債権譲渡において債務者の承諾や譲渡通知が必要な理由とは

2019/07/16
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債権者が債権を譲渡することは自由に行うことができますが、手元の資金がないため融資を受けることを目的として譲渡することもあるでしょうし、売却して現金化することもあるでしょう。

この場合、債務者の承諾を必要とすることで連絡が入ったり、債権が譲渡されることを伝える通知が届くことがあります。

ではなぜ、債権が譲渡されたことにより、債務者の承諾を得ることが必要だったり、債権譲渡の通知が行われるのでしょう。

 

債権管理回収会社から債権が譲渡されたと通知が届いた場合

会社が合併や会社分割するとき、または事業を譲渡することに伴い債権が譲渡されることもあるようです。

しかし、債務者にとってはまったく関わりのない会社が新たな債権者に変わると、本当に実在する会社なのか、そもそもお金を払って大丈夫なのか不安に感じてしまうこととなるでしょう。

たとえば借金をしていた債務者の返済が滞っている場合、債権が債権管理回収会社などに譲渡されることは珍しいことではありません。

ただ、このような債権を管理・回収する会社はサービサーと呼ばれ、法務大臣による許可制度により事業を許可されている業者なので、適正な債権回業務が行われますので怪しい業者ではありません。

許可を取得したサービサーかどうかは、法務省の公式サイトの債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧から確認することができますので、不安な場合は確認しておくとよいでしょう。

 

債務者に債権譲渡を通知する理由

もしお金を貸した相手先に返済資金がない場合、回収できなければ自社も危機に立たされてしまうとしたら、どのように回収すればよいか頭を抱えることになってしまいます。

ただ、相手先に返済する資金が手元になかったとしても、将来的に入金される予定の第三者に対する売掛金を保有していることはあります。その場合、現金で返済してもらう代わりに、売掛金を譲渡してもらうことで回収を図ることが可能です。

債権の譲渡は債権を保有している債権者と、債権を譲り受ける新しい債権者の間で債権譲渡契約が交わされれば成立するので、債務者の承諾は必要ないとされています。

しかし、債権は譲渡されていて売掛金を回収する権利は自社にあるのに、債務者がその事実を把握できていないことで前の債権者に支払いをしてしまう可能性も否定できません。

また、前の債権者が他の借金返済のために、同じ債権を譲渡してしまう二重譲渡が発生する可能性もあります。このような問題が起こらないようにするために、債権が譲渡される旨を債務者に知らせることが債権譲渡通知です。

 

二重譲渡に備えるためにも

 

民法でも、債権譲渡において債務者に債権が譲渡されたことを主張するためには、元の債権者から債務者に通知を行うか、債務者の承諾が必要としています。

二重に債権が譲渡されることを防ぐためには、別の債権者を名乗るものに対し、確定日付の付された債権譲渡通知または承諾が必要です。

債権を譲渡する上で通知や承諾を行うということは、もし自分が債権者であることを主張しなければならない場面において、債務者や第三者に対しての対抗要件に具備するために必要ということです。

 

具体的な債務者に対する債権譲渡の対抗要件

元の債権者(貸主)をA、債務者(借主)をBとし、Cからの返済資金に困ったAがBの債権をCに譲渡する例で考えていきます。

譲渡人であるAから譲受人であるCに債権を譲渡する場合、債務者であるBには承諾を得る必要はありません。この場合、Bはこれまで通りAに返済を行い、その代金をAからCに返済されるという流れになるでしょう。

しかしCがBに自身が新しい債権者であると主張した場合、Bは誰に対して支払いを行えばよいか迷うことになってしまいます。

 

