新型コロナウイルス感染拡大の影響により、緊急事態宣言が再発令されるなど、事業者だけでなく一般個人も資金不足に悩まされる状況となっています。
緊急事態宣言が発令されていない地域でも客足が十分伸びず廃業してしまうしかない店舗もあれば、融資を受けて資金調達できず資金繰りが悪化してしまった企業や個人など少なくありません。
このような状況から厚生労働省も、新型コロナウイルスの影響により収入減少や失業などで生活に困窮している世帯などを対象とした「生活福祉資金貸付制度(緊急小口資金及び総合支援資金)」の申請期限を令和3年3月31日まで延長しました。
すでに緊急小口資金や総合支援資金でお金を借りている方であっても再度貸付可能となり、それぞれの制度の貸付上限額が引き上げされています。
そこで、コロナ禍で困窮した世帯のための緊急経済対策である「緊急小口資金」と「総合支援資金」の他、住まいがない方が貸付開始までに利用できる「臨時特例つなぎ資金貸付」についてご説明します。
目次
緊急小口資金で融資を受ける人は続出
2021年3月13日に厚生労働省と全国社会福祉協議会が公表した「緊急小口資金」の新型コロナ特例貸付決定件数は、2020年度だけで100万件を超えているとされています。
合計金額は1,900億円を超えており、簡単に比べることはできないものの、2011年に発生した東日本大震災のときの12.8倍となっています。
コロナ禍による緊急事態宣言発出で、時短営業や外出自粛の影響を受け、売上が激減してしまった事業者は少なくありません。売上も上がらなければ当然利益も出ず、手元の資金は不足する一方と廃業してしまった店舗などもあります。
同じように新型コロナがいつ収束か予想が立たない中で、雇用は安定せず生計維持が困難となっている世帯も増えています。
緊急小口資金の申請期限が延長に
図
「緊急小口資金」とは、国の補助金を原資としてそれぞれの都道府県の社会福祉協議会が、生活に困窮している世帯に対し10万円を貸し出す制度です。
無利子で生活費の融資を受けることが可能となっていますが、2020年3月には新型コロナ特例として、10万円だった融資額が最大20万円に増額されました。
さらに新型コロナ特例による貸し出しは2021年3月末までを申請期限とされていましたが、収束の先が見えない新型コロナの影響に対応するため、厚生労働省では2021年6月末まで延長する方針を固めています。
総合支援資金も同様の対応
厚生労働省は、1世帯あたり月最大20万円を9か月間に渡り貸し付けを行う「総合支援資金」の特例制度についても、申請期限を2021年3月末から6月末までに延長するとしています。
緊急小口資金と総合支援資金、この2つの資金を借入れすれば合計200万円資金を準備することが可能です。
他にも緊急支援パッケージとして
他にも政府は非正規雇用者に対する支援の他、職業訓練など情報紹介する相談窓口をハローワークに新設すること、ひとり親世帯に対する家賃貸付といった支援も検討しているようです。
緊急小口資金・総合支援資金が実質的な給付に
国民全員に一律10万円が支払われた「特別定額給付金」の再給付を求める声は現在も多くありますが、政府は定額給付金を給付する姿勢は見せていません。
資金不足で生活が困難な状態になっている方については、緊急小口資金や総合支援資金という生活福祉資金貸付制度の償還免除を具体化させて給付にすることが検討されています。
当初から、緊急小口資金と総合支援資金の特例貸付は、償還の際にも所得の減少が続いている住民税非課税世帯は免除することを可能としていました。
具体的に免除となる条件などはまだ決まっていないようですが、生活に困窮した人に対しきめ細かに配慮するとしているため、融資を受けた金額の一部ではなく一定の基準のもとで全額償還免除される可能性も十分あるといえるでしょう。
緊急小口資金
低所得世帯であり、緊急・一時的に給与や年金支給開始まで生活費が不足するなど、生計維持が困難となった場合の少額融資制度が「緊急小口資金」です。
無利子・無保証人で融資を受けることができ、原則、必要書類は各市区町村の社会福祉協議会の公式サイトからダウンロードし郵送することになります。
申請書類に記入する内容も、住所・氏名などの基本情報、自己申告での収入が減少した内容だけなので手続きはかなり簡素化されているといえるでしょう。
対象となる方
