売掛金を確実に回収するために把握しておきたい方法やその手順とは?

2020/03/25
Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on Twitter

企業間取引で売掛金の発生は避けることができません。大切なのは確実に回収していくことですが、売掛金が入金されないことはめずらしいことではありません。

ただ、すでに経理処理で計上されている売上の代金が回収できない状態は、企業経営において大きな妨げとなります。

そこで、売掛金が回収できないトラブルを防ぎ、確実に回収していくにはどのような方法や手順があるのか解説していきます。

 

そもそも売掛金とは?

売掛金は、企業間において商品やサービスを販売または提供したときに、その代金をその場で受け取らず後払いによる方法で回収するときに発生します。

取引ごとに現金の受け渡しが行われると、未払いや未回収が発生せずに安心できる反面、事務手続きは煩雑化してしまい手間もかかります。

そのため、1か月分などの取引をまとめて請求し、後日決められた期日に支払ってもらう掛け取引が一般的に行われます。この掛け取引により発生するのが売掛金で、未回収の代金を請求する売掛債権と呼ばれる権利です。

 

売掛金が発生する取引で注意しておきたいこと

売掛金は後日代金を支払ってもらう間、一時的に経理の会計処理上、用いられる勘定科目です。そのためずっと残ったままの状態は好ましくなく、代金を回収したときに消えていくものであると認識しておきましょう。

確実に売掛金を回収し、残ったままの状態にしないためには売掛先に支払いを遅滞させないことです。

いつまでにいくら支払ってもらうのか把握しておき、売掛先からの入金が遅れたときにはすぐに問い合わせを行う管理体制を整備しておかなければなりません。

新規の相手と取引を開始するときも、本当に掛けによる取引を行って後日代金を支払ってもらえるのか、経営状況や財務状態などの経済的な信用度にも注意しておくことが必要です。

これは新規の取引相手に限らず、既存の売掛先についても同様のことがいえます。確実に売掛金を回収するためには管理体制を徹底し、万一売掛先の経営状態や財務状況が悪化しているようであれば、取引金額や取引量の削減など取引内容の見直しも必要です。

ただ管理体制を徹底していたのにもかかわらず、売掛先から代金の回収ができず遅延が発生してしまうこともあります。その場合にはどのような方法で売掛金を回収すればよいかも知っておきましょう。

 

売掛先からの代金回収に遅れが生じたら

売掛先から期日になっても発生している売掛金が入金されず、代金が未回収となっている場合にはその原因は何なのか確認することがまずは必要です。

 

売掛金の未回収となる原因はいくつか考えられますが、

 

  • ・請求書を発送する側のミスなどによるもの
  • ・相手の都合などで支払われていない

 

のいずれか1つといえます。

 

請求書を発送する側のミスなどの場合

発生している売掛金分の請求書を売掛先に送付し忘れているなど、単純な事務処理のミスで入金がされていないことも考えられます。また、請求書に記載する振込先口座が間違っている場合など、別の口座に送金されていることもあるので確認するようにしましょう。

売掛先を責めることができない自社のミスによる未回収が発生しないよう、事務処理は確実に行うようにしてください。

 

相手の都合で遅れている場合

請求書をミスなく発送しているのに売掛金が入金されていないという場合、売掛先側が請求書を確認できていないケースもあります。また、郵便事故などで請求書が届いていないケースも考えられますので、必ずなぜ支払いが行われていないのか確認しましょう。

売掛先の経理担当者が支払い期日を忘れていた場合や、支払いの際にシステムなどのトラブルで決済できていなかったという場合などは、再度入金してもらうようにします。

他にも納品した商品に欠陥や未納分があったことを理由に支払いを行わないケースもあるので、この場合には売掛先が抱えている不満を解決できる方法はないか交渉を行いましょう。

減額請求や返品要求など、話し合いを行えば妥協できる部分は見いだせるはずです。

 

悪意を持って支払わないケースもある

問題なのは売掛先が資金難に陥っているなどを理由に、支払いに充てるお金がないことを理由にわざと支払いを行わないケースです。

中には支払う意思はあるものの、手元の資金が不足していて支払いができないという場合もあります。

この場合には、今一時的にお金がないのか、いずれ入金があったときなら支払いはできるのか確認しましょう。支払う意思があっても回収が見込めない場合や、そもそも支払う意思がない悪意の未払いの場合には、交渉だけでは売掛金の回収が難しくなる可能性も出てきます。

