どのくらいの税金を納めるかわからない方が行う確定申告の方法と流れ
2021年12月13日 / 事業資金
年末が近づくと、そろそろ確定申告の準備を行わなければならないものの、税金について詳しくないためやり方や流れが難しいと感じる方も少なくありません。
初めて確定申告する方はもちろん、何度も行っている方でも年に一度の手続であるため、今はまだどのくらいの税金を納めるかわからない方でも正しい手続の流れを把握しておきましょう。
そこで、ただしく納めなければならない税金を計算するため、確定申告がわからない方に向けてその方法や流れについて解説していきます。
確定申告は納める税金がわからないままにしないための手続
確定申告とは、どのくらい「儲け」が出たのか計算し、それに対する税金を計算して精算する手続のことです。
この「儲け」を「所得」といいますが、所得は次の10に分類されます。
- ・利子所得
- ・配当所得
- ・事業所得
- ・不動産所得
- ・給与所得
- ・退職所得
- ・譲渡所得
- ・山林所得
- ・一時所得
- ・雑所得
「所得」に対しては決められた「税金」を支払うことが義務付けられているため、1年間の「所得」を集計しどのくらいの税金を納めることになるか計算するための手続が「確定申告」です。
そして税金を納める納税者自らが、自身で税金を計算・申告・納税することを「申告納税方式」といいます。
確定申告が必要になるケース
確定申告は誰でも必要というわけではなく、一定の要件に該当する方が行います。
一般的には個人事業主やフリーランスなどが対象ですが、会社員で年末調整を受けている方でも副業をしている場合は確定申告を行う対象に該当する場合もあります。
具体的に会社員で確定申告が必要になる方と、会社員以外で必要な方に分けて説明していきます。
会社員で確定申告が必要になる方
現在会社員の方でも、次のいずれかに該当する方は確定申告が必要です。
- ・給与収入が2,000万円を超える
- ・給与に対する年末調整ができていない
- ・給与を2か所以上から受けており、主たる給与収入(「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している勤務先の給与収入)は年末調整済で、その収入合計が20万円を超えている
- ・副業で事業所得・不動産所得・譲渡所得などの合計が20万円を超えている
- ・同族会社の役員の方で、給与以外に他の会社から貸付利息や地代家賃等を受け取っている
会社員以外で確定申告が必要になる方
会社員でなければすべての方が確定申告を必要とするわけではなく、主に次のいずれかに該当する場合に必要となります。
- ・個人事業主やフリーランスの方で、事業所得・不動産所得などの合計から所得控除を差し引いても残額がある
- ・公的年金などの受給者であり、公的年金などにかかる雑所得から所得控除を引いてもなお残額がある
確定申告する必要のない方とは?
確定申告が必要になるのは先にのべた会社員・会社員以外の方のため、次の一定要件を満たせば確定申告は必要ありません。
会社員の場合
- ・給与所得を1か所から受けており、年末調整が完結している
- ・給与所得を2か所以上から受けているものの、主たる給与は年末調整をしており、副業の従たる給与所得の収入合計は20万円以下である
- ・給与所得は1か所から受けているものの副業をしており、その事業所得・不動産所得・譲渡所得などその他の所得合計が20万円以下である
会社員の場合、会社が給与所得に対する所得税を簡便的に精算する「年末調整」を行うため、個人で確定申告を行う必要はありません。
その上で2か所以上から給与所得がある場合や、副業している場合でも、その所得合計が20万円以下であれば確定申告を行わなくてもよいとされています。
会社員以外の場合
- ・個人事業主やフリーランスの方の事業所得や不動産所得などの合計が所得控除額以下である
- ・収入金額400万円以下の公的年金などの受給者であり、公的年金などにかかる雑所得以外の所得が20万円以下である
確定申告の必要がなくても手続したほうがよい方
確定申告を行う必要のある方は税金の精算手続が終わっていない状態のため、申告する必要があります。
