人材派遣事業を営む中小企業になるときクリアしなければならない資金面の問題とは?

2021/10/22
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人材派遣会社を設立し、中小企業として営むためには、厚生労働省の許可が必要です。

事業を立ち上げ中小企業として経営するハードルは、他の人材ビジネスと比べると派遣業は高めであり、資本金などクリアしなければならない要件も多いことが特徴といえます。

そして人材派遣業は、中小である故に資金繰りに注意しておかなければ、企業経営を断念しなければならなくなる可能性もあります。

そこで、中小の人材派遣会社を立ち上げるにはどのような要件をクリアすればよいのか、企業経営を続ける上で注意しておきたいことについて解説していきます。

 

人材派遣会社を設立するときに必要となる資本金

企業が会社を運営するために必要な準備資金資本金といいますが、人材派遣会社を設立するときの要件の1つです。

現在、最低資本金額は撤廃されているため、1円からでも会社の設立は可能となっていますが、人材派遣会社を設立するときには最低2千万円資本金を準備しなければなりません。

なぜ人材派遣業では財産基準が設けられているかというと、まず派遣先に対し安定した労働力の提供が必要となること、そして派遣労働者に対し給与を滞りなく支払うためです。

新会社法が創設される前、株式会社を設立するときに準備しなければならない資本金の金額は1千万円でしたが、それよりも多い金額が資本金として必要となります。

この資本金の高額さが大きなハードルとなり、人材派遣会社を諦めてしまう起業家もいるようです。

 

人材派遣業の3つの財産基準

人材派遣事業を営む会社を立ち上げるときには、許可要件として次の3つの財産基準をクリアすることが必要です。

  • ・資産総額から負債総額を差し引いた額が2千万円以上であること(事業所が複数ある場合には、「2,000万円×事業所数」で算出)
  • ・基準資産額が負債の7分の1以上であること
  • ・現金・預金が1千500万円以上であること(事業所が複数ある場合には、「1,500万円×事業所数」で算出)

なお、資産総額には繰延資産や営業権は含みません。

 

派遣会社設立に必要な厚生労働省の許可とは

人材派遣事業を営むときには厚生労働省の許可を得ることが必要ですが、資本金以外の許可要件は次のとおりです。

 

資産の要件

資産の要件は次の3つをすべて満たすことが必要です。

  • ・資本金2千万円以上
  • ・資産のうち1千500万円以上は現金・預金であり、資産から負債を差し引いた額が負債の7分の1以上であること

なお、資産には融資や借入金、出資金は含まれませんので注意してください。

 

派遣元責任者・事業主の要件

事業所または派遣社員100人につき、派遣元責任者が1名必要であるため、派遣元責任者講習を受講することも要件となっています。

受講費用は1万円前後となっており、受講後も有効期限は3年のため、期限前に再受講することが必要になります。

事業主にも要件が設けられており、未成年でないことや住所が一定し生活が安定していること、健康であることといった本人に対する要件を満たすことが必要です。

さらに雇用管理経験3年以上の他、労働者派遣法6条に規定されている欠格事由に該当しないことも必要となっています。

 

事務所の要件

事業所についても、広さや立地の基準をクリアすることが必要です。

広さの基準は20㎡以上であること、面接・面談のときの占有スペースを設けること、近隣に風俗営業法の規制対象となる店舗などが無いことなどクリアするようにしてください。

申請後には現地調査が行われるため、嘘の申告をしても通らないため注意しましょう。

 

個人情報の扱いに対する要件

人材派遣事業では多くの個人情報を扱うことになるため、個人情報適正管理規定が整備されていなければなりません。

個人情報の取り扱いに関する要件として挙げられるのは、

  • ・個人情報を取り扱う職員の範囲を定めていること
  • ・個人情報を取り扱う職員以外が個人情報にアクセスできないよう防止策を取っていること
  • ・業務目的以外で個人情報の使用はしないこと
  • ・個人情報を漏洩しないこと
  • ・個人情報の開示・訂正・削除に関する規定を定めていること
  • ・最新の情報を管理していること
  • ・紛失・破壊・改ざんなどが起きない防止策を取っていること
  • ・社会差別になる個人情報収集は禁止していること

などです。

 

キャリア形成に関する要件

すべての派遣社員はキャリア形成支援を受けることが可能となっているため、キャリア形成に関する計画を立てておくことが必要です。

派遣社員の教育訓練計画やコンサルティング窓口を設置するといったことも必要ですし、教育訓練を行う時期やその頻度なども計画しておくようにしましょう。

 

更新申請も必要

人材派遣事業を営む許可を得た後も、一定期間ごと更新することが必要となります。

新規で許可を得たときには3年有効期間更新は5年ごととなるため、期間満了3か月前までに更新するようにしてください。

なお更新するときには、事業所数×5万5千円の手数料と、登録免許税が9万円必要となります。

 

中小の人材派遣会社は資金繰りにも注意を

中小の人材派遣会社の場合、売上がだんだんと大きくなればなるほど、派遣先から回収できていない売掛金が増えていきます。

派遣社員に対する給料は先払いとなるため、売掛金を回収するよりも先に支払いに充てる運転資金調達がポイントとなります。

紹介してから成果報酬が入金されるまで60〜90日かかるため、固定費や人件費など諸経費に充てる資金がなくなれば事業を継続できなくなるでしょう。

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、今から起業する場合には苦戦を強いられることも予測されるため、資本金は規定より多めに用意しておくことが望ましいと考えられます。

 

人材派遣事業を営む企業は資本金を多く準備したほうがよい理由

人材派遣会社を設立するときに準備しなければならない資本金は最低でも2千万円のため、1円から株式会社が設立できる現在では、大変高額に感じてしまいがちです。

ただ、資本金は準備資金のため、少ないよりも多いほうが安心できるといえます。

そもそも資本金が1円の会社では、資金力もなく無理に法人を立ち上げたとみなされ、対外的な信用度は低くなるでしょう。

しかし何千万円も資本金を準備できている企業なら、資金力も十分ある安定した会社とみなされ、信頼してもらいやすくなります。

さらに銀行などから融資を受けるときにも、資本金が多いほうが資金調達しやすくなるはずです。

 

まとめ

資本金は事業の運転資金となる準備金のため、開業した後に支払いに充てるお金が不足しないように、事前に多く準備するようにしましょう。

そもそも人材派遣会社を設立するためには、最低でも2千万円の資本金が必要です。

中小の場合、資金繰りが悪化しやすくせっかく起業しても、資金がショートし倒産してしまう企業が少なくありません。

コロナ禍で資金調達が厳しい中でも、開業前に多く資金を貯めておくことができれば、実際に事業を始めたときのリスクヘッジに使うことができるでしょう。

なお、人材派遣事業は申請すればすぐに許可が得られるとも限らず、仮に申請が通らない場合には修正し、再申請しなければなりません。再度審査や現地調査を行うことになれば、開業するまで2か月程度、予定より時間がかかることも考えられます。

このような場合でも、手元に2千万円以上の資金があれば、余剰分を使いタイムラグを乗り切ることにつなげることができるはずですし、再申請で必要となる許可申請費用に充てることもできるでしょう。

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