売掛金の回収は弁護士に相談したほうがよい?もっとも理想的な方法とは

2020/07/27
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企業経営において発生する売掛金のうち、売掛先企業から入金されないものは弁護士などに相談し、回収を依頼したほうがよいものか迷うものです。

回収できない状態で売掛金を放置しても、手元の資金は増えることなく資金繰りは悪化してしまいます。しかし弁護士に依頼するほどのことなのか迷うこともあるでしょうし、そもそも法律の専門家である弁護士に相談すると費用が高額にかかり、売掛金を回収してもほとんどそのコストに消えてしまうのでは…と考えてしまう経営者もいるでしょう。

そこで、もし回収できない売掛金が発生した場合、早期回収のために弁護士に依頼するべきか、経営者自身でできることはあるのかご説明します。

 

未払いの売掛金は弁護士に依頼する前に

期日を過ぎているのにもかかわらず、売掛先企業から入金されない売掛金が発生した場合、弁護士に依頼する前に早めに回収する方法はないか考えてみましょう。

未回収のまま時間が経過してしまうと、売掛先企業の経営状態が悪化し、より回収が難しくなる可能性も高くなってしまうからです。

特に売掛先企業が継続して取引のある相手であれば、売掛金の未払い分が増えてしまい、収益を圧迫し続けることになってしまいます。

売掛先企業との契約が大口の場合、売掛先の倒産に伴い自社まで連鎖倒産する可能性も否定できませんので、未回収の売掛金を放置することはリスクの高い行為と認識しておくべきです。

 

弁護士に依頼する前に行いたい売掛金回収に向けた手続き

売掛金が未入金状態の場合、まずは売掛先企業に入金がされていない旨を連絡し、なぜ支払いが遅れているのか確認しましょう。

単に入金を忘れていただけという場合もありますし、そもそも請求書が何らかの手違いで売掛先企業に届いていないことも考えられます。

入金忘れや請求書確認がまだできていなかったという場合は、売掛先企業に電話で連絡すれば、すぐに口座に支払ってもらうことができるでしょう。

 

売掛先企業の資金繰り悪化などが原因で売掛金が支払われていないなら

売掛先企業の資金繰りが悪化しているなど、売掛金の支払いに充てる資金がなく入金が遅れている場合は問題です。

まずは期日を決め、いつなら支払いをしてもらえるのか確認しましょう。

その期日になっても支払いがされず催促を繰り返しても無視される場合や、売掛先企業が故意に支払いを拒絶している場合、内容証明郵便での請求書送付を行います。

 

内容証明郵便とは?

内容証明郵便を使えば、送り先に対し送付した文書の控えを残すことができます。郵便局がいつ誰に対し、どのような文書を送ったのか証明してくれるため、売掛先企業に請求したことを主張できます。

内容証明郵便で請求書を送付する場合、

  • ・当事者の表示
  • ・未払いとなっている売掛金の特定
  • ・支払時期がすでに到来している事実
  • ・1週間~10日など一定期間内に支払いを行ってもらうこと
  • ・支払いがされなければ民事訴訟など法的手続を検討すること
  • ・振込先口座

などを記載しましょう。

発送者の署名(記名)押印が必要ですが、実印でなくてもかまいません。

 

配達証明も同時に

内容証明郵便で売掛金を請求する場合、配達証明も同時に利用しておきましょう。

配達証明でれば、売掛先企業にいつ郵便が配達されたか証明されますので、売掛先から請求書を受け取っていないと知らないふりをされるリスクを防ぐことが可能です。

 

任意で売掛先に交渉する

内容証明郵便が売掛先企業の手元に届くと、相手に心理的なプレッシャーを与えることで入金がスムーズに進むことになります。

弁護士に依頼しなくても売掛金を回収しやすくなるものですが、それでもまだ指定した期日内に入金されない場合もあるでしょう。

その場合、売掛先企業と交渉を行い、どうすれば売掛金を支払ってもらえるか確認します。たとえば売掛金を減額してもらえるなら支払いが可能という場合もありますし、一度に支払うことは難しくても分割なら可能という場合もあります。

売掛先企業の言いなりになるのではなく、どこまで譲歩しリスクを容認しながら合意できるか考え、交渉のすりあわせを行ってください。

合意ができたら、合意書を作成して、その内容に従って相手に支払をしてもらうことになります。

 

取り決めた内容は公正証書の作成を

公正証書とは、公証人法に基づいて法務大臣に任命された公証人の作成する公文書であり、信用性が高く確実に請求する上で必要といえます。

任意交渉を売掛先企業と行い、売掛金支払いに対する合意書を作成する場合、公正証書にしておきましょう。

当事者間で独自に作成するより、信用性が高く不払いとなった場合にはすぐ強制執行も可能となります。

強制執行を可能とするには、公正証書に「強制執行認諾条項」を付帯しておくことが必要です。

独自の合意書作成で支払いがされない場合には、裁判を経て売掛先の資産を差し押さえることになります。そのため裁判の間に資産を隠されてしまう可能性もあるため、売掛金回収が難しくなる可能性も出てくるでしょう。

