税理士の仕事内容|確定申告や法人決算などどのような相談が可能?
2022年3月8日 / 融資
法人決算や確定申告の時期が近づいてくると、税理士に仕事を依頼しようか、そもそもどのような内容であれば相談できるのか悩む経営者なども増えてきます。
税務申告に関連する業務はもちろんのこと、経営面の支援やアドバイスなども仕事内容とするのが税理士ですが、繁忙期などもあるため相談する時期には注意が必要です。
そこで、税理士とはどのような仕事をしているのか、相談できる内容などについて解説していきます。
税理士の役割
「税理士」とは税務に関する専門家であり、独立・公正な立場で申告納税制度の理念に沿いながら、納税義務を適正化させることを使命としています。
仮にクライアントが不正行為をしている場合には、速やかに是正を助言することが義務とされており、脱税など違法行為に協力することはできません。
当然、クライアントから伝えられた業務上の情報は守秘義務があるものの、不正を手伝うことが仕事ではないからです。
また、税理士だけでなく使用されている職員にも適用されることであり、クライアントが安心して相談できる体制を築いておくことが必要といえます。
税理士として仕事をするには、税理士試験に合格するなど一定要件を満たした後、日本税理士会連合会の税理士名簿に登録することが必要です。
税理士にしか認められてない仕事もあるため、資格を保有していないのに報酬を受け取って税理士業務を行う「にせ税理士」には注意してください。
税理士と「公認会計士」との違い
税理士と同様に、税務関連の専門家には「公認会計士」がいます。
税理士の主な仕事は、所得税・法人税・相続税などの申告手続について相談を受け、納税者に代わり行うことといえます。
他にも会計処理・資金調達・収益向上に向けた分析・M&A・事業承継などについてアドバイスや支援を行っています。
これに対し公認会計士の仕事は、会社の決算書を第三者の立場から監査し、投資家が不利益を被らないようにすることであり、主なクライアントは監査を義務づけられている大企業や上場企業です。
税理士は大企業だけでなく、小規模事業者や中小企業などもクライアントとなりますが、公認会計士は主に大企業のみをクライアントとするといえるでしょう。
税理士の主な仕事内容
税理士の主な仕事内容は「独占業務」とされている次の3つです。
- ・税務代理
- ・税務書類の作成
- ・税務相談
「独占業務」については、税理士以外が報酬を受け取り行うことは禁止されています。
3つの独占業務に加え、
- ・独占業務以外の仕事
もあるためそれぞれ詳しく説明していきます。
税務代理
税理士の仕事の1つである「税務代理」とは、納税者に代わり所得税・法人税・相続税の申告を行うことです。
納税者に対し税務署から調査が入ったときには、調査に立ち会って税務署の更正や決定に不服があれば納税者に代わり説明や主張をしたり申立てたりなど対応します。
青色申告の承認申請や確定申告などの手続を行いますが、e-Taxを利用し申告書の代理送信も可能です。
個人事業主や法人などが顧問契約で継続しサポートするケースもあれば、遺産相続や不動産売買など発生したときスポット的な依頼を受ける場合があります。
税務書類の作成
「税務書類」とは、所得税・法人税・相続税の申告に必要な書類です。
確定申告書・年次決算書・各種申請や申立書に関連する書類が該当しますが、相続税申告書や青色申告承認申請書なども含まれます。
税務署などに提出が必要となる書類の作成を行いますが、税理士の独占業務とされている仕事ではあるものの、従業員が税理士の指示のもとで作成することは問題ないとされています。
ただし従業員が作成した税務書類の当事者責任は税理士が負うことになります。
税務相談
税金の申告や書類作成に関しての「税務相談」では、税額の算出方法や税務上手続、節税対策などのアドバイスを行います。
独占業務以外の仕事
「独占業務」とされている仕事以外でも、たとえばクライアントの会計処理をサポートすることも税理士の仕事です。
税務申告書類を作成するためには、日々の記帳や月次・四半期・年次の決算書作成などが必要です。
