取引先の売掛金は与信限度の設定により上限を決めておくことが重要!

2020/02/17
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企業間における取引は頻繁・継続的に行われることになるため、掛けにより売掛金が発生する取引が主流です。

取引のたびに現金を受け取ることは効率的であるとはいえないため、たとえば1か月分の取引分をまとめて請求し、発生した売掛金を後の期日に決済してもらうことが一般的です。

納品した商品や製品に対する代金は後払いで受け取る与信取引で売掛金は発生しますが、適切に回収と取引先に対する与信管理を行っていなければ、自社の資金繰りを悪化させる要因となりかねません。

そのため、売掛金の貸し倒れを防ぐためには取引先に対するリスクの把握・調整する与信管理が必要となりますが、特に需要となる与信限度の設定について徹底解説していきます。

 

売掛金は確実に回収できると限らない

与信取引は取引先に信用を供与する形となるので、本当にその取引先から売掛金として発生した売上代金を回収できるかが重要です。

ただ、売掛金を確実に回収できる保証はないため、もしかしたら回収できなくなるリスクを抱えた上で取引を行うことになります。

その不確実性といえるリスクを最小限に抑えるために、与信管理を行うことが必要です。

 

与信管理とは

与信管理とは、不確実である状態で継続的に行う取引において取引先の情報を収集しながら現状を把握し、信用力に対する分析を行い動向の予測・確認を行う作業のことです。さらに与信管理においては、会計・財務・経営・法律・業界慣習など様々な知識が必要とされます。

国内市場は縮小し、経済はグローバル化するという状況で企業間競争は激化している状態です。そのため、日々変化していく複雑な経済活動において、与信管理に必要な新しい情報を常に収集しつつ正しい分析・判断を行う能力が必要といえます。

 

売掛金が貸し倒れとなる損失の大きさ

貸し倒れはどの企業でも抱えている経営におけるリスクです。

仮に取引先が倒産してしまった場合、まだ回収できていなかった売掛金により自社の支払いに充てるお金が不足します。

それまで必死に売上を伸ばそうと努力し、生み出した利益が損なわれることになってしまうのです。

たとえば経常利益率1割の取引で1千万円の売掛金が未回収となった場合、貸し倒れにより損失となった分を補うためには1千万円を10%で割った1億円分の売上が必要になってしまいます。

財務状況を悪化させるだけでなく、管理が不十分であることから対外的な信用も失うこととなるでしょう。

 

法的倒産で売掛金未回収を発生させない与信管理を

経営破綻という表現は経営に行き詰った状態を示していますが、事実上、倒産してしまったことを意味します。

この倒産という形も、法的倒産といわれる破産・会社更生・民事再生・特別清算などは倒産形態の主流となっており、銀行取引停止や内整理などの私的倒産よりも割合が高くなっている状況です。

そのため事前の予防対策として与信管理の重要性が高まっているといえますが、私的倒産のうち銀行取引停止となる処分がそれほど多くないのは、そもそも手形による取引そのものが減少し売掛金を発生させる掛け取引が一般化しているからといえます。

手形を振り出さない掛け取引であれば、仮に支払いできなかったとしても不渡りにならないので、銀行取引停止処分の対象となりません。

ただ、統計上は倒産件数としてカウントされていないだけで、実際には倒産状態にある隠れ倒産が増えていることも注意しておくべきといえるでしょう。

 

景気が回復していれば問題ないと考えるのは甘い?

経済改革などの影響で景気も回復してきたと感じることもあるでしょう。ただ、いくら景気が回復すれば売上が増え、それにより仕入れ量も増加します。

売上は計上され売掛金として保有した状態で、増やした仕入れに対する買掛金の決済は先に行うことになると、売掛金入金までの運転資金の需要が高まることとなるでしょう。

また、伸びていく売上に対応できるように従業員を雇用したり設備投資を行ったりなど、追加で資金も必要となるタイミングも増えます。

このタイミングに合わせて資金を調達できなければ、決算書上は利益が出ていて黒字なのに、手元の資金不足で倒産してしまう黒字倒産に至ることになってしまいます。

潤沢な資金を保有していれば問題ないでしょうが、いくら景気が回復したといわれても実際に手元に余裕資金を十分保有している中小企業は多くありません。

常に資金が底をつきそうな状態で何とか資金繰りを回している中小企業などの場合、資金需要が発生したときに対応できるよう、取引先を監視する与信管理体制を整備させておくことがより重要なのです。

 

与信管理で具体的に行うこととは?

