借入金の情報が記載される財務キャッシュフローはどのような状態が望ましいか
借入れやその返済などの情報は、財務活動によるキャッシュフローに記載されます。
営業活動・投資活動を維持するため、どのように資金を調達し返したのかを示すのが財務キャッシュフローのため、借入金やその返済なども含まれるからです。
そのため、銀行などが決算書を見たとき、財務キャッシュフローの借入金などの情報があれることは好ましく感じてもらえないのでは…と考えてしまう者でしょう。
そこで銀行などが決算書を確認するとき、財務キャッシュフローはどのような状態が望ましいのか、借入金以外にどんな情報が記載されるのか徹底解説していきます。
財務キャッシュフローに記載されること
財務活動によるキャッシュフローとは、営業活動を維持するための投資に必要な資金調達・返済などのキャッシュの変動をあらわす項目です。
成長過程にある企業の場合、積極的に自己資金以上の投資などを行っていれば、借入れや株式による多額の資金調達で財務キャッシュフローはプラスになりやすいといえます。
財務キャッシュフローの記載されるのは主に、
- 借入金返済による支出
- 銀行から融資を受けたときの収入
- 自己株式を取得したいかを支払ったことによる支出
- 自己株式を売却したことで払い込みを受けたときの収入
- 増資など株式を発行し払い込みを受けたときの収入
- 株主に配当金を支払ったことによる支出
財務キャッシュフローはプラスとマイナスどちらが望ましいか
事業を継続させるため、会社を成長させていくためには資金を調達することは欠かせませんが、その方法が借入れや増資などの場合には財務キャッシュフローにその情報が記載されます。
財務キャッシュフローはプラスを表示しますが、借金があるからといってそれが経営の悪化を示すわけではないということです。
むしろ企業が成長局面にあり、借入れや増資などで資金を調達し、財務キャッシュフローがプラスであることは順調に資金調達できていることを意味します。
それは銀行や投資家から一定の評価を受けることが可能のなっていると判断できるでしょう。
そして企業が投入した資金を回収する段階にあるとき、営業キャッシュフローが潤沢であれば自己株式の取得や配当金の支払い、借入金の返済など余剰資金を充てていくこととなり、財務キャッシュフローはマイナスになりやすいといえます。
これらのことから、単に財務キャッシュフローのプラスとマイナスだけで会社の経営情報を判断できるわけではなく、営業キャッシュフローや投資キャッシュフローとのバランスや企業の成長段階なども踏まえることが必要です。
銀行はキャッシュフロー計算書のどこを重視する?
銀行から融資を受けようとしたとき、決算書の提出を求められると、キャッシュフロー計算書の数値で印象が悪化しないか気になるところでしょう。
実際、銀行は貸したお金を返せなくなる会社に対し、融資を実行しようとはしません。
返済能力を見極めるために、財務キャッシュフローだけでなくキャッシュフロー計算書全体を確認されることとなりますが、次のような場合は注意しておくようにしましょう。
仮払金・立替金・仮受金・預り金の過剰発生
仮払金・立替金・仮受金・預り金などの勘定科目は、どれも使途が不明確になる可能性が高めで、通常の経営では過剰に発生しないはずです。
仮勘定といった位置づけのため、あまり多く発生していれば、健全な経営や安全なキャッシュフローではないと判断される可能性も出てきますので注意しましょう。
フリーキャッシュフローを生み出す力
営業キャッシュフローと投資キャッシュフローは、フリーキャッシュフローという余剰部分です。
フリーキャッシュフローを多く生むことができていれば、借入れ後の返済資金に充てやすいため、返済能力の高さを示すことができます。
価値の高い資産の保有
不動産など担保として差し入れることが可能な価値のある資産を保有していると、いざというときには資産の売却により返済資金に充てることができるため、銀行も安心して融資を実行しやすくなるでしょう。
含み損の有無
銀行が決算書の貸借対照表の数字を確認するときには、その外側にある含み益や含み損を確認されます。
これは返済に充当できる部分であるからといえますが、たとえば株式や不動産など価値の変動がある資産は貸借対照表上では取得原価で計上されていることもあります。
しかし現段階の価値は時価であるため、取得価額と時価との差額がプラスかマイナスかが重要です。
価値が目減りしていれば含み損と判断され、返済に充てる部分が少なくなったことを意味します。反対に価値が高くなっていれば含み益とされ、銀行融資の審査でも有利となるでしょう。
経営者の個人資産の有無
会社の資産と経営者個人の資産は分けて考えることになりますが、仮に会社が銀行から融資を受けた後、法人の資産がなくなっても経営者個人の財産を返済資金に充てることは理論上できないとされています。
しかし中小企業が銀行から融資を受けるときには、経営者個人が会社の連帯保証人になるといった債務保証を求められることが一般的です。
もし会社が倒産してしまっても、一定の財産だけを確保したまま経営者が逃げてしまうことを防ぐためでもあり、業績向上に意欲を高めてもらうためとも考えられています。
まとめ
借入金が増えたときや返済したときには、その情報が財務キャッシュフローに記載されることになります。
借金はできるだけないほうがよいと考える方もいるでしょうが、成長局面にあり融資を受けて資金調達した場合などはプラスを示すものです。
反対に投資した資金を回収する局面において、借入金の返済などが進んでいればマイナスを示しやすくなるでしょう。
注意したいのは手元のキャッシュが十分でなく運転資金を追加しなければならない状況で、財務キャッシュフローがマイナスになっているケースです。
これは、銀行から追加融資を受けることができない状態や増資が進んでない状況を示していると考えられます。
財務キャッシュフローがプラスとマイナスのどちらを示していれば良いと一概に決めることはできず、そのときの状況や他のキャッシュフローとのバランスにより判断することになります。