ただ、本来なら確定しなくてもよいケースに該当する場合でも、行ったほうがよいケースもあります。
具体的な例を挙げると、確定申告をすることで還付金を受け取ることができる場合です。
そもそも確定申告は所得税という税金の精算手続のため、不足している税金を納めること以外にも、払い過ぎた税金を返してもらうことも含まれます。
この払い過ぎた所得税を返してもらう申告を「還付申告」といいますが、たとえば次に該当する場合には確定申告をする必要はなくても、したほうがよいといえるでしょう。
- ・医療費控除や寄付金控除を受けたいとき
- ・住宅ローン減税を適用されたいとき
- ・年度の途中で退職し年末調整を行っていないとき
還付申告は義務ではありませんが、手続しなくても税務署から返還されるといった連絡はありませんので、自身で積極的に行ったほうがよいといえます。
税額がわからない状態を続けないための確定申告のやり方
確定申告を行う必要があるとわかっていても、そもそもいつまでにどのようにすればよいかわからないという方もいることでしょう。
そこで、
- ・確定申告はいつまでに行うのか
- ・確定申告書はどこで入手・提出するのか
の2つについて説明していきます。
確定申告はいつまでに行うのか
確定申告の期限は、その申告が納付申告なのか、それとも還付申告なのかによって次の通り異なります。
- ・納付申告の場合…対象年の翌年2月16日から3月15日まで
- ・還付申告の場合…対象年の翌年の1月1日から5年間
納付申告は、前年分を期限までに集計し、申告することが必要となります。
払い過ぎた税金を戻してもらうための還付申告は、5年に遡って申告できるため、もし忘れている控除分などがある場合には手続するとよいでしょう。
確定申告書はどこで入手・提出するのか
確定申告は、規定の確定申告書に必要事項を記載し、税務署に提出します。
確定申告書は税務署に書面を受け取りに行くだけでなく、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」から書式をダウンロードし、印刷して使うことも可能です。
提出方法は、
- ・税務署への持参または郵送
- ・e-Taxによる申告
など選ぶことができます。
税務署への持参または郵送
全国の税務署では、担当として管轄する地域が決まっているため、納税地管轄の税務署で確定申告を行うことになります。
直接税務署や指定された場所へ持参し申告することもできますが、郵送や税務署の時間外収集箱に投函するといった方法も可能です。
e-Taxによる申告
国税庁の公式サイトにある「確定申告書等作成コーナー」では、必要事項を入力するだけ確定申告書の作成が可能です。
作成した確定申告書を印刷し、税務署に直接持参することもできますが、インターネット経由で税務署に送信する「e-Tax」を使えばネット上で申告手続を完結させることができます。
ただし「e-Tax」は事前準備が必要となるため、確認しておいたほうがよいでしょう。
税金を納めるための確定申告で必要となる書類
いずれにしても確定申告を行うためには、単に確定申告書を提出すればよいだけでなく、「収支内訳書/青色申告決算書」の添付が必要となります。
そこで、
- ・確定申告書
- ・収支内訳書/青色申告決算書
の2つについて説明していきます。
確定申告書
確定申告書には「確定申告書A」と「確定申告書B」にわけられます。
「確定申告書A」は、事業所得・不動産所得などを記入する欄がなく、「確定申告書B」を省略している内容になっています。
「第1表」と「第2表」の2枚を提出しますが、「第2表」に記載しきれない明細があるときには「所得の内訳書」に記載し添付します。
なお、申告書類は改正があるため、必ず新しい書式のものを使うようにしてください。
収支内訳書/青色申告決算書
「事業所得」や「不動産所得」があるときに必要になる書類です。
一定水準を満たす帳簿を作成し申告する場合、所得計算で有利となる扱いを受けることができる制度が「青色申告制度」であり、その際には「青色申告決算書」を作成します。
そして青色申告の水準は満たさないものの、事業所得など適切に記載し申告する場合には「白色申告」という扱いとなり、「収支内訳書」を作成し確定申告書に添付して提出します。
確定申告で書類以外に必要になるもの
