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【2020.11】請求した売掛金が取引先から支払われない場合の対処方法

資金繰り2020/03/04

企業間の商取引では掛け売りが基本となっていますが、発生している売掛金を請求しても未払いになっていることに気がつかず、そのまま時間が過ぎればどうなるのでしょう。

気になるのは時効により請求権を失うのではないか?という部分ですが、売掛金の時効を完成させないためには期限前の措置や再度請求手続きを行うことが必要です。

そこで、未回収の売掛金があるといずれ時効を迎えてしまうのか、時効を完成させない方法はあるのかなどについてご説明します。

 

そもそも売掛金とは

日本の企業間における取引は、商品を販売・納品し売上があがったときと引き換えに代金を受け取るのではなく、後日請求書を送り期日に支払ってもらう掛け取引が主流です。

この掛け取引により発生するのが売掛金で、期日まで待てば代金を回収し現金化される資産勘定の1つといえます。

会計処理において掛け取引による売上を計上する際には、

借方:売掛金/貸方:売上

という仕訳で処理します。

売掛金も資産の1つではありますが、いくら資産だからと売掛金のまま保有していても、請求相手である取引先から代金を回収して現金化させなければ借方に売掛金が残ったままです。手元のお金はいつまでたっても潤いませんので、正しく期限を守り支払ってもらうことが必要といえます。

 

請求した代金が支払われなかった場合は?

売掛金は資産の1つであり、先に販売した商品や提供したサービスの代金を後日受け取る権利です。販売・提供した代金を支払ってもらうためにはし、取引先に請求を行うことが必要です。ただいくら請求書を送付していたとしても、肝心の期日に支払いが行われなければ意味がなく、保険をかけているわけでもないため保証もされません。

仮に請求書を出しているのに代金が支払われないのであれば、それは取引先が支払期日を忘れているのか、経営状況が悪化しているのかなど様々な理由が考えられます。

販売・提供はしたものの請求書は発送されず手元に残っているなど、自社がの請求し忘れていることも考えられますし、入金先の口座を間違って記載している可能性もあるでしょう。

そこでまずは、販売・提供した取引先になぜ請求した代金が未払いなのか確認することが必要です。

いずれにしても、長期に渡り売掛金が支払われないまま残ってしまった場合、時効により請求する権利を失う可能性があります。

 

請求しても回収できなければ時効を迎える?

売掛金は資産だからと安心しきってしまい、長期に渡り支払われない場合には時効を迎え請求権を失ってしまうリスクを認識しておくべきです。

では具体的にどのくらいの期間、回収できないまま放置していたら時効を迎えるのかというと、改正民法(2020年4月1日施行)により改正後の売掛金の時効は一律5年となりました。

ただ改正前の民法による売掛金の時効は、民法や商法の規定に従うことになります。

まず民法における一般的な債権の消滅時効は10年とされています。ただ売掛金の時効は10年でなく、商法における商事債権として5年に短縮されます。

さらに商法では、同法より短い時効期間が他の法律で規定されている場合にはその法律を優先させなければなりません。

民法では債権の種類により、1~3年という期間で時効を迎え債権が消滅することが規定されていますので、この短期消滅時効に規定のある商取引であれば5年からさらに短くなります。

具体的にどのような商取引であれば短期消滅時効の対象になるのかというと、その内容は次の通りです。

 

1年で消滅してしまう債権

  • ・タクシー・トラックなどの運賃
  • ・旅館やホテルの宿泊代金
  • ・飲食店などの飲食代金
  • ・貸席または娯楽場の席料や入場料

 

2年で消滅してしまう債権

  • ・弁護士や弁護士法人の報酬
  • ・公証人の債権
  • ・生産者・卸売商人・小売商人の債権
  • ・注文制作・理髪店・クリーニング店などの債権
  • ・塾など教育活動における月謝や教材費・下宿費用などの債権

 

3年で消滅してしまう債権

  • ・医師・助産師・薬剤師の診療債権
  • ・工事代金や建築代金・設計・施工・管理に対する債権

 

この短期消滅時効に該当しない商取引において発生する売掛金については、5年で時効を迎え請求する権利を失うことになります。

 

時効の起算点はいつ?

