売上総利益は増えているのに、経常利益が減少しているときには売上高が伸びるよりも販売費・一般管理費・支払利息などが増えていると考えられます。
そのため業務を効率化させ、経費を削減することなど必要となりますが、このように経常利益が減少していることで気がつくこともあるといえるでしょう。
経常利益の減少でわかることがあるように、事前に指標を確認することで人が健康診断を受けるように会社の健康状態をチェックできます。
そこで、経常利益の減少以外にも、会社の健康状態をチェックするときに確認できる指標8つをご紹介します。
目次
人の健康診断同様に会社も健康状態の確認は必須
人が健康診断を受けると、血液検査からコレステロール値やγDTPなどの数値を確認し、もし数値が高ければ生活習慣を見直すなど改善を図ります。
このように、何の数値が悪いのか確認できれば、健康状態を保つために何を改善させるべきか把握することが可能です。
もし数値を確認せずいつも通りの生活を続けていたら、気がついたときには病気になっていることもあれば、深刻な状態で改善するまで時間をかけなければならなくなるでしょう。
会社経営も同様に、健康状態を確認するための指標を使うことで、今抱えている問題を解消させるために何をするべきか知ることができます。
会社の健康状態をチェックするときに用いる指標は、
- ・収益性をあらわす指標
- ・成長性をあらわす指標
- ・安全性をあらわす指標
- ・効率性をあらわす指標
に区分されるため、それぞれどのような指標があるか確認しておきましょう。
収益性をあらわす指標
収益性をあらわす指標には、
- ・売上高経常利益率
- ・損益分岐点売上高
- ・安全余裕率
- ・売上高キャッシュフロー比率
の4つがありますので、それぞれ詳しくご説明します。
売上高経常利益率
今の事業の仕組みに収益を生む力は備わっているか、確認するための指標が「売上高経常利益率」です。
たとえば、
「売上は伸びているはずなのに儲けはちっとも出ない…」
といった場合に確認しておきた指標といえます。
売上を上げるため破格値で販売することや、利益を得たいために高値で売ることは、一時的に売上や利益を得ることはできても事業の存続や成長は見込めないといえます。
適正な価格での販売と適正な利益を得ることが、存続・成長につながるといえますが、売上高経常利益率では会社が存続・成長していくため適正な利益を上げることができるか示します。
売上高利益率(利益/売上高)でも確認できますが売上高経常利益率では、
売上高経常利益率(%)=経常利益率÷売上高×100
という算出式を用います。
本業と財務基盤を含めた総合的な収益力を示す指標であり、数値が高いほど収益を得るための事業の仕組みができていると判断できます。
損益分岐点売上高
黒字と赤字の分かれ目といえる採算ラインを確認するときの指標が「損益分岐点売上高」で、
損も得もない採算を取ることのできる売上高のラインを確認することができます。
損益分岐点売上高を上回る売上なら黒字であり下回れば赤字と判断されますが、確認するためにはまず経費を「変動費(材料など仕入れの原価)」と「固定費(家賃・人件費・減価償却費など)」に分けましょう。
損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費÷売上高)
で、算出できます。
安全余裕率
売上変動に対する経営体質の強さを確認できる指標が「安全余裕率」です。
上記の損益分岐点売上高と、実際の売上高の関係を確認するときに使いますが、たとえば売上高が減少しても安全余裕率までであれば赤字にはならないことを示します。
新型コロナウイルス感染症の影響で売上が激減してしまった企業も少なくありませんが、安全余裕率を見れば不況に対する提供力や、売上高の変動に耐えることができる経営体質を確認できます。
安全余裕率は、
安全余裕率=(1-損益分岐点売上高÷売上高)×100
で確認できるのでチェックしておきましょう。
売上高キャッシュフロー比率
キャッシュフローが売上高に占める割合が「売上高キャッシュフロー比率」ですが、しっかりとキャッシュを生み出すことができているか確認できる指標です。
