起業支援で創業融資の審査を受けるときに注意したい4つの審査基準とは
2022年3月28日 / 融資
会社員として働いていた方が起業するとき、資金面での支援策として創業融資を受けるケースはめずらしくありません。
これから起業する段階で、創業融資により資金面を支援してもらえるのか?と不安になる方もいるでしょうが、注意したい4つの審査基準は確認しておいたほうがよいでしょう。
創業融資の審査に落ちて支援してもらえない結果になると、2度目の融資申し込みまで半年間ほど時間を空けなければならず、スムーズな起業につながらなくなります。
1回目の審査に通過するためにも、創業融資では起業家の何を見て支援するか決めているのか、重視される4つの審査基準を紹介します。
起業するときに資金面を支援してくれる創業融資の種類
起業するときは、まだ事業が始まっておらず実績がないため、融資を受けるなど支援を求めても審査にとおりにくいと考える方もいるでしょうが、すでに会社経営で損失を出しているケースよりは融資を受けやすいとも考えられます。
ただ、これから事業を始める段階では今後どのような状況になるか不明といえるため、資金を貸し付ける側も十分に審査を行った上で融資を決定します。
起業時に利用できる創業融資は主に次の3つですが、上から順番に審査に通りやすいといえます。
- ・日本政策金融公庫の創業融資
- ・地方自治体の創業融資
- ・民間金融機関の創業融資
それぞれの創業融資の支援制度について説明していきます。
日本政策金融公庫の創業融資
日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は、無担保・無保証人で最大3千万円(運転資金は1千500万円)までの借入れが可能です。
新しく事業を開始する方や、事業はすでに開始しているけれど税務申告2期を終えていない方などが対象なので、実績が十分でなく民間の金融機関から支援してもらいにくくても資金を調達できます。
ただし新しく事業を開始する方や事業開始して税務申告1期を終えていない方の場合、自己資金を10分の1以上準備しておくことが必要となるので注意しましょう。
さらに「中小企業経営力強化資金」では、経営革新または異分野の中小企業と連携し新事業分野を開拓させるなどで市場創出・開拓を行う方が対象となっています。
融資限度額は7千200万円(運転資金4千800万円)までとなっており、低金利で融資を受けることができるため検討するとよいでしょう。
地方自治体の創業融資
都道府県や市町村など、地方自治体でも開業資金を無担保・無保証で貸し付ける制度を用意していることがあります。
たとえば東京都では「創業融資制度」、大阪なら「開業資金制度」など名称は異なるものの、いずれも創業時の資金調達を支援する制度です。
それぞれの都道府県や市町村などに問い合わせが必要ですが、審査に2か月程度かかることが多いため、早めに手続することをおすすめします。
民間金融機関の創業融資
中小企業が民間金融機関の創業融資制度を利用する場合、信用金庫や信用組合などに相談することが一般的ですが、地方銀行でも積極的に地域の企業を支援していることがあるため確認してみるとよいでしょう。
ただし創業融資を扱う民間銀行はそれほど多くありません。
先に日本政策金融公庫の融資を受け、返済実績をつくり信用を構築しておくことで民間金融機関から支援してもらいやすくなります。
創業融資で重視される4つの審査基準
どの創業融資を利用する場合でも、申し込みの基準を満たしているのか確認することは大切ですが、そもそも実際に事業をスタートさせていない起業家に対する資金の貸し付けのため審査を通過できるとは限りません。
重視される審査基準を事前に把握し、それぞれの項目をクリアできる準備が審査通過の大きなカギとなります。
創業融資で重視されるのは、
- ・保有する自己資金
- ・起業家のこれまでの経験と信用能力
- ・返済資金を捻出できる可能性
- ・借入れにより調達した資金の使い道
の4つです。
それぞれの項目について説明していきます。
保有する自己資金
起業家自身が自ら準備したお金が「自己資金」です。
事業全体でかかる創業資金のうち、自己資金をどのくらい準備できたかは、審査の重要な基準となります。
通常融資での自己資金の割合として望ましいのは売上の3分の1程度ですが、創業融資では融資を受けたい金額の半分から3分の1程度用意しておいたほうがよいでしょう。
自己資金の確認で失敗しないための対策
自己資金は多ければ多いほど評価が上がります。なぜならどのくらいの熱量で起業に向けて準備したのか、計画性を測る上での判断基準になるからです。
そのため長い期間に渡り継続して自己資金を貯めた実績があるほうが、審査には有利になると考えられます。
すでに開業している場合には、毎月一定の取引先や顧客から収益を上げていることが確認できる通帳履歴があることが望ましいといえます。
起業に向けて準備するのなら、毎月一定額を積立てていたことが確認できる通帳履歴などを準備しましょう。
通帳履歴など、自己資金を準備していたことが確認できる証拠書類が提出できない場合には、信用力が低いとみなされる場合もあります。
正しいルートでの自己資金であることが必要
創業融資では過去1年分の経営者個人の預金通帳を提出するように求められますが、自己資金が正しいルートで貯めたお金か確認するためです。
毎月の給料からその一部を毎月貯めていたのならよいですが、創業前に口座へ送金されていたお金であれば、誰かから借りたり見せかけのものだったりする場合もあります。
自己資金が必要と誰かに相談し、一時的にお金を借りて口座に入金し、実際に融資が実行されたら借りたお金を返すという流れでは自己資金として認められませんので注意してください。
起業家のこれまでの経験と信用能力
これから経営者となる創業家の経験や信用能力は重要です。
