債権譲渡禁止特約が付帯されている契約でも今後は資金調達が円滑に?

2019/08/05
Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on Twitter

企業が保有する売掛金を担保にしたり、または譲渡による資金の調達を検討したことがある経営者もいることでしょう。ただその中で、債権譲渡禁止特約が付帯された契約により、スムーズな資金調達に至らなかったという方もいるかもしれません。

平成29年5月26日に民法の一部を改正する法律が成立され、令和2年4月1日から施行されることにより、「債権譲渡禁止特約」に関しても改正されることになります。

そこで、現在の債権譲渡禁止特約が付帯されている場合の債権の取り扱いと、民法改正後にどのような取り扱いになるのかをご説明します。

 

債権譲渡禁止特約とはどのような契約なのか

まずは債権譲渡禁止特約とはそもそもどのような契約になるのかご説明します。

企業が5,000万円の発注を受けたとしましょう。そのとき、受注した取引が納品された後で売掛債権が発生しますが、この売掛債権については発注した取引先の承諾を得ずに第三者に譲渡することはできないという契約債権譲渡禁止特約です。

これまでの民法では譲渡を禁止された特約のある債権について、発注先の承諾なく第三者に譲渡が行われた場合、譲渡自体が無効になるという内容になっています。

第三者は特約の存在を知らずに債権を譲渡されることになるので保護されることもありますが、債権を譲り受けるときに特約のついている契約の中身は精査することが通常と考えられることが一般的で、債権を譲り受けた第三者が保護されることは多くありません。

 

債権譲渡禁止特約が付帯される理由

債務者からすれば、債務の管理やコンプライアンスを守るという意味で債権譲渡禁止特約を付帯するケースがほとんどです。

たとえば債務者が大手企業の場合、次のようなことがその理由として挙げられます。

 

支払い先はすでにデータ化されている

すでに支払先はデータとして登録されていてシステム化している状況のため、まったくかかわりのない譲渡人が新たな支払い先として加わることで、支払い先の変更を行う上で稟議を回したり、データの変更を行うなど非常に手間がかかります。

 

事務手続きが煩雑になる

債権譲渡を承諾しても債権譲渡手続書などの書類作成が必要になるなど、事務手続きが煩雑になることも懸念するでしょう。

 

譲受人の調査も必要になる

また、仮に債権の譲受人が反社会的勢力の場合、支払いを行ってしまえばコンプライアンス違反となってしまうため、調査も必要になってしまいます。

 

二重払いが発生するリスクが高い

譲渡された債権がすでに別の企業などに譲渡されているのに、元の債権者にその代金を支払えば二重払いとなってしまいます。

 

人的ミスも増えやすい

支払い先が増えればその分、人的なミスが発生するリスクも高くなるので、これらの手間や手続きによるリスクを防ぐ意味でも、債権譲渡禁止特約を付帯した契約を締結することがほとんどとなっているのです。

債権譲渡は、企業間により行われることが一般的ですが、売掛先が売掛代金の支払いを現金でできない場合、売掛先が取引を行っている会社から回収していない売掛債権を譲渡してもらうことが多いようです。

債権の譲受人からしてみれば、債権を無事に譲り受けたいと思うことでしょう。それなのに譲渡人と債権の債務者との間で債権譲渡禁止特約による契約が交わされている場合、債権の効力が発揮できないということになります。

ただ、債権譲渡禁止特約による契約が交わされている状況でも、債権を譲り受けることもあるので、近年では譲受人側が保護される傾向にあるようです。

 

債権譲渡禁止特約の存在が債権流動化の障壁に

そもそも債権譲渡禁止特約は債務者の権利を保護する契約となっており、譲受人に債権譲渡が無効であることを主張することを可能とする特約です。

もし債権を譲渡する場合、譲受人は譲渡人と債務者との間で債権の譲渡を禁止する特約が結ばれていないか前もって確認しておくことが必要となるでしょう。

ただ、本当なら債権の権利を取得して代金を請求立場になるはずの譲受人の立場になってみれば、無効であることを主張されていることは大きな痛手であり損失になります。

事業におけるスムーズな代金の支払いや資金調達において、債権の流動化が阻害される特約の存在は、事実、大きな障壁になっていると考えられます。

 

