リースバックで結ぶ「売買契約」と「賃貸借契約」で押さえておきたいポイントとは
2021年12月10日 / 資金調達
「リースバック」とは、自宅を保有する方が資金調達するときの方法の1つですが、「売買契約」と「賃貸借契約」の2つの「契約」で成立します。
長く生活していた家を売却しても「リースバック」ならそのまま住み続けることが可能となるため、老後の資金準備の方法として活用されています。
そこで、具体的にはどのような契約を結ぶことになるのか、そもそも「リースバック」とはどのような資金調達の方法なのか解説していきます。
リースバックとはどのような資金調達の方法か
「リースバック」とは、売却した家にそのまま住み続けながら、まとまった資金の調達が可能となる方法です。
投資家や不動産会社に自宅を売却した後でも、その家を借りる形で毎月家賃を払えば住むことができます。
主にリースバックを資金調達の方法として利用するときとは、
- ・住宅ローンの支払いが滞りそうなとき
- ・事業などの資金が急に必要になったとき
などです。
ただ、リースバックで「賃貸借契約」を結んでも、契約期間には制限があることが多いことは注意しておきましょう。
リースバックで契約するメリットとデメリット
リースバックで資金を調達するときには、「売買契約」と「賃貸借契約」の2つの契約を結ぶことになります。
その上で、リースバックにはどのようなメリットとデメリットがあるか解説していきます。
リースバックで契約し資金調達するメリット
リースバックで契約し、資金を調達するメリットは主に次の3つです。
- ・家を売っても引っ越しする必要がない
- ・短期間でまとまった資金の確保が可能
- ・資金使途を自由に決めることができる
それぞれ詳しく説明していきます。
家を売っても引っ越しする必要がない
リースバックで資金を調達しても同じ家に住み続けることができるため、家を売却したこと近隣に知られることなく、引っ越しする必要もないため引っ越し資金も必要ありません。
短期間でまとまった資金の確保が可能
自宅の売却を仲介会社に依頼すると、買主を探すことからスタートするため売却まで時間がかかってしまいます。買主が見つからなければ、資金調達ができない可能性も考えられるでしょう。
しかしリースバックなら、不動産会社が買い取ることになるため買主を探す手間や時間がかからず、スムーズに資金を調達できます。
また、家を手放すことになるため、それまで発生していた固定資産税などの負担もなくなることがメリットです。
資金使途を自由に決めることができる
家に関連する資金調達の方法として、たとえば「住宅ローン」や「リバースモーゲージ」があります。
「住宅ローン」とは家を購入するときに金融機関が行う貸し付けであり、調達した資金は不動産購入資金として使われます。
「リバースモーゲージ」とは高齢者が保有する自宅を担保の融資を受ける資金調達の方法ですが、生活に必要な資金など使い道が制限されていることもあります。
しかし「リースバック」には資金使途に制限がないため、たとえば事業用資金に使っても問題ありません。
リースバックで契約し資金調達するデメリット
リースバックで契約し、資金を調達するデメリットは主に次の2つです。
- ・周辺相場よりも賃料が高い場合がある
- ・賃貸契約期間が制限されることがある
それぞれ詳しく説明していきます。
周辺相場よりも賃料が高い場合がある
リースバックの賃貸借契約で設定される「賃料」は、通常の相場より高くなるケースが多いといえます。
リースバックによる年間賃料の相場は売却価格の7~13%程度となるため、周囲の家賃相場は加味されにくく、周辺相場より高めに設定されることがあります。
賃貸契約期間が制限されることがある
リースバックで賃貸借契約を結んでも、売った家に住み続けることができる期間は限られることがあります。そのため賃貸借期間が限定されるときには、その後のライフプランも検討しておくことが必要です。
リースバックの売買契約書作成前に決めておくべきこと
リースバックで「売買契約書」を作成するとき、契約内容として記載する項目はいろいろありますが、先に次のことを決めておくことが必要です。
- ・売買価格
- ・決済・物件引き渡しの日程
- ・買い戻しに関する取り決め
売買価格
家を売ればその代金は一括で支払われることになり、まとまった資金の調達が可能です。そのためいくらで家を売るのか決め、買主と売主の双方が納得した上で契約を結ぶようにしましょう。
決済・物件引き渡しの日程
いつ家の代金を支払ってもらい、売った家を引き渡すのか、資金が必要なタイミングに合っているか確認しておきましょう。
買い戻しに関する取り決め
一旦は売却し賃貸で住み続けた後、再度家を買い戻すかもしれないという場合には、買主と買い戻しができる期間や買い戻すときにいくら支払えばよいのか価格などを協議しておくことが必要です。
リースバックの賃貸借契約書作成前に決めておくべき内容
リースバック契約では、家を売るための売買契約だけでなく「賃貸借契約」も結ぶことが必要です。
「賃貸借契約書」を作成する前に、まず次の項目について決めておくようにしましょう。
- ・契約期間
- ・賃料・敷金など
- ・賃料の支払い方法と期限
- ・途中解約するときの方法
- ・退去するときの原状回復
それぞれ詳しく説明していきます。
契約期間
契約普通借家契約と定期借家契約か否か
リースバックの賃貸借契約は、「普通借家契約」と「定期借家契約」のどちらで契約するかによって、賃貸できる期間が変わってきます。
契約期間が2~3年に制限されることが多いのは、一般的な普通借家契約ではなく「定期借家契約」を結んだときです。
「普通借家契約」では正当事由がなければ「更新」できますが、「定期借家契約」では契約で定めた期間が満了すれば契約終了となります。
リースバックで資金を調達後も、長く家に住み続けたいのなら、どのような契約を結ぶのか事前に取り決めておくことが必要です。
賃料・敷金など
毎月いくら家賃として「賃料」を支払うことになるのか、「敷金」の金額なども決めておくことが必要です。
賃料の支払い方法と期限
家を賃貸することで発生する家賃は、「毎月」または「一括」のどちらの方法で、いつまでに支払うのか決めておきましょう。
途中解約するときの方法
もしも契約を途中解約するときのために、事前に予告しておく必要のある期間を設けておきましょう。一般的には1~2か月程度とすることが多いようです。
退去するときの原状回復
家を退去するときの原状回復義務や費用の負担についても決めておくことが必要になります。
リースバックで資金調達するときに押さえておきたいポイントとは
リースバックで資金調達するとき、押さえておきたいポイントとは主に次の3つです。
- ・家賃を払い続けることができるかシュミレーションしておく
- ・売買契約と賃貸借契約の内容を確認し納得した上で契約する
- ・いずれ家を買い戻したいときには計画を立てておく
リースバックで調達した資金使途は問われないため、相続対策や老後資金対策などで活用されることが多い方法です。定年退職した後の年金暮らしに不安があるときでも有効な方法といえます。
事業で資金が足らないという場合でも活用できるため、お金は必要なものの引き続き家に住みたいときや、引っ越し費用が準備できないときなども活用するとよいでしょう。