年商の高い中小企業は安定しているとは限らない理由とは?

2019/08/21
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中小企業には資本金や出資総額、従業員数などの基準があり、大企業や零細企業とは異なり、色々な制度や助成金に絡む上での定義が定められています。ただ、業界によりその基準が異なるため、業種によって中小企業に該当しないということも起こりうるのです。

ただ、どの業種でも年商が高ければ安定した中小企業だと判断されがちですが、実はそうとも限りません。

そこで、一般的な中小企業とされる業種ごとの基準と、なぜ年商の高さと安定が繋がらないのかをご説明します。

 

業種ごとの中小企業とする定義付けの基準

中小企業とする基準は業種によって異なりますので、それぞれの定義として設けられている基準を知っておきましょう。

 

卸売業

資本金額または出資総額が1億円以下で、従業員数が100以下の法人

 

サービス業

資本金額または出資総額が5,000万円以下で、従業員数が100人以下の法人

 

小売業

資本金額または出資総額が5,000万円以下で、従業員数が50人以下の法人

 

製造業、建設業、運輸業、その他の業種

資本金額または出資総額が3億円以下で、従業員数が300人以下の法人

 

中小企業の規模を把握するための基準

中小企業としての定義は先に述べたとおりですが、企業規模を把握する際に用いられるのが年商、出資額の増減、従業員数の増減、上場か非上場か、などです。

判断の基準の中に含まれるのが年商といわれる項目ですが、その年度における総売上高のことを指しています。

この年商が高ければ多くの利益を生み出し、たくさん儲けているので安定した中小企業だと考える方も少なくないようです。確かに成功の証の目安にはされますが、年商1億円の企業でも蓋をあければ内情は火の車で、社員が定着しないブラック企業ということもめずらしくないのです。

 

年商が高ければ安定した企業といえるか

年商が1億円もあれば赤字になることはなさそうなのに、利益が出ないのは売上にこだわりすぎることが原因といえます。

会社に利益はほとんど残らなくても、売上を向上させるために銀行から借金を繰り返し、返済してはまた借りていれば負債ばかりが増えていきます。

売上は好調なら仕入れにかかる出費も多くなるので、外からみれば羽振りのよさそうな優良企業のように見えてしまいます。

しかし、実際には売上げを上げるためには、値引きをしたり、お買い得商品を用意した上で広告を打ち出すなど、様々な経費が必要となるでしょう。

薄利多売な商売を広げ過ぎてしまい、売上として数値は上がっているのに利益までは取れない状態が続くことで、経営は悪化するのです。

ある程度期間が過ぎ、商品が売れなくなるとまたもお買い得商品を準備して、さらに広告費用をかけて販売しようとするでしょう。

そうなるとますます手元にお金は残らなくなり、経営はさらに悪化してしまうのです。

 

売上を上げる努力をしているはずなのに…

確かにお買い得商品を用意すれば販売数は高まるでしょう。ただ、販売数が上がればその分、それに付随する業務も増えます。業務が増えれば人手が足らなくなり人を雇用します。

売上は上がっているけれど利益は出ていない、それなのに仕入れや宣伝費、人件費などの経費は増えるという悪循環に陥ることになり、さらにマイナスになる流れです。

社員数が増やすことは、会社規模を拡大させる上で必要なことかもしれません。しかし利益が出ていない状況で人を雇用するのは望ましいことではないといえます。

繁忙期なら人を雇用しても無駄にならない人件費も、閑散期には人件費が経営を圧迫するようになってしまうでしょう。

 

商品の質と原価を下げた対策は有効か

年商は上がり表向きは成功している企業だと認められても、内情は資金繰りが悪化し四苦八苦という状況です。

何とか改善させなければ!と今度はかかっている経費を削減することを考えるはずです。しかし、こまめに電気を消したり、コピー用紙は裏紙も再利用したり、事務用品費などもなるべく安いネット通販を利用するなどを行っても、経費で削減できる部分には限りがあります。

それなら販売する商品の原価を下げればよいのではないか?と、仕入れていた商品の質を下げて、これまで通りの販売価格で売ることを行っても、質の悪さなどでクレームが入るようになり、売れていた商品も売れなくなってしまう…という悪循環に陥ることになるのです。

 

お金が足らないなら銀行から融資を受ければよい?

それでも会社をつぶすわけにはいかないと、銀行から融資を受けることを繰り返します。以前より商品は売れなくなっていても年商でみれば高いので、当然借り入れはできるものだと考えるものでしょう。

銀行も売上が伸びているなら運転資金が不足しているだけだと、あっさり貸し付けをしてくれるでしょうが、それもずっと続くとは限りません。

資金繰りに行き詰まり、融資を受けて支払いに充てるという自転車操業を繰り返している間に、銀行から今回は融資できませんと断られてしまうと、どうやって資金を調達すればよいのか頭を悩ませてしまうことになります。

 

会社経営で最も重要なのは年商ではない

企業は人によって成り立つものです。会社規模を拡大する上でも雇用して人材を増やすことは欠かせません。しかし利益が上がっていない状態で無計画に雇用を続け、人件費を増やすことは本末転倒です。

常に会社の数字を把握し、その内容を理解した上でどのように経営を続けていくべきか戦略を練らなければならないといえるでしょう。

このように、会社経営に必要なのは売上がどのくらい上がったかよりも、利益がいくら残ったかであり、どのくらいの余裕資金を手元に残すことができるかです。

余裕資金があれば、支払いや借入金の返済に充てることもできますし、設備投資などに充てることもできるので、いざというときに銀行からの融資に頼る必要もなくなります。

 

会社が儲けているか知るための指標

会社が儲けているかを知りたいのなら、年商ではなく限界利益率を指標にするようにしましょう。

まず限界利益とは、売上高から変動費を差し引いた部分なので、売上の増加に対して増える利益をあらわします。損益計算書には記載されない部分であり、損益分岐点分析においての特有の利益です。

企業を経営するなら利益を生み続けることは必要ですが、売上とそれにかかる費用が同じならプラスマイナス0という状態です。この状態こそが損益分岐点で、利益も損失もない状態を指します。

最低でもどのくらい売り、それに対する経費をどのくらいに抑えればよいかを知る上で必要となる指標といえるでしょう。

限界利益は固定費を賄う利益で、固定費を回収することに貢献するため、貢献利益とも呼ばれています。

限界利益率とは売上高に対する限界利益の割合のことで、売上が増えたときにどのくらい限界利益が増加するかをあらわします。

この限界利益率を把握することで、売上の増減に伴い利益がどのくらい増減するかを知ることができるはずです。

 

まとめ

中小企業が安定しているかを判断する指標として年商を基準に考えられることがありますが、たとえ年商が大きく売上が上がっていても、必ずしも安定した企業であるとは限らないということです。

年商は上がっているのに、利益が出ずいつもマイナスである場合には、売上にこだわりすぎていないか今一度経営方針を見直すようにしましょう。

また、いくら決算書上の利益は黒字でも、手元の資金が不足していれば支払いはできません。売上と利益を向上させることはもちろん大切ですが、そればかりに目を向けていると資金不足に陥り倒産してしまう可能性もあることを十分理解しておくようにしてください。

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