企業間で取引を行う場合、商品を販売したときに現金で代金をすぐに受け取るのではなく、後日請求書を渡して入金してもらう掛け取引が主流です。
このとき発生するのが売掛金ですが、その売掛金が入金される期日までの期間を回収サイトといいます。
支払いサイトや入金サイトなど様々な呼び方がありますが、この回収サイトによって資金繰りに大きな影響を及ぼすことを認識しておく必要があります。
そこで、売掛金の回収サイトが企業経営にどのような影響を及ぼすのか、どのように決めればよいのか徹底解説していきます。
目次
売掛金の回収サイトとは?
売掛金の回収サイトとは、商品を販売・納品した後でその代金が支払われるまでの期間です。「サイト」とは「sight」のことであり、決済される期限を意味します。
たとえば売掛金の回収サイトが90日という場合、90日後に商品を販売した代金が支払われることとなります。
売掛金の回収サイトの考え方
回収サイトは回転月数を示しますが、平均月商を使って算出します。
平均月商とは損益計算書の売上高を1年(12か月)で割ったものであり、1か月に平均どのくらいの売上が発生したかを示します。
たとえば2018年の売上が330百万円、2019年が301百万円だった会社の平均月商は、
- ・2018年 売上330百万円÷12月=28百万円
- ・2019年 売上301百万円÷12月=25百万円
となります。
さらに2018年の貸借対照表が示す売掛金残高が50百万円、2019年が45百万円だった場合、売掛金の残高を平均月商で割るので、
- ・2018年 売掛金50百万円÷平均月商28百万円=1.79か月
- ・2019年 売掛金45百万円÷平均月商25百万円=1.80か月
という計算です。
売掛金残高を平均月商で割った数値が回転月数であり、月ではなく日数で算出すると回転日数となります。
回転月数は売掛金をどのくらいの早さで回収できているかをあらわしますので、売掛金を何か月分保有しているかを示すともいえます。
保有する売掛金は少ない方が、無駄に資金に変わる債権を眠らせることなく、効率的に資金が回っていると判断できるでしょう。
ただ、業界や業種により売掛金の回収ルールや慣習などもあるため、現在の回転月数は業界での平均と比べて早いのか遅いのか確認し、対応を検討することが必要です。
銀行から見た売掛金回収サイト
銀行など金融機関の場合、融資対象となる企業の売掛金回収サイトはどのような視点で見ているのでしょう。
まず、先の例で計算した会社の場合、売掛金の回収月数は、2018年1.79か月・2019年1.80か月でした。年度により大きな変化がないのでこの場合、銀行も特に問題視することはありません。
問題視されるのは、売掛金の回収サイトである回転月数が翌年度大幅に増えている場合です。売掛金回収にあたり、何か問題が発生しているのではないかと判断されてしまうため、回収サイトを長引かせないことが必要といえます。
お金の動きを通し、現在の経営状態を把握しながら調整していくことを求められるといえるでしょう。
販売戦略における回収サイトの決定方法
新規で契約する取引先との間では、どのような条件で取引を開始するか決めることになります。
契約条件でもっとも重要なのは売値をいくらにするかですが、商品原価や仕入価格、販売に至るまでの諸経費などを考慮しながら利益分を上乗せし売値を交渉します。
市場の動きや販売戦略などによりいくらで売るか変わることになりますが、それ以外に大切なこととして代金の回収条件が挙げられます。
発生する売掛金の回収条件は、自社の仕入れによる支払いサイトなどを考慮し、資金繰りが悪化しない範囲で決定することが必要です。
回収サイトを短く設定するメリット
売掛金の回収サイトを短く設定した場合、長めに設定したときよりも様々な支払いをスムーズに済ませることが可能です。
回収サイトが長いと、入金される期日までに発生する支払いに充てる資金が不足してしまいがちですが、短期であることでその資金を調達しなくて済みます。
売掛金を保有し、その代金が回収できていない状態でも支払いは行うことが必要です。仕入れ代金や製造コスト、在庫管理や人件費、他にも借入金の返済や税金など様々な支払いが発生します。
将来入金される予定の売掛金はたくさん保有しているけれど回収サイトまでが長く手元の現金は少ないという場合、決算書上は計上された売上により利益が出ているのに経営に行き詰ってしまう黒字倒産に至る可能性もあります。
