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業績改善のために指標となる「売上高営業利益率」と「売上高経常利益率」の分析方法

資金繰り2021/12/06

会社の収益力を図る指標として用いられることの多い「経常利益」は、業績を改善させるときにも注視しておくことが必要です。

そこで、具体的にどのように改善させていけばよいのか、要素として把握しておきたい「売上高経常利益率」と「売上高営業利益率」の分析方法について詳しく説明していきます。

「経常利益」で確認できることとは

「経常利益」とは、会社の経常的な活動に伴い発生する利益のことですが、利益は段階ごとに種類が分かれます。

利益の段階ごとの算出方法や、それぞれ何を意味するのか把握しておきましょう。

  1. 売上総利益…本業の商品やサービスにより稼いだ利益であり、売上高から売上原価を差し引いて計算します。
  2. 営業利益…本業の利益といえる部分で、売上総利益から販管費を差し引いて計算します。
  3. 経常利益…毎年経常的に発生する活動の利益であり、営業利益に営業外損益を加味して計算します。
  4. 税引前当期純利益…経常的な活動に臨時的・偶発的に発生した取引も含む利益であり、経常利益に特別損益を加味して算出します。
  5. 税引後当期純利益…税金を差し引いた後の最終的な利益であり、税引前当期純利益から法人税等を差し引き計算します。

業績改善において目安にしたい「売上高営業利益率」

会社の業績を改善させるとき、財務分析の指標としたいのが「売上高営業利益率」です。

「売上高営業利益率」とは、「売上高」に対してどのくらいの「営業利益」があったのか、その割合を示します。

売上高のうちどのくらいが営業利益として残るかを意味しますが、そもそも「営業利益」本業の業績をあらわす利益なので、多く発生していれば本業が順調であると考えられます。

反対に営業利益がマイナスのときは赤字経営を続けているといえ、商品やサービスを見直し改良することや、管理費の見直しなどが必要となります。

そして売上営業利益率を分析するときには、

  • ・商品やサービスに問題がないか(売上が低すぎないか、または売上原価が高すぎないか)
  • ・販売するまでにコストをかけ過ぎていないか(販売費および一般管理費が多すぎないか)

という2つを確認することが必要です。

・売上高営業利益率の計算方法

「売上高営業利益率」を計算するときは、

営業利益=売上高-売上原価-販売費および一般管理費
売上高営業利益率(%)=営業利益/売上高×100

で計算することができます。

この計算式から、商品やサービスの分析では「売上高」と「売上原価」の大きさを確認し、「販売費および一般管理費」として人件費や広告宣伝費などに費用をかけすぎていないか把握しておくことも必要となります。

売上高営業利益率の目安

目安となる「売上高営業利益率」は業界により異なりますが、営業利益率が高い業種「不動産業・物品賃貸業」「技術サービス業」などです。

以下、業種ごとの目安を参考に確認しておきましょう。

  • ・不動産業・物品賃貸業…約10%
  • ・学術研究・専門・技術サービス業…約10%
  • ・宿泊業・飲食サービス業…約5%
  • ・建設業…約4.8%
  • ・情報通信業…約4.5%
  • ・その他の業種…約4.3%
  • ・製造業…約3.8%
  • ・生活関連サービス業・娯楽業…約3.7%
  • ・運送業・郵便業…約2.7%
  • ・卸売業…約1.7%
  • ・小売業…約1.5%

