「債務超過」と耳にすると、今にも倒産してしまいそうな危ない経営状態を想像してしまいますが、どのような理由で陥った状態なのでしょう。
もしも債務超過になった場合でも、すぐに倒産してしまうわけではなく解消させることは可能ですが、まずはその理由をつきとめ改善させることが必要です。
そこで、そもそも「債務超過」とはどのような状態のことなのか、陥ってしまう理由として考えられることや解消方法について解説していきます。
目次
「債務超過」とはどのような状態か
債務超過は、負債総額が資産の総額を超えてしまっている状態であり、保有する資産をすべて現金に換えたとしても負債を補うことができなくなっていることを意味します。
すべての資産を売却して換金しても、借入金や買掛金など負債の支払いができないということは、会社の存続も困難な状態に陥ると考えられます。
債務超過になった場合、すぐに倒産するわけではなくても、その状況が続けばいずれ継続不可という状態になるでしょう。
ただし、
- ・返済まで1年以上猶予がある固定負債が多い
- ・直近の支払いに充てることができる流動資産に余裕がある
- ・開業したばかりのときや設備投資したばかりで一時的に資産より負債が多い状態になっている
といったケースであれば倒産危機にあるともいえません。
それでもいずれは黒字化できる見込みのある一時的な債務超過でなければ、最終的に経営を続けることは厳しくなってくるでしょう。
債務超過は恒常的に不健全な状態であると認識し、早期に解消させるように努めるべきといえます。
赤字と債務超過のリスクの違い
損益計算書でマイナスが出ている赤字経営が続けば、当然、事業を継続させることは厳しくなります。
そもそも「赤字」とは、事業活動による利益を生み出せていないことです。
ただ、赤字経営にもいろいろな理由があり、一時的にマイナスになっておりいずれ黒字化できるならそれほど問題にはなりません。
しかし赤字経営が続いているときはいずれ倒産危機に陥ってしまうため、債務超過と同様に解消させる必要があります。
債務超過が及ぼす4つの影響
危機的な状況の始まりともいえるのが「債務超過」ですが、具体的にどのような影響があるのか、そのリスクについて把握しておきましょう。
債務超過が及ぼす影響には、
- ・銀行から信用を得ることができなくなる
- ・人材を確保することが難しくなる
- ・上場企業の場合は上場廃止される
- ・いずれは倒産危機に陥る
の4つが挙げられます。
それぞれ詳しく説明していきます。
銀行から信用を得ることができなくなる
「債務超過」の企業に対し、銀行など金融機関はよい印象を持つことはありません。
むしろ資金繰りが苦しく債務返済が困難な「危ない企業」と認識されるようになり、
- ・融資の「打ち切り」「貸し渋り」
- ・早期返済を求める「貸し剥がし」
などの対象になると考えられるでしょう。
人材を確保することが難しくなる
「債務超過」であることが広まれば、社内で働く従業員やこれから入社を検討している就職者は、すべてネガティブな影響を抱くことになります。
「将来、負債を多く抱えた会社で働いて大丈夫なのか?」
「このままではいずれ会社が潰れてしまい路頭に迷うことにならないか?」
といった不安を抱えることとなり、退職者を増やしたり採用活動に影響が出たりなど、人材確保が難しくなると考えられます。
人手不足が深刻化している業界は少なくありませんが、必要な人材を確保できなくなれば、経営再建の道はより厳しいものになるといえるでしょう。
上場企業の場合は上場廃止される
上場企業の場合、「債務超過」に陥ると「上場廃止」されます。
東京証券取引所・大阪取引所・東京商品取引所など傘下に保有している株式会社日本取引所グループ(JPX)では、上場企業の債務超過について、1年以内に解消できなければ上場を廃止すると規定に明示しています。
企業の株を保有する株主が、債務超過により上場が廃止される可能性を危惧すれば、一気に保有する株を売りに出すことになるでしょう。
その結果、株価は暴落してしまい企業は資本力を失うことになります。
