事業資金などの準備に、法人用のカードローンやクレジットカードなどを利用することはあるでしょうが、借りたお金は当然返さなければなりません。
もし返済を滞納している場合、その債権が債権回収会社に債権譲渡されることがあり、信用情報にも影響を及ぼすことがありますので注意が必要です。
そこで、もし借金をしたことによって発生した債権が債権回収会社に譲渡された場合、信用情報にはどのような影響があるのかご説明します。
目次
債権回収会社とは
法人や個人に関係なく、カードローンやクレジットカードの返済を行わずにいると、何度か催促を受けることとなり、最終的には債権回収会社に債権が譲渡されることがあります。
債権回収会社とはサービサーとも呼ばれており、依頼した金融業者などに代わって借金の取り立てを行う法人のことです。返済が滞納されている住宅ローンや不動産担保ローン、ビジネスローンなど様々な債権を金融業者などから買い取って、債務者に支払いの督促や競売申立てなどを行い回収していきます。
借入金などの債権が譲渡されるときとは?
債権が譲渡されたということは、お金を返す相手がそれまで取引していた金融業者やカード会社から、まったく関わりのない会社に変更されることを意味します。
ただ、支払いが遅れたからといってすぐに債権が譲渡されるわけではなく、次のようなケースにおいて行われるようです。
保証会社が代位弁済で求償権を獲得したケース
カードローンなどの保証会社が借金を肩代わりする形となり、債権がカードローンを発行した金融業者から保証会社に代わり、新しい債権者となって借主に対し支払いを請求する状態です。
もともとお金を借りた金融業者に対する借金を保証会社が肩代わりする代位弁済により、保証会社は借主に対してその返済を請求する権利を獲得します。
そのため、保証会社が借金を肩代わりしてくれたから支払いが免除されるのではなく、保証会社に対して返済を行う必要があることを理解しておきましょう。
債権回収が困難であると判断されたケース
貸したお金を返してもらうため、金融業者が何度か督促を送るなどしても事態が改善されない場合、法的手続きにより借金を回収することもできるでしょう。
しかし金額が少額の場合などには手間や時間、費用がかかるので、債権回収会社に債権を譲渡して代わりに回収してもらったほうがよいと考えるようです。
債権がすでに消滅時効を迎えているケース
金融業者の債権は、契約した翌日、または最後に返済を行った翌日から5年を経過すればその債権は消滅時効により請求権を失います。
本来、時効により消滅した債権はその事実が信用情報機関に登録されることになりますが、金融機関の中には債権回収会社に譲渡し、少しでも回収しようと考えるようです。
もし請求されても時効により請求される権利を失った債権なので、返済する義務は負いません。ただ、債権の存在を認め少しでも支払いを行ってしまうと、また返済義務が復活してしまうことがあるので注意が必要です。
金融業者側が事業を継続できなくなったケース
規模の小さい金融業者などの場合、経営者がケガや病気、死亡などにより事業を続けられなくなることもあるようです。このような場合、大手の金融業者が吸収や合併、統廃合という形で債権を譲り受けることがあります。
小規模の金融業者が倒産してしまった場合の債権譲渡については、日本貸金業協会が間に立って行われることが多いようです。
譲渡相手となるのは同じく貸金業を営む金融業者などで、債権回収会社が譲渡を受けることはありません。
債権が譲渡されると信用情報に影響する?
このように債権が譲渡される理由はいろいろですが、その内容次第で信用情報に影響を及ぼすことがあります。
信用情報とは、ローンやクレジットなど、信用取引に関しての契約内容や返済状況、そしてどのくらい利用残高があるのかという取引の事実を示すものです。
借金に関する様々な内容が記録されるので、新たに借り入れを行おうとする場合に金融業者側が申込者の信用力を判断する材料として用いられる情報といえます。
信用情報は信用情報機関に登録されており、滞納や法的な手続きといったネガティブな情報も記録されます。
そのため、保証会社が代位弁済した場合や、債権回収が難しいと判断された場合など、借り入れを行った側に問題があることでの債権譲渡については、その情報が記録されることになると考えられます。
消滅時効による債権譲渡については、すでに求償権を失った債権なので信用情報に影響はないものと考えられます。ただ、いくら時効を迎えていたとしても、その借金を放棄することを意思表示しなければ、返済義務が自動的に消滅するわけではないことを理解しておきましょう。
そのため、借金を放棄する意思を表示する時効の援用がなされていない場合、信用情報を回復させることもできるので、信用情報にネガティブな情報が記載されてしまう可能性があるので注意してください。
金融業者が事業を継続できなくなったことで債権が譲渡された場合にも、その事実は信用情報に記録されることになります。ただ、ネガティブ情報として扱われるわけではないので、新たな借り入れの際に悪影響を及ぼすことはないでしょう。
債権譲渡に関する信用情報はどのくらい記載される?
