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労務管理の基本業務とは?適切に行うために重要な3つのポイント

資金繰り2022/03/14

労務管理とは、従業員の給与・勤怠・福利厚生などに関して行う管理全般であり、人を雇用する上では欠かせない業務です。

「働き方改革」が推進されていることで、非常に労務管理の役割も重要視されるようになりましたが、その基本業務と適切に行うためのポイントについて徹底解説していきます。

「労務管理」と「人事管理」の違い

会社経営などで人を雇用する際に必要となる「労務管理」は、人事管理と混同されがちといえますが、実際には異なった業務です。

人事管理で行うことは「従業員」に関しての全般的な業務ですが、労務管理従業員の「労働」に関しての業務を行います。

さらに人事管理従業員「個人」に対しての業務ですが、労務管理では「組織」に関する業務という面でも違いがあるといえるでしょう。

【労務管理で行う基本的な業務】

  • 給与計算
  • 勤怠管理
  • 社会保険・雇用保険手続き
  • 福利厚生業務
  • 安全衛生管理

【人事管理で行う基本的な業務】

  • 採用業務
  • 入退社手続
  • 人事考課
  • 人員配置
  • 教育・育成

人事管理では人材の育成や昇格など、従業員「個人」を対象として業務を行うのに対し、労務管理では労働条件や就業規則など組織「全体」の中で従業員を管理していきます。

労務管理の基本的な「目的」は生産性向上とリスクヘッジ

労務管理の基本的な「目的」は、生産性を向上させることとリスクを回避することです。

生産性を向上させるためには、雇用した人材の労働環境を整備し、安心して働ける場所づくりが欠かせません。

さらに働いた分に見合う賃金を支給するなど、給与管理も欠かすことができないといえるでしょう。

人材を有効活用するためにも、働く場所や給与に満足して働いてもらう環境づくりが大切です。

また、実際に働きだした後で約束と違った仕事や勤務時間だったなどといった労使間のトラブルなどのリスクを回避することも労務管理の目的です。

さらに仕事をしてもらうためには、社内のルールに従ってもらう必要があるため、就業規則や法令遵守を徹底させるためにも適切な管理が求められます。

他にも残業代未払いやハラスメント防止など、様々な目的で労務管理を徹底して行うことが必要といえます。

12の労務管理の基本業務

労務管理として行う基本業務は年間スケジュールに従い進めていくことになりますが、主に次の12の業務が挙げられます。

  1. 雇用契約書の作成
  2. 労働契約の締結
  3. 労働条件を変更する場合の管理
  4. 法定三帳簿の作成と保存
  5. 就業規則の作成・変更
  6. 社会保険・雇用保険の加入手続
  7. 勤怠管理
  8. 給与・賞与の計算
  9. 従業員の健康管理
  10. 職場環境の改善
  11. 退職手続
  12. 休職・異動の手続

それぞれどのような基本業務があるのか、その内容を説明していきます。

雇用契約書の作成

新入社員や中途採用の従業員が入社したときや、契約社員やアルバイトなどを雇用したときには「雇用契約書」の作成が必要です。

新入社員は4月に雇用することが多いですが、終身雇用制度ではなくなりつつあることで転職市場の活況がみられます。

そのため積極的に中途採用を進めている企業などは、年間スケジュールに関係なく社員や従業員が入社することとなり、その都度「雇用契約書」を作成することとなるでしょう。

「雇用契約書」には、使用者である企業と雇用される社員(従業員)が、労働条件について合意した内容を記載します。

労働条件は原則、労働基準法により労働契約締結時に書面で明示することが必要とされていますので、必ず作成してください。

労働契約の締結

使用者である企業と雇用される従業員が雇用関係を結ぶ契約「労働契約」といいます。

「労働契約」を結ぶときには、労働契約法で定められている次の5つの原則に従うことが必要です。

  • ①対等な立場での合意
  • ②均衡への考慮
  • ③仕事と生活の調和への考慮
  • ④信義に従い誠実な行動
  • ⑤権利の乱用はしない

さらに採用の際には雇用する従業員に対し、就業時間や賃金などどのような条件で働いてもらうか記載した「労働条件通知書」を交付しなければなりません。

があります。これは、就業時間や賃金など、契約に必要な情報を記した書類です。具体的な記載事項については労働基準法で規定されているため確認しておくとよいでしょう。

労働条件を変更する場合の管理

当初、労使間で決めていた労働条件を変更するときには、労働契約を締結するときと同じように企業と従業員との間で合意することが必要です。

昇給など従業員にとって不利益になると考えにくい条件の変更については暗黙で合意を得たと見なすことができる場合もありますが、反対に給与減額など従業員の不利益につながる変更のときには本人の合意が必ず必要となります。