なぜ不動産業・物品賃貸業や技術サービス業の割合が高めなのかというと、厚利少売であることが背景にあると考えられます。

販売・取引の数は少なくても、1件の取引で利益を多く生み出すことができるからです。

反対に、取引の数は多くても1件の取引で生む利益が小さい薄利多売の業種では、売上高営業利益率は低くなります。

薄利多売のビジネスとして挙げられるのは小売り業や卸売業などですが、営業利益を大きくするためには取引量を増やすことが必要です。

なお、製造業では「売上高営業利益率」の分析において、売上高・売上原価・販売費および一般管理費に分けるときに注意が必要となります。

製造業の場合、「人件費」は商品自体に直接かかる「売上原価」に含むものと、「販売費および一般管理費」に含むもの区別するようにしてください。

「売上高経常利益率」の分析方法

売上高に対する経常利益の割合「売上高経常利益率」ですが、企業の収益性をはかる尺度となる指標です。

「経常利益」は、企業本来の営業活動の利益である「営業利益」に、財務活動で発生した損益を加味して計算します。

売上高経常利益率 =経常利益/売上高×100

そのため経常利益の割合が高ければ、資産の売却損益など以外の通常の経営活動での収益力が高いと判断できます。

資金の運用や調達など、資金管理も含めうまくお金が回っているということをあらわすため、目安として最低でも3~5%を目指しましょう。

売上100に対し、経費95であれば利益は5になりますが、たった5%程度でよいのかと考えず、それだけの利益を計上し続けることができることが望ましいといえます。

業績改善のために「売上高経常利益率」を分析するのは、主に次の4つの手法を実践していきましょう。

期間ごとに比較する

まずは自社の数値を把握しておき、昨年度など過去の業績と比較していきましょう。

会社を取り巻く環境は変化するものと考え、昨年度と大きく異なる数値であるのなら、変動要素を細かく分解することも必要です。

年度による経営状況を適切に分析し、半期ごと・四半期・月次ごとなど細かく同比率の分析することにより、季節ごとのトレンドや影響を把握することもできます。

業界平均と比較する

自社の当期数値と業界平均を比較することで、売上高を上昇させるのか、各種費用を減少させるべきか検討しましょう。

業界平均との比較はマクロの視点で行い、競合企業や上場企業の売上高経常利益率を確認し、自社の立ち位置を把握します。

なお、上場企業の場合には有価証券報告書などIR資料から確認できますし、未上場企業は帝国データバンクや東京商工リサーチなど調査会社のサービスを利用することができます。

気になる特定の企業の収益構造や費用構成を知り、自社との比較に役立つため収益改善の指標とすることができるでしょう。

「売上高営業利益率」と「売上高経常利益率」を比較する

「売上高営業利益率」と「売上高経常利益率」は個別で分析するだけでなく、この2つを比較することでも業績改善の指標とすることができます。

比較の結果、現在会社がどのような状況にあるのか、改善させるためのポイントは次のとおりです。

「売上高経常利益率」が「売上高営業利益率」よりも高い

「売上高経常利益率」が「売上高営業利益率」よりも高い

ということは、

「営業外損益=営業外利益-営業外費用」がプラス

になっていることを意味します。

資産運用で株式売却益や配当金の計上があることを示しており、本業で余った資産の活用がうまくできているといえるでしょう。

ただ、

「売上高営業利益率」がマイナスで「売上高経常利益率」がプラス

を示しているときには、本業が低迷しているといえます。

その場合には、業績改善に向けた事業のモニタリングが必要となるでしょう。

「売上高経常利益率」が「売上高営業利益率」より低い

「売上高経常利益率」が「売上高営業利益率」よりも低い

ということは、

「営業外損益=営業外利益-営業外費用」がマイナス

であることを意味しています。

たとえば銀行からの借入金の利息負担が重く、マイナスを示しているといったケースです。

経営状況に見合う借入金と利息の負担なら問題ないでしょうが、将来的なキャッシュフローに影響を及ぼすリスクが高いときには、改善策の検討が必要となります。

他にも株式売却損や有価証券評価損が大きければ営業外損益がマイナスになるため、資産の運用方法や余剰資金の使途などについて、見直さなければならない可能性があるといえます。

