新型コロナウイルス感染症の影響で期限までに税務申告が困難な場合の猶予手続
2022年3月3日 / 資金繰り
新型コロナウイルス感染症(オミクロン株)の拡大は収まらない中、税務申告の手続まで手が回らないという場合、期限が猶予されます。
確定申告は2月16日~3月15日までに完了することが必要ですが、感染者や農耕接触の関係で自宅待機などが必要となり、税務の手続が難しいため期限の猶予が欲しいと希望する納税者が増えると考えられるからです。
令和2年に引き続き令和3年分の確定申告についても、コロナ禍で税務申告など困難な場合には、令和4年4月15日までの間であれば簡易な方法で申告・納付期限を延長し猶予の申請ができるようになっています。
期限までに税務申告できなかったときの個別延長の対応
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、たとえば経営者・経理担当者・税務申告の手続を依頼している税理士などが感染したり農耕接触者になったりなどで、通常業務ができなくなってしまったケースも少なくありません。
それにより申告書類などの作成が遅れてしまい、期限までに申告・納付を済ませることが難しくなってしまうケースも考えられます。
そこで、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、3月15日の期限までに申告・納付ができなかったとき、やむを得ない理由が認められるときには期限を猶予することができるようになりました。
ただし所轄税務署長に対し、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を申請し承認を受けることが必要です。
やむを得ない理由がやんだ日から2か月以内の範囲であれば、個別指定で期限を延長することが認められます。
還付申告については5年間手続が可能となっているため令和3年分の確定申告期限を過ぎた後でも問題ないといえるでしょう。
簡易な方法で期限を猶予してもらうことも可能
新型コロナウイルス感染拡大の影響で個別延長を申請するとき、所轄税務署長に対して「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を申請するのは面倒と感じる方もいることでしょう。
たとえば確定申告書の余白などに所定の文言を記載するといった方法で申請できるほうが手間はかかりません。
そこで、令和3年分の申告所得税・贈与税・個人事業者の消費税の確定申告は、令和4年3月15日(個人事業者の消費税は3月31日)の期限まで、新型コロナウイルス感染症の影響で申告が難しい方は4月15日までの間であれば、簡易な方法で申告・納付の期限を猶予してもらうことができます。
所轄税務署長に対し別途「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出しなくても、申告書の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」など文言を記載しておけば問題ありません。
もし電子申請(e-Tax)で申告するときには、所定欄にその旨を入力すればよいとされています。
申告期限・納付期限は原則、申告書の提出日になるため、申告・納付できる時点で手続しましょう。
郵便などで提出するときには、通信日付印(消印)の日付が提出日となることは注意してください。
なお、猶予してもらった後の納付期限までに納付が難しいという場合には、納付の猶予制度が適用されることもあります。
この場合、別途、税務署に申請手続が必要なので所轄の税務署の徴収担当に相談するようにしてください。
法人税・相続税なども対象
法人税や相続税などの税務手続についても、新型コロナウイルス感染症の影響で期限までに申告・納付などが困難であれば、申告書の余白に所定の文言を記載する簡易な方法で期限を引き延ばすことができます。
簡易な方法で個別延長の対象となる手続
簡易な方法で個別延長を申請できるのは、令和4年1月以降に申告など法定期限を迎える手続です。
令和3年12月末以前に申告などの法定期限を迎えた手続は「災害による申告、納付等の期限延長申請書」の提出が必要になります。
また、令和4年1月以降に申告などの法定期限を迎える手続について、令和4年4月16日以降に期限を猶予してもらう申請を行うときにも「災害による申告、納付等の期限延長申請書」の提出が必要です。
猶予が認められた場合の申告・納付期限
令和4年4月15日までに簡易な方法で申告と個別延長の申請をした場合、原則、申告書の提出日が申告・納付期限です。
4月16日以降も新型コロナウイルス感染拡大の影響で申告などできなかったときには、申告可能となった日から2か月以内に「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を所轄の税務署に提出してください。
この場合、所轄の税務署長の指定した日を申告・納付期限とします。
期限を個別猶予してもらえる「やむを得ない理由」とは
新型コロナウイル感染拡大の影響で期限を個別に猶予してもらうには、期限の個別延長が認められる「やむを得ない理由」に該当していなければなりません。
これまでの災害のときに認められていた理由だけでなく、たとえば次のような理由であれば認められます。
個人・法人共通の「やむを得ない理由」
個人と法人の共通した「やむを得ない理由」は以下のとおりです。
①以下のような事情で納税者・法人役員・経理責任者・税務代理など行う税理士(事務所職員含む)が、保健所・医療機関・自治体などから外出自粛の要請を受けた場合
- ・感染症に感染した場合
- ・発熱症状など感染症に感染した疑いがある場合
- ・感染症患者に濃厚接触した疑いがある場合
- ・基礎疾患があるなど感染症に感染すると重症化するリスクが高い場合
②納税者・法人役員・経理責任者・税務代理などを行う税理士(事務所職員を含む)などが外国に滞在しており、ビザが発給されない場合やそのおそれがあるなど入出国に制限などがある場合
③以下のような事情で企業・個人事業者・税理士事務所などにおいて、通常業務を維持することができない状況が発生した場合
- ・経理担当部署の社員が、感染症に感染した場合や感染症患者に濃厚接触したなど、相当期間において部署を閉鎖しなければならなくなった場合
- ・学校が臨時休業した場合や感染拡大防止策のため企業が休暇取得を勧奨したなどで、経理担当部署の社員の多くが休暇を取得している場合
- ・新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づいて、生活維持に必要な場合を除いて外出自粛を求められ、在宅勤務体制も整備されていないなどで経理担当部署の社員の多くが業務に従事することができない場合
法人のみ適用される「やむを得ない理由」
①感染症の拡大防止のため、定時株主総会の開催時期を延期するなど緊急措置を講じた場合
なお、これらの理由以外でも、個別申請により申告期限を猶予してもらえることはあるため所轄の税務署(または国税局)に相談してみるとよいでしょう。
納付の猶予制度関係
新型コロナウイルス感染拡大の影響で資金繰りが悪化してしまい、期限までに国税を全額納付できないというケースもあるでしょう。
納付期限までに国税を一時的に納めることが難しいという場合には、税務署に申請することで1年間は納付が猶予され、猶予期間中の延滞税は軽減または免除されます。
なお、令和4年の延滞税軽減は、年8.7%が年0.9%の割合となります。
まとめ
納付の猶予制度は、個人・法人を問わず、すべての税目が対象です。
そのためコロナ禍で一時的に税金を納めることができない事情があるという場合、そのまま放置せずに税務署の徴収担当に相談しましょう。
猶予の申請や審査なども簡素化されており、柔軟に対応してもらうことができるはずです。
また、税金の納付資金が不足しているものの、銀行などから融資を受けることができず資金調達できないときにはファクタリングを活用してみてはいかがでしょう。
ファクタリングは売掛金を現金化する資金調達の方法ですが、赤字決算や税金を滞納していても対応できます。
手元の資金をスムーズに増やすことができる方法のため、現金がなく困ったときにはファクタリング会社に相談してみることをおススメします。