債権譲渡禁止特約が効果を発揮しないケース

このような流れから、譲受人も保護されるべきと考え民法の改正により、債権譲渡禁止特約に関する規制緩和という形になったわけですが、改正民法が施行される前でも債権譲渡禁止特約を無効にできるケースは次のとおりあります。

 

譲受人に過失がない善意の場合

債権譲渡禁止特約による契約が交わされていたとしても、譲受人には過失がなく、債権譲渡禁止特約の存在を知らなかった場合はその特約は無効として扱われます。

事実を知らなかったとしても、注意義務を怠っていたと判断される場合には過失とみなされてしまいます。ただ、多くの場合、譲受人は善意として扱われ保護されることになるでしょう。

 

債権譲渡に関する債務者の承諾

債権譲渡禁止特約が付帯された契約でも、譲受人が債務者に対し、債権を譲渡することについて同意を得ていれば譲り受けが可能となり、無過失や善意である必要もないとされています。

 

譲受人が悪意であると判断されるケースとは?

債権譲渡禁止特約が無効になる前提として、譲受人に重過失がなく悪意でないことが必要ですが、重過失や悪意であると判断されるケースとは次のとおりです。

 

●債権譲渡禁止が明確である債権の場合

預金債権など譲渡が禁止されていることが明らかな債権については、債権譲渡禁止特約が付帯された契約だったことを知らないとはいえず、悪意であると判断されてしまいます。

ただ、債権譲渡禁止特約は債務者からの主張が必要なため、譲受人の悪意や重過失を立証することが求められる点は理解が必要です。

 

●改正民法による扱い

改正民法では、改正前と同様に譲受人が譲渡禁止特約を知っていた、もしくは重過失によって知らなかった場合には、譲受人との譲渡は無効になるとされています。

預貯金債権の債務者となる金融機関は、顧客に迅速に払戻しを行うことを迫られるため、円滑な払戻業務に支障を来すことから例外措置として取り扱われているといえるでしょう。

 

将来債権譲渡に対する債権譲渡禁止特約の取り扱い

将来発生する予定の債権を譲渡する場合においても、裁判などでは債権譲渡禁止特約が交わされていると特約の効力を認められることがほとんどといえるでしょう。

 

将来債権を譲渡するとは

将来債権譲渡とは、たとえば得意先に商品を販売したことで売掛債権が発生したとします。

もし得意先から売掛代金の回収ができなかったときに備え、これから得意先が商品を販売することで発生する売掛債権を譲渡してもらうことです。

ただこの場合、得意先がその相手先と債権譲渡禁止特約を付帯した契約を結んでいたとしたら、誰が売掛債権を請求する権利を所有することになるのでしょう。

得意先から債権の譲渡を受けたときには、まだ得意先とその相手先との間で債権が発生していないことから、得意先と相手先との間で債権譲渡禁止特約が結ばれることも知らないということになります。

知らないということは善意であると考えられるでしょうが、実は裁判などでは債権譲渡禁止特約の効力は認められることがほとんどです。

 

●改正民法による取り扱い

将来債権の譲渡に関する規定はこれまでありませんでしたが、改正民法により将来債権の譲渡が有効であること、将来債権譲渡にも対抗要件具備が可能であることが明文化されています。

 

債権譲渡の制限の対象に含まれた債権

債権には債権譲渡の制限の対象となる債権が存在していますが、制限の対象である債権の譲渡が行われても効力が発揮されることはありません。

 

債権の性質により制限される債権

慰謝料や扶養の請求権など、行使できる債権者が誰か特定されている債権、使用借権や賃借権など権利の行使の形態に特徴がある債権の場合、債権譲渡の対象に含むことはできないとされています。

 