確定申告書を作成するためには、書類以外にも必要なものがあります。
具体的には、
- ・マイナンバーカードまたは住民票の写しなど
- ・印鑑(認め可)
- ・領収書・レシート・帳簿
- ・銀行口座の通帳
また、発生している所得の種類に応じて必要になるものもあるためあわせて説明していきます。
マイナンバーカードまたは住民票の写しなど
確定申告ではマイナンバーカードが必ず必要になるわけではありませんが、マイナンバー(個人番号)を記載する欄があるため、番号が確認できるものの準備が必要です。
たとえばマイナンバーカード以外にも、
- ・個人番号通知書
- ・通知カード
- ・住民票(個人番号記載のもの)
などが挙げられます。
また、扶養控除や配偶者控除などの適用の際には、家族の個人番号も記載することになるため、準備しておきましょう。
なお、「e-Tax」で確定申告するときにはマイナンバーカードが必要となるため、電子申告を希望する場合には事前準備の1つとして用意しておいてください。
印鑑
令和3年4月1日以降は確定申告書に印鑑の押印は必要ありません。手書きで申告書を作成する場合において、記載ミスがあった部分を訂正するときも、二重線で消し書き直すだけでよいとされており、訂正印は不要です。
領収書・レシート・帳簿
収支内訳書や青色申告決算書では、1年間の収支についてまとめて記載しなければならないため、取引の内容を示す請求書・領収書・レシート・銀行の通帳などを準備しておきましょう。
取引ごとに帳簿に記載し、集計した数値を収支内訳書などに転記し作成します。
銀行口座の通帳
申告書を作成した結果、払い過ぎた税金を戻してもらう場合には、入金する金融機関の口座情報が必要です。
銀行・支店・預金種別・口座番号が確認できるものを準備しておきましょう。
納める税額がわからない状態を続けないためのサポート窓口
確定申告書を作成する方法がどうしてもわからないという場合には、税理士に依頼することも方法として考えることができます。
ただし税理士などに依頼すると報酬を支払うことが必要となるため、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」でまずは申告書を作成できるか確認したほうがよいでしょう。
作成方法がわからないときには、税務署に相談することも可能です。また、電話で国税局の公式サイトに「税についての相談窓口」の案内があります。
チャットや電話で相談できるため、活用するとよいでしょう。
その他、税金に関する相談なども対応しているようです。
確定申告しなかったときは罰則の対象?
確定申告のやり方がわからないという理由で、そのまま手続しなかった場合には罰則の対象となります。
もし納めなければならない税金が発生しているのにも関わらず、確定申告をしておらず3月15日までの申告期限に遅れたときには、本来納めるべき税金に加え「無申告加算税」や「延滞税」などが加算されてしまいます。
「無申告加算税」とは、期限までに確定申告を行わず税金を納めなかったときに加算される税金で、納付しなければならない税金に対し50万円までは15%・50万円を超える部分には20%を乗じた金額が課せられます。
ただし期限を過ぎた場合でも、1か月以内に自主的に申告・納付すれば課せられることはありませんので、もし遅れたときも早めに申告を済ませましょう。
また、意図的に申告しなかった悪質なケースの場合、「重加算税」も加算されることになるため、税負担はますます重くなりますので注意してください。
払い過ぎた税金を戻してもらう還付申告にはペナルティーはなく、意図的に申告しなかったとしても税金を取り戻す権利を放棄したとみなされるのみです。
税務署から連絡が届くこともないため、払い過ぎた税金がある場合には5年以内に還付申告するようにしてください。
まとめ
確定申告とは、1年間でどのくらい「儲け」が出たのか、それに対し納めなければならない税金はどのくらいか計算し精算する手続のことです。
誰でも必要というわけではなく、一定の要件に該当する方が行いますが、申告義務がある方が手続しないまま放置していると罰則の対象になってしまいます。
反対に返還される税金があるのに5年を過ぎて放置してしまうと、取り戻す権利を失いますので注意してください。