事業年度終了日の翌日から、2か月以内には税金を納めなければなりませんが、資金繰りにより期限までに納税が難しいという場合どうすればよいのだろうと頭を抱えることとなります。
資金のやりくりで資金が回らない状態を避けることは、経営を続ける上で大きな課題といえますが、中でも納税は特に資金繰りに影響を及ぼす部分といえます。
税金には法人税、法人市・県民税、消費税などいろいろな税金がありますが、特に法人税の納税が難しくなる理由を解説します。
目次
利益が出ているのに納税資金が不足する理由とは?
利益が出ていなければ法人税などの税金を納める必要はないはずですが、決算により利益が出たことで納税する必要のある税金が発生したものの、手元にはその利益より低い現金や預金しかないということもあります。
帳簿上は利益が出ているのに口座のお金は不足するという減少は、減価償却というルールがその背景にあると考えましょう。
減価償却とは、時間が経過したり使い続けることで価値が減少していく固定資産を取得したときは、購入にかかった支払い分を一度に経費として落とさずに耐用年数に応じて少しずつ費用計上していくことです。
一旦は資産として計上し、そこから減価償却した分を少しずつ経費として計上することになるわけですが、簡単に説明します。
たとえば運送事業用の自動車(小型車)の耐用年数は3年と決められていますが、購入費用が300万円だとしたら1年に100万円ずつ3年に分けて費用計上することとなります。
実際の車の価値も時間が経過するごとに低下しますので、会計上のルールも同様に低下する価値分だけ毎年経費とする流れです。
そして費用計上するときに用いるのが減価償却費という勘定科目ですが、この減価償却費を計上することが実際のキャッシュの動きに差を発生させる要因となるからです。
減価償却費と実際のキャッシュの動きの関係
たとえば食料品製造業を営む企業が、1,000万円の新たな設備を導入したとします。その設備の耐用年数が10年とすると、その年数に渡り減価償却を行うこととなります。
そのため、1年で費用として計上されるのは100万円となりますが、この設備投資に必要な1,000万円という資金を銀行からの借り入れで調達したとします。
銀行融資の返済期間は3年や5年、または7年などで設定されているなど、10年に渡る返済期間となることは考えにくいでしょう。
仮に7年で設定されていた場合、1,000万円を7年で割れば1年約143万円となります。
支出は143万円なのに、減価償却は100万円。43万円の差が生じることになりますが、これが会計処理上の費用と実際のキャッシュの流れに違いをもたらす要因です。
費用として計上される減価償却費よりも支払いのほうが大きいということは、帳簿上は利益が出て黒字なのに、手元の返済資金が不足するといった状態に陥る可能性があるということです。
他にも法人税の納税資金がなくなる理由はある!
法人税を納めなければならないのに、資金繰りがうまくいかず納税資金が不足してしまう。そのような状況に陥る理由は、減価償却費の影響以外にも多々考えられます。
まず、銀行融資をうければ毎月支払いを行うこととなりますし、仕入れ代金や人件費、事務所運営費など様々な経費の支払いがあります。
問題なのはこの支払いが、売掛金が取引先から入金されるよりも前に発生するということです。
売掛金は、商品やサービスを販売・提供したものの、まだ受け取っていない代金のことです。掛け取引により発生し、取引先から入金されるのは納品や提供から1か月や2か月先などであることが多いでしょう。
売掛金を回収できるまでの期日が長く設定されていると、その分、資金繰りは厳しくなりやすくなりますが、この状況で期末の後に税金を納めなければならない状態となると納税資金不足に陥りやすくなるのです。
ですから、「今期の利益は出ているのに、納税資金が足りない」となるのです。
足りなければ新たな借入をして、納税資金を用意することになります。
季節資金を借り入れると借金依存体質に?
もし納税資金が不足したので、とりあえず一時的にビジネスローンなどで借金をして資金を補えば…と思うのはリスクのある行為ともいえます。
一時的な借り入れなので、すぐに返済すれば問題ないと思うかもしれません。
しかしこのような季節資金で借金をしなければならない状態でありながら、高く設定される金利分も利息として支払うこととなります。
借金をすれば元金を返すだけでなく利息も発生しますので、借金が増えれば利息も増え、利益を圧迫していくこととなり、さらに資金繰りに苦しむことになる可能性があるのです。
キャッシュ不足を防ぐには?
先に述べたように、減価償却が要因となり納税資金が不足してしまうという状況を回避するには、
経常利益+減価償却費-法人税
という金額の範囲に、1年間の返済金額(元本)をおさめるようにしてください。
この金額を超えてしまうと資金繰りは苦しくなりますので、毎年借入金の返済額の元本部分が、
税引き後利益+減価償却費
を超えてないか確認してみましょう。
納税期限を守らないと延滞税が発生
法人税などは、納めるまでの期限を過ぎたときには延滞税が発生してしまいます。
特に法人税は国税ですので、何か月も納めないままいれば税務署から督促を受けることとなり、それでも納付しなければ差し押さえなど強制的に徴収されることになってしまいます。
滞納が小口なら
納めなければならない国税を滞納していても、その金額が100万円未満で3か月程度に分けて完納することが可能な場合は分割での納付が認められます。
他にも換価の猶予という制度があり、国税を一度に納付してしまうと事業の継続を困難にしてしまう恐れがある場合、申請に基づいて利用できる制度です。
資金繰りを悪化させている売掛金を現金化
利益は出ているのに手元の資金が不足してしまう要因として減価償却費が挙げられますが、その他にも売掛金の回収までに様々な支払いが発生することも関係しています。
もし「売掛金がもっと早く回収できていれば…」と考えたとき、「取引先に交渉して早めに入金してもらえるように頼んでみるべきか…」と悩んでしまうことでしょう。
しかし、早く入金して欲しいと取引先に伝えてしまうことは、自社の資金繰りが悪化している状況を知られてしまうことになります。
取引先に不安を余計な不安を与えてしまうことで、その後の取引に悪い影響が及ぶとも限りません。
このような場合、売掛金を売却して期日よりも先に現金化するファクタリングを利用してはどうでしょう。
ファクタリングなら取引先に知られることなく、売掛金を前倒しで回収することができますし、借金をするわけではないので返済負担に追われることもありません。
まとめ
資金繰りにより期限までに納めなればならない税金を支払うことができないという場合、金額によっては税務署に交渉して分けて納税する方法を用いることもできます。
ただ、払わなければならないお金は遅れず支払いたいという場合には、ファクタリングなど借金をせずに資金調達できる方法で一時的な不足を補うことも可能です。
資金のやりくりで資金が回らない状態は避けなければなりませんし、事業を続ける上でも欠かすことのできない部分です。
資金繰りが悪化しないような資金調達と支払いを行い、毎月の資金のやりくりに追われて本業に専念できないような状況とならないようにしていきましょう。
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