拡大戦略により売上が順調に伸びている場合なども、売上はどんどん計上され仕入れも増えいくことになります。そうなると未回収の売掛金ばかりが増えて、仕入れ代金の支払いに充てる資金が手元にないという状態となり、資金調達できなければ倒産してしまうでしょう。
そのため売掛金の回収サイトは、できるだけ短く設定できたほうが資金繰りは悪化しにくいといえます。
売掛金の回収サイトを長めに設定するメリット
売掛金の回収サイトを取引先との間で決めるとき、相手の立場も考慮した上で決定することが必要です。
自社にとっては早めのサイトで設定したいと考えるものですが、相手にとっては保有する買掛金の支払いサイトとなるため、短く設定されてしまうと資金繰りに影響してしまうでしょう。
そのため取引先の立場に立てば、長めに設定されたほうがよいと考えるものですが、そうなると自社の資金繰りに影響することになります。
そこで、回収サイトを長めに設定する代わりに、販売量を増やしてもらったり販売単価を引き上げたりといった交渉を検討しましょう。
有利な売値で販売が可能となれば、たとえ回収サイトは長期化してもメリットにつながることもあります。
ただ一旦契約を結べばその後、条件を変更することは難しくなりますので、後々自社の資金繰りが悪化したからといって回収サイトを短く設定しなおすことはできないと考えておくべきです。
無理な回収サイトを設定せず、取引先との交渉の中でお互いが許容できる範囲で決めることが必要といえるでしょう。
業界ごとの売掛金の回転月数
売掛金の回収サイトは、業界や業種によってこれまでの慣習や独自ルールにより異なります。
たとえば、
- ・建設業 3.5か月
- ・卸売業 2.4か月
- ・小売業 0.9か月
- ・娯楽業 0.6か月
と違いがあり、建設業などは半年や1年とうい場合もめずらしくありません。
介護事業を例にすると、提供した介護サービスにより発生した介護報酬を国民健康保険団体連合会(国保連)に請求するのは翌月の10日です。その後、国保連からの介護報酬が振り込まれるのは介護サービス提供月の翌々月25日となります。
そのため介護事業で発生する売掛金の回収サイトは、回転月数2.5か月となり、どの介護事業者でも共通しています。
しかし他の業界の場合、介護事業のように決まった売掛金の回収サイトとなっておらず、取引先との取り決めにより決まることがほとんどです。契約当初の取り決めが非常に重要になるとあらためて認識しておくようにしてください。
売掛金回収はシステムを確立すること
売掛金の回収サイトを取引先と決めるとき、自社の都合ばかりを一方的に押し付けないことが大切です。
双方の合意のもと取り決めた売掛金の回収サイトが正しく守られるために、回収するためのシステムを社内で確立させることが必要といえるでしょう。
システムの確立により売掛金の回収がサイトを守ってスムーズに進めば、未回収となるリスクを抑えることができその後の事業計画も立てやすくなります。
企業経営の資源となるものは、ヒト・モノ・カネです。この大切な資源を目的に合わせ管理していくのが経営管理であり、その経営管理を補助するシステムの1つが売掛金管理です。
販売管理・在庫管理・生産管理・購買管理・財務管理など、管理しなければならない対象となるものや部門はいろいろですが、売掛金管理を適切に行えば回収サイトが延長されることはなく資金繰りも悪化しにくくなります。
売掛金を適切に管理・回収するためには、売掛金管理を販売管理や財務管理から独立させておくことは必要ですが、一部共通して管理する部分もありますので関連付けて考えることも必要です。
売掛金管理で行うこと
売掛金管理は、ただ回収サイトが守られているか確認するだけでは機能しているとはいえません。
取引を安全・安心して行うために、取引先の信用調査や与信限度の設定などが必要です。
ノルマなどが課せられている営業担当者は、営業成績を何とか伸ばそうと無理な販売をしてしまいがちです。しかし売掛金の支払能力の低い取引先と契約してしまうと、後の資金繰りは悪化し未回収の不良債権を増やすだけになるでしょう。
営業に力を入れすぎて売上向上ばかりを重視しすぎた企業では、その後の売掛金回収まで意識できず多数の不良債権を抱えてしまいがちです。
そのような事態に陥らないように、取引先との窓口となる営業部門との連携をとることが大切といえます。
営業担当者に売掛金回収に対する教育を行い、商品を販売するだけではなく、発生した売掛金を回収するまでが商取引における一連の流れであると認識させましょう。
回収サイトが延びることなく支払いが滞っていないときにこそ適切な売掛金管理と回収を行うようにしてください。
ファクタリングで回収を短期化させることも可能!