損益計算書上では利益が出て黒字なのに、倒産してしまう「黒字倒産」は、資金繰りが悪化し手元のキャッシュ(現金)不足を原因とします。
キャッシュが底をつき、銀行からの借入金や支払手形の返済や決済ができなくなり、せっかく黒字なのに倒産してしまう状態が黒字倒産です。
キャッシュフローとは現金の流出入のことで、手元の現金が不足してしまうのは次のようなことが関係していることが多いといえます。
- ・売掛金や貸付金などの回収が遅れる(また回収不能となる)
- ・不良在庫で過剰な在庫を抱え現金化が進まない
- ・過大な設備投資などで借入金の返済が困難となる
- ・融資が通らないなど資金調達ができない
重要なのは、決算書上で表示される利益と手元の現金は必ず一致するわけではないということです。
利益を管理し、意識することも会社経営では大切なことですが、実際の現金が不足すれば倒産してしまうことを留意しておくべきといえます。
そこで確認したいのが「売上高キャッシュフロー比率」で、損益計算書上の利益ではなく、営業キャッシュフローを用いた収益性の判定が可能となります。
売上高キャッシュフロー比率は、
売上高キャッシュフロー比率=(経常利益×0.6+減価償却費)÷売上高×100
で確認できます。
経常利益に0.6をかける理由は、法人税の実効税率を40%とし控除しています。
減価償却費をプラスする理由は、実際の現金の支出を伴わない経費なのでその分、手元に残る現金が増えるからです。
算出したキャッシュフローが借入金返済の原資となるため、年間の借入金返済額より数値が低いときには、資金調達して手元の現金を増やすことが必要となります。
成長性をあらわす指標
成長性をあらわす指標は、
- ・売上高増加率
- ・経常利益増加率
の2つですので、それぞれ詳しくご説明します。
売上高増加率
会社の将来性や、競合他社との競争力を検証するためにも、企業の成長性を売上から確認できる「売上高増加率」を分析しましょう。
前年度と比べた売上高増加率は、
売上高増加率(%)=(売上高-前期売上高)÷前期売上高×100
で確認できます。
売上高増加率が低下しているときやマイナスをあらわすときの原因として考えられるのは、
- ・市場自体の需要が減退または不況
- ・市場の成熟または衰退
- ・自社商品の競争力・シェアの低下
などです。
経常利益増加率
経常利益とは、本業を含め普段の事業活動から得ることができる利益です。
そのため、売上や利益などの増加率を時系列で確認することにより、会社の成長性を把握することが可能となります。
経常利益増加率は、
経常利益増加率(%)=(経常利益-前期経常利益)÷前期経常利益×100
で確認できますが、プラスであれば企業力が高まっていると判断できるでしょう。
問題なのは経常利益増加率がマイナスのときです。
売上高は上がり経常利益は減少しているとき
売上高は上がっているのに経常利益が減少しているときは、
売上総利益=売上高-売上原価
の増減を確認しましょう。
もしも売上総利益が減少しているときには、商品そのものの採算性が低下している可能性が高いと判断できます。
市場・商品・地域など、それぞれ採算が取れているか分析し、採算性が低下している原因を追及します。
そして競合他社の動向を確認しながら、販売における戦略を立て計画を見直すことが必要です。
売上総利益は増えているのに経常利益が減少しているときには、販売費・一般管理費・支払利息などが売上高よりもさらに増えている状態といえます。
そのため、業務を効率化させるなど、経費を削減する対策を立てることが必要となるでしょう。
売上高も経常利益も減少しているとき
売上高も経常利益も減少しているときには、売上高の分析を行い、商品の採算性を確保するための対策や経費削減に向けた見直しなどが必要となります。
売上高は減少しているのに経常利益は増えているとき
売上高は減っているのに経常利益は増えているときには、高給のベテラン社員の退職といったことが背景にあると考えられます。
安全性をあらわす指標
安全性をあらわす指標には、
- ・借入金償還期間
- ・流動比率
の2つがあります。
それぞれ詳しくご説明します。
借入金償還期間
借りたお金を何年あれば完済できるか確認するための指標が「借入金償還期間」です。