与信管理で徹底したいのは売掛金などの上限額を取引先ごとに決める与信限度の設定です。この与信限度を設定することにより、過度の与信リスクを背負うことを防ぐことができます。

取引先ごとの与信限度は収益機会と与信リスクのバランスにより判断することになりますが、限度を超えない取引を行い超過や設定に漏れがないかを確認することが必要です。

営業部門が取引を行い管理部門が売掛金を確認するという流れとなりますが、管理部門が取引を不可と判断する場合でも営業戦略や政策の中で取引が必要という場面も訪れる可能性があります。

このような場合には、与信限度を絞って取引を行い調整するという作業が必要となり、必要でありながら安全な範囲で売掛金の与信限度を設定することが求められます。

 

必要な範囲の判断方法

取引先の月間販売見込み額を算出し、算出した見込み金額に対し売掛金回収サイトを掛けて売掛金の平均残高を計算します。

平均残高の範囲で与信限度を判断することとなりますが、時期的な状況なども踏まえながらどのくらいの売掛金が残ることになるか予測し設定しましょう。

 

安全な範囲とは?

自社の財務状況や市場により設定することになりますので、体力を超えた取引を行うと危険であり、いざというときに撤退しにくくなります。

そのため、与信管理において取引先をA~Fランクまで格付けし、その格付けに従って与信限度や売り込む範囲の目安を次のように決めておくとよいでしょう。

 


格付   倒産確率  与信限度額   売り込みの限度額
A     0.05%    5,000万円   取引先の仕入債務の30%
B     0.25%    2,000万円   取引先の仕入債務の20%
C     0.90%    1,000万円   取引先の仕入債務の15%
D     1.50%     500万円   取引先の仕入債務の10%
E     2.50%     200万円   取引先の仕入債務の5%
F     6.00%      10万円   取引先の仕入債務の0%


 

安全な範囲でも取引に即していない与信限度の設定は行わない

取引において安全な範囲だとしても、実際の取引に即さない与信限度は設けるべきではありません。

取引先に対しての売上が通常より大きくなったとき、もしかしたら他の取引相手が撤退している可能性も否定できないからです。

他の取引相手が撤退しているということは、その取引先はリスクの高い状況であることを示すため、回収不能となる売掛金を増加させることを意味します。

そのため、与信限度を意識した上で金額を設定することを心掛けるようにしてください。

必要な与信限度を考慮すると安全な与信限度を超えるというケースにおいては、たとえば担保などを取得することや取引先の動向を常に把握できる状態にしておくといったことが求められます。

 

与信限度の設定で社内が把握しておく内容

営業担当者などから与信限度について申請があったとき、その内容を審議するのは管理部門です。審議を行った後、最終的に決裁者が承認・決裁することとなるでしょう。

与信限度の格付けや金額に応じて審議を行うのか、役職のどのレベルで承認や決裁を行うのか社内で決めておくことが必要です。

与信限度の申請については、主に次のような項目について情報を伝えてもらうこととなります。

取引先の経営状態・販売する商品名と予定金額・取引における経緯・決済する上での条件などの取引内容に加え、取引先と基本契約を結んでいるか・営業方針なども説明してもらった上で判断することが必要です。

 

  • ・商品名(商品名・単価など)
  • ・取引の経路(商品の流れ・納入場所・仕入からエンドユーザーまでの全体像)
  • ・決済条件(現金回収または手形回収・回収サイトの長さ・相殺などの有無)
  • ・販売予定金額(納品数量・単価・利益率など)
  • ・取引開始までの経緯(取引における動機や紹介先など)
  • ・基本契約の有無(基本契約を締結しているか・納品書や受領書の有無など)
  • ・担保価値(個人保証・不動産など担保の有無・担保価値)
  • ・今後の方針(営業の取り組み方針)

 

これらの情報に加え、管理部門や決裁者が取引の可否を判断しやすいよう、評価する上で必要な資料として取引先の登記事項証明書(商業登記簿)・信用調書・決算書などの資料も準備してもらうことも検討しましょう。

 

未入金の売掛金は早めに回収を

すでに発生していて期日が過ぎている売掛金を放置したままにしないことも大切です。取引先に直ちになぜ入金が遅れているのかその理由を問いただし、いつなら入金できるのか確認するようにしましょう。

催促を続けることは大切ですし、場合によっては法的手段を講じる必要も出てくる可能性があります。回収できないことで自社の事業継続に影響することもあると認識し、未回収分を放置しない増やさない与信管理も必要です。

 

まとめ

売上が伸びれば売掛金も多く保有することになります。ただ、売掛金は保有しているだけでは意味がなく、適切に期日に回収し現金化させることが必要です。

そのためには取引先から期日に売掛金の入金が行われているか確認することが必要であり、入金遅れや未回収の売掛金が発生しているのなら取引の見直しを行うことになります。

どのくらいの売掛金までなら発生しても問題ないか、取引先ごとの与信限度を設定し、その範囲で取引を行うことが需要となりますが営業部門と管理部門がしっかり連携できていることで成り立ちます。

未回収の売掛金が増えてしまうと貸し倒れにより、いくら決算書上は利益が出ていて黒字でも倒産してしまう可能性もありますので、手元の資金をショートさせない経営を行うためも与信管理を徹底して行うようにしましょう。

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