税金の相談は「税理士」と「公認会計士」のどっちか迷ったときの決め手となるポイント
2022年2月3日 / 資金繰り
確定申告や法人決算の時期が近づいてくると、税金の相談を「税理士」と「公認会計士」のどっちにするべきか迷う経営者もいることでしょう。
どっちも税金の専門家というイメージですが、それぞれの専門分野という視点で端的にあらわすとしたら、税理士は「税務」の専門家であり会計士は「監査」の専門家といえます。
「税理士」と「公認会計士」はどっちも税務や会計などをメインとした業務を行うため、仕事内容が混同されていることもあるため、「税理士」と「公認会計士」の違いと中小企業ならどっちに相談するべきか説明していきます。
税理士と公認会計士の独占業務の違い
税務や会計を主に業務とする「税理士」と「公認会計士」はそれぞれ異なる資格であり、資格保有者のみが扱うことのできる業務「独占業務」も違いがあります。
そこで、「税理士」と「公認会計士」の独占業務の違いについてまずは理解を深めていきましょう。
税理士の独占業務
税理士は、個人事業主や中小企業の税務処理、納税・節税に関するアドバイスなどの税務を主に行っています。
税理士の独占業務は税理士法に規定されており
- ・税務代理
- ・税務書類作成
- ・税務相談
の3つです。
それぞれ説明していきます。
税務代理
税務代理とは、
- ・納税者の代わりに税務署に申告・申請を行う
- ・税務調査に立ち会い税務調査の対応を行う
などの業務です。
財務諸表をベースに税金の申告書類を代行作成することや、節税などのアドバイスも行います。
税務書類作成
税務署に提出しなければならない届出書を、納税者に代わって作成・提出する業務です。申告書作成などが代表的な業務といえます。
税務相談
税金計算や必要な手続など、税務の相談に応じる業務です。
公認会計士の独占業務
公認会計士の独占業務は公認会計士法で「監査業務」と規定されています。
「監査業務」とは、企業が作成した「財務諸表」が適正な内容になっているか、第三者の立場で評価する業務です。
投資家の出資や銀行の融資の判断は「財務諸表」をもとに判断していくため、不正や誤りなく正しく作成されているか「信頼性」を保証するためにチェックしていきます。
なお公認会計士が行う業務は他にも
- ・財務諸表監査
- ・内部統制監査
- ・コンサルティング(MAS)
- ・IFRS(国際財務報告基準)関連業務
などがあります。
「税理士」と「公認会計士」に相談する必要性が高い会社
税金について税理士や公認会計士などの専門家に自主的に相談したいというケースもあれば、公認会計士の監査を受けなければならないケースもあります。
そこで、「税理士」と「公認会計士」のそれぞれに相談する必要性が高い会社について説明していきます。
税理士との顧問契約は義務ではない
税理士と顧問契約を結ぶことや、税理士から監査を受けることを義務付けている法律はありません。
確定申告書の作成についても、事業者本人が作成し提出することができれば、税理士に相談する必要はないといえるでしょう。
そのため税理士に相談するケースとは、あくまでも自主的に頼りたいときといえます。
公認会計士または監査法人の監査が義務づけられている法人もある
監査が義務付けられる法人の場合、公認会計士または監査法人による監査を必要な頻度で受けることが必要です。
会計監査人による監査が義務付けられている会社は次の3つです。
- ・大会社(資本金が5億円以上、または負債金額が200億円以上)
- ・指名委員会等設置会社(株式会社の内部組織形態でそれぞれ3人以上の取締役で構成する指名委員会・監査委員会・報酬委員会の3つの委員会が設置されている会社)
- ・監査等委員会設置会社(会社内部に3名以上の取締役で構成する監査等委員会を設置した会社)
「税理士」と「公認会計士」のどっちに相談するか迷ったときの決め方
特に公認会計士の監査を受けることが義務付けられているわけではない中小企業などの場合、税理士と公認会計士のどっちを選んでも問題ないといえます。
ただ、どっちに相談するか迷ったとき、ケースに応じてそれぞれ次のように選ぶとよいでしょう。
そこで、
- ・税理士に相談したほうがよいケース
- ・公認会計士に相談したほうがよいケース
- ・どっちを選んでもよいケース
の3つについて説明していきます。
税理士に相談したほうがよいケース
税理士に相談したほうがよいのは主に、
- ・確定申告書作成を代理で依頼したいとき
- ・税務調査の立会いを依頼したいとき
- ・税金などについて税務相談を受けたいとき
の3つです。
確定申告書作成を代理で依頼したいとき
確定申告書など税金の申請書・請求書・不服申立書の作成は、納税者以外では税理士でなければ行うことができない独占業務です。
そのため申告について不明な点があるときや代理で依頼したいことがあるときなどは、税理士に相談するようにしましょう。
税務調査の立会いを依頼したいとき
税務調査が入ったとき、担当者の質問に代理でこたえる権限を持っているのは税理士だけです。
そのため税務調査のときに立ち会いを希望するときには、税理士に相談・依頼したほうがよいでしょう。
税金などについて税務相談を受けたいとき
一般的な節税スキームを解説してほしいのなら、税理士でなくても公認会計士にも相談できます。
ただ、個別の事例にこたえる形式の税務相談は税理士の独占業務となっているため、具体的に発生している問題を解決させたいときには税理士に相談しましょう。
公認会計士に相談したほうがよいケース
税理士ではなく公認会計士を選び相談したほうが良いケースとは、
- ・会計監査について相談したいとき
です。
監査が必要な法人が、会計処理の不明点・決算書作成・注記内容などについて知りたいときには、公認会計士に確認しましょう。
税理士を顧問につけている場合でも、会計処理に関わる内容は監査機関に判断を委ねたほうがよいといえます。
どっちを選んでもよいケース
税理士と公認会計士のどっちに相談してもよいケースとは、
- ・一般的な税務や会計に関する質問があるとき
- ・記帳代行や決算書作成について相談・依頼したいとき
- ・創業支援やコンサルティングを受けたいとき
の3つです。
一般的な税務や会計に関する質問があるとき
一般的な税務・会計に関する質問があるときには、税理士と公認会計士のどっちにたずねても問題ないと考えられます。
記帳代行や決算書作成について相談・依頼したいとき
記帳代行や決算書作成を代行することは、税理士と公認会計士のどっちにも依頼できます。
創業支援やコンサルティングを受けたいとき
助成金や補助金を申請して資金調達したいときや、創業支援・事業承継などのコンサルティングを受けたいときも、税理士と公認会計士のどっちに相談しても問題ありません。
中小企業は「税理士」・大企業は「公認会計士」
税理士の場合、個人事業主と法人どっちも顧客の対象となるため、クライアントは大企業・中小企業・個人事業主と多岐に渡りますが、中小企業の場合は税理士を選んだほうがよいでしょう。
公認会計士の場合、主な業務は監査であり、大会社などは公認会計士の監査を受けることが義務付けられているため、クライアントは主に大手企業といえます。
税金の申告や納税は、企業規模の大小を問わず義務付けられていることですが、正しい税務申告を行いたいときには税務を独占業務とする税理士へ相談しましょう。
ただ、公認会計士と税理士を兼任している専門家もいるため、たとえ税理士登録していない場合でも一般的な税務に関する質問には対応してもらえます。