 

売掛先が悪意を持って支払おうとしない場合

売掛先に支払う意思はあるものの資金がないことを理由に回収が見込めない場合や、そもそも相手に支払う意思がないなど悪意を持った未払いの場合でも、交渉を行って売掛金の回収を試みることは大切です。

最初から強い口調で支払いを要求しても支払う意思がない場合は、交渉を難航させるだけになってしまいます。

まずはソフトに交渉を開始し、売掛先の操業状況や他の債権者の動きなどにより、引き渡している商品の保管状況などもヒアリングしておくようにしてください。

 

内容証明郵便で督促を発送

売掛先が倒産してしまえば発生している売掛金は未回収のまま不良債権になってしまいます。そうなる前に回収することが大切なので、内容証明郵便で督促を発送しましょう。

内容証明郵便は、いつ誰が誰に対してどのような文書を送付したのか証明してくれる郵便です。法的な強制力はないものの、売掛先に心理的な圧迫を与えることはできるでしょう。

 

損害の拡大を防ぐため出荷は停止する

売掛先と継続的な取引があるのであれば、状況次第で新たな損害を防ぐために新規の出荷は停止してください。また出荷すれば、回収できない売掛金を増やすことになりかねないからです。

一旦出荷を停止し、売掛先に現在遅れが生じている未入金分を支払ってもらえるまで、納品はできない旨を伝えましょう。売掛先も入荷されなければ商売が成り立たず、早めに支払いを済ませようと努力するはずです。

 

買掛債務など支払いがあるなら相殺の検討を

売掛先に対し、自社も支払わなければならない買掛債務が発生している場合には、一旦その支払いを停止し売掛金と相殺する形を検討しましょう。

相殺が可能となるのは対当額に限定されるものの、回収できず売掛先が倒産してしまうよりは効果を得ることができます。

なお、相殺可能となる債権がある場合には、早急に相殺の通知内容証明郵便で送付しておくことも必要です。

 

商品の回収

すでに納品している商品が売掛先で在庫として残っているのなら、売掛金を支払ってもらう代わりに商品を回収するという方法もあります。

ただし売掛先との契約において、即時解除条項が規定されている場合のみ即実行できる方法です。

即時解除条項とは、倒産など経営が破綻したときには契約を即時解除する決まりであるため、引き渡している商品も契約解除とともに回収が可能となります。

売掛先と契約書を交わしていない場合や、契約内容に即時解除条項が規定されていない場合は、売掛先の承諾を得て同意書作成後に商品を回収する流れが必要です。

 

代理受領による売掛金の回収

売掛先に売掛金の支払いに充てるお金はなくても、第三者のまだ回収していない売掛債権を保有しているのなら、その売掛債権を譲渡してもらうことで回収が可能となります。

ただし売掛先と第三者との契約の中で、債権譲渡禁止特約が付帯されていれば売掛債権を譲渡してもらうことはできません。

このような場合、第三者に対して行う売掛債権の回収を委任してもらい、代理受領という形で第三者の債権を回収します。

ただしあくまでも代理で回収するだけであり、売掛先の取引先である第三者から回収した代金をそのまま受け取ることができるわけではありません。

そのため一旦は売掛先に回収した代金を渡すこととなりますが、このとき、未回収の自社の売掛金と返還しなければならない回収分を相殺する形を交渉しましょう。

 

先取特権でないか確認を

上記の例で取引先の第三者への債権が、自社の販売した商品の転売代金による債権の場合、この債権に対して優先的な権利を有します。この権利が先取特権ですが、行使する場合は差し押さえが必要であるなど裁判所での手続きが必要です。

 

それでも回収できない売掛金に対しては法的手段の検討を

内容証明郵便を送付し何度も交渉を行ってもまだ売掛金は回収できないという場合や、相殺する買掛債務や在庫も残っていない場合には、いよいよ次のような法的手段を検討することとなります。

 

公正証書

売掛先が支払いに前向きなのであれば、公証役場で公正証書を作成してもらっておくことで、その後代金が支払われない場合には裁判所の判決なしで強制執行が可能となります。

 