では実際に信用情報として債権の譲渡の事実が記録されることになった場合、その内容はどのくらいの期間残ることになるのでしょう。
たとえばネガティブ情報として扱われない、金融業者が事業を続けることができなくなった場合の債権譲渡の場合、金融機関同士で債権の譲渡が行われた事実が5年間は記録され続けます。
信用情報には債権譲渡が移管という形で記されることになりますが、これは元の金融業者から新しい金融業者に債権が譲渡されたことを示しており、譲渡が完了するとその年月日が移管完了という形で記録されることになります。
移管完了であれば新規の借り入れに悪影響はない
債権の譲渡の事実は、譲渡相手がどこであっても譲渡完了から5年間は記載されることになります。
ただ、あくまでも金融業者側の事情による債権譲渡のため、移管完了と信用情報に記録されていることが新たな借り入れに影響することはないといえます。
保証会社が代位弁済した場合の債権譲渡の場合
保証会社が代位弁済するケースとは、先にも述べたとおり滞納が続き返済不能状態に陥ったことを示します。そのため、代位弁済による債権譲渡が行われることは、信用情報に悪影響しか及ぼさないといえるでしょう。
たとえば銀行カードローンを利用していた場合において、61日以上返済が行われず滞納が続いてしまうと、全国銀行個人信用情報センターという信用情報機関に返済滞納の情報が記録されることになります。
それでも返済されない状態が続くと、銀行に代わって保証会社が代位弁済を行うこととなり、銀行は保証会社にその債権を譲渡します。
代位弁済されていなくても、長期に渡る返済を滞納していれば金融事故扱いとなりますので、他の信用情報機関にもその情報が共有され、新規で借り入れはできないブラック情報という扱いになってしまいます。
●保証会社が代位弁済した場合は信用状況にはかなり悪影響
金融業者は返済の滞納が6か月以上続いた場合、このまま督促を続けても債権を回収することは難しいだろうと判断する傾向が見られます。
そのため、代位弁済が行われる前からすでに長期に渡る滞納が続いている状態であると判断できますので、代位弁済が実施されたということはかなり信用力が低いとみなされることになるのです。
保証会社による代位弁済が行われた場合には、信用情報の返済状況欄に異動という扱いで登録されることになります。
時効を迎えた債権に対する信用情報
5年間請求もされず、返済を行わなかった場合には、消滅時効により支払い義務はなくなります。ただし先にも述べた通り、時効により自動的に返済義務が消えてなくなるわけではないので、5年を経過した段階で時効成立による借金を放棄する旨を宣言することが必要となります。
この宣言が時効の援用ですが、時効により消滅できる債権に対して金融業者が請求を行うことは、道徳上、問題があると捉えられてしまうため行われません。ただ、時効の援用が行われなければ借金も消えてなくならず、信用情報の内容はそのまま変更されず残ることになってしまいます。
時効の援用を行った場合は?
消滅時効を迎えた借金に対して時効の援用を行うと、信用情報の内容はそれまでの延滞中から完済へと変更されることになります。
しかし、本来なら完済として記録されるはずなのに、金融業者によっては延滞のままにしていたり、貸し倒れという扱いで登録することもあるようです。
そのため、過去に消滅時効を迎えた借金に対して時効の援用をしているのに、新規での借り入れに対する審査に通らないという場合には、信用情報にネガティブな内容が記載されたままになっている可能性があるので情報開示を請求し確認してみましょう。
時効の援用したときの信用情報
時効の援用を行った後でどのくらいの情報が残るかは、金融業者が信用情報機関にどのように情報を伝えたかによって変わるということです。
返済や借入の情報は5年残りますが、最後に返済してから金融業者から信用情報機関に何の情報も伝えられていなければ、時効の援用を行った時点で情報は残っていないことになります。
発生している遅延損害金はどのような扱いになるのか
返済が遅れていて遅延損害金が発生している場合において、その債権が譲渡されると遅延損害金も債権と同時に譲渡されます。
なお、債権が譲渡された後で発生する遅延損害金については、譲渡先がその設定を行うことになるので別途上乗せになる可能性があります。
正規の債権回収会社か見分けるには?
見ず知らずの債権回収会社を名のる法人から、債権が譲渡された旨と請求金額などが通知されたとしても、正規の債権回収会社なのか不安になってしまうものです。
もし返済をしないのなら、資産の差し押さえによる強制執行や裁判など、様々な内容が記載されていることで急いで返済しなければ!と焦って支払ってしまうと悪徳業者に騙される可能性があります。
債権回収会社は法務大臣の許可を受けていなければ事業を営むことができないので、法務省の公式サイトにも債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧として許可されている会社が掲載されています。
この一覧に記載がなければ正規の債権回収会社ではありませんので、お金を支払ってしまわないようにしてください。
事前に債権譲渡通知が行われているか確認を
また、債権が譲渡されるときには、債権回収会社が新たな債権者となる前に、元の債権者である金融業者が差出人となっている債権譲渡通知書が届くはずです。また、一般的には債権譲渡通知は内容証明郵便などを利用した上で送付されることが多いので、その内容もしっかり確認するようにしましょう。
債権譲渡通知書が送られる理由は、債権回収会社が新しく自社が債権者であることを主張し、返済を請求することができるようにするためです。
民法では、債権の譲渡人がお金を借りた債務者に対し債権譲渡通知を行うか、債務者が債権譲渡に対する承諾を行うことがなされていなければ、新たな債権者が自身の権利を主張することはできないとされています。
そのため、債権回収会社から債権譲渡の連絡があった場合には、慌てて支払いを行うのではなく、事前に元の債権者である金融業者から債権を譲渡する旨が記載された通知が行われているか確認するようにしてください。
返済できなくなっても無視や放置は行わないこと!
お金を借りた当初は返済計画を立て、毎月期日を守って支払っていこうと考えていたことでしょう。
しかし事情が変化し、もし支払いができなくなったときには支払わないという選択もあります。このような場合、金融業者などにその旨を伝え、支払い停止という措置をとってもらうことも可能です。
その上で、借入金の返済条件を変更してもらったり、減額してもらうといったリスケジュールを相談することも必要となるでしょう。
もっとも望ましくないのは、支払いができないからといって金融業者からの連絡を無視してしまうことです。誠意ある対応が大切ですので、もし支払いが難しいという場合には早めに金融業者に連絡して残りの借金をどのように返していくのか相談することが必要です。
なお、リスケジュールについても信用情報には悪影響を及ぼすことになりますので、新規の借り入れはできなくなることを理解しておくようにしてください。
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