無借金経営を望む経営者もいるでしょうが、企業経営での借入金は悪いこととはいいきれません。
なぜなら自己資本に依存した資金調達には限界があり、借入金を上手く活用すれば保有する資産以上のお金を手にし、先行投資によって会社を発展させることにつなげることができるからです。
なお、融資を受けたときには遅れることなく返済し、銀行と良好な関係を続け信頼関係を構築していくことが前提といえます。
しかしあまりに借入金に依存しすぎた経営は、返済義務と金利負担の重さで経営のリスクを拡大させることになりかねません。
そこで借入金を適切に管理していくことが必要となりますが、ポイントとして押さえておきたいことは、
- ・売上規模・収益力・資産状況に見合う借入額か(返済能力に見合っているか)
- ・資金使途と資金調達のバランスが取れているか
です。
この2つのポイントのうち、借入金の返済能力を確認するために必要となる指標が「借入金償還期間」といえます。
借入金償還期間は、
借入金償還期間(年)
=借入金÷キャッシュフロー
=(長期借入金+短期借入金)÷(経常利益×0.6+減価償却費)
で確認できます。
税引後利益(経常利益×0.6)であるキャッシュフローと減価償却費の和で、現在の借入金を何年で返済できるか確認でき、数値が低いほど安全性が高いと判断できます。
10年以下なら安全圏内と判断でき、20年を超えればキャッシュフロー不足と考えられるでしょう。
借入金償還期間が長いときには、在庫や遊休資産など圧縮し返済を進めつつ、借入金のリスケジュールや借り換えを検討するべきといえます。
流動比率
借入金の適切な管理のポイントは、
- ・売上規模・収益力・資産状況に見合う借入額か(返済能力に見合っているか)
- ・資金使途と資金調達のバランスが取れているか
の2つと先に述べましたが、「流動比率」は資金使途と資金調達のバランスが取れているか確認し、資金ショートを引き起こす危険性をチェックするための指標です。
資金を調達するときには、資金使途に合った方法や金額でなければ資金ショートを起こすリスクを高めます。
そこで確認したいのが流動比率ですが、
流動比率=流動資産÷流動負債×100
で算出できます。
通常であれば150%以上が望ましく、100%を下回る状態は安全性に欠けているといえるでしょう。
ただ100%を超える場合でも、不良在庫や不良債権など、現金化が難しい流動資産が含まれていないか精査することも必要です。
効率性をあらわす指標
効率性をあらわす指標には、
- ・総資本回転率
があります。
効率的な事業運営ができているかを確認するための指標が「総資本回転率」であり、限られた経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報などを有効に活用し、競争力の高さを分析するときに用います。
企業活動のもととなるのは総資本(総資産)ですが、この総資本を効率的に活用させているか財務から判断するときには「総資本回転率」を分析しましょう。
総資本回転率は、
総資本回転率=売上高÷総資本(総資産)
で算出します。
事業に投資をした総資本は、材料・設備・人件費などの経営資源へと変わり、さらに商品に変換したものを販売し、現金として回収します。
総資本回転率ではこの資金の流れが年に何回繰り返されているか確認できるため、数値が高いほど総資本(総資産)を効率的に活用できており、お金の生産性が高いと判断できます。
まとめ
人が健康診断を受けたとき、血液検査などで良好といえない数値が合った場合には、生活など見直し傾向維持に努めることとなるでしょう。
会社経営でも同じように、たとえば売上高は上がっているのに経常利益が減少しているときには、何を改善させなければならないのか知り見直すことが必要となります。
何の数値が悪いのか事前に確認できれば、健康状態を保つためには何をしなければならないか把握できます。
会社の健康状態をチェックできる指標はいくつかあるため、健全経営が可能となるように定期的に確認しながら、意識した経営を続けるようにしていきましょう。
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