新型コロナウイルス感染症の影響により、休業などで収入が減少してしまい、緊急・一時的に生活を維持するための資金が必要な世帯が対象です。
貸付額
従来の緊急小口資金は10万円以内ですが、新型コロナの影響による取り扱いは20万円以内(一括交付)に拡大されています。
貸付上限額が20万円以内となるのは下記に該当する世帯です。
- ・世帯員の中に新型コロナウイルス感染症罹患者などがいる
- ・世帯員に要介護者がいる
- ・世帯員が4人以上
- ・世帯員に新型コロナウイルス感染症拡大防止策として、臨時休業した学校などに通学する子の世話が必要な労働者がいる
- ・世帯員に風邪症状など新型コロナウイルスに感染した恐れのある、小学校などに通学する子の世話が必要な労働者がいる
- ・上記以外で休業などによる収入減少を理由に、生活費用の貸付を必要としている
据置期間
据置期間は1年以内となっていますが、令和4年3月末日以前に償還が開始される貸付分は令和4年3月末日まで据置期間が延長されます。
償還期限
償還期限は2年以内となっていますが、新型コロナの特例措置により、償還時に引き続き所得が減少している住民税非課税世帯の償還は免除可能という扱いになっています。
免除とならない場合には、返済期限まで完済できないと残元金に対し年3%の延滞利子が発生するため注意してください。
貸付利子・保証人
緊急小口資金で融資を受ける場合、無利子で保証人は不要となっているのも安心して借入れできる点です。
必要書類
緊急小口資金を申請するときに必要となる書類は次の7つです。
このうち①~④の書類は、それぞれの住まいの市区町村の社会福祉協議会の公式サイトからダウンロードして使いましょう。
①本人確認書類(健康保険証・運転免許証・パスポート・マイナンバーカード)
②住民票の写し(世帯全員が記載されている発行して3か月以内のもの)
③預金通帳(申込当日まで記帳済のものであり、新型コロナウイルス感染症の影響で減収したことの他、税金・社会保険料・公共料金などの支払いが確認できる通帳)
④印鑑(銀行印)
⑤その他、社会福祉協議会が指定する書類
申込先
申込先は住まいを管轄する各市区町村の社会福祉協議会です。
以前は労働金庫連合会や取扱郵便局でも受付が行われていましたが、令和2年9月30日に終了となっているため、現在は各市区町村の社会福祉協議会のみが窓口となっています。
なお社会福祉協議会によっては、窓口での対応は感染防止の観点により扱わず、郵送のみのやり取りを原則としていることもあるため事前に確認しておきましょう。
厚生労働省 生活福祉資金の特例貸付
https://corona-support.mhlw.go.jp/seikatsufukushi/samout/counter.html
総合支援資金
失業してしまったことにより生活に困窮している方が、生活を立て直し経済面で自立できるように社会福祉協議会とハローワークなどが支援しながら、生活支援費・住宅入居費・一時生活再建費などを貸し出す制度が「総合支援資金」です。
対象となる方
新型コロナウイルス感染症の影響によって収入が減少したり失業してしまったり、それらを理由に経済的に困窮し生活を維持することが難しくなっている世帯が対象です。
生活再建までに必要となる生活費用を借入れることができますが、新型コロナウイルス感染症の影響で収入減少していれば、失業状態に陥っていなくても対象になります。
貸付額
貸付額は、世帯人数2人以上であれば月額20万円以内、単身世帯なら月額15万円以内です。
貸付期間
貸付期間は原則、3か月以内となっていますが送金は1か月ごとの分割交付となります。
たとえば世帯人数が2人以上なら月額20万円以内、最長3か月なので60万円までです。
既に過去に実施された分の上限である6か月(120万円)に達している方でも、再貸付により追加で合計180万円まで利用可能となっています。
据置期間
据置期間は1年以内ですが、令和4年3月末よりも前に償還時期が到来する予定の貸付については、令和4年3月末まで延長されます。
償還期限
返済期間は10年以内となっています。
貸付利子・保証人
総合支援資金も緊急小口資金同様に、無利子で連帯保証人も不要となっています。
ただし緊急小口資金の特例貸付と同時に融資を受けることはできませんので注意してください。
また、無利子ではありますが返済期限までに返済が完了しなければ、残元金に対し年3%の延滞利子が発生することになります。