上場企業の場合には、有価証券報告書の作成も必要となりますが、税務申告するまでの書類作成や手続にミスがあれば税務申告内容自体にミスが発生します。
そこで、日々の記帳や決算書作成などの業務を税理士がサポートしていくこととなります。
また、事業を継続する上で欠かせない資金を調達するための「事業計画書」作成支援などを行うこともあれば、売上向上や経費削減などに向けた経営改善のアドバイスに事業承継問題解決に向けた支援なども行っている税理士もいます。
具体的には、
- ・記帳代行
- ・コンサルティング業務
- ・会計参与
- ・補佐人
- ・行政・司法支援
の5つが独占業務以外の税理士の仕事内容といえるでしょう。
それぞれの仕事内容について説明していきます。
記帳代行
会計帳簿の記帳を代行する業務の他、財務書類作成、給与計算など経理関連の業務全般です。
コンサルティング業務
経営全般に関してのコンサルティングや助言、M&Aなどのアドバイスなども行います。
また、銀行など金融機関との折衝や資金調達に向けた支援なども行うことがあります。
会計参与
中小企業の取締役と共同し、計算関係書類を作成して株主・債権者の要求に応じ開示するといったことを行います。
補佐人
税務訴訟では、訴訟代理人である弁護士と裁判所に出頭し陳述を行います。
行政・司法支援
- 国税審判官(国税不服審判所)
- 監査委員(地方公共団体)
- 民事・家事調停員(家庭裁判所)
- 法テラス(日本司法支援センター)
- 成年後見支援センター(税理士会)
などの行政や司法を支援します。
税理士が行う経営コンサルティングとしての仕事内容
経営コンサルティング業務を行う税理士などは、企業の経営全般に関する相談窓口として経営アドバイスを行います。
経営に関する知識とスキルがなければ経営についてアドバイスはできませんが、業界やマーケティングに精通している税理士であれば経営コンサルティング業務も可能です。
さらに金融機関や公共機関などとも連携できる体制を整えている税理士であれば、資金調達などの相談もしやすいでしょう。
ただし日常は税務関連の仕事をメインに行っているため、経営コンサルティングを任せてよい税理士は次のようなスキルがある専門家に限られるといえます。
- ・経営に関して幅広い知識を保有している
- ・本音を話しやすい雰囲気や信頼感がある
- ・情報処理能力が高い
- ・最善策を検討し提案してくれるプレゼンテーションスキルが高い
税理士は税務や会計の専門家のため、財務数値を分析し経営状況を把握してもらうことは容易にできるはずです。
ただ、コンサルティング業務では、単なる分析にとどまらずに財務状況に応じた経営の最善策を考え提案してくれる能力が必要となります。
税務に関する知識が豊富あっても、発信力が低い税理士であれば、コンサルティング業務は難しいといえるでしょう。
経営コンサルタントとして活躍する場合、税理士や公認会計士など資格を取得しなければできないわけではありません。
たとえばMBAの学位や中小企業診断士などの資格があれば経営コンサルタントとしての能力が高いと評価するケースもありますが、これらの資格もコンサルティング業務を行う上で必須ではないとされています。
また、資格があるから優秀なコンサルタントとも言い切れず、やはり数多くの経営者や企業とかかわり問題を解決させたという実績の高さが優秀なコンサルタントの証とされます。
税理士にコンサルティング業務も担当してもらうときには、それまでどのような会社の問題を解決へ導いたのか、実績などを確認しておいたほうが安心です。
年末調整や決算時期の相談は注意
税理士にも仕事が集中する繁忙期と、あまり忙しくない閑散期があります。
繁忙期となるのは税理士の独占業務を求めて仕事の依頼が集中する時期ですが、確定申告や決算が多い時期が該当します。
確定申告と決算の時期がほぼ重なる会社も少なくないため、経営者や経理担当者だけでは対応できず、税理士に依頼したいと考えるケースもあるでしょう。