そもそも「営業利益」は「経常利益」よりも前に計算される利益のため、通常であれば「売上高営業利益率」の方が「売上高経常利益率」より高くなるはずです。

そのため「売上高経常利益率」の方が「売上高営業利益率」よりも高いときには、本業以外の営業外収益で利益をあげていると考えるべきでしょう。

「売上高経常利益率」を改善させるために必要なこと

上述したとおり、「売上高経常利益率」を上げるには「売上高」を伸ばす、または各種費用を減少させるのどちらかです。

売上高は適切な施策を打つことができているか再度確認し、費用については削減できるコストについて洗い出しを行いましょう。

また、コストを適切に回収できる見込みがあるかについても精査が必要となります。

「売上高営業利益率」が高い会社に見られる特徴を知る

「売上高営業利益率」を上げることを目指すのなら、実際に率の高い会社はどのような特徴があるか確認しておくとよいでしょう。

主な特徴として、次のことが挙げられます。

  • ・商品やサービスの質が高い
  • ・効率的に営業できている

先に述べたとおり、厚利少売のビジネスのほうが「売上高営業利益率」を上げることにつながります。

小売り業など薄利多売のビジネスでも、取引量を増やせば率を上げることにつながりますが、いずれにしても提供する商品やサービスの質が重要となるでしょう。

商品やサービスのクオリティを上げることにより、製作コストなどもかかるようになるため売上原価は増えてしまいます。

しかしロボットやAIを使うことでコストを低下できている企業もあるため、設備導入に向けた投資とその回収について分析しながら、最終的にどのくらいコストを下げながら商品やサービスの質を上げることができるか検討が必要です。

そして効率的な営業については、販売費および一般管理費を抑えるため、たとえばインターネットを使った営業や販売なども取り入れていくとよいでしょう。

実店舗を持たずインターネット上で販売をすることで、家賃や水道光熱費などかけずに人件費も抑え、販路を拡大することができます。

「売上高営業利益率」を財務分析に活かし経営改善するときのポイント

「売上高営業利益率」が高いときや収益が十分にある場合ときには、提供する商品やサービス・営業方法が適切と考えられます。

そのため新たな商品やサービスを開発し、さらに経営を改善させていくといったことを検討しましょう。

上記以外のときは売上高営業利益率を用いて財務分析を行い、以下の対策を検討することが必要です。

  • ・売上高を上げる
  • ・売上原価を下げる
  • ・販売費および一般管理費を下げる

売上高を上げるには、販売価格を上げる、または販売数量を増やすことが必要です。

複数の商品を組み合わせ販売することで、実質的な値上げにつなげるといった工夫も必要となるでしょう。また、販売数量を増やすためには販路拡大や広告宣伝の強化などが必要です。

売上原価を下げるには、コストを削減できるところはないか見直しを行い、コスト削減により商品やサービスのクオリティ低下につながるときには、反対に付加価値を加えることの検討が必要となります。

販売費および一般管理費としては、たとえば販売数量が十分確保できているのなら、販売数量に比例する変動費を、販売数量に関係なく一定の固定費にするといった方法も検討できます。

  • 商品やサービスのクオリティを上げる
  • 付加価値をつけて販売する
  • 販売費および一般管理費をかけ販路拡大を検討する

といったことが主な戦略として考えられます。

まとめ

「売上高経常利益率」が高ければ、資金運用や資金調達などの資金管理も含めて会社がうまく回っているとことを示します。

そして「売上高営業利益率」は、「売上高」に対してどのくらいの「営業利益」があったのかを示すため、営業利益の金額が十分にあれば売上高営業利益率が低くても問題ないことが多いといえます。

しかしそうでなければ売上高営業利益率を改善することが必要なので、売上高・売上原価・販売費および一般管理費を、単独的または複合的に改善させていくようにしましょう。

儲かる商品やサービスを取り扱いしている場合でも、販売費および一般管理費について適切に管理できておらず、費用の無駄がおおければ営業利益を残すことはできません。

営業利益を向上させて売上高営業利益率を高めていくには、売上総利益を確保しながら販売費および一般管理費の中身を科目ごとで管理する地道な作業も必要になると留意しておいてください。

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