債務超過を解消させる対策を講じるに至らず、会社は倒産してしまう可能性が高いといえるでしょう。
そう考えると、一般企業が債務超過になった場合であっても、金融機関が厳しい目を向けるのは、止むを得ざる点があると言えます。
いずれは倒産危機に陥る
中小企業でも大企業・上場企業でも、債務超過によるもっとも大きな懸念は会社が「倒産危機」に陥るということです。
一般企業は銀行などから融資を受けて資金調達することができなくなり、上場企業は上場廃止により資金調達の手立てを失います。
さらに追い打ちをかけて、取引先や顧客から契約・取引を打ち切られてしまうなど、打開策を失ってしまう可能性もあると考えられるでしょう。
そのため債務超過の状態で悩んでいる経営者は、できるだけ早期の解消に向けた取り組みや対策を進めていくことが重要といえます。
債務超過に陥ってしまう4つの理由
事業を続けるためにも、債務超過に陥ることは避けたいものでしょう。
そこで、なぜ債務超過に陥ってしまうのか、その理由を把握しておくことで未然に防ぐことができます。
債務超過に陥ってしまう理由として考えられるのは次の4つです。
- ・赤字経営が続いている
- ・大型投資に失敗した
- ・資産価値の毀損
- ・簿外負債や偶発債務の存在
すでに上記の理由に該当しているのなら、早期に解消し債務超過から抜け出せるようにしていきましょう。
赤字経営が続いている
何年も赤字経営が続いてしまうと「債務超過」になりますが、そもそも「赤字」とは損益計算書で「税引後利益」がマイナスになってしまうことです。
「売上」よりも支払いなどが多くなっている状態ですが、これまでの赤字や黒字は「利益剰余金」として貸借対照表の「純資産の部」に計上されます。
毎年の決算で黒字が続けば、利益剰余金を含む「純資産」は増えていきますが、反対に「赤字」が続けば純資産は減少することになります。
そのため長期に渡る赤字経営は、純資産が減少させてしまうことを意味し、最終的に負債が資本を上回って債務超過に陥るという流れです。
経営悪化で赤字が続きという場合、状況を改善させなければ債務超過に陥るリスクが高いと留意してく必要があるでしょう。
大型投資に失敗した
新たに事業をはじめたときや、新しく設備を設置したときには、多額の資金が必要です。
しかし、投入した多額の資金を回収できるほど収益をあげることができず、回収可能額が帳簿上の価格を下回ったときにはその下落分を「減損損失」として計上しなければならなくなります。
その結果、債務超過に陥ってしまうリスクも高くなると留意しておきましょう。
資産価値の毀損
保有している資産の価値が低下する場合でも債務超過に陥る理由となります。
特に時価変動が大きい資産などは、時価の値下がりが激しかったとき、債務超過になると考えられるでしょう。
ただしそのような状況は安定した経営を続けることができているとはいえません。
たとえばお金を借り、その資金で株式投資を行っているというケースなどです。債務超過に陥らないためにも、むやみに借入金を増やしてしまわないこと、高いリターンを求め変動リスクの高い投資など行わず経営することが望ましいと言えます。
簿外負債や偶発債務の存在
貸借対照表に計上されていない「簿外負債」や、今の時点では債務ではないものの一定事由を条件に将来的には債務になる可能性がある「偶発債務」が明らかになれば、債務超過に陥ることもあると留意しておきましょう。
中小企業などは、税務会計で決算書が作成されるため、「賞与引当金」や「退職給付引当金」は「簿外債務」になっていることが少なくありません。
なお、「偶発債務」には、たとえば第三者に対する「債務保証」や「損害賠償責任」などが該当します。
債務超過を解消する4つの方法
債務超過に陥っている理由が確認できたら、原因となっている部分を解消させることが必要です。
原因を解消させる具体的な方法として、
- ・経営改善に取り組む
- ・増資する
- ・役員借入金などの債務免除
- ・法的手続を検討する
の4つが挙げられます。
それぞれどの方法が最も適しているか見極め、できるだけ早めに実行していくようにしましょう。
