銀行などから融資を受けている場合、本来の借入可能額はどのくらいなのか、もっと借りることができるのではないか?と考える法人もあるようです。
確かに借入可能となる限度額が高いほど、法人運営に充てる資金を調達しやすくなり、資金繰りもスムーズになることでしょう。
あとどのくらいであれば借入れできるのか、可能額を知りたくても実際には、法人が金融機関に申請しなければ確認できません。
ただ、金融機関では法人の貸借対照表や損益計算書により審査を行うため、自社の財務状況を把握することで借入可能額を予測することはできるでしょう。
そこで、法人の借入可能額を予測するときに、参考にしたい指標とその考え方についてご説明します。
目次
借入可能額を知るなら法人の2つの指標を参考に
法人がどのくらいまでであれば融資を受けることができるのか、借入可能となる限度額を知りたいのなら、「借入金月商倍率」と「債務償還年数」という2つの指標を確認してみましょう。
銀行など金融機関が行う融資審査は、どの法人や事業者に対し同じというわけではなく、決算書などの数値分析(定量分析)と数値以外の分析(定性分析)により行います。
そして最終的に、提出された資料やいろいろな情報から総合的に判断することとなりますが、借入余力を知るには定量分析で用いられる指標「借入金月商倍率」と「債務償還年数」を参考にするとよいでしょう。
借入金月商倍率
月の売上(=月商)の何か月分、借入しているかを把握できる指標が借入金月商倍率です。
借入金月商倍率は、
借入金月商倍率=借入金÷月商
で算出できます。
この数値が、
- ・3か月以内であれば借入可能となる余力あり
- ・3~6か月であればすでに借入が多い状態
ということです。
判断は3か月を基準とすることが多いですが、特に期間に対する決まりはないため、月商6か月分の借入残高を有する中小企業もあります。
債務償還年数
企業が生みだすキャッシュフローにより、何年あれば借入金を完済できるかを把握できる指標が債務償還年数です。
債務償還年数は、
債務償還年数=有利子負債(借入金合計)÷簡易キャッシュフロー(当期利益+減価償却費)
で算出できます。
なお有利子負債やキャッシュフローの定義は金融機関ごとに違いがあるため、上記の計算式と異なる場合もあります。
計算により、
- ・10年以内であれば借入可能となる余力あり
- ・10年(15年)以上ならすでに借入れが多い状態
と判断できます。
銀行などにより用いる計算式に違いがあるため、算出される数値はそれにより異なります。また金融機関により10年以上で借入過多と判断する場合もあれば、15年以上という場合もあるなど、基準に違いがあることは留意しておいてください。
借入過多と判断するところもあります。
実際に借入金月商倍率と債務償還年数で法人の可能額を判断してみる
上記の指標に実際に数値をあてはめ、法人が今どのくらいなら借入れ可能なのか、その金額を確認してみましょう。
たとえば次のような法人を例にして、借入可能となる限度額を算出してみます。
年商…3,600万円(月商300万円)
借入金残高…850万円
税引き後当期利益…50万円
減価償却費…70万円
まずは借入金月商倍率を計算してみましょう。
事例による借入金月商倍率
借入金月商倍率=計算式:借入金÷月商
なので、
借入金月商倍率2.8か月=借入金850万円÷月商300万円
です。
月商3か月までなら借入余力があると考えれます。
そのため、
月商300万円×3倍=900万円
900万円-借入金残高850万円=50万円
の借入れが可能となると考えられるでしょう。
事例による債務償還年数
債務償還年数は、
債務償還年数=有利子負債(借入金合計)÷簡易キャッシュフロー(当期利益+減価償却費)
で計算しますので、
債務償還年数7.0年=借入金850万円÷(当期利益50万円+減価償却費70万円)
となります。
簡易キャッシュフローの10年分までは借入余力があるとすれば、
簡易キャッシュフロー120万円×10年分=1,200万円
1,200万円-借入金残高850万円=350万円
までは借入れできる可能性があると考えられます。
指標による事例の財務指標
上記の指標を用いた結果により、
借入金月商倍率…2.8か月
債務償還年数…7.0年
となりました。
借入金月商倍率を参考にするとあと50万円、債務償還年数では350万円の借入れが可能となることが予測できます。
金額には300万円の差があるため、どちらも整合性が取れていないと感じることでしょう。
金融機関は債務償還年数のキャッシュフロー力を重視していると考えられるため、まずは借入金月商倍率を計算してみましょう。それで3か月を超えていたとしても、債務償還年数を計算し、10年以内なら借入余力はある可能性があると判断します。
事例の法人であればあと350万円は借入れ可能となる余力が残っていると判断でき、不動産など担保を差し入れることでその金額は大きくなる可能性もあります。
信用保証協会の保証を付けることができれば、さらに融資可能額は大きくなるといえるでしょう。
ただ、事例の法人が350万円追加で融資を受けた場合、売上規模は変わっていなければ借入金月商倍率=1,200万円(850万円+350万円)÷300万円=4か月です。
売上規模を基準とした返済能力を判断する借入金月商倍率では3か月を超えているため、債務が増えすぎてしまうとも考えられます。
しかし簡易キャッシュフローを基準に返済能力を判断する債務償還年数であれば、たとえ売上規模が小さくてもキャッシュフローが大きければ債務償還年数にゆとりがあると考えます。
どちらの指標を目安にするかが重要ですが、2つの指標による数値を算出した上で見極めてみるとよいでしょう。
金融商品の融資限度額までは借入れが可能?
銀行などの金融商品や日本政策金融公庫の制度の概要などに、融資限度額や信用保証限度額などが記載されています。
中小企業の経営者の中には、この記載されている範囲までであれば融資を受けることが可能になると勘違いしていることがあるようです。
たとえば日本政策金融公庫の一般貸付の融資限度額を見ると4,800万円となっているため、まだこの金額まで融資を受けていないのであれば追加で借入れ可能となるはずと考えたくなるでしょう。
しかしどのような企業や事業者でも4,800万円まで借入れが可能という意味ではありません。
同じく信用保証協会の保証限度額も、どのような企業でも8,000万円まで保証可能というわけではなく、いずれも一定の条件をクリアした上での判断です。
融資限度額や信用保証限度額までなら借入れが可能であるはずなので、まだ枠に余裕があると考えてしまわないようにしましょう。
あくまでも、決算書や事業計画などの資料などを参考にしながら、総合的に判断した上で借入可能となる金額は決まります。
まとめ
法人が融資を受けて資金を調達するとき、すでに借入れをしていても追加融資を受けることができることもあります。
あとどのくらいであれば借入れが可能となるのか、その限度額を知りたいという場合には「借入金月商倍率」と「債務償還年数」を計算してみましょう。
ただし銀行など金融機関が使用する計算式や判断基準には違いがあるため、あくまでも目安として参考にするようにしてください。
また、上記の計算式により借入余力があると判断できる場合でも、必ずしも金融機関から融資を受けることができるわけではありません。
様々な項目を加味した上で、総合的に審査で判断されることになります。
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