通知が行われるまでは

この場合、民法では元の債権者であるAからBに対し、債権をCに譲渡したことを知らせる通知が行われるまでは、Bはこれまで通りAに対して返済を行えばよいとしています。

AからBに対し、債権をCに譲渡したという債権譲渡通知が渡された場合には、Cに返済しなければならなくなります。

ここで行われる債権譲渡通知は、新しい債権者であるCからではなく、元の債権者であるAから受け取ることが基本です。もちろん、CがAの代理人として通知を行うことは可能ですが、本来、新しい債権者から債権を買い取ったと通知が届いたとしても、本当に新たな債権者なのか確認しようがありません。そのため、元の債権者から通知が行われることが望ましいといえます。

 

または承諾を得る

また、債務者が債権譲渡通知を受け取るという方法ではなく、債務者から債権譲渡について承諾を得ることでも、新たな債権者は債務者に債権者であることを主張することが可能となります。この例でいえば、AからBに対し、新しく債権者がCに変わることを伝えBから承諾してもらうことで、その後、CはBに自分が新しい債権者であることを主張できるようになるということです。

このような債権譲渡の通知や承諾を行うことで対抗要件に備えることが可能になります。

 

第三者に対する対抗要件への具備

そしてもう一方の第三者に対しての対抗要件にも備えておく必要があります。先に述べたのは債務者に対して新しい債権者が主張する上での対抗要件なので、もし別の新しい債権者と名乗る第三者があらわれたときにも備えるための対抗要件が必要です。

AがBに対する債権を、Cだけでなく第三者であるDにも譲渡してしまったら…。このような二重譲渡は債権には起こりがちです。債権は現物資産ではなく、目に見えないものなので複数を相手に売却しようとすればできてしまうからです。

もし元の債権者であるAがCだけでなくDにも債権を譲渡してしまうと、債務者であるBは、CとDの両方から請求を受けることになってしまい、どちらに支払いを行えばよいのか、そもそも誰が本当の債権者なのかわからなくなってしまいます。

 

確定日付のある証書による通知か承諾

民法で規定されている第三者への対抗要件で必要なのは、確定日付のある証書による通知か承諾です。確定日付とは、その文書が存在していたことを証明する日付印のことです。この確定日付のある証書として使われることが多いのは内容証明郵便で、誰がいつ、誰に対してどのような内容の手紙を出したのか郵便局が公的に証明してくれる郵便を活用します。

新たな第三者が本当の債権者は自分であると主張してきた場合、それに対抗する証拠が必要となりますが、そのときに確定日付のある証書による通知が行われていることで、自分が本当の債権者であることを主張できるようになります。

 

第三者も対抗要件に備えていた場合

ただ、第三者であるDも同様に、内容証明郵便を使った債権譲渡の通知か承諾を対抗要件として準備している可能性があります。

この場合、債務者は先に確定日付のある債権譲渡通知を送ってきたほうを債権者として扱うこととなるので、発送した日や債権譲渡が行われた日ではなく、郵便を受け取った日時の後先で決まる点に注意してください。

 

債権譲渡の登記による対抗要件の具備

民法上で対抗要件に備えるためには、債権譲渡の通知か承諾を使うことになりますが、通知や承諾が難しいという場合も中にはあるでしょう。

債権を譲渡したことを知られたくない、知らせたくないと元の債権者がいいはれば、対抗要件に備えることができないので債権譲渡を回収手段として使うことができなくなってしまいます。

ただこのような場合、債権譲渡の通知や承諾を行わなくても、債権譲渡登記という制度を使って対抗要件に備えることが可能です。

誰が誰に対し債権を譲渡したのかを登記所(法務局)で登記申請することにより、新たな債権者が誰なのか証明することができます。

この債権譲渡登記による対抗要件は第三者に対するものなので、債務者に対する対抗要件に備えるには、債権譲渡登記により発行される証明書を添付して通知を行うことになります。

近年では、貸金業者が自社債権を譲渡する場合や、担保として融資を受けるときには、債権譲渡登記を行うことが多くなっています。この場合、貸金業者で借り入れを行った債務者は、自分の債権が譲渡されていることは知らないまま、取引を続けることになるということです。

 