もし時効で売掛金を請求する権利があと1日しかない!という場合、そもそも時効の起算点の認識に間違いがあればすでに時効を過ぎてしまっている可能性もあります。

そのようなトラブルを防ぐためにも、時効の起算点について把握しておくようにしましょう。

起算点とは、いつから時効期間が始まるのかというタイミングですが、法的には初日不算入の原則という規定がありますのでこれに従います。

初日不算入とは、初日はカウントせずに期間を数えるという意味なので、売掛金の時効も支払期日の翌日から数えることになります。

 

時効を中断させる方法とは?

売掛金を長期に渡り請求せずに放置した場合、債権の種類によって1~5年を経過してしまうと時効を迎え請求権を失います。

ただ、時効は進行を中断させることはできますので、売掛金の時効が完成してしまい請求権が消滅してしまうよりも前に中断を可能とする手続きを行うことを検討しましょう。

 

時効を中断させる具体的な方法

売掛金の時効を中断させるためには、債務者による債務承認、または債権者による請求といった方法があります。

仮に工事代金のうち回収できていない売掛金が残っているとしたら、3年以内に取引先に裁判を起こし請求すれば時効の中断が可能です。判決が確定すれば売掛金の時効期間を10年延長させることができます。

 

反対に自社が債務者の立場だったら?

売掛金の時効期間の経過により、自社が支払わなければならない買掛金の時効が成立したとします。ただ、買掛金を支払わず放置し、請求もされないまま一定期間を過ぎただけでは時効による主張はできません。

そこで、支払う義務がなくなったことを主張するためには時効援用の手続きが必要です。

時効援用とは、時効という制度を利用して買掛金の支払いを行わない意思を債権者に対し示すことです。

この時効援用を行わない限り、買掛金を支払わなければならない状態は続いてしまいます。

仮に時効援用の手続きを行う前に、取引先から買掛金の支払いの請求を受け、支払わなければならないお金があることを認めてしまえばその後に時効の援用はできません。

そのため時効が完成した段階ですぐに時効援用の手続きを行わなければならないのです。

時効援用は取引先に手続きを行ったことが証明されるように、内容証明郵便を使って時効援用通知書を取引先に送ります。

 

請求しているはずの売掛金が支払われないときの回収方法

売掛金の請求を取引先に行っても支払われない場合、相手が法人なのか、それとも個人なのかにより対処の方法が多少異なります。

 

相手が法人の場合の売掛金回収方法

売掛金の請求相手が法人の場合、代金を回収できない理由として考えられるのは、

  • ・取引先の資金繰りが悪化している
  • ・販売した商品や提供したサービスに不満がある
  • ・支払代金の減額を狙い拒否している
  • ・請求書を送り忘れている請求漏れ

といったことが考えられます。

まずは取引先になぜ売掛金の支払いが行われていないか確認し、その理由によって適切とされる対応を行うようにしましょう。

 

まずは取引先話合いによって解決する

単に自社が取引先に請求書を発送し忘れている場合には、早めに請求漏れを謝罪し送り直しましょう。

請求漏れが理由ではなく、販売した商品や提供したサービスに不満を感じていることが理由で支払いが行われないのであれば、何に対する不満なのか原因を確認します。

もし商品に不備がある場合などは、新しい商品を送りなおす、または代替商品を提供しなおすという対応で応じてもらえないか交渉しましょう。

取引先の資金繰りが悪化していることが原因で、支払いに充てるお金がないという場合にはいつなら支払うことができるのか、どのような方法なら支払い可能となるのか確認します。

その上で支払期日や支払方法を改めて設定し、請求した売掛金を回収するようにしてください。

その後も取引を継続させる必要のある相手であるのなら、できるだけ穏便な形で話し合いや交渉を行ったほうがよいといえます。

ただ特に理由もないのに不合理に支払いを拒絶している場合には、請求分をただちに支払ってもらうよう強く求め、その後の取引も見直しが必要です。

 

書面や訪問によって督促を

穏便に交渉を進めたとしても取引先が支払いに応じないという場合、再度請求書など書面で売掛金の督促を行います。

それでも応じてもらえない場合には、直接取引先まで出向き状況の確認を行いましょう。その際、すでに引き渡している商品が在庫として残っているのなら、取引先の承諾を得た上で回収し代金の支払い分を減額させます。