ただし、通常融資であれば過去の決算書から業績などに基づいた審査が実施されることとなりますが、創業時点では過去の実績が存在しないため、起業家の会社員時代などの経験や行動に基づいた判断が基準となります。
起業家のこれまでの経験で重視される部分
起業家の会社員時代、これから始めるビジネスに関連した経験がどの程度(何年など)あるのか確認されます。
会社員時代に積み上げた経験とはまったく異なるビジネスで起業すると、審査には不利になると考えられるでしょう。
起業家のこれまでの経験の確認で失敗しないための対策
これから始めるビジネスに関連する業界での職歴が十分か、まずは過去の経験を振り返ってみましょう。
業界未経験であれば半年~1年程度、対象となる業界で勤務経験を積んでおいたほうがよい場合もあります。
起業家の信用能力で確認される部分
資金を貸し付ける立場となる金融機関では、経営者となる創業家個人の信用情報などは必ず確認されます。
さらに過去1年分の創業家個人の預金通帳履歴や、税金・公共料金などが遅れることなく支払われているかも重要です。
起業家の信用能力の確認で失敗しないための対策
個人的な借入れで、たとえばクレジットカードやローンの支払いを遅延または滞納していないか振り返ってみましょう。
遅延や滞納の履歴があれば、資金を貸し付けたとしても返済されないリスクが高いと判断されてしまいます。
仮に遅延や滞納などネガティブな履歴が信用情報機関で登録されている場合、CICなどの信用情報機関に直接自身の信用情報について開示請求してみると安心です。
信用情報を扱う信用情報機関は次の3つです。
スマートフォンなどでも開示請求が可能な信用情報機関もあるため、気になることがあるときには事前に確認しておくようにしてください。
返済資金を捻出できる可能性
起業家がこれから始めるビジネスでしっかりと利益を上げ、続けて返済できるか厳しく審査されます。
どれほど魅力的なビジネスだと自信があったとしても、利益を生むことができなければ借入れの返済資金も捻出できません。
金融機関は、返済できるだけの利益を上げることができるビジネスなのか、冷静な審査を行います。
主に事業計画書で、見込みとされる利益の推移とその妥当性が審査されることとなりますが、毎月予定される返済額よりも税金を差し引いた後の利益のほうが多ければ、返済資金を捻出できる可能性があると判断されるでしょう。
そして返済資金を捻出できることに対し、説得力のある説明ができるかが重要となります。
返済資金の捻出の確認で失敗しないための対策
定期的に利益を上げることを示す根拠となる資料を提出できるように準備しましょう。
また、開業する予定地の契約がまだという場合など、仮押さえしていることがわかる資料など提示し、いつ契約できるか伝えられるようにしておいてください。
説得力のある事業計画書作成が重要
何年も赤字続きの事業計画書を作成してしまえば、資金の貸し付けをしてよい相手とは判断されません。
創業融資の財源は税金のため、社会的にも確実に回収する責任があります。そのため金融機関も単に経営者の情熱だけで資金を貸し付けるといった判断はしません。
収益を上げ返済資金となる利益を生むことができることを伝えられる、説得力のある事業計画書作成を心掛けてください。
起業家だけで事業計画書を作成しようとしても失敗することがあるため、創業や資金調達に詳しい専門家などに相談したほうがスムーズです。
借入れにより調達した資金の使い道
創業融資で資金を調達するためには、借りたお金を何に使うのか、資金使途をすべて明らかにしておくことが必要です。
仮に自己資金500万円を事前に準備し、事業全体で必要な創業資金は1千500万円と示した事業計画書をもとに、1千万円の創業融資を申込むとしましょう。
この場合、事業全体で必要とされる1千500万円の資金使途を明確にし、見積書などで根拠として証明することが必要です。
実際に融資が実行されたときも、先に明確にされていた資金使途が申請と合致しているか確認されます。
申請どおりに資金を使っていなければ、途中で打ち切りとなる場合もあるため注意してください。
初期投資の金額が大きくない事業は希望する融資限度額に注意
事業にもいろいろな種類があり、中には多額の初期投資が必要ないビジネスもあります。
初期投資がそれほどかからない事業で起業するとき、たとえば自己資金500万円を準備していて本来なら最大1千万円まで借入枠を準備できた場合でも、そもそも初期投資がかからない事業で総額1千500万円の見積書は示すことができません。
あくまでも創業に使用するためのお金を貸してもらえる制度と理解し、それ以外の資金は借入れることはできないと認識しておきましょう。
希望する融資限度額の設定で失敗しないための対策
創業融資でいくら借入れたいのか、希望する金額の根拠をまとめておきましょう。
日本政策金融公庫の新創業融資制度では、先に述べたとおり最大3千万円(うち運転資金は1千500万円)が限度額ですが、要件には希望額の10分の1まで自己資金を準備しておかなければなりません。
ただし、あくまでも要件のため、自己資金を用意していれば必ず満額融資が可能となるわけではないので注意しましょう。
いずれにしても事業を開始したばかりの時期は、十分に売上を上げることができず収益も安定しにくいといえます。
継続して利益を生むことができるようになるまで、一定期間の運転資金として自己資金を準備しておくことは大切です。
まとめ
これから起業する方は、そのための資金準備として創業融資を検討することもあるでしょう。
ただ、創業融資は誰でもお金を借りることができるわけではなく、一定の審査をクリアしなければなりません。
審査をクリアするためにも、事前に何を基準として重視されるのか把握しておき、スムーズな資金調達を実現させましょう。
もし当面の運転資金などで困ったときには、実績が十分でないことを理由に民間の銀行などから融資を受けることができない場合もあります。
その場合には、売掛金を現金化させて資金調達できるファクタリングなども検討することをおすすめします。