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どんぶり勘定は危険!黒字倒産を高める経営から脱出するためには?

資金繰り2019/11/14

資金繰りに行き詰まってしまう経営者に多いのが、日々のキャッシュフローを記帳せず、どんぶり勘定で経営していることが挙げられます。

どんぶり勘定とは、細かい収支の計算は行わず、さらに帳簿などにも記帳せず、現状にまかせてお金を使ってしまうことです。職人などの腰掛けの前部分についた大きな物入れをどんぶりといいますが、多くの職人がそのどんぶりを財布代わりにしていたことから由来するといわれています。

どんぶりに中身を確認することなく、大雑把にお金を出し入れする様子をあらわしているのがどんぶり勘定という言葉のようです。

どんぶり勘定では明確な数値は把握せず、頭の中だけで資金繰りしている状況なので、突然想定していた内容と異なる事実を突き付けられることになり、資金がショートしてしまいます。

事業を長く続けようとするならどんぶり勘定での経営は直ちにやめるべきですが、なぜ問題があるのかその理由や、今後どのような経営を行うべきか解説します。

 

どんぶり勘定を続ける理由

もし企業の業績がそこそこ良好で、売上もあがっている状態であれば、まさか自社が倒産の危機にあるとは思いもしないはずです。

どんぶり勘定で経営を続けている経営者がこのように安心してしまうと、決算書を確認する際にも貸借対照表はほとんど見ず、損益計算書の売上から原価を差し引いた売上総利益、つまり粗利にばかり注目してしまいがちです。

粗利から従業員に対する給料の支払いや経費などを差し引いた金額が黒であれば、最終的に利益が残ると安心しきってしまいます。

しかしこのようなどんぶり勘定での見込み計算と、実際のキャッシュフローにはズレがあることに後で気がつき、気付いたときには資金不足に陥るというのがパターンです。

 

どんぶり勘定で抜かりやすい部分

どんぶり勘定で資金不足に陥る原因として、他にも消費税を見落としていたということがあるようです。

手元に入金された金額はすべて売上と考えてしまいがちですが、その中の一部に消費税が含まれていることもあります。

入金された売上金の中に含まれる消費税は一旦預かっているだけで、仕入れなどで材料や商品を購入したときに支払った消費税と相殺して申告時に納めなければなりません

特に2019年10月から、消費税は8%から10%に引き上げとなっているため、入金分をすべて売上金と勘違いしてしまうと、後で消費税を納める段階で大きな不足が発生してしまうはずです。

仮に法人税を納める資金が不足しているのなら、銀行から短期資金で融資を受けて資金調達することも可能かもしれません。

しかし消費税の場合、あくまでも取引先から一時的に預かった税金であるので、銀行も消費税の納税資金を供給して立て替えるといった間違った資金繰りの支援はできないのです。

どんぶり勘定で経営を続けた結果、消費税の納税資金を準備できなくなれば、資金不足で納税資金をどのように調達すればよいか迷う結果となり、十分な資金が調達できなければ経営を続けることはできなくなってしまいます。

 

さらに減価償却費を忘れ赤字になることも

どんぶり勘定による経営で、本来決算書は黒字を出すことができたはずなのに、すっかり減価償却費の存在を忘れていたことによる赤字転落もあるようです。

減価償却費とは、固定資産を購入したときに一括で経費として計上するのではなく、一旦資産に計上した後、固定資産の償却年数に合わせて毎年少しずつ経費に計上していくときに使用する勘定科目です。

出費を伴わず数年に渡り経費として計上できる費用であり、節税効果を得ることに有効なのが減価償却の特徴ですが、銀行融資を受けることを予定していて決算書は黒字を出したいという場合、この減価償却費の存在を忘れていたことで赤字になってしまうこともあります。

 

支払利息を忘れていたことで資金不足に

銀行から融資を受けるときにはある程度金利にも注意するでしょうが、実際に借り入れをした後は安心しきってしまい、支払う利息まで意識が向かないこともあるようです。

少額の借り入れなら負担する支払利息もその分低いので、資金が行き詰まってしまう要因にはならないかもしれません。しかし設備投資の資金などの融資を受けていた場合、支払う利息も大きくなるので、重くのしかかる返済負担で資金繰りがどんどん苦しくなることもあると理解しておきましょう。

 

