売掛金と買掛金は、どちらも商取引によって発生する後払いの代金のことですが、これらの受け取りや支払いのタイミングやバランスによって資金繰りは大きく変動します。
後払いによる取引が可能であることで、取引量の増加や割引などの交渉が可能となるなど便利な部分がある反面で、売掛金回収の遅れや買掛金支払いの増加で手元の資金のバランスは崩れてしまうからです。
そこで、この売掛金と買掛金が資金繰りにどのように影響するのか、バランスを保つために大切なことについてわかりやすく解説していきます。
目次
売掛金は後日代金を受けとる権利のこと
売掛金は、商取引において先に相手に商品を販売し、その代金は後日受け取ることになっている契約において発生します。
取引相手から支払われる代金を受け取るまでの期間、バランスシート(BS)では資産に分類される勘定科目であり、1年以内に回収される権利なので流動資産に含まれます。
たとえば企業間取引における商品の売買は継続した取引になることも多く、取引のたびに代金を支払うのでは会計処理や現金の受け渡しなど手間や余計なコストがかかります。
そこで、一定期間分の取引に対する代金を、後日まとめて請求し入金してもらう際に発生するのが売掛金という資産です。
売掛金が増えることは良いことか
計上された売上に対する後払いの代金が売掛金なので、いずれ入金されれば現金が増える資産と考えれば、売掛金が増加することはよいことだと捉えがちです。
確かに売上が増え将来入金される予定が多くなれば、いずれ現金が増えるため悪いことではありませんが、すぐに手元のお金が増える資産ではありません。
また、万一取引先が倒産してしまえば、期日になっても売掛金は回収できなくなってしまうといったリスクもあります。
もっとも問題なのは、手元に現金が入るまで一定期間待たなければならず、その間に資金繰りのバランスを崩してしまう可能性があるということです。
売掛金が回収不能とならないための与信管理が重要
発生している売掛金の未回収リスクを抑えるためにも、取引先の支払い能力について与信管理を徹底して行っていきましょう。
与信結果により、取引の限度額を設定し、その範囲で取引を行うようにします。
また、売掛金は後日代金を受け取ることのできる権利ではありますが、回収できず放置していればいずれ時効により消滅してしまいます。
売掛金を含む債権の消滅時効は一般的に5年とされているため、もし取引先から回収できていない債権がある場合には、適切に催促するなどが必要です。
買掛金は後日支払わなければならない代金
買掛金は売掛金とは反対に、取引先から商品を購入したもののその代金の支払いは後日といった場合、発生します。
未払いの仕入れ代金などのため、バランスシートでは負債に分類され1年以内に支払うことが一般的であることから流動負債に含まれます。
売掛金と買掛金のバランスは業種により変わるものの、たとえば仕入金額が大きくなりやすい飲食店などはバランスシート上の買掛金が大きくなりやすいといえるでしょう。
買掛金が増えれば後で支払う代金の負担も大きくなってしまいますが、一時的に現金が流出することの猶予を確保できるため、支払いまでの期間が長いほど資金繰りのバランスは保たれやすくなります。
売掛金と買掛金のバランスを保つことが大切
売掛金は商品やサービスを売ったとき、買掛金は仕入れなどで商品や材料を購入したときに発生します。
仮にどちらも発生する取引相手の場合には、売掛金と買掛金を相殺し回収・支払いを行うといった方法が取られることもあります。
売掛金を回収するまでの期間、そして買掛金を支払うまでの期間は一定のサイトにより保たれますが、回収はできるだけ早く・支払はできる限り遅くすることで資金繰りは安定します。
入金と支払いのバランスが重要
仕入れなど、手元に商品や材料を先に調達し、その後加工や製造されて販売される流れが一般的です。
そのため、買掛金の支払いが売掛金の回収よりも早くなることが多いですが、販売した商品の代金が入金されるよりも先に支払いを済ませなければなりません。
この流れが資金繰りを悪化させてしまう要因となるため、できるだけ回収は早く・支払は遅くすることが必要です。
手元の資金が不足しがちで資金繰りが悪化しているのであれば、次のような方策も検討が必要となるでしょう。
仕入先に支払いサイトを延長してもらう
買掛金の支払いをできるだけ遅くしてもらえないか、仕入先に支払いサイトを長く設定してもらうように交渉しましょう。
ただし相手にも都合があるため、一方的な条件を押しつけても了承してもらえるとはいえません。
また、支払いサイトを伸ばしてもらいたいと交渉することで、資金繰り悪化を勘繰られその後の取引に影響を及ぼす可能性も出てきますので注意してください。
売掛金の入金サイトを短縮してもらう
仕入れ代金の支払いが厳しい状態でも、売掛金を早く回収することで、その回収分を買掛金の支払いに充てることができます。
そこで、売掛先に売掛金の支払いをできるだけはやめてもらえないか交渉することも方法の1つです。
ただ、単に早く入金してほしいと交渉しても、買掛金同様に資金繰り悪化を勘繰られることになってしまいます。
相手のある取引のため、簡単に了承してもらえるともいえませんので、慎重な交渉が必要となるでしょう。
売掛金と買掛金のバランスが保てないときの対策
仕入れ先や売掛先に交渉し、支払いの延長や入金の短縮を依頼しても応じてもらえないときや、立場上どうしても交渉は厳しいといったときにはファクタリングなどを使った資金調達がおすすめです。
ファクタリングとは、保有する売掛金をファクタリング会社に売却し、売掛先から入金のある期日よりも前に現金化させるサービスのことを指しています。
売掛先に直接、はやめに代金を支払ってほしいと交渉しにくいときもあるでしょう。交渉することで資金繰りが悪化している企業と勘繰られ、足元を見られる取引になることも避けたいものです。
そのような場合でもファクタリングを使えば、売掛先に知られることなく、保有する売掛金を現金化させることで資金調達が可能になります。
仕入れ先に買掛金の支払いサイトを見直してもらったとしても、資金繰りが苦しい状態が続いているときにも有効な手法です。
ファクタリングでバランスシートを改善
売上は計上されているのに支払いが先で回収は後。この流れにより手元の現金が不足し、たとえば借入れなどで資金調達することになればバランスシートは肥大化し銀行からの信用力も低下します。
資産よりも負債のほうが多い債務超過に陥れば、いずれ倒産してしまう危機を強めます。
健全な経営を目指すなら、利益を純資産で割ったときの総資産利益率(ROA)を向上させることが必要ですが、数値を高めるには仕入れコストの見直しや総資産を減少させることが有効です。
バランスシートをスリム化することが必要といえますが、ファクタリングはこのROA向上にも有効な手法といえます。
ファクタリングで資金を調達しても、借入れではないため負債にはならず、保有する売掛金という資産を売って現金に換える資産内での取引だからです。
将来的に銀行から融資を受けたいと考えているときにも、ファクタリングを使うことでバランスシートを改善し、銀行からの評価を向上させることができます。
まとめ
商取引において売掛金や買掛金が発生することは避けようがないため、両社のバランスを保つことを意識しましょう。
資金繰りを悪化させないためには、売掛金の回収はできるだけ早く、買掛金の支払いはできる限り遅くすることが必要です。
しかし取引先に安易に交渉することは得策とはいえないため、ファクタリングなどをうまく使って資金繰りを改善させることを検討してください。
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