なお、たとえ従業員がから合意を得ていたとしても、労働基準法に反する労働条件の変更や適用はできないため注意してください。

法定三帳簿の作成と保存

企業に作成と保存が義務付けられている「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3つの帳簿「法定三帳簿」といいます。

この3つの作成と保存については、法令で記載項目と保存期間の定めがあるため、こちらも確認しておくようにしてください。

就業規則の作成・変更

企業が常時10人以上の従業員を使用するときには、労働基準法で「就業規則」の作成・届出が義務づけられています。

そのため「就業規則」の作成義務がある企業は必ず作成し、労働基準監督署に届出を行っておくようにしましょう。

また、就業規則を変更するときにも届出が必要になります。特に法改正が多い4月などは、就業規則の内容が適切なものとなっているか、業務実態に即した内容となっているか確認しておくようにしてください。

就業規則に記載しなければならない内容には、

  • ・絶対的必要記載事項
  • ・相対的必要記載事項

の2つがあります。

絶対的必要記載事項は必ず記載が必要ですが、相対的必要記載事項は会社で定めのある事項を記載することになるため、いずれにしても記載漏れがないように確認しておいてください。

就業規則を変更するとき、その内容が従業員の不利益となる場合には、従業員から同意を得ることも必要です。

社会保険・雇用保険の加入手続

「社会保険」は、健康保険・国民年金など従業員が生活する上で起きるいろいろなリスクに備えて加入するための公的な保険です。

「労働保険」は、労災保険や雇用保険など労働に関する公的な保険であり、いずれも従業員を雇用するときだけでなく、退職するときや育休取得の際などにも申請・変更手続が必要となります。

パート雇用している従業員でも、正社員の4分の3以上の時間働いている方など一定要件を満たす場合には「社会保険」の加入対象となるため注意しましょう。

る従業員は、「正社員の4分の3以上の時間勤務している」などの要件を満たした従業員が社会保険は所轄の年金事務所・企業が加入している健康保険組合で手続を行い、雇用保険は所轄のハローワークで資格取得手続が必要です。

勤怠管理

従業員の日々の勤務実態を管理すること「勤怠管理」といいます。

  • ・始業・終業時刻
  • ・時間外労働時間数
  • ・深夜労働時間数
  • ・休日労働時間数
  • ・年次有給休暇付与・使用日数
  • ・遅刻・早退・欠勤

などの記録を業務として行い、データは適切な管理が必要です。

勤怠管理を行う台帳を作成し、賃金支払いの際に必要な事項を都度記入していくことが労働基準法で義務付けられています。

給与・賞与の計算

給与は支給額から控除額を差し引いて算出しますが、基本給と残業代で構成されます。

勤怠管理情報から正確に求めることが必要であり、支払いの記録は台帳として保管することが義務付けられています。

控除額は社会保険や所得税など保険料や税金類が対象です。控除分は税務署や年金事務所に納めることも忘れないようにしてください。

賞与は就業規則や賞与規定に基づいた計算が必要です。

従業員の健康管理

「安全衛生管理」は労務管理業務の1つですが、労働安全衛生法で事業場の安全衛生確保に向けた措置や、従業員の健康保持増進を図る健康管理を講じることが義務付けられています。

年1度定期健康診断やメンタルヘルスチェックを実施することなどが必要であり、常時50人以上従業員を雇用しているときには労働基準監督署に定期健康診断結果を届出なければなりません。