どんぶり勘定が経営難を招く

どんぶり勘定が原因で赤字が発生すれば、銀行から融資を受けることも難しくなるでしょうし、そもそも赤字の原因が黒字だと思い込んでいたのに消費税の納税、減価償却費、支払利息などを考慮していなかったことが原因とわかれば印象も悪くなります

キャッシュフローを管理できていないどんぶり勘定の企業は資金繰りも当然、不安定になりがちですので、資金を貸し付ける銀行もできればそのような不安要素のある企業に融資は行いたくないと考えるでしょう。

もし事業拡大や設備投資などを検討していて、将来銀行から融資を受けて資金調達する可能性があるのなら、今すぐどんぶり勘定による経営はやめるべきといえます。

 

どんぶり勘定が黒字倒産を引き起こすことに

どんぶり勘定を続けていると、勘定合って銭足らずという状態を作ってしまい、損益計算書上は利益が出ているのに手元の資金がショートするという黒字倒産してしまうという状態を避けることができます。黒字倒産なんてするわけないと思うかもしれませんが、中小企業ではめずらしいことではありません。

毎年利益が発生していて法人税なども納めている法人だとしても、現預金残高が足らずに借入金の返済ができなければ、銀行融資で納税資金を調達することもできず事業存続の危機に陥り黒字倒産に至ることも考えられるでしょう。

 

企業が黒字倒産する要因

どんぶり勘定は黒字倒産を招きやすいですが、次のような要因を引き起こすこともあるのでそのリスクが高まるといえます。

 

不良債権を抱えてしまう

売上に対する売掛金がいつ発生したのか、どのくらい売掛金を保有していて、回収予定はいつなのか、遅れが生じている売掛金はないかなど、管理を行わずにいずれ入金されるだろうというどんぶり勘定を続けていると、予定通りに回収できない売掛金が増えてしまいます。

売上は上がっているのに売掛金のままでいつまでも現金化されない債権を増やし、結果として資金不足に陥るという流れです。

 

過剰に増えた在庫

在庫は売掛金と同様、現金化されることを前提に保有しておくものですが、その在庫が過剰に増えてしまうと黒字倒産の原因になりえるでしょう。

在庫のために品物を購入すれば現金は支出を伴うこととなりますが、現金化されず保管しておくことで管理や人件費も発生し、売れやすい時期も逃してたたき売りという形で処分するしかなくなります。

どんぶり勘定で在庫管理を怠ると、結果として支払いに充てる財源も不足することに繋がり、事業が存続できなくなってしまうのです。

 

資金繰りが苦しく黒字倒産してしまう可能性があるのなら

どんぶり勘定による経営をやめるなら、資金繰り表キャッシュフローの管理を行うことをはじめましょう。経営管理で重視している部分を、損益計算書上の利益から手元の資金である現預金にシフトすることが必要です。

現預金を管理することは、売掛金の管理や在庫の管理にも繋がるので、資金の流れを明確化させていくことが重要になります。

 

資金繰り表のどこを確認する?

どんぶり勘定による経営をやめ、日々のキャッシュフローを管理しようと中小企業の実情にあったフォーマットなどを活用して資金繰り表を作成したとします。

しかし作成した資金繰り表のどこを確認すればよいかわからないという経営者もいるかもしれません。そこで、たとえば銀行融資を受けている法人が作成する資金繰り表の確認部分を説明します。

 

経常収支

借入金の元本返済分を除いた事業活動における現金収支を示しています。経常収支は次の項目に分かれます。

 

収支

事業活動の中で営業活動による現金収支を示します。

売掛金回収という欄に記載される金額は、売上分のうち入金された金額のことです。掛取引により発生した売掛金が回収できているのか確認する部分です。

また、仕入代金の支払いという欄は、商品や材料の購入費用、外注を依頼したときの変動費の支払いのことで、支払いをしっかり行うことができているか確認する部分です。もし支払いが滞ってしまうと、商品が供給されなくなったり、外注を依頼しても引き受けてもらえないといった問題が発生します。

さらに販売管理費とは、賃貸家賃や人件費など営業活動で発生する経費のことで、販売数量に左右されず一定金額を固定費として支払わなければならない部分です。こちらも忘れず把握しておきましょう。

 

営業外収支

営業外収入とは預金の受取利息や配当金など本業以外で入金される金額を示し、営業外支出は借入金を返済する時に発生する金利の負担分など、本業以外で発生する支払いの金額です。

 

