商取引の場面では取引先に対し請求書を発行することが必要となりますが、その際に日付をいつにするべきか悩む方もいるようです。
請求書に記載する日付がわからないからといって、空白にしたり曖昧に決めたりすると、後で入金されず困ることも考えられます。
請求書の作成日にするべきなのだろうか…?と迷ったときのために、発行する際の日付についてご説明します。
目次
請求書の日付はいつ?
取引先に対し発行する請求書の日付。いったいいつにすればよいかわからず、とりあえず作成した日にすればよいだろう!と考える方もいるでしょう。
しかし多くの場合は、請求書を作成した日付ではなく取引先との契約において決めた締め日に合わせています。
会計の「現金主義」と「発生主義」の違いから考えた日付とは
会計処理のとき、自社が「現金主義」と「発生主義」のどちらを採用しているでしょう。
通常、仕事を引き受け、完成した後で取引先に対し請求書を発行することとなるでしょう。
その際の請求書の日付は請求した日なのか、それとも請求締日でしょうか。
どちらも記載されていれば特に問題ないでしょうが、書式上どちらか一方のみの日付しか記載できないときには請求締日を記載しましょう。
なぜなら会計処理は「発生主義」で計上することが必要ですが、この発生主義で処理するためには「請求締日」が確認できることが必須となります。
現金主義とは?
会計処理における「現金主義」とは、お金を受け取ったときに売上として、さらに支払ったときに経費として計上する方法です。この「現金主義」の「現金」には、普通預金や当座預金も含まれています。
なぜ「発生主義」で計上することが必要なのか、例を挙げてご説明します。
たとえば1月完成した仕事の売上が100万円で、その代金を受け取ったのは3月末だとします。仕事を完成させるためにかかった費用は60万円で、その経費の支払いは2月末としましょう。
現金主義であれば経費として計上されるのは2月末、売上として計上されるのは3月末ですので、1~3月の間で発生した利益は売上100万円から経費60万円を差し引き40万円です。
3か月合計で見れば問題ないと感じるでしょうが、月々の利益でみたときには違和感をおぼえることになります。
まず1月の利益を確認すると、入金と支払いのどちらも発生していないため利益は0円です。
2月は入金がなく経費の支払いだけ発生するため、売上0円から経費60万円を差し引き損失が60万円発生します。
そして3月は売上の入金は発生するものの経費の支払いはないため、利益は100万円です。
1月は利益0円、2月は利益△60万円、3月は利益100万円。このように毎月利益が乱高下するはずはないでしょう。
実際には複数の案件が並行して進むこととなりますので、入金と支払いがどちらも0円になることはありません。しかし上記の計算で発生した利益は、正しい数値とはいえないはずです。
「発生主義」なら違和感を解決
「発生主義」で会計処理する場合には、仕事の完了月に売上も経費のどちらも計上することとなります。
上記の例を当てはめて毎月の利益を確認すると、1月は売上100万円から経費60万円を差し引いた40万円が利益ですが、2月と3月の利益は0円です。この数字こそが、正しい毎月の利益といえます。
小規模な会社などでは、会計処理の際に現金主義を採用していることも少なくありませんが、決算で現金主義から発生主義へと修正します。
日常行う記帳は現金主義であったとしても、決算で正しい発生主義の数値に修正することもあれば、3か月や半年に一度に正しい利益を把握するため修正作業を行うこともあります。
本来であれば毎月発生主義で会計処理したほうが、常に正しい利益を確認することが可能となるでしょう。
請求書を発行するタイミングはいつ?
請求書を発行するのは、商品やサービスを販売・提供したとき、またはその後であり納品よりも早いタイミングで取引先に渡されることはありません。
提供と同時または提供後という流れですが、一般的には取引発生のたびに請求する「都度方式」であれば、取引先から入金されるのも早くなるため会社の資金繰りがよくなるというメリットがあります。
しかし1か月の間で取引が複数回行われる場合には、何度も請求書を作成することとなります。このような場合や、毎月定常的な取引があるケースでは、1か月分をまとめて請求する「掛売方式」が採用されています。
企業間での取引においては、主にこの掛売方式が採用されているため、1か月に1度請求書を発行することになるといえます。
締めと入金の日付は取引先との取り決め次第
掛売方式で発行する請求書は、締め日までの商品の納品またはサービスの提供が完了した後です。
そのため請求書に記載する日付はこの完了日以降となりますが、請求書を取引先に渡す日ではなく締め日に合わせることが一般的です。
発行された請求書の代金をいつ入金してもらうかは、取引先との取り決めにより異なります。
月末締め翌月末払いの場合もあれば、月末締め翌々月末払いという場合もありますが、締め日から入金までのサイトが長期になるほど資金繰りは厳しくなると留意しておいてください。
仮に20日を締め日とする取引先に対し、末締めの請求書を渡してしまうと入金されるのは予定よりも1か月先になってしまいますので注意しましょう。
請求書の日付で利益に影響が
請求書の日付は、決算を境目とするときに問題になります。請求した分が今期のものか、それとも来期のものかによって利益に影響を与えるからです。
もし業務実態からみたとき、今期の請求でありながら日付を間違い翌期に回ってしまったときには、「期ズレ」となり修正しなければならなくなりますので気を付けてください。
請求書の日付は請求締日に合わせること
請求書の日付をいつにすればよいか迷うこともあるでしょうが、請求締日に合わせて記載するようにしてください。
先に挙げたケースで、請求締日を月末としている場合には、1月中に完成させた仕事の請求書は「2021年1月31日」と日付を記載します。
もし請求書を取引先に渡した日が「2021年2月10日」だったため、この日付けを記載してしまうと、発生主義による処理で請求分の売上が1月分か2月分かわからなくなってしまいます。
請求書内の項目ごとに、納品日や完了日を記載する欄が別途あれば確認できるでしょうが、そうでなく請求書の日付を記載する欄が1か所だけであれば「請求締日」を記すようにしてください。
まとめ
日本の商取引では、商品を販売・サービスを提供したときにその代金を受け取るのではなく、後日入金される掛けによる取引が一般的です。
そのため取引先に対する請求書も、掛売方式で発行することが必要になりますが、請求書の日付をいつにすればよいのだろう?と考えてしまう方もいるでしょう。
この場合、取引先との契約で取り決めた締め日を記載するようにしてください。
締め日を請求の日付とせず、たとえば締め日よりも後の請求書発送日などの日付で作成してしまった場合、取引先から売掛金を回収できる期間が長くなる可能性があります。
売掛金を回収するまでの期間が長くなればなるほど資金繰りは悪化しやすくなり、請求書の日付のズレで売掛金の入金が遅れれば、資金繰り悪化だけでなく後々の会計処理で修正が必要になるなど手間も増えますので注意してください。
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