クラウド会計ソフトの利用率はどのくらい?個人事業主が注目する理由とは
2022年1月5日 / 資金繰り
確定申告の時期が近づいてきましたが、個人事業主の「クラウド会計ソフト」の利用率はどのくらいなのでしょう。
クラウド会計ソフトとは、インターネット経由で会計ソフト機能の利用が可能となるソフトであり、その便利さから利用率は高まっていると考えられます。
そこで、普段の会計処理に不安がある個人事業主でも気軽に利用できるクラウド会計ソフトとは何か、どのくらいの利用率なのかについて説明していきます。
「会計ソフト」とは何か
「会計ソフト」とは、仕訳から決算書を作成するまで行うことができるソフトウェアのことです。
他にも給与計算や年末調整まで対応可能とする機能や、所得税・消費税などの確定申告書を作成できる機能も備わっています。
日常の会計処理を記録していくことだけでなく、最終的な税金の計算・申告に必要な書類作成も可能なので、個人事業主などが多く利用しています。
この「会計ソフト」には、
- ・インストール型
- ・クラウド型
の2つのタイプがありますが、「クラウド型」であればパソコンにソフトをインストールせず使えるため、さらに便利です。
「クラウド型」の「会計ソフト」とは
「クラウド型」の「会計ソフト」とは、入力したデータを保存する場所がインターネットを経由させたクラウド会計ソフト事業者のサーバーなどであることです。
そのため、自身がデータを保存しなくてもよいですが、インターネット環境になければ利用できません。
また、年間で1万円前後の利用料がかかること、給与計算ソフトなども利用する場合には追加または別途料金が発生することは留意しておきましょう。
クラウド会計ソフトのメリットとデメリットをまとめると以下のとおりになります。
メリット
- ・複数のパソコン・タブレット・スマホから利用が可能
- ・税法が改正されても自動でバージョンアップされる
- ・OSに関係なく利用できる
- ・税理士とのやり取りを効率的にできる
デメリット
- ・インターネット環境でなければ利用できない
- ・利用にあたり料金が発生する
- ・インストール型と比較すると動作・処理に遅れが出る場合がある
クラウド会計ソフトの利用状況
クラウド会計ソフトとは、インターネットを経由して会計ソフト機能の利用が可能となるソフトを指すため、たとえばパソコンに会計ソフトをインストールしている場合や会計データのみインターネット上に保管するソフトなどは含みません。
個人事業主の場合、気軽に、そして複雑な操作なく使える会計ソフトを利用したいと思うものでしょう。
そのような個人事業主にぴったりといえるのがクラウド会計ソフトであり、多くの方が利用しています。
実際どのくらいの個人事業主がクラウド会計ソフトを利用しているのか、東京都港区に本社のある株式会社MM総研が個人事業主を対象に実施したWebアンケート調査の結果を参考に見ていきましょう。
クラウド会計ソフトの利用率
この調査では、クラウド会計ソフトの利用状況として、2020年(令和2年)分の確定申告を行った個人事業主(21,810事業者)を対象としています。
調査結果によると、会計ソフトを利用している個人事業主は35.3%。その中でクラウド会計ソフトを利用している割合は26.3%となっており、これは前回調査された2020年4月の結果より5.0ポイント増となっています。
クラウド利用率は過去最高の伸び率であるようですが、その背景にはクラウド会計ソフトの利便性の高さが広く認知され始めたことが関係していると考えられます。
さらに政府による行政手続もデジタル化し、減額された青色申告特別控除(55万円)も、インターネットによる電子申告で65万円の控除が適用されることも大きな影響を与えているといえるでしょう。
クラウド会計ソフトのシェアを占めるのは?
大変便利なソフトであるクラウド会計ソフトですが、今後は電子申告のメリットをさらに積極的にアピールし、サポートも強化されていくと考えられます。
まさにクラウド会計ソフト市場拡大に向けた大きな追い風になると考えられますが、クラウド会計ソフト事業者で市場を大きく占めているのは大手3社です。
クラウド会計ソフト事業者の大手3社とは、
- ・弥生(57.0%)
- ・freee(20.6%)
- ・マネーフォワード(14.8%)
となっており、この3社で全体の92.4%を占めています。
会計ソフトを利用しない事業者もある
多くの個人事業主がクラウド会計ソフトを利用していますが、「会計ソフトを利用していない」と回答した個人事業主も56.9%います。
では会計ソフトの代わりに何を使って会計処理をしているのかというと、
- ・市販の帳簿やノートなどへの手書き(41.7%)
- ・エクセルなどの表計算ソフトに入力(35.3%)
- ・税理士や会計事務所への外部委託(19.1%)
となっており、紙媒体での処理のほうがよいと感じる個人事業主も少なくない結果です。
ただ、記載ミスや転記ミスなどを防ぐためには、やはりクラウド会計ソフトのほうが便利といえるでしょう。
クラウド会計ソフトの便利な機能は主に4つ
クラウド会計ソフトに備わっている次の4つの機能を活用することで、手入力するときよりも作業にかかる時間を大幅に減少させることができます。
その機能とは、
- ・通帳履歴などと自動で連携する機能
- ・請求書を作成する機能
- ・領収書・レシートなどスキャンする機能
- ・売上や経費のレポート発行
それぞれ詳しく説明していきます。
通帳履歴などと自動で連携する機能
自動連携機能の利用は、事前にネットバンキングやクレジットカード明細確認が可能なサービスと連携できるように設定しておくことが必要になります。
しかし連携しておけば、通帳履歴やクレジットカード明細などの数値から、自動的に仕訳が作成されるため大変便利です。
領収書・レシートなどスキャンする機能
クラウド会計ソフトはタブレットやスマートフォンからも操作が可能となっているため、手元のレシートや領収書をたとえばスマホカメラで撮影すれば、自動的に仕訳入力が行われます。
請求書を作成する機能
会計ソフト経由で請求書を作成すれば、売上計上と入金処理を自動で仕訳するため、取引先の管理を別途行っている場合には請求書作成機能を活用して作業時間を減少させましょう。
売上や経費のレポート発行
仕訳の数値から、自動で試算表や総勘定元帳の作成が可能です。さらに月ごとの売上や経費などもすぐに確認できるため、分析なども用意にできます。
クラウド会計ソフトを導入するときには次の準備が必要
クラウド会計ソフトを導入しようという場合には、次のことを事前に準備しておくようにしましょう。
- ・データ移行の準備をする
- ・会計処理で使う勘定科目を決めておく
- ・連携させる銀行口座やクレジットカードなどのインターネットアカウントを用意
行政手続のデジタル化は、事業規模の大きさに関係なく、すべての個人事業主にとって対応を迫られることとなるでしょう。
会計ソフト自体まだ利用していないという個人事業主も少なくないため、今後、さらに電子申請などが推奨される動きが活発化すれば、いざというときに慌てて対応しなければなりません。
クラウド会計ソフト事業者にもよりますが、初年度は年会費などかからない場合や、期間限定で無料とするキャンペーンなども行っています。
本当に自分でも活用できるのか?と不安を感じる個人事業主でも、気軽に利用しやすいようにクラウド会計ソフトの敷居を下げる取り組みなども継続して行われているといえるでしょう。
そのためまだ会計処理を紙媒体で行っている個人事業主などは、クラウド会計ソフトに移行するといったことも検討してみることで、作業時間を大幅に減少し新規顧客の開拓にもつなげやすくなると考えられます。