法律により制限された債権

法律によって、給料や賞与などの債権、生活保護や年金、相続において効力のある財産分与請求権、遺留分減殺請求権などは法律によって制限されています。

 

債務者から相殺による債権譲渡の対抗

取引先に売掛金だけでなく買掛金も発生している場合、双方が債権を抱えている状態ですが、売掛債権と買掛金が相当であるなら互いの債権を消滅させる相殺も可能です。

債権譲渡において債務者から譲受人に相殺を主張することもできますが、譲受人が譲り受ける債権の債務者がその金額相当の債権を保有している場合、債務者が譲受人に対し相殺を主張すると債権同士が消滅して債権譲渡の効力を失う点には注意しましょう。

 

民法改正でこれまでの債権譲渡の扱いはガラリと変わる

2017年5月の改正民法により、債権関係の規定が見直されることになりました。

この改正により、債権譲渡禁止特約が付帯されている債権でも譲渡は基本的に有効とされることになっています。

これまでと扱いが180度変わることになりますが、ファクタリング契約による売掛債権の流動化による資金調達が増えたことが背景にあると考えられ、より後押しする形となったといえるでしょう。

債権を譲渡することでファイナンスに活用できる仕組みを利用したくても、債権譲渡禁止特約は資金調達における障害となってしまいます。

そこで、特約に反した譲渡も有効にすることで、より売掛債権が流動化されるようになり、有効に活用される機会を増やそうという動きが高まったといえるでしょう。

 

債務者にとってもプラス面はあるのか

債権者にとってはプラスになる改正と考えられますが、債務者側にとってもマイナスしかないわけではありません。

債務を管理する上での手間は増えてしまうかもしれませんが、債権譲渡禁止特約を抗弁により主張する権利は保証されていますので、債務者の利益も守られた上での改正が行われています。

債権を譲渡された第三者が債務者に対して支払い請求を行っても、債務者はもともとの取引先である譲渡人と債権譲渡禁止特約を合意した契約を交わしていたので支払わないと拒否することは可能ということです。

債権譲渡をきっかけとして、債務者は元の債権者である譲渡人にお金を支払い、譲受人は譲渡人からその代金を受け取ることにより、譲渡された債権の回収を図ることで解決できます。

 

ファクタリングによる資金調達もさらに円滑に!

ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、その代金を期日よりも先に現金化させる資金調達の方法です。

売却したい売掛債権を保有していても、債権譲渡禁止特約の存在が邪魔をして十分な資金調達に至れないということもあるでしょう。

ただ、今後、民法が改正されることにより、中小企業が多く保有する売掛債権がより円滑に流動化されるようになり、資金調達の有効な手法として用いられることになることが期待されます。

 

融資に頼る資金準備から卒業できる可能性大

日本の企業は資金調達の方法に、銀行など金融機関からの融資に依存している傾向がみられます。しかし、負債を増やし資金を調達しても、一時的な資金準備で留まってしまい、その後の返済負担に追われ結果、多くの借金を抱えることになり倒産してしまう企業も少なくありません。

資金繰りを根本的に改善させることが求められますが、借り入れによる運転資金の準備でさらに資金繰りを悪化させてしまう企業も多いということです。

売掛債権を流動化させて資金を調達することは、経済産業省も推奨している方法でもあるため、もし資金繰り悪化で悩んでいるのならファクタリングなどで売掛債権を有効活用することを検討してみましょう。

 

まとめ

債権の譲受人の立場になれば、債権譲渡禁止特約により債権の効力が失われることは大きな痛手です。ただ、債務者と譲渡人との契約の中で債権譲渡禁止特約が付帯されていたことを知らなければ債権譲渡は無効にはならないという扱いです。

ただ、民法の改正によって今後、債権譲渡禁止特約の扱いや、債権がより流動化されるような内容が多く盛り込まれるようになります。

改正は一部の規定を除いて令和2年4月1日から施行されることになりますので、どのようなルールになっているか今一度確認しておくことをおすすめします。

Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on Twitter