また、裁判手続きを行うのなら、やはり弁護士に相談・依頼することになるため費用もかかります。

しかし公正証書を作成しておけば、すぐに売掛先の資産から売掛金を回収できるため、未回収となるリスクを低減させるために有効です。

 

相殺で売掛金を回収

売掛先企業に対し、売掛金だけでなく自社が支払わなければならない買掛金もあるのなら、売掛金と買掛金を相殺することで未回収分を回収できます。

互いに保有する債権同士を、対等な金額まで消滅させる手続きが相殺という方法です。

ただし相殺による売掛金の回収は、互いに債務を保有していること、その債務の支払期限が到来していることが必要になります。

ただ、自社の期限の利益を放棄する形により、期限が到来していない未払い債務分と売掛先企業の売掛金をすることもできるでしょう。

なお、買掛金の金額が回収できていない売掛金より少ない場合、相殺できるのは買掛金額までとなるため残った金額は別途回収手段を考えることが必要です。

 

納品済の商品を引き上げて売掛金を回収

すでに納品済の商品などが売掛先企業に在庫として保管されている場合、その商品を引き上げて売掛金を回収できます。

ただし売掛先企業に商品の所有権が移動しているため、売掛先から同意を得ずに勝手に引き上げを行うと窃盗行為とみなされます。

売掛金という債権回収を目的とする場合でも、必ず売掛先から承諾を得た上で商品を引き上げるようにしてください。

また、引き上げる商品価格までの売掛金のみ回収可能となる方法のため、不足分は別途回収手段を検討することも必要です。

 

裁判手続きに踏み込むなら弁護士への相談が必要に?

いずれの売掛金回収方法でも売掛先企業から入金されない場合、いよいよ裁判所を通して回収手続きを行うことが必要となります。

まずは支払督促で、簡易裁判所から売掛先企業に対し、支払いを督促してもらいます。を利用する方法があります。

支払督促とは相手に対して簡易裁判所から売掛金を支払うよう催告してもらう方法で、相手から異議が出なければ資産の差し押さえも可能です。

流れとしては、まず支払督促の申し立てを行います。簡易裁判所から売掛先企業に支払督促申立書が届きます。2週間以内に売掛先から異議申し立てが行われなかった場合、30日以内に仮執行宣言の申し立てが可能となり、資産の差し押さえが可能となります。

ただし支払督促は、相手の住所地を管轄している簡易裁判所に申し立てが必要となる点に注意しておきましょう。

 

少額訴訟による売掛金回収は弁護士を通さなくても可能

支払督促なら自身で手続きしやすいでしょうが、訴訟となると弁護士に相談したほうがスムーズと考えてしまうものでしょう。

ただし、売掛金の金額が少ない場合には少額訴訟を行うこともできます。

少額訴訟は60万円以下の金銭債権請求に利用可能な手続で、1回の期日ですべての審理が行われ、判決まで至ります。

和解率も高く、和解調書には強制執行力があるため、支払いがされなければ資産の差し押さえによる売掛金回収も可能です。

売掛金が少額の債権なら有効な手法ですが、法的な主張や立証が不十分だと判決で負ける可能性もあります。

そして相手から異議が出された場合には、通常訴訟に移行するため和解できないリスクが高いときには弁護士に相談したほうがよいでしょう。

 

通常訴訟による売掛金回収は弁護士に頼ったほうが安心

少額訴訟で解決できなかった場合や、売掛金の金額が大きいときは通常訴訟を行うことになります。

一般的な裁判手続きを指しており、有利になる事情の主張や証拠の提出が必要です。

法的な主張や立証ができない場合、敗訴となり未回収の売掛金は支払われないままとなります。

支払督促や少額訴訟と違って専門的な手続きが必要となるため、弁護士に相談・依頼したほうが安心ですし、独自に行うと不利な状況に立たされる可能性が高いと留意しておきましょう。

通常訴訟は少額訴訟のように1日で終わる手続きではなく、複数回手続きを繰り返すことになります。

半年や年単位など、売掛金回収まで時間がかかることになるため、その間手元の資金は増えることはありませんので注意してください。

 

仮差押をしておくと安心

通常訴訟は判決まで時間がかかるため、先にも述べましたが裁判中に売掛先企業が保有すする資産を隠し、強制執行などに備えようとする可能性があります。

そこで、相手が保有する預貯金や債権、不動産などの資産を仮差押しておけば、裁判中に売却して現金化させることや他の債権者の支払いに充てられることを防ぐことができます。

ただし売掛先に債権など資産が存在することと保全することの必要性を説明し、裁判所に認めてもらわなければ手続きできません。

そのため独自で行うよりも、法律の専門家である弁護士に手続きを依頼したほうがスムーズにできるはずです。

 

弁護士に売掛金回収を依頼する前にその期限にも注意を!