債権譲渡をされた債務者に不利益はないのか

債権譲渡がなされるときには、債権者同士で債権譲渡契約が交わされれば成立されているとしているので、債務者に承諾を得る必要はありません。ただ、そのことで債務者に何か不利益が生じるのではないか気になるところです。

現実的に発生する問題としては、債権者に連絡が取りにくくなることや、支払方法が多少面倒になるといった部分に不便さを感じることはあるでしょう。

ただ、法律的な不利益は特にないと考えられます。もともとの債権者に対する反対の債権(買掛金など)がある場合には、相殺の通知を行う前に債権を譲渡しても相殺の主張は原則、可能とされていますし、債権譲渡がされた後で、契約の解除や取り消しを行うこともできます。

 

債務者は異議をとどめない承諾に注意

債権譲渡において異議をとどめない承諾をしてしまったときにはトラブルが発生する可能性があるので注意してください。

「異議」とは、すでに支払い済みであるということや、反対債権があるため相殺するといったこと、さらには解除や取り消しなどの言い分を指しています。この異議をとどめず承諾するということは、債権を譲渡されたことに対し、何の言い分もないということです。

言い分なく承諾を一度してしまうと、後ですでに支払いが済んでいた場合、反対債権で相殺したい、解除や取り消しを行いたいといった主張がすべて通らなくなってしまいます。

債権を譲渡された側が、弁済や相殺、解除、取り消しという事実を知っていた、または知らなかったことに過失があると認められる場合には、これらを主張することはできますが注意が必要であることに変わりはありません。

もし債権譲渡通知が送られてきたとき、「異議をとどめない承諾を行う」といった文言の付された文書が同封されており、用紙に署名・捺印の上返送を求めるといった内容の通知の場合、本当に異議はないのか改めて思い返してみることをおすすめします。

 

異議をとどめない承諾をした旨の書面は返送しなくてもよい

後になって何らかの異議があることがわかっても、異議をとどめない承諾をしたと認められてしまえば不利な立場に立たされます。特に書面上に署名と印鑑を押すことは、書面の内容の意思があったことを証明していると判断されてしまう可能性もあるからです。

もし「異議をとどめない承諾」についての内容が付された書面を返送するような連絡を受けた場合、何も送らないでも問題ありません。なぜなら債権譲渡の対抗要件として、債権者からの通知があることで足りるからです。わざわざ債務者から承諾の書面を受け取る必要はないとされています。

仮に書面を送りかえす場合でも、「異議をとどめない承諾する」という文言部分を二重線で消して上に印鑑を押す方法もありますが、消した部分に誤りがあるとトラブルの原因となるので、やはり送りかえさない方法が望ましいといえます。

 

まとめ

債権譲渡において、新しい債権者が債務者や第三者に対抗する要件に備える方法は債権譲渡通知や承諾、債権譲渡登記などいろいろあります。ただ、どの方法が誰に対する対抗要件に具備できるか異なりますので、内容をよく理解した上で実行することが必要です。

債権譲渡が行われる場面は色々ですが、貸したお金を返してもらうときや売掛金の回収などにおいて、現金ではなく相手先が保有する売掛債権を譲渡してもらうなどが挙げられます。

売掛債権を含め、債権は目に見えない資産ですので、誰が債権者として権利を得ているのか見て確認できません。そのため、対抗要件に備えることで、自分が新たな債権者であることを主張することが可能となり、債務者も誰に対して返済を行えばよいか迷わず取引ができるようになります。

手続きを行う方法によって、費用が大きくかかる場合もありますが、後でトラブルが発生し債権の回収ができなくなるよりも、やはり対抗要件にしっかり備え自分が債権者であることを主張できるようにしておくことが大切であるといえるでしょう。

もしファクタリングなどで債権譲渡登記を求められた場合でも、ファクタリング会社にとって必要な手続きであると理解することが必要です。ただ、中には債権譲渡登記を行わずファクタリングを可能とする優良な業者もありますので、できるだけ費用をかけず資金を調達したいなら、そのようなファクタリング会社を利用することをおすすめします。

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