また、産業医の選任や衛生管理者の選任など、安全衛生管理体制を整備することも義務づけられています。

労災認定や損害賠償責任など労使間でトラブルになることもあるため、それらのリスクを回避するためにもしっかりと従業員の健康維持に向けた取り組みを行うようにしてください。

職場環境の改善

先にも述べたとおり、事業場となる職場環境を改善させることは重要ですが、主に次のような取り組みが必要です。

  • ・長時間労働を抑制する
  • ・安全と健康を確保する
  • ・仕事と生活を両立させる
  • ・ハラスメントを防止する
  • ・高年齢者・障がい者・女性などの活躍を推進させる

特にハラスメントの防止については、労働施策総合推進法の改正で2020年4月から「パワーハラスメント対策」が法制化されています。

企業はハラスメントなどがあった場合には、必要な措置を講じることが義務化されているため注意してください。

必要な措置を講じなければ是正指導の対象となることを念頭に置き、十分な対応を検討しておきましょう。

退職手続

従業員が退職するときには、社会保険・雇用保険の脱退手続の他、労働者名簿の更新や退職手当支給なども必要です。

  • 社会保険は退職日から5日以内に年金事務所および健康保険組合へ
  • 雇用保険は退職日翌日から10日以内にハローワークへ

それぞれ資格喪失届を提出することが必要です。

ハローワークが「離職票」を発行した後は、退職した従業員に渡すことが必要となります。

資格喪失手続が遅れてしまえば離職票の発行も遅れることになるため、転職を予定している従業員などが手続できず困らないよう、早めに行うようにしてください。

また、就業規則で退職手当の規定をしているときには、退職した従業員に退職金を支給します。

休職・異動の手続

従業員が、

  • ・育児のための育児休業
  • ・ケガや病気などを理由とする傷病休職
  • ・家族の介護を理由とする介護休職

などの休職手続を行う場合には、社会保険料・雇用保険料の変更手続の他、給付金や手当金などの申請・請求手続も必要です。

従業員が転居を伴う転勤をするときには住所変更が必要であり、給与支給額が大幅に変わるときにも社会保険料の報酬月額変更届の提出が必要となりますので、忘れず手続してください。

労務管理の基本業務を適切に行うための3つのポイント

労務管理の基本業務を実際にどのように行っていくべきか迷うこともあるでしょう。

「働き方改革」の施行により、これまでの事業場や働き方を見直さなければならないときが来たともいえます。

職場環境を改善させることで従業員が働きやすさを感じることができ、モチベーション向上や職場活性化へとつながり、結果として生産性向上や業務効率化につながると考えられます。

実際に仕事をしている従業員が快適な職場環境だと感じなければ意味がないため、働く者の視点や意見を取り入れるために、面談やアンケートを実施し現場の声にも耳を傾けるようにしましょう。

適切に労務管理の基本業務を行う上で、次のことをポイントとして押さえておくことをおススメします。

  1. コンプライアンス遵守に向け最新情報は常に入手する
  2. 専門家に依頼する
  3. システム導入も検討する

それぞれのポイントについて説明していきます。

コンプライアンス遵守に向け最新情報は常に入手する

労務管理のほとんどが法令と密接な関連がある業務のため、手続に不備や漏れなどあれば法令違反につながってしまうリスクがあります。

そこで、ミスなく業務を行うための細心の注意を払い、関係する法令が改正されたとき新たな制度が導入されたときに対応できるように、最新の情報を常に入手するようにしてください。

専門家に依頼する

もしも労務管理を自社だけで行うことが難しいと感じたときには、専門家に相談し助言やサポートしてもらうことも方法の1つです。

自力で解決しようとしても、労務管理の対象は幅広いため、適切な内容で管理ができなくなる可能性があります。

解決できない部分は専門家に頼り、自社で対応できる部分は自社で行うなど、臨機応変な労務管理体制を整備することも必要です。

システム導入も検討する

労務管理では様々な情報をそれぞれの項目に分けて記録・保管することが必要です。

そのため人事管理システムや勤怠管理システム、給与計算システムなど便利なITツールもうまく活用することにより、業務負担を大幅に軽減させることができます。

必要な条件を入力すれば自動的に算出されるため、職場環境改善につなげるためにも便利なツールは有効活用するようにしましょう。

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