経営改善に取り組む
債務超過を本質的に解消するためには「経営改善」が欠かせません。
経営を改善させることにより、赤字体質から黒字転換可能となり、利益計上できれば債務超過は少しずつ解消させることができます。
そもそも会社を経営する上で、利益を出すことは本来の目的といえます。
利益をしっかりと出せるような経営体質に変えていくことで、収益を上げることができ負債も減少させることにつながります。
売上を増やしていくことももちろん大切ですが、支出を抑えることも必要となるため、支出全体を見直し無駄な出費は削減できるような取り組みを行っていきましょう。
増資する
増資で「資本金」を増やすことで「純資産額」も上がるため、負債も解消されるという即効性のある債務超過解消に向けた対策です。
「増資」とは、株式を新しく発行し、投資家などに購入してもらい資金を集めることです。
「債務超過」の額を超えた資金を集めることができれば、返済不要の資金調達により借入金なども返済できるため、いずれにしても債務超過を解消することができます。
経営者個人の資金に余裕があるときには、会社に資金を貸し付ける形ではなく、投資する形でお金を注入したほうがよいといえます。
しかし、経営者に資金面での余裕がないときには、第三者に出資してもらうことも視野に入れる必要があるでしょう。
なお、株式の保有割合によっては、経営権を揺るがす問題も発生するため、その点は注意しておく必要があります。
うまく増資をして資金を調達し、債務超過解消できれば、銀行など金融機関から融資も受けることができるようになるでしょう。
役員借入金などの債務免除
借りたお金の返済を免除してもらう「債務免除」を受けることができれば、債務超過は解消されやすくなります。
たとえば経営者や役員が会社に貸し付けている資金がある場合、会社から返済を求めず支払いを免除することを意味します。
ただし多額の資金を貸し付けている場合には全額免除できないケースもあるため、一部免除や経営者からの貸し付け分のみ債務免除するといったことも考えられるでしょう。
会社が債務免除を受けることができれば、「借入金」は圧縮され負債を減少させることができ、「純資産額」を増やすことは可能です。
ただし見た目の「債務超過」は解消できても、根本的な改善方法ではないことは留意しておく必要があります。
法的手続を検討する
様々な方法や対策を講じても、「債務超過」を自力で解消させることが難しいという場合には、「民事再生」や「会社更生」といった法的手続が必要になることもあります。
どちらも会社を継続させつつ、法的な手続に則り再生・更生計画案を作成し、承認を得て再建していく方法です。
「民事再生」の場合、経営陣はそのまま継続することができますが、「会社更生」は退任することが必要になります。さらに「会社更生」は手続なども複雑であり、難易度も高いため中小企業では利用されることはほとんどありません。
「破産」を選ぶと会社を存続させることはできなくなるため、専門家などに相談しながらどの方法がよいか選び、手続することが必要となるでしょう。
まとめ
債務超過に陥る可能性は、中小企業だけでなく大企業なども同様にあります。
ただ、中小企業は大企業よりも会社の規模が小さく、現場の社員と経営者の距離も近いことが特徴です。
ビジネスにおいて素早い決断ができることも中小企業の特徴ですが、これらの特徴を活かすことで債務超過を解消させることもできるでしょう。
社内で債務超過から抜け出す必要性を周知し、社員が一丸となって取り組むこともできますし、ビジネス機会が訪れたときもそのチャンスを逃さない決断が可能です。
債務超過が続くことは、いずれ会社が倒産してしまうことを意味し、危機に陥っている状態といえます。
信用が低下したままでは銀行から融資を受けることはできないままであり、取引先からも要注意先として契約を断れてしまう可能性があります。
なぜ今債務超過に陥っているのか、その理由を早期に分析し、解消していけるようにしましょう。
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