取引先との間で決めた売掛金の回収サイトは、一度契約当初に決めてしまうと変更しにくいものです。
そのため、短期に設定できていればよいものの、長期に設定してしまった回収サイトでは資金繰りに影響を及ぼすことも多々あるでしょう。
しかし今更取引先に、回収サイトまでが長いので早めに売掛金を支払ってもらうように交渉することは難しいと考えられます。
ただ取引先から入金される期日までの間に支払いに充てる資金が不足してしまい、銀行融資による資金調達も難しい状況という場合どうすればよいのでしょう。
このような場合、もし手形を保有しているのなら手形割引を利用して、決済期日まで待たずに手形を現金化することを活用できます。
保有する売掛金も手形同様に、ファクタリングで現金化させることが可能ですので検討してみましょう。
ファクタリングとは?
ファクタリングとは、保有する売掛金をファクタリング会社に売却して現金化させる資金調達の方法です。取引先から入金される期日よりも前に、売掛金を現金に換えることができるので銀行からお金を借りなくても資金を調達できます。
手形割引と似ていますが、大きな違いはファクタリングの場合、償還請求権のないノンリコース契約であることです。
手形割引の場合、売却した手形が不渡りとなった場合には、割り引いた手形を買い戻さなければなりません。しかしファクタリングで売掛金を現金化した場合、後に取引先が倒産して売掛金の回収ができなくなっても、その売掛金を買い戻す必要はないのです。
貸し倒れリスクはファクタリングが負う形で契約が結ばれますので、取引先が万一倒産してしまったら…と不安を抱くことなく資金調達に活用できます。
回収サイトを短期化でき、売掛金そのものの未回収リスクも切り離すことができるメリットのある方法です。
取引先の与信管理にも活用可能?
ファクタリング会社が売掛金を買い取るとき、本当に取引先から売掛金の回収が可能か審査を行うこととなります。
ファクタリングにおける審査で重視されるのは、この売掛金の信用力のため、売掛先の財務状況や経営状態が悪化している場合は買い取りを断られる可能性があるのです。
そのため、このファクタリングにおける審査の仕組みをうまく活用すれば、取引先の与信管理にも活用できます。
取引先に対して行った信用調査の結果を報告してもらうことで、自社が取引先の調査を別途行うこともなくなるでしょう。
また、ファクタリング会社によってコンサルティング事業も行っていることもありますが、その場合には調査の結果をもとに与信限度額設定についてアドバイスしてもらうことも可能となるはずです。
売掛金の回収サイトの管理や与信、売掛金管理など、業務が煩雑になれば本業に集中しにくくなるためファクタリングでこれらの作業を軽減させてもよいでしょう。
まとめ
商取引において発生する売掛金は、どのくらいの期間待てば入金されるのか、その回収サイトにより自社の資金繰りは大きく変わります。
できるだけ回収サイトは短いほうがよいですが、取引先との取り決めにより長期に設定してしまうこともあるでしょう。
入金期日まで手元の資金が少なくなり、それまでに発生する支払いができなくなったとき、回収サイトの長い売掛金をファクタリングで現金化することも可能です。
適切な売掛金管理を行い、手元の資金が不足しないようにファクタリングもうまく活用しながら資金繰りを円滑化させていきましょう。
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