中小企業の経営者がしっかりとチェックしておかなければならないことに、融資金額の目安があります。今は資金が潤沢にあったとしても、いつ景気が悪くなるかわかりません。資金難になってしまえば、資金調達をせざるを得ない状況になってしまうことも考えられるわけです。
そこで注目していきたいのが中小企業の融資金額の目安の算出方法です。各企業によって財務状況は大きく異なります。よって貸し出し金額も異なってしかるべきなのです。
前もって融資金額の目安を知っておけば、いざというときに役立ちます。例えば無理な希望額で銀行などに融資を申し込むようなこともなくなります。
ではどのような方法で融資金額の目安は算出するべきなのでしょうか?
目次
【簡単!】月商から融資金額を割り出す方法
最も単純な融資金額の目安を知る方法として今回注目するのは、月商から計算していく方法です。
まずは月商ですが、月によっても異なってくると思うので平均的なものを計算してください。「年商÷12カ月」で算出すればよいのです。たとえば年商が1億2,000万円であれば、月商は1,000万円ということになります(1億2,000万円÷12カ月)。
そこに一定の月数を掛けます。その基準は業種によっても異なってくるのですが、基本的には1ヶ月から5ヶ月程度、とされています。
上記のケースであれば「1,000万円×1ヶ月から5カ月」ということになり、1,000万円から5,000万円の調達が可能になるわけです。
おさらいをすると、月商から融資金額を割り出す計算式は以下のようになります。
「月商(年商÷12カ月)×1ヶ月から5カ月」
・自社の借入状況が健全であるかも確かめてみよう!
月商から融資金額を割り出す方法を把握していれば、現状の債務状況が適切であるかも把握できるはずです。仮に月商の5ヶ月分を超える借り入れがすでにある、という状況は返済能力を超えている可能性もあり、十分に注意しなければなりません。
例えば前述したように月商が1,000万円の会社である場合ですが、借入金が500万円程度であれば月商の1ヶ月未満ということになるので特に問題はありません。一方で6,000万円の借入金がある場合には月商の5カ月を超えてしまっているので「問題あり」ということになります。
・月商から返済金を割り出す方法には問題あり
損益については度外視しているのが問題なのです。
仮に赤字経営になっている場合はどうでしょうか?確かに月商から見ると借入額は少ないかもしれません。しかし利益が出ておらず損失が出ている場合には、会社からキャッシュが出ていっている状態です。返済能力が高い状態とは言えません。
金融機関としても、単に月商のみで融資可能額を算出するわけがありません。あくまで目安となっているので、損益についても注目していく必要があります。
損益から融資金額を割り出す方法
少し複雑になってしまいますが、かなり精度が高い融資金額の算出方法となっています。こちらに関しては、月商や年商というものさしではなく損益に注目しています。会社としての利益から返済能力を計算していく方法となっているので、各金融機関の貸し出し可能額にかなり近い額が算出できるのです。
その計算式は以下のようになっています。
「経常利益の平均額×0.5×5から10」
まずは経常利益の平均ですが、過去3年分程度の経常利益額を用意してください。その3つの経常利益額を足して3で割るのです。
その後に「0.5」でかけているわけですが、経常利益の全額が返済に回せるわけではありません。そのうち一定額しか回せないことになるので、ここでは暫定的に「50%」で割っているわけです。
最後に「5から10」をかけていますが、これは返済期間を表しています。要は5年から10年間での返済をすると仮定して融資金額を計算するわけです。
では実際に計算してみましょう。
・2015年度の経常利益額・・・1,500万円
・2016年度の経常利益額・・・1,900万円
・2018年度の経常利益額・・・1,700万円
まずは平常利益の平均を出してみましょう。「(1,500万円+1,900万円+1,700万円)÷3」で計算できることになり、経常利益の平均額は1,700万円となりました。
あとは「1,700万円×0.5(50%)×5から10」で計算すればよいだけです。「4,250万円から8,500万円」ということになります。
すでに借入金がある方は残高が上記の範囲内に収まっているかを確かめてみましょう。もしも超えてしまっているときには、リスケジュールなども検討しましょう。
・収益性から融資金額の目安を算出するケースの問題点
月商から導き出されたものよりも精度が高いことは明らかですが、まだ問題があることも事実です。要は、会社として保有しているキャッシュが一切含まれていません。
仮に収益性が低い企業であったとしてもキャッシュが潤沢にあれば、ある程度の借り入れにも対応できます。キャッシュは持っていれば持っているほど返済に回せるからです。
キャッシュだけではありません。その他の資産についても考慮されていません。例えば売掛金や約束手形、さらには不動産や有価証券です。それらはいずれ現金化されるものであったり、困った時に現金化することができたりするものでもあります。資産が一定以上ある、ということであれば借入金の返済に回せる力を保有していることになります。しかし損益だけから判断する方法では、資産からの返済は考慮されていません。
定期的に融資金額の目安を計算しておくこと
月商から金額を導き出すにしても、損益から融資金額を導き出すにしても必ずしなければならないことがあります。それは定期的に計算をしておく、ということです。
月商はいつも同じでしょうか?
損益は毎年一緒でしょうか?
そんなことはありえないわけです。融資金額の目安は絶えず変動していることになり、企業に大きな変化が起こった場合には、現状の借入額や借入希望額が適切ではない、という状況になってしまうこともあるのです。
去年に比べて月商が極端に伸びていれば高額の借り入れを希望しても受け入れてもらえるかもしれません。去年に比べて損益が急激に悪化している場合には、借入希望額を引き下げなければならないことも考えられるわけです。
・定期的に融資金額の目安を把握するメリット
状況に合わせた「成長投資」や「新たな借入の停止」が行えます。
融資金額の目安が増えたのであれば、業務を拡大するチャンスがやってきています。借り入れによって成長投資を実施しましょう。設備投資資金のために新たな借入を検討しても良いわけです。せっかく大きな額を融資してもらえるのであれば、成長投資をして会社に活かさなければもったいないです。
融資金額の目安が減ったのであれば、返済能力が低くなった、ということも意味しています。返済能力が減った状態で新たな借入を行うのは自殺行為といっても過言ではありません。融資に力を入れるのではなく、利益拡大の改革などを実施しなければならないのです。
融資元によっても金額が異なることは理解しておくこと
・銀行融資・・・高額にも対応している
・ノンバンク融資・・・基本的に少額融資がメインである
いくら目安の融資金額がわかったとしても、融資元の種類によって対応できる金額に違いがあることは確かです。
上記した計算方法で高額の融資が受けられる、といった場合であったとしてもノンバンクを選択してしまえば少額融資にしか対応してもらえません。
一方で少額融資しか受けられないと分かっているのに銀行融資を選択すると、審査が厳しいので借り入れ自体ができない、ということも考えられるわけです。
まずは自社の融資金額の目安を知り、その上で融資元を探しましょう。
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