税金・社会保険

税金・社会保険を滞納していれば差し押えを受ける可能性もありますので、法人税、消費税、源泉徴収税、住民税、社会保険料などは忘れず支払うことが必要です。

 

財務収支

営業活動や投資活動を維持するため、銀行融資などで調達した資金と返済した資金を示します。

 

借入金入金

銀行から融資を受けた場合や、代表者などの役員からの借入金により調達した資金のことです。どの時期に借り入れが発生しているか把握しておけば、資金繰りが苦しくなる時期を把握しやすくなるので、事前に対策を検討することも可能となります。

 

返済支出

借入金の元本返済額のことで、毎月どのくらいの金額を支払うことになるのか把握する上で重要な部分です。

 

投資収支

投資のために資金を投入し、それにより得た資金の金額を示します。もし不確定要素の投資収支を考えるなら、現金の収支が伴う経常収支と財務収支を把握した後で、現預金残高がプラスを示していることを確認しておくことが必要になります。

その理由は、設備投資などを検討する場合、経常収支はどのくらいプラスになっているか、銀行融資で資金調達するなら設備投資資金をまかなうためにどのくらい借り入れが必要になるかシミュレーションが必要になるからです。事前に現預金残高を予測しておくことで、設備投資を行うタイミングとして適切か判断することが可能となるでしょう。

 

資金繰り表から確認する返済原資

資金繰り表から、返済原資に充てる資金を保有することができているのか確認していきましょう。なお、銀行から融資を受けて資金調達する場合、資金の用途により確認する部分が違ってきます。

 

経常運転資金・増加運転資金

一般的な運転資金経常運転資金であり、売上が増加したことで仕入れを増やすために対応する資金を増加運転資金といいます。

いずれも商品やサービスを販売・提供し、売上が計上されたことで発生した売掛金を回収するまでに不足する資金を賄うための運転資金です。そのため、返済原資は売掛金となるため、資金繰り表の売掛金回収欄に記載されることになります。

売掛金は取引先や取引ごとに管理を行うようにし、未回収のまま放置したり請求忘れなど回収漏れを防ぐようにしてください。

 

設備投資資金や特殊な運転資金

設備投資の資金として充てるのが設備投資資金であり、従業員に対する賞与や納税資金に充てるのが特殊な運転資金です。

損益計算書上の利益と、現金支出が伴わない費用である減価償却費を合わせた金額が返済原資となります。

なお、資金繰り表の経常収支を返済原資の参考にしたほうが実情に即しているともいえます。なぜなら損益計算書上の売上や利益は、売掛金がまだ回収できていなければ手元の資金とのズレが発生するからです。

以上のことを参考に、それぞれ必要となる資金の返済原資に不足は生じていないか確認しておくことが必要といえます。

 

まとめ

どんぶり勘定で経営を続けると、いずれ資金難に陥り資金ショートする可能性は高いということです。

本業が忙しくて細かい現金収支や売掛金、在庫などの管理まで手が回らないということもあるかもしれません。しかし、いくら決算書上は利益が出ていて黒字続きでも、手元の資金が不足してしまえば事業は継続できなくなり、いずれ黒字倒産してしまう可能性があります。

どんぶり勘定を続けていると、本来であれば考慮しなければならないはずの項目や要素を忘れてしまい、想定していたよりも出費がかさむといったことが起こりがちです。

黒字を見込んでいたのに赤字になったり、黒字なのに資金不足に陥ったり、気がつかない間に回収できない売掛金や売れない在庫を抱えることになるのです。

事業を続ける上でどんぶり勘定による経営でよいことは何もありませんし、仮に将来銀行融資を受けて設備投資や事業拡大を狙っていたとしても叶わなくなってしまいます。

そのため、どんぶり勘定から脱却するためにも資金繰り表を作成し、日々のキャッシュフローの管理はもちろん、発生した売掛金がいつ入金されるのか、未回収のまま残っていないか、在庫は増えすぎていないかなど確認するようにしましょう。

また、税金なども滞納していれば銀行融資を受けるときの妨げになりますし、口座が差し押さえられてしまうことで、取引先から入金された売上代金が引き出せず、他の支払いができなくなってしまいます。

企業が倒産するのは、決算書が赤字だからではなく、手元の資金がショートしてしまうからです。そのことを今一度理解し、どんぶり勘定の危険性と資金繰り表を作成することの大切さをあらためて認識するようにしてください。

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