ただ、繁忙期に新規の相談など受け付けることができない場合もあるため、もしも税理士を頼りたいときには閑散期などに前もって相談しておいたほうが安心です。
なお、3月決算の会社ばかりではなく、あえて税理士の閑散期などを決算期にしている企業もあります。
そのため税理士によっては繁忙期がずれ込んだり長引いたりするケースもあるため、きめ細やかに対応してほしいときには事前に時間がとりやすい時期を聞いてから相談したほうがよいでしょう。
税理士の仕事の流れ
税理士の仕事は、クライアントが個人事業主か、それとも法人なのかによって異なります。
どちらをメインとしているかは税理士によって異なりますが、主に次のような内容で仕事を行っています。
クライアントが「個人」の場合の仕事内容
クライアントが「個人」の場合、自営業者・年金生活者・不動産所有者など、確定申告を必要とする方に対して仕事を行います。
確定申告は、1月1日から12月31日までの収入や支出を計算し、課税される対象となる所得を計算して税務署に申告・納税する手続です。
サラリーマンで給与所得を受け取っている方でも、給与以外に収入があれば確定申告が必要となります。
また、直前の課税期間の確定消費税額により、消費税の中間申告も必要です。
所得税の申告以外にも、相続税や登録免許税、不動産取得税などの申告もクライアントによって不定期に発生します。
12月には個人事業主が雇用している方の「年末調整」を行い、1月になると源泉納付・給与支払報告・償却資産税申告、そして2~3月には所得税や消費税の確定申告を行うという流れが主な仕事内容です。
クライアントが「法人」の場合の仕事内容
クライアントが「法人」の場合、会社の決算期により仕事内容やスケジュールが異なります。
決算期は会社ごとに違うため一律ではありませんが、3月・12月を決算期にする企業が多いため、年末調整の12月から5月までは繁忙期となるケースが多いといえます。
月次試算表を作成することから決算までの一連の業務の他、中間決算なども企業によって必要になることがあります。
また、年によって大きな利益が出た会社では納税額が急増しますが、それにより資金繰りが困難になる場合もあります。
このようなケースでは、顧客の経営状況や財務内容を勘案し、納税と経営の健全化を図る提案を行うのも税理士の仕事です。
12月には会社が雇用している従業員の年末調整を行い、1月には源泉納付・給与支払報告・償却資産税申告の手続が必要となります。
そして会社によって異なるものの、3月に決算期となり、4月・5月に財務書類作成・確定申告(法人税・法人事業税・消費税など)の手続を行います。
税理士に相談するとよい時間帯
税理士のクライアントが個人の場合には、法定の申告時期にあわせた業務が発生することとなります。
法人の顧客については、申告時期と決算期にあわせた仕事内容が増えるといえるでしょう。
いずれにしても年末調整を行う12月から法人決算が終わる5月までが繁忙期となるケースが多いといえます。
そして税理士の一般的な1日のスケジュールはクライアントや事務所の規模などで異なりますが、しっかりとクライアントとのコミュニケーションをとっている税理士の場合には、顧客対応で忙しいことがほとんどです。
そのためできるだけ当日に税理士事務所を訪問するのではなく、事前に予約を入れておき、税理士事務所を訪問するようにしたほうがよいでしょう。
まとめ
税理士の仕事内容は多岐にわたりますが、確定申告や法人決算の時期になると税理士に相談してみようと悩む経営者も増えます。
ただし申告期限ギリギリに相談しようと考えても、税理士の繁忙期に重なっていれば相談に応じてもらえない場合も考えられます。
もし税務手続などを税理士に任せたいという場合には、できるだけ早めに相談しておいたほうがよいでしょう。
また、コンサルティング業務については税理士でなくても、たとえば資金調達の悩みに対応するファクタリング会社なども行っています。
ファクタリング会社の場合、コンサルティング業務の相談は無料対応していることもあるため、もし費用をかけずに資金調達の方法や経営についての相談をしたいならおススメです。