個人事業主だけが会計処理で用いる勘定科目「元入金」の使い方

2019/07/12
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個人事業主の方が会計処理を行うとき、「元入金」という勘定科目を使用することがあります。この勘定科目は個人の方だけが使用し、法人である企業が会計処理を行う場合には使われることはありません。

では、元入金とはどのような場合において使用する勘定科目なのか、その目的や内容をご説明します。

 

元入金はいつ使う勘定科目なのか

元入金とは、個人事業主が新たに事業を開始する際に準備した開業資金や準備金などに対する勘定科目で、法人でたとえるなら資本金にあたるものといえます。

ただ、資本金の場合は開業したときに準備した金額がそのまま記載され続けることとなり、金額を変更するなら増資手続きが必要です。また株主から集めた開業資金や準備金も基本金に含まれます。

一方の元入金は個人の財産であった資金を事業費として使用するときに用いる勘定科目で、毎年必ずその金額が変動します。

 

元入金はなぜ毎年変動するのか

元入金を計上する場合、今期の元入金に所得や事業に無関係な収入(事業主借)を足し、さらにプライベートで使う支出(事業主貸)を差し引いて翌期の元入金を計算します。

個人事業主の事業年度は毎年1月1日から12月31日ですので、年度末に翌期の元入金の金額を算出しておく必要があります。

期中は個人事業主の個人的なお金を事業費に充てても事業主借で処理を行いますし、生活費などで支払いを行っても事業主貸で処理するので元入金は変動しません。

1年を通し、事業主借や事情主貸で処理した金額を期末の会計処理で元入金に振り替えるのは、期首の会計において前期までの事業主借と事情主貸をゼロにしなければならないルールだからです。

 

計算上、元入金がマイナスになるのは問題ない?

もし元入金を計算した結果、マイナスになった場合は何か問題があるのでしょうか。

個人事業主には給与という概念がないので、事業によって得た利益を使い生活したりプライベートの支払いに充てることになります。

そのときに使用される勘定科目が事業主貸であり、反対に自分のお金を事業費に充てれば事業主借という勘定科目を使うことになります。

 

●具体例で元入金を計算した場合

たとえば、今期の元入金が200万円、事業主貸600万円、事業主借150万円、今期の利益が200万円だったとします。

この金額で翌期の元入金を計算すると△50万円になりますので、単純に考えれば事業費が1年を通して50万円減少したことをあらわします。

帳簿上は問題ありませんが、なぜ減少したのか、事業が上手くいっていない理由などを探ることは必要となるでしょう。

借入金などがある場合、翌期に繰り越す元入金がマイナスの状態であるということは、債務超過状態であることを示します。債務超過とは、事業を営む上での負債総額が資産総額を上回る状態であり、資産をすべて手放しても債務を完済できない状態のことです。

債務超過の状態にあると、銀行融資など資金を調達したい場面で不都合が生じることになるので注意してください。

 

元入金を使った仕訳の例

 

元入金が個人事業主の会計処理で登場するのは事業年度が開始された時点のみということになりますが、そもそも個人事業主として開業するとき、元入金がなければ事業を始めることはできないのか気になるところでしょう。

会社を設立するときには、1円でも資本金を用意することが必要です。ただ、個人事業主にはこのような制限はなく、ゼロから開始しても問題ありません

元入金ゼロから事業を始める場合には、まずは自身のプライベートマネーから支出を行うことになるので、事業にどのくらいの資産が残っているかなど把握しにくい状態となってしまいます。

そのため、個人事業主として事業を始めるときにも、できれば半年以上分の固定費の支払い分は元入金として準備しておいたほうがよいといえるでしょう。

 

具体的にどのような仕訳になるのか

事業で所得が増えていけば元入金も増えていくことになります。具体的に開業したときから事業を運営していく間の仕訳はどのようになるか確認しておきましょう。

たとえば個人事業主として開業するときに、事業用の通帳に10万円入金し、開業し10万円を支払ったとしたら、

借方:現金預金10万円  貸方:元入金20万円
借方:開業費 10万円

という仕訳となります。元入金として計上された金額は、期末まで変わることはありません。

 

期末に元入金を処理する場合には、まず当期利益を計算することが必要です。元入金に計算した利益を加算し、事業主借と事業主貸の差額を元入金と相殺することになります。

当期利益は、損益科目の売上などの収益から仕入や一般管理費などの費用を差し引いて計算します。

損益科目も期末ごとに一旦リセットされるので、差額となる利益を元入金として処理する形です。

 

仮に収益科目は売上、費用科目は仕入だけとした場合、それぞれの残高がゼロになるよう、損益勘定を使って仕訳します。

たとえば当期の売上が100万円、仕入が70万円だったとしたら

借方売上100万円 貸方:損益100万円
借方:損益70万円    仕入70万円

という仕訳をたてます。

 

この仕訳により、損益勘定の残高は貸方に30万円となり、当期の利益となりますので、

借方:損益30万円 貸方:元入金30万円

という元入金に振り替える仕訳が必要です。

 

翌期の元入金を計算するときには、これらに加え事業主借と事業主貸の差額を算出することになりますので、仮に事業主借が3千円、事業主貸が10万円あるとした場合には、

借方:事業主借3千円 貸方:事業主貸10万円
借方:元入金9万7千円

となります。事業主貸のほうが多いので、この時点では元入金はマイナスになってしまっています。

 

最終的にこれまで計算した開業費、利益、事業主借と事業主貸の差額を組み合わせると、

20万円(開業費)+30万円(利益)-9万7千円(事業主借と事業主貸の差額)=40万3千円

となり、翌期の元入金にこの金額を繰り越します。

 

確定申告書に元入金を記載するとき注意したおきたいこと

個人事業主の場合は毎年確定申告を行う必要がありますが、元入金は確定申告書に添付する青色申告決算書4枚目の貸借対照表に記載します。

ただ、元入金を記載する貸借対照表を確認すると、損益勘定は青色申告特別控除前の所得金額で、事業主借や事業主貸は相殺せずそのままの金額を記載するようになっています。

そのため、元入金もこれまでの整理行わない期首の金額(上記の例でいえば20万円)を記載することになるので注意してください。

ただ、翌年の青色申告決算書の貸借対照表の期首の元入金額は、先に行った処理(上記の例でいえば40万3千円)を記載することになるので、今年度の期末の元入金と翌期の期首の元入金は異なることになります。

2期分の青色申告決算書の貸借対照表を比較するときに混乱しやすい部分でもありますので、記載ミスのないように注意しましょう。

 

まとめ

個人事業主として事業を行う場合、元入金という勘定科目の役割や内容を理解していなければ、実際に確定申告を行うときにどのように処理をすればよいか迷うことになってしまうでしょう。

個人事業主の場合、給与という概念がないことで事業によるお金もそのまま生活費に充ててしまい、プライベートと事業の線引きが不明確になってしまいがちです。

しかし、事業を営んでいる以上は正しい申告を行うことが必要となりますので元入金、事業主借、事情主貸という勘定科目を使い、何につかった費用なのか、何で得た収入なのかをしっかり記録しておくようにしましょう。

適切な仕訳を行わずに会計処理を続けてしまうと、最終的に確定申告を行った後で税務署に指摘される可能性も出てきますので十分注意してください。

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