支払督促

裁判所から債務者に対し支払いを命じる督促状を送付してもらえる制度で、裁判手続などはなく実行できます。

 

民事調停

裁判官および調停委員が当事者同士の主張を調整しながら、和解できるように仲介してくれる非公開の手続きです。

簡易裁判所に調停手続きを申し立て、回収額を減額または分割払いなど、双方が歩みよりながら妥協点を見出し和解に向けて話し合いを行います。

 

訴訟

最終手段となるのが訴訟であり、裁判で争うことになります。訴訟を単独で行うには無理があるため、弁護士など法律の専門家の力を借りることとなるでしょう。そのため訴訟を検討する際には、別途弁護士に対する費用や報酬が発生することとなり、解決まで時間もかかります。

裁判中に売掛先が倒産してしまうリスクも考えられますので、訴訟を起こして回収できる見込みの金額と訴訟にかかる費用や時間などを見極めながら検討しましょう。

なお、売掛債権の金額が60万円以下であれば、少額訴訟といって簡易裁判所で1回の期日で審理を終え判決まで至る特別な裁判手続きもあります。

 

訴訟や差し押さえになった場合のリスクも留意しておくこと

売掛金が回収できないことを理由に訴訟となった場合のために、考えられるリスクを事前に把握しておきましょう。

まず裁判所から売掛先に渡される答弁書に、今は支払うことができないので分割返済による和解を求めると記載し返信した場合、裁判所はその内容で和解してはどうかと勧めてくることもあります。

仮に同意してしまえば、長期に渡り少ない金額を回収し続けることとなってしまいます。反対にどちらも主張を曲げずに裁判が長引けば、売掛金はいつまでも回収できなくなってしまうでしょう。

差し押さえに至った場合にも、差し押さえた資産が換金性の高いものかわかりません。結果として回収に至らないケースもあると留意しておくべきです。

 

放置していれば消滅時効により請求権を失う

売掛金が回収できないまま、放置することが最も望ましくありません。なぜなら売掛金には消滅時効があるため、一定期間を過ぎれば売掛先に支払いを請求する権利を失ってしまうからです。

売掛金の消滅時効は、未回収の状態が一定期間継続することで事実状態に即した権利関係を確定させることです。時効が完成すれば返済してもらう権利は消滅し、売掛金は回収できないまま貸し倒れとなります。

売掛金の消滅時効は、取引の種類によって期間が異なる点にも注意しておきましょう。

 

  • 時効期間が1年の債権・宿泊代・運送代・飲食代
  • 時効期間が2年の債権・月謝・教材費・製造業・卸売業・小売業などの売掛金
  • 時効期間が3年の債権・診療費・建築費用や設計費用・自動車修理代・工事代金
  • 時効期間が5年の債権・上記以外の商取引で発生する売掛金

 

時効は中断させることも可能

時効は一定期間を過ぎれば成立してしまうので、消滅時効に向けて進行してきた期間を中断により降り出しに戻す手続きを行いましょう。

時効が中断される時効中断事由として、売掛先から債務の承認を受けることです。売掛先が未払いの売掛金の存在を認めることはもちろんのこと、口では否定していても売掛金の一部の支払いを行えば認めたことになります。

さらに内容証明郵便により請求することでも時効を中断させることは可能ですので、忘れず送付しておきましょう。

 

時効期間は2020年4月から変更に

2020年4月からは、民法が120年ぶりに改正され新しい法律が施行されます。売掛金の時効期間もこれまでのように業種などによって異なることなく、次のように一律となります。

 

  • ・債権者が権利を行使できることを知ってから5年間行使しないとき
  • ・債権者が権利を行使できるときから10年間行使しないとき

 

このいずれか早い時効期間が適用されることとなりますが、2020年4月1日に施行前に発生した売掛金は先に述べた改正前の時効期間が適用されますので注意してください。

 

