50人以上の企業では、「ストレスチェック」を行うことが義務化されています。

ストレスチェック実施や結果を分析することも労働管理の1つとして適切に行いましょう。

業務改善に対する管理

昨今ではコンプライアンス意識が高まったことにより、「ハラスメント対策」や「長時間労働是正」など、業務改善に対する管理も重要性を増しています。

労務管理で生産性を高めるときに必要な3つのポイント

労務管理を適切に行い、生産性を高めることを目指すのなら、次の3つのポイントを押さえておくことが必要です。

  • ・労働環境を作るために必要な法律を理解しておく
  • ・情報管理は徹底して行う
  • ・改善意識を高める

それぞれのポイントについて説明していきます。

労働環境を作るために必要な法律を理解しておく

労務管理では、労働基準法や労働組合法など関連する法律の理解が必要です。

法改正があった場合には、その内容や情報を収集し、迅速に対応できるようにしておきましょう。

情報管理は徹底して行う

労務管理では、従業員の個人情報や社内規定など、外部に漏らしてはいけない情報を扱うことが多いといえます。

最近では現場のIT化も進み、紙媒体ではなく情報機器など使った管理を行う企業も多いため、セキュリティ面も強化させておくことが必要です。

改善意識を高める

ビジネスの現場は変化の激しいため、管理を正確に行うときには、バックオフィスによりサポートを受けることは必要です。

効率的な業務で生産性を高めることができるように、今問題とされている部分を洗い出し、時代に合った労務管理を進めていける改善意識向上が必要といえます。

労務管理で業務を改善させるときに実践したい2つの方法

労務管理で業務改善に取り組んでいこうとするのなら、次の2つの方法を実践してみることをオススメします。

  • ・専門家と連携して行う
  • ・働き方を「見える化」する

それぞれどのような方法か説明していきます。

専門家と連携して行う

効率的に労務管理を行い、生産性を向上させるためには外部の力も借りて行うことも必要になるでしょう。

特に業務が多岐に渡る場合や、人事管理と兼任して行うときには、自社のみで労力を十分に確保できないと考えられます。

さらに従業員の健康管理など、専門的知識を必要とする場面も多々あるため、労務管理に詳しい専門家に相談し協力してもらうことも方法です。

働き方を「見える化」する

労務管理が不十分であれば、従業員の働き方を明確にすることができません。

その結果、未払いの残業代が発生し、訴訟を起こされるといったリスクも高まります。

従業員それぞれの残業時間や有給取得状況、メンタルヘルスの状態など、いつでも確認できるよう働き方を「見える化」しましょう。

勤怠管理・給与計算・関係各所に対する連絡など、業務ルーティンを多岐に行う労務管理では特に業務用ソフトウェアなどを活用したほうが、業務を効率化できます。

まとめ

適切な労務管理を行うことは、従業員が働きやすいと感じる職場をつくることにつながります。

従業員全体が快適で安心して働くために欠かすことのできない業務が労務管理であり、昨今では働き方改革が進む中、その必要性はより注目されています。

適切な労務管理で職場環境を改善することができれば、生産性向上やリスク回避だけでなく、多くの利益を生むことにもつながるでしょう。

タグ: , , ,

労務管理の業務内容と改善するためのポイントを徹底解説

2021年12月24日 / 事業資金

企業経営を続ける上で労務管理は欠かすことのできない業務の1つですが、もし適切に行われていないのなら改善することが必要となります。

ただ、労務管理を改善させたいと考えていても、具体的にどのような見直しが必要かわからず、困っている方も少なくありません。

そこで、労務管理とは具体的にどのようなことを行うのか、その業務範囲と改善する方法について解説していきます。

労務管理とは

「労務管理」とは、従業員の「労働条件」を管理したり「労働環境」を整備したりする業務のことで、「人事管理」と一緒に行うことになります。

ただ、人事管理と性質や役割が異なるため、それぞれの内容を把握しておきましょう。

労務管理

「労務管理」では従業員の労働条件や福利厚生など管理するため、

  • 社会保険や福利厚生の加入手続
  • 勤怠・給与の計算

など、組織単位で事務的な手続を行います。

人事管理

「人事管理」では、人材を効率的に確保するための採用や、採用した人材が能力を最大限に発揮し働くことができるような配置・評価をすることが主な業務です。

企業によっては人事と労務の担当者をわけず、兼任することもあります。

労務管理で行う業務の種類

労務管理には次の2つの役割があります。

  1. 効率的に人材を管理し生産性を向上させること
  2. コンプライアンス遵守によりリスクを回避すること

従業員が働きやすい職場環境を整備することで、業務も効率化され生産性も向上します。

そして労働に関する法令を管理することや、福利厚生などで必要な手続を遅れることなく進めることで、法令違反により罰則を受けるリスクを回避でき企業の信用力を維持できます。

労務管理で行う業務には次の6つです。

  • ・就業規則の作成・管理
  • ・労働契約や労働条件の管理
  • ・勤怠・給与の計算・管理
  • ・福利厚生の管理
  • ・安全・衛生に対する管理
  • ・業務の見直しと改善の取り組み