申込先
総合支援資金も申込先はそれぞれ市区町村の社会福祉協議会ですが、手続きは郵送ではなく直接窓口で行います。そのため事前に予約し、日程を調整してもらうことも必要です。
事前に予約した後に窓口で面談、その後審査という流れを経て貸付金交付となることから、緊急小口資金より入金されるまで日数がかかると留意しておきましょう。
厚生労働省 生活福祉資金の特例貸付
https://corona-support.mhlw.go.jp/seikatsufukushi/samout/counter.html
必要書類
総合支援資金を申請するときに必要な書類は次の7点です。
①本人確認書類(健康保険証・運転免許証・パスポート・マイナンバーカード)
②住民票の写し(世帯全員が記載された発行から3か月以内のもの)
③預金通帳(申込当日まで記帳済のものであり、新型コロナウイルス感染症の影響で減収したことの他、税金・社会保険料・公共料金などの支払いが確認できる通帳)
④失業・離職などの場合はその事実が確認できる書類(離職票・廃業届・源泉徴収票など)
⑤実印
⑥印鑑(銀行印)
⑦その他、社会福祉協議会が指定する書類
総合支援資金(生活支援費)特例貸付は延長に
総合支援資金の特例貸付を利用したものの、生活に困窮する状況が続いている場合には、継続して自立相談支援機関で相談・支援を受けることによって、原則3か月までの貸付期間を1回3か月まで延長できます。
令和3年3月までに総合支援資金の特例貸付の初回貸付申請済の方が対象ですので、もし自分が対象者か不明な場合は社会福祉協議会に確認してみましょう。
延長の場合の申込先もそれぞれ住まいを管轄する市区町村の社会福祉協議会です。
厚生労働省 生活福祉資金の特例貸付
https://corona-support.mhlw.go.jp/seikatsufukushi/samout/counter.html
延長された総合支援資金の特例貸付を利用する際の注意点
他の都道府県の社会福祉協議会で、すでに新型コロナの特例貸付で借入れしている方は対象となりません。(総合支援資金の再貸付は除く)
また、申請すれば必ず融資を受けることが可能というわけではなく、審査によって貸付が行われないこともあります。
もし虚偽の申請や不正手段で融資を受けた場合には、貸付資金は即時返還しなければならないため、嘘の申告はしないようにしてください。
住居のない離職者に対するつなぎ資金を支援する制度
それぞれ都道府県の社会福祉協議会では、緊急小口資金や総合支援資金以外にも、公的給付や公的貸付を申請している方の生活費支援として「臨時特例つなぎ資金貸付」も行っています。
これは、失業給付や住居確保給付金など、離職者に対する公的給付制度や公的貸付制度を申請している住居がない離職者を対象としています。
給付や貸付けが開始されるまで生活費がなくても、当面の生活資金としてつなぎ資金の融資を受けることが可能です。
対象となる方
住居のない離職者のうち、次のどちらの条件にも該当する方が対象です。
①離職者を支援する公的給付制度(失業等給付・住宅手当など)または公的貸付制度(就職安定資金融資など)の申請は受理されている方で、給付開始までの生活に困窮している
②融資を受けようとする方名義の金融機関口座を有している
貸付額
10万円以内となっています。
貸付利子・保証人
臨時特例つなぎ資金貸付も、無利子で連帯保証人不要で利用が可能です。
申込先
臨時特例つなぎ資金貸付の利用を希望する場合には、それぞれ住まいの市区町村の社会福祉協議会の窓口に直接相談してください。
特例貸付を装う不審電話に注意を!
新型コロナウイルス感染症の影響を受けたことで、休業したり失業したりなど生活に困窮する方を狙い、緊急小口資金や総合支援資金などに関する不審電話が発生しています。
もし不審電話があった場合には安易に個人情報を伝えるのではなく、一旦電話を切りどこからの着信か確認するようにしましょう。
不審と思われる電話番号であれば、所管の警察などに相談することも必要です。
事業計画から資金調達、経営支援まで・・・
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- 事業を安定させたい方
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