また、取引を継続させ商品を納入してしまうと未回収分が増えるだけですので、商品の供給をストップさせるなど取引の見直しを行いましょう。

 

訴訟など裁判手続きも利用が必要になることも

取引先との交渉や督促など、手を尽くしたもののやはり支払いが行われないという場合には、調停や訴訟など裁判手続きを利用した上で売掛金を回収することを検討します。

ただし裁判手続きを利用した場合、自社が独自で回収業務を行うときとは取引先との関係は大きく違いが出てきます。多くが関係を悪化させることになるため、その違いを十分認識した上で利用することが必要です。

さらに訴訟の手続きは自社独自で行うのではなく、弁護士などに相談し手続きを代行してもらう形で進めることになりますので、別途弁護士報酬など手数料が発生してしまいます。

調停であれば弁護士に依頼せず対応できますので、いきなり裁判ではなくまずは調停から検討するとよいでしょう。

さらに売掛金の金額が60万円以下など少ない場合には、少額訴訟制度という当日審理を終え判決が下される簡易的な裁判手続きも利用可能です。

他にも支払いが行われない場合に差し押さえなど強制執行が可能となる支払督促なども利用可能であり、簡易裁判所で申し立てを行えばよい制度となっています。

こちらも弁護士に依頼せず自社だけで対応できますので、無駄な費用を発生させないためにも簡易的に可能となる方法から検討したほうがよいでしょう。

 

請求先が個人の場合の対処方法

売掛金の請求先が個人の場合も、法人のときとほぼ対処方法は変わりません。

ただ、個人の場合は請求先が会社ではなく経営者本人となるため、話し合いや督促などが行いやすいという点デメリットがあります。

その反面、相手が資力を失うと逃げてしまう可能性があるので、そうなると売掛金を回収できなくなってしまいます。

法人が請求先の場合よりも金額は小さいことが多いので、未回収のまま貸し倒れとなっても損害額は少なく住む可能性はありますが、できるだけ損害を発生させない管理体制が重要です。

 

請求したのに未回収のまま売掛金が残った場合

いろいろな方法で請求した売掛金を回収しようとしても、取引先の倒産や夜逃げなど、何を行っても回収できなかったというケースも発生しないとは限りません。

このようなリスクに備え、事前に貸倒引当金を計上しておくことも検討が必要です。

貸倒引当金とは、未回収となった売掛金で損失が発生するリスクに備え、発生する可能性のある損失金額を事前に予想し計上しておく引当金のことです。

この貸倒引当金を計上しておくことにより、売掛金が未回収となっても会計処理上の貸倒損失を発生させず、正確な期間損益の計算が可能となります。

 

売掛金の時効は2020年4月から変更に

先に述べたとおり、120年ぶりとなった民法の改正により、2020年4月から新しい法律が施行されています。

売掛金の時効についても内容が変更されており、従来とは期間などに大きな違いがあるため再度確認しておきましょう。

改正された新しい民法では、商法による5年という商事債権時効、そして民法による1~3年という短期消滅時効は廃止されたという点が旧民法との大きな違いです。

 

新しい時効は、

  • ・債権者が権利を行使できることを知ってから5年間行使しないとき
  • ・債権者が権利を行使できるときから10年間行使しないとき

 

いずれか早い期間が適用されます。

そのため、新たな改正民法における売掛金の消滅時効期間は、業種に関係なく原則、5年に統一されると認識しておいてください。

なお2020年4月1日より前に発生した売掛金は改正前の民法が適用されます。同日以降に発生した売掛金は新しい民法が適用されるので、間違いのないように注意してください。

 

まとめ

売掛金を請求しているのに回収できない場合の対処方法はいろいろあります。ただ、いずれの方法でも大切なのは請求しないまま放置しておくことは避けなければならないということです。

発生している売掛金はすでに納品している商品や提供しているサービスの代金であり、本来ならもう受け取っていてもよいお金といえます。

売掛金を回収するまでの間にも、仕入れ代金や人件費、諸経費など様々な支払いは発生するものです。法人税や消費税など、納めなければならない税金もあるのに、支払いに充てる資金が不足すれば資金繰りにも影響してしまいます。

取引先から売掛金が回収できず資金難に陥らないためにも、早めに請求した売掛金は回収するように心がけましょう。

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