それぞれ詳しく説明していきます。

就業規則の作成・管理

労務管理では、従業員にどのような規則に基づいて働いてもらうのか、そのルールを決めておくことが必要です。

労働基準法でも、常態パート・アルバイトを含む10人以上の従業員が働く場合には、「就業規則」を定め行政官庁に届出することが必要となっています。

就業のルールについて、「就業規則」を作成し、いつでも従業員がその内容を確認できるような管理が必要です。

労働契約や労働条件の管理

従業員を雇い入れるときには労働契約、昇進・転勤などのタイミングでは労働条件の変更が必要となります。

特に雇い入れの際には、労働条件通知書を発行するといった業務が必要です。

勤怠・給与の計算・管理

従業員の勤怠管理や、それに伴う給与計算なども労務管理の1つです。

従業員の出退勤の時間や遅刻欠席の有無、休暇の取得について正確に把握できるようにしておき、適切に管理を行いましょう。

そのデータをもとに、給与額の支払い計算を行います。

福利厚生の管理

法律で定められた「法定福利」、そして社内で定められた「法定外福利」、どちらも労務管理の対象となります。

「法定福利」に含まれるのは、健康保険・雇用保険・労働保険など各種社会保険の手続、年金事務所への届出などがあり、「法定外福利」では育児支援・特別休暇・社宅の用意など会社によって異なります。

安全・衛生に対する管理

従業員が安全・快適に働くことができるように、職場の安全・衛生管理や、従業員が受ける健康診断の管理も必要です。

健康診断の結果を従業員に通知し、労働基準監督署に報告するといった作業が必要となります。

なお、労働安全衛生法では従業員50人以上の企業については、1年ごとのにストレスチェックを実施することが義務づけられています。

業務の見直しと改善の取り組み

業務改善の見直しと改善の取り組みも労務管理の重要な業務です。

企業コンプライアンスに対する意識も高まっているため、パワハラやセクハラと呼ばれるハラスメントへの対策や、長時間労働を是正するといった取り組みが必要となるでしょう。

中小企業が労務管理で抱えている問題

近年、中小企業では労務管理が適切に行われておらず、整備されていない項目や想定外の事態などで問題がおきやすくなっています。

具体的に中小企業で起きている問題として挙げられるのは、

  • ・雇用形態
  • ・勤務時間

の2つが関係します。

それぞれはどのような労務管理に関する問題が起きているのか説明します。

「雇用形態」の多様化

働き方改革が進む中で、従業員には多種多様な働き方が拡大されています。

正規雇用やパートや派遣といった非正規雇用だけでなく、個人事業主やフリーランスとして働く方と業務委託契約を結ぶ形式をとる企業も増えたといえるでしょう。

そのため労務管理も従来までと違う形で行うことが必要となりましたが、多様化する雇用形態において次の2つが問題になりやすいといえます。

  • ・就業規則が整備されていない
  • ・雇用形態による待遇差

それぞれ詳しく説明します。

就業規則が整備されていない

雇用形態の多様化で問題となるのが、就業規則の整備が不足していることです。

就業規則を作成することで、雇用条件や業務についての規則を明確化できるため、会社と従業員の利益を守るためにも必要といえます。

しかし雇用形態の多様化により、それに対応できる就業規則が整備されているとはいえず、対応可能な内容になるような見直しが必要です。

雇用形態による待遇差

正規雇用と非正規雇用という2つの働き方で、待遇に差をつけることは好ましいことではありません。

経費を削減しようと、非正規雇用者に対する待遇を正規雇用者よりも低くする傾向が見られますが、2020年4月からは「同一労働同一賃金」が開始されているため、トラブルを防ぐためにも待遇差をつけない環境を整備することが必要です。

「勤務時間」の管理が徹底されていない

従業員がどのくらい働いているのか、勤務時間を適切に管理できていなければ、残業代の未払いなどを発生させることとなり、様々なトラブルへと発展しやすくなります。

週40時間を超えて従業員に働いてもらうときには、労使間で協定を結ぶことが必要であり、労使協定を締結していても残業時間は月45時間・年360時間以内までの上限を超えることはできません。

臨時的な特別な事業がある場合は、労使間で合意すればこの限りではありませんが、それでも複数月平均80時間以内・月100時間未満・年720時間以内という上限は守ることが必要です。

有給休暇の消化率を向上させる

日本では長時間働いたほうが努力をしていると認められやすい傾向があり、有給休暇を取得しにくい職場環境であることもめずらしくありません。

そのため本来なら取得できる有給休暇が多く余っているというケースも見られますが、年10日以上の年次有給休暇が付与されている従業員には、最低でも年5日は有給休暇を与えることが必要とされています。

生産性向上のためにも、適切に有給休暇を取得してもらい、仕事へのモチベーションを高めてもらうことが必要です。

労務管理を改善させるためのポイント

労務管理を適切に行うため、今の管理体制を見直し改善させることが必要ですが、そのためのポイントは次の3つです。

  1. 労働法の基本法令を理解しておくこと
  2. 徹底した情報管理を行う
  3. 労働環境の改善意識を高める

簡単なことではありませんが、人を雇用する上でいずれも重要なことです。

適切に労務管理が行われている会社であれば、働きやすい職場と従業員に感じてもらうことができ、結果的に現場の生産性を向上させ人材の定着率を高めることにもつながることになるでしょう。

タグ: , ,

かんたん資金調達チェック

資金調達できる金額が無料・匿名でスピードチェック出来ます!
[contact-form-7 id="11" title="資金調達チェック"]
無料で事業支援サービスへ登録する