業績が悪化してしまったことで、会社経営を続けることが厳しくなり事業再生を検討しているものの、税理士や会計士など色々な専門家がいるため誰に相談すればよいか迷うこともあるでしょう。
事業再生や企業再生など経営を再建する手段として知られているものの、どちらを選ぶかによって税理士や会計士の他、弁護士を頼ったほうがよい場合もあります。
そこで、経営を断念する前に事業再生を検討するのなら、税理士や会計士などの専門家のうち誰を頼るべきなのか解説していきます。
事業再生と企業再生の違いとそれぞれの意味
経営を再建する手段として知られているのは事業再生や企業再生ですが、どちらも同じではないかと考える経営者もいることでしょう。
しかし事業再生と企業再生はそれぞれ意味が異なるため、違いを理解してどちらを希望しているのか改めて考えてみるべきです。
まずは事業再生と企業再生の違いを理解するため、それぞれの意味を解説していきます。
事業再生とは
事業再生とは、経営不振に陥っている事業を再建させ、経営を健全化させるための施策を立て実行することです。
優良な事業に着目し、他の事業を抜本から見直し、収益をあげることができるように改革・再生させていきます。
もしも廃業を選択してしまうと、すべての事業の価値が消滅してしまいますが、その中に優良で将来性が見込める価値ある事業も含まれている可能性も否定できません。
そこで、再建計画を立てて収益力のある事業へと蘇らせることこそが事業再生です。
事業再生が可能となるケース
事業再生はどの企業でも可能というわけではなく、蘇らせることで価値を高めることができる商品やサービスがなければできません。
見込みのない事業については、見直しにより戦略を立てることや、債務整理といった道筋も厳しくなると考えられます。
事業再生の手法は次の4つ
事業再生の方法として挙げられるのは、
- ・自力によるもの
- ・M&Aの検討
- ・倒産手続
の3つです。
それぞれ詳しくご説明します。
自力によるもの
経営不振が続くと、将来性を見込むことのできない事業を取りやめ、従業員のリストラなど検討するといった経営者も少なくありません。
しかし誰にも相談せず単独で事業再生を図ることは容易ではなく、仮に上手くいった場合でも軌道に乗るまで時間がかかると考えるため、専門家に相談しながら進めた方がよいでしょう。
M&Aの検討
投資してくれる資金力の高いスポンサーを見つけ、支援を受けながら事業の立て直しを行い、再生していくというM&Aも近年増えています。
他にも債務整理や不採算事業を売却しながら、経営を改善させていく投資ファンドに任せる方法もあります。
倒産手続
事業再生の手法の1つとして挙げられるのが倒産手続ですが、清算型と再建型の2つのうち、事業再生に該当するのは再建型です。
清算型では債務整理により会社を廃業することなので、企業再生に含まれます。
企業再生
企業再生とは、債務超過や赤字収支などの理由で事業の存続が危ぶまれる場合、原因を排除して再生する手続のことです。
今の事業や企業体系などにこだわらず再生を図ることであり、上記の再建型の倒産手続も含まれます。
できれば廃業や倒産は避けたいと考える場合には、まずは事業再生で再建を目指し、それでもダメなら企業再生による手続を行うことが一般的です。
企業再生では事業再生計画を策定し、金融機関などから合意を得て再建していきます。
この場合、企業再生支援の経験値が高い会計士や税理士を頼れば、説得力のある実現可能な再生計画を立案させることができるでしょう。
企業再生の種類としては、
- ・私的再生
- ・民事再生法
- ・中小企業再生支援協議会を活用する
といった3つの種類があります。
私的再生
私的再生は、金融機関などの債権者に事業再生計画を提示し、交渉することで債務や金利の減免、リスケジュールなど再生に向けた返済を認めてもらうことです。
民事再生法
民事再生法は、経済的に厳しい状況に陥った企業が再建をスムーズできるように、経営陣はその地位を継続したまま会社を再建させていくことです。
中小企業再生支援協議会を活用する
中小企業再生支援協議会は商工会議所や金融機関、自治体などで構成されており、日常的に連携を図ることで地域の実情に合った再生への取り組みを支援する機関です。
経営の先行きに不安を感じたときには、地域関係機関全体でバックアップしてくれます。
会計士ではなく税理士で対応できない?
税理士は税金の専門家です。
それに対し会計士は会計の専門家ですが、事業再生で求められる業務をあげていくと、財務や事業の価値やリスクの調査による戦略と具体的施策の立案、そして経営改善計画の策定です。
税理士は財務会計や管理会計を学んでいないことや、オペレーション・マーケティング・WEB・戦略・組織論といった知識がないなど上記の業務が可能とは言い切れません。
戦略や具体的施策の立案、売上高の計画値策定など、いずれも別途専門的な知識を得た税理士であれば可能ですが、どの税理士でも遂行することができるとはいえないと留意しておいたほうがよいでしょう。
一般的に税理士は税法の知識が高く、自ら管理会計・経営学・マーケティングなど学び習得している専門家ならよいですが、そうでない場合には会計士に相談したほうが安心といえます。
弁護士に事業再生を相談することは可能?
法律の専門家といえば弁護士ですが、事業再生を専門とする弁護士もいます。
倒産法や会社法など詳しい弁護士もいますし、税理士登録している弁護士もいるため、いろいろな分野の専門的知識が豊富です。
ただ、法律以外のことは専門としておらず、税務実務まで詳しいという弁護士は多くありません。
事業再生を進めていくにあたり、必要なマーケティング・オペレーション・戦略・財務会計・管理会計・税務・組織再編税制といった知識まで習得している弁護士ならよいですが、そうでない場合には相談しにくいと考えられるでしょう。
組織再編については、法人税だけでなく会社法にも規定があるため、会社法からアプローチする方法など詳しい弁護士もいますが、会計と税務についても取り扱いが必要です。
そのため、事業再生について弁護士を選ぶよりは、最初から会計士に相談したほうがスムーズと考えられます。
ただ、事業再生の実務では、会社法・倒産法・労働法といった法律分野で弁護士を頼ることもあり、法律面からのアドバイスを受けたいときには弁護士は頼りになります。
事業構造を改革し、ビジネス自体を再生させることについて弁護士に相談するのではなく、法的整理による会社更生や民事再生、破産や特別清算の手続において相談するようにしましょう。
まとめ
事業を再生させようと考えている経営者もいるようですが、税理士や会計士、弁護士など複数専門家がいるため、どの専門家を頼るべきか迷いがちです。
ただ、それぞれの専門家によって強みや得意分野は異なるため、今後、会社を再建させていく上で何を進めていきたいかによって相談する相手を選びましょう。
また、事業再生と企業再生は厳密に意味が異なるため、どのように会社を再生させていきたいか改めて理解する必要があります。
専門家がいなければスムーズに進まない手続もあるため、独断で判断せず頼れる専門家に相談したほうが安心して再建に向けて取り組むことができるでしょう。
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