多くの中小企業が後継者問題に悩まされていますが、解消するためには原因と現状を把握することが必要です。
そこで、なぜ今中小企業は後継者に関連する問題を抱えているのか、その原因やどのように解決していけばよいのかについて解説していきます。
目次
国も中小企業の後継者問題を重く見ている
近年では、後継者問題に悩む企業が増えていますが、その多くが日本の経済や雇用を支える中小企業です。
後継者問題を解決できず、たとえ事業は黒字でも廃業しなければならないといった企業もけっして少なくありません。
日本政策金融公庫の調査によると、60歳以上の経営者の50%を超える割合が、将来的には廃業することを予定しているともいわれています。
そして廃業を選択する理由の約3割が後継者難という問題であり、今後は後継者問題に加え新型コロナウイルスによる業績悪化などが追い打ちをかけることになることも想定されています。
国も中小企業の後継者問題を重く見ており、回避策として2017年7月、中小企業庁は事業承継支援を集中して行う「事業承継5ヶ年計画」を策定しました。
さらに中小企業の経営資源の引継ぎ後押しのために、「事業承継補助金」を運用開始するなど事業承継が円満に行われるための支援が積極的に行われています。
全国で後継者不在という問題を抱える企業はどのくらいいるのか
帝国データバンクの「全国企業 後継者不在率 動向調査(2020年)」では、企業概要データベース「COSMOS2」と信用調査報告書ファイルをもとに2018年10~20年10月の3年を対象に後継者の決定状況と事業承継動向について調査が行われています。
その調査では、全国・全業種約26万6000社の後継者不在状況は、全体の約65.1%(約17万社)で後継者不在という結果でした。
さらに年代・地域・業種などに分けてみた場合には、次のようなことがわかっています。
- ・社長年代別…30代未満・80代以上以外で後継者不在率が低下
- ・地域・都道府県別…地域別では北海道・都道府県別では沖縄県が全国平均を大幅に上回る割合(81.2%)
- ・業種別…最も不在率が高いのは建設業(70.5%)
先代経営者との関係性をみたときには、同族承継で引き継いだ割合が34.2%で最も高い割合ですが、血縁関係によらない内部昇格(役員など)も34.1%でほぼ同じ割合となっています。
これは国内企業の事業承継が、同族間で引き継ぐことから幹部社員など社内外の第三者を対象とすることへシフトしていることをあらわしているといえるでしょう。
なお、後継者の属性で最も高いのは後継者の子、つづいて非同族となっています。
ファミリー企業でも非同族への事業承継から、脱ファミリー化を検討する割合が増えているようです。
中小企業の後継者問題の原因
中小企業の経営者の多くで高齢化が進み、人材不足という問題に加え事業承継も進まず、廃業や清算という選択を余儀なくされるケースは増えています。
ではなぜ中小企業が後継者問題で悩むことになるのか、それには次のようなことが関係していると考えられます。
身内や親族の中から後継者が見つからない
中小企業が後継者問題を抱える原因となっている1つとして挙げられるのが、身内や親族から後継者が見つからないことです。
規模の小さい企業や家族経営の企業の場合、従来までであれば経営者の子や配偶者、または血縁関係者が事業を承継する親族内承継が一般的でした。
これまで一緒に会社経営に携わってきた親族を後継者とすれば、事業承継後も円滑に進めることができます。
しかし子・配偶者・血縁者などが会社を引き継ぐことを望まないケースも増えています。
たとえば子が大学を卒業後、サラリーマンとして会社に勤務し、親の会社を引き継ぐことを望まないといったケースなどです。
また、そもそも後継者としての資質や能力がなく、事業を引き継ぐことが難しくなっているケースも見られます。
従業員にも引き継ぎができない
身内を後継者として事業を引き継ぐことができない場合、親族以外の第三者を後継者とする親族外承継も検討できます。
対象となるのは会社の役員や従業員などですが、すでに働いている役員や従業員なら技術やノウハウなどもスムーズに承継できると考えられるでしょう。
しかし、実際には従業員など雇用していない個人経営の中小企業も少なくないため、引き継ぎができないこともあります。
また、親族内承継と同様に、従業員に会社経営を可能とする資質や能力がない場合なども、事業を引き継いでもらうことは難しいといえるでしょう。
将来性に不安がある会社である
後継者の子や親族が事業を引き継ぐことを望まないケースの理由として、将来性に不安がある会社であることも関係します。
将来的に見たとき、成長が期待できない会社や赤字経営が続いている企業などの場合、たとえ引き継いでもメリットがないと考え後継者になることを望んでもらえないケースなどです。
また、ほとんどの企業が銀行から融資を受けているといえますが、負債総額が大きすぎる場合なども事業承継がスムーズに進みにくくなります。
市場やニーズなどで事業の将来性に不安がある状態に加え、負債を抱えていれば誰も会社を引き継ぎたいとは考えなくなってしまうでしょう。
少子化で限られた人材の奪い合いが起きている
日本は少子高齢化が進んでいますが、今後もその傾向は大きくなり、限られた人材を様々な産業や業種が奪い合う形になっています。
若い世代に人気のない業種の場合、募集広告を出しても人が集まらない状況が続いていますが、後継者問題の原因の1つです。
中小企業の人材がこのまま減少していけば、事業を引き継いでくれる後継者を、親族だけでなく親族外からも見つけ出すことはできなくなってしまうでしょう。
中小企業の後継者問題の解決方法
中小企業の後継者問題を解決するには、
- 親族から後継者を指名する(事業承継のための教育が必要)
- 役員や従業員から後継者を指名する(技術などを円滑に引き継ぐことが可能)
- 外部から人材を登用する(有能な人材を雇用することが必要)
- M&Aで事業承継を準備する(従業員の雇用を守ることができ、売却益も手にできる)
- 事業引継ぎ支援センターに相談する(国や自治体の公的機関なので安心して相談できる)
- 後継者募集のマッチングサイトを利用する(条件(譲渡価格・成約方法)に合致する相手を見つけることが可能)
- M&Aや事業承継の仲介会社に相談する(条件に適した後継者を選んでもらえる)
といった対策を検討することが必要です。
そして何よりも大切なのは、後継者に会社を引き継いでもらうまで倒産という結果に陥らないよう、手元の資金を確保しておくことといえます。
会社は業績が伸び悩んでいたり売上が激減したり、赤字が続いていたとしても倒産しません。倒産してしまうのは、手元の資金がショートしてしまい支払不能状態に陥ったときです。
存続させていくためには手元に資金を常に残しておくことが必要であることを十分認識しておいてください。
まとめ
多くの中小企業が後継者問題に悩まされていますが、その原因となっている部分を解消することで、事業承継を成功させることができます。
ただ実際には後継者を見つけることは難しい状況となっているため、廃業という望まない選択をするしかない経営者も少なくありません。
それでも事業を引き継いでくれる後継者を見つけるのなら、事業承継が行われるまで会社をつぶさない、倒産させないことが必要です。
そのためにも、手元の資金を枯渇させない資金繰りを意識するようにしましょう。
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