売掛先企業から支払いがされていない売掛金があっても、普段の業務が忙しく請求できていない場合もあるでしょう。

しかし多忙な毎日に追われ、売掛金回収を後回しにしてしまうと、時効が成立に請求できなくなる可能性もあります。

時効の起算点は支払期日の翌日からですが、民法が改正される前の時効は、短期消滅時効として次のように年数が分かれていました。

  • ・宿泊料・飲食代金など 1年
  • ・製造業・小売業など 2年
  • ・建築請負工事代金など 3年

しかし2020年4月1日から施行された改正民法により、これらの短期消滅時効制度は廃止されましたので、売掛債権の消滅時効は次のいずれか早い方の年数となります。

  • ・債権者が権利を行使できると知ったときから5年
  • ・債権者が権利を行使できるときから10年

通常の商取引では契約内容を知らないということはありませんので、原則5年と認識しておきましょう。

 

時効は中断可能!弁護士に相談するなら

うっかり放置していた未回収の売掛金に気がつき、弁護士に相談しようとしたものの、時効が完成間近という場合には時効を中断させましょう。

時効を中断させる方法はいくつかありますが、主に次の3つです。

 

請求による時効の中断

売掛先企業に売掛金を支払ってもらうように請求することで時効は中断できます。

請求の具体的な方法としては、民法で裁判上の請求と規定されていますが、訴訟の取下があった場合は時効中断の効力はなくなります。 支払督促の申し立て、和解および調停の申し立ても同じく時効を中断できます。

裁判上の請求に限らず、内容証明郵便で請求書を送付する方法(催告)でも時効の中断は可能です。催告は裁判上の請求と違って、催告後6か月以内に訴訟や支払督促といった手続きが必要になります。

催告による時効中断は暫定的な効果しかありませんので、6か月以内に訴訟や支払督促などの手続きを行わない場合には、時効中断はなかったことになってしまいますので注意してください。

 

差押え・仮差押え・仮処分を行う

相手の財産に差押え・仮差押え・仮処分を行っても時効は中断します。

 

債務を売掛先に承認してもらう

売掛金が時効を迎えてしまう5年の間において、未払いの売掛金があることを売掛先企業が認めれば、その時点で時効は中断し振り出しに戻ります。

一度に支払いはできないけれど分割なら…と少しずつ売掛金を支払ってもらっている場合など、返済も債務承認に該当します。

支払わなければならない債務があることを認めてもらうことで時効は中断しますし、支払いを待ってほしいと猶予の申し出を行うことも債務承認に該当し時効は中断します。

 

弁護士に依頼しても売掛金回収ができなかったら

様々な手段や手順を踏んで売掛金を回収しようとしても、結局回収に至らなかったという場合も出てくる可能性があります。

この場合、貸倒引当金として会社の経費に計上し、節税効果を得るメリットにしてしまうことを考えましょう。

貸倒引当金として計上するには、売掛先企業に内容証明郵便で「売掛金の放棄書」を送付すると、売掛金の回収不能が確定したと認められやすく税務調査などで指摘されることを防ぐことができます。

 

弁護士に依頼しなくてもよいように与信管理の徹底を

売掛金が回収できなくなってから慌てても、できることは限られますし入金されるとも限りません。

そのため取引を行う相手が、発生した売掛金を支払う能力を十分保有しているのか事前に確認することが必要です。

売掛先企業の財務や経営状況など、常に情報を入手し、取引を継続してよいか与信管理を徹底して行いましょう。

状況次第では売掛金の発生を抑えるために、取引量を削減することも必要となるでしょうし、掛けではなく現金決済による取引が必要になる可能性もあります。

 

まとめ

売掛先企業が期日を守り、売掛金を入金してくれれば特に問題は起きません。しかし期日が守られず遅れが生じてしまうことや、いつまでたっても入金されないなど、売掛金の未回収分が増えてしまうと様々な方法で回収手続きを行うことが必要です。

煩雑で手間がかかる作業ですが、自社でできる売掛金回収方法もありますので、早期回収に向けてまずはできることから行いましょう。

ただし裁判所を通して売掛金を回収する場合には、個人・法人関係なく法律の専門的知識も必要となることが多いため、弁護士など専門家に相談・依頼し代行してもらったほうがメリットは高いといえます。

相手にとっても弁護士が関係しているとインパクトを与えることができますし、心理的なプレッシャーを与えることで早期回収が可能となる可能性もあります。

売掛金の回収を後回しにすることは資金繰り悪化につながりやすいためおすすめできませんが、回収手続きにばかり気を取られていると本業に専念できません。

時間を有効に使い効率的に効果を得るためにも、頼ったほうがよいと考えられる場面では弁護士に相談し、売掛金を回収する方法を考えてもらうようにしましょう。

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