売掛金の未回収を防ぐためにも適切な管理を

売掛金が回収できず放置されていれば、消滅時効によりいずれは請求権を失うこととなり、何よりも売上分の代金が入ってこないので資金繰りはどんどん苦しくなっていきます。

また、支払いが遅れても何もいってこない相手だと売掛先から甘く見られることとなり、ますます回収を遅らせることになりかねません。

本来であれば受け取ることができるはずの売上代金を支払ってもらえないせいで、別途資金調達が必要いになるでしょうし、資金繰りも苦しくなっていきます。

最悪の場合、手元の資金がショートしてしまい、売掛金未回収を理由に倒産してしまう可能性もあるのです。

このような事態を防ぐためにも、発生している売掛金は適切に管理を行い、確実に回収していくことが必要です。

 

売掛金管理で目安としたい売掛債権回転率

自社の売掛債権の状況を数字で把握するために目安となるのが売掛債権回転率です。売掛債権がどのくらい溜まった状態なのか把握する際に役立つ指標であり、

 

売掛債権回転率=売上高÷売掛債権(売掛金+受取手形)

 

という計算式で算出できます。

回転率は年間の売上高と期末の売掛債権の比率で計算しますが、回転率が高ければ売上から回収までの期間が短いため、効率的に売掛金を回収できているといえます。

 

適切な売掛債権回転期間か知っておくことも大切

売掛債権が売上高の何日分か示す売掛債権回転期間も把握しておきましょう。

売掛債権回転期間(回転日数)は、

 

売掛債権回転期間(回転日数)=売掛債権÷(売上高÷365日)

 

で計算できます。

売掛債権回転期間が短いほうが回収も早くできている状態といえます。

反対に期間が長いと、売上はあがっているのにその代金を受け取るまで時間がかかっていることを示します。

適切とされる売掛債権回転期間は、次のように業種によって異なるので参考として確認しておきましょう。

 

  • ・製造業 66.7
  • ・建設業 46.3
  • ・運輸業 43.0
  • ・サービス業 32.5
  • ・小売業 20.3

 

与信管理は徹底して行うこと

売掛先と取引を行う上での見通しを見極め、万一売掛金が回収できなくなったときには未回収分をどのように負担するのか決めることが必要です。

信用調査会社などを利用した上で管理を行うことが必要ですが、直接売掛先と接することとなる営業担当者からの情報も得ておくことも大切といえます。

何らかの危機を感じさせる状態である売掛先については、取引量や取引金額の削減、現金決済のみの対応にするといった取引内容の見直しが必要です。

 

契約を締結するときに公正証書を作成する

売掛先と契約を結ぶとき、可能であれば公正証書を作成しておくと安心です。需要な契約の場合には、売掛先の協力のもとで法的に契約内容を証明しておいたほうがよいといえます。

公正証書は、契約を結ぶ当事者同士が合意した内容をもとにして、公証人に作成してもらう書面です。

公正証書の中に、売掛金の支払いが遅れた際に強制執行を可能とする内容を盛り込んでおけば、未払いが発生したときに裁判手続を行わなくても強制執行手続に移行できます。

 

所有権留保という方法も

売買契約を結ぶときに、所有権は自社に留保したままで売却することです。所有権留保ではなく、契約内容に即時解除条項を規定しておけば、未払いが発生した段階で契約解除となり商品を回収することもできます。

ただ売掛先の経営状態がかなり悪くなれば、他の債権者も同じように支払ってもらえない状態となることが予測されるため、商品をスムーズに回収できなくなる可能性も否定できません。

所有権留保であれば、他の債権者が引き上げ対象となっている商品に何らかの方法で手段を講じてきたとしても、自社が所有者ですので十分に対抗できます。

 

まとめ

売掛金はすでに発生している売上分を請求する権利であり、まだ回収できていない代金です。

どれほど多く売上が上がったとしても、効率よく売掛金が回収できなければ手元のお金は増えないままとなり、自社の資金繰りが悪化してしまいます。

特に仕入れ代金などは発生している売掛金が入金されるよりも前に支払うことが多いため、適切に売掛金が入金されないことでその他の支払いに充てるお金が不足することとなるでしょう。

適切に回収できず、入金してもらうために様々な方法を講じることが必要となれば、別途費用や時間がかかりその分利益は目減りしてしまいます。

毎月確実に発生している売掛金を回収するためにも、売掛先に対する与信管理を徹底し、遅れが発生したときには早めに請求することを心掛けてください。

Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on Twitter