中小企業の資金繰りを改善させる方法に融資は本当に有効か

2019/05/29
Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on Twitter

事業を営む上で企業にはいろいろな支払いや決済義務が生じることになります。そのときに必要になるものが資金ですが、資金が不足しないようにその流れを把握しておくことが重要です。

では、中小企業で資金繰りが悪化してしまった場合、その調達方法に融資を選択することは適切な判断なのでしょうか。

そこで、中小企業が資金繰りはなぜ悪化してしまうのか、改善させるために融資を活用することは正しいのか考えてみましょう。

 

資金の流れで注意しておきたいこと

事業活動における資金の流れにおいて注意してきたいのは、商品を仕入れたときとそれに対する支払いを行う時期のズレ、そして商品を販売したときの売上時期と売上に対する代金を回収する時期にズレが生じることです。

なぜズレが生じるのかというと、企業間で行われる掛け取引や手形取引などが原因です。

商品仕入れによる支払い義務が発生して実際に決済するまでの期間を仕入債務の支払サイト、商品を販売し売上が発生してからその代金を回収するまでの期間を売上債権回収サイトといいます。

この2つは、営業活動による資金繰りに対する影響を分析する際、重要な指標とされます。

仕入債務支払サイトは短くなれば資金繰りが苦しくなり、長くなれば資金繰りに余裕が出てきます。

売上債権回収サイトは反対に、短くなれば資金繰りに余裕が出てきますが、長くなると資金繰りは苦しくなってしまいます。

 

黒字倒産する中小企業が多い理由

近年、中小企業などで多く見られる黒字倒産。勘定あって銭足らずという状況は、損益計算書上は利益が出ているのに、手元には資金がなく倒産に至る可能性があるということを指しています。

会計簿上の利益と手元の資金繰りは同じだと考えていると、資金不足に陥り支払いができなくなってしまうでしょう。

仮に仕入れに100万円かかったとしても、販売のための諸経費に40万円かけて200万円で売れたとしたら60万円の利益が出ます。

それなら仕入れ代金の支払いに困ることもなく、資金繰りも悪化しないだろうと思うかもしれませんが、実際には売上代金が入金されるより前に仕入れ代金の支払いが発生することが一般的です。

そのため、帳簿上は利益が出ているから資金繰りも安定していると安心しきってしまうのは危険であるといえます。

ただ、売上代金が回収できれば、帳簿上の利益と資金の増加量は一致しますので、やはり利益を生むことは重要なことだといえるでしょう。

 

資金繰りを悪化させる原因

仕入債務支払サイトと売上債権回収サイト、この2つが資金繰りに影響を及ぼすことは間違いないのですが、改善させるには資金を調達する必要があります。

たとえば3~6か月先までで必要となる資金において、不足する金額分調達することで資金繰りは改善されます。

資金が不足した場合、まずは銀行に融資の相談に行ってみようという経営者が多いのは、この不足額を調達し、手形の不渡りなどを出して倒産する危機を回避するためです。

ただ、不足する資金を調達するだけでは資金繰りを改善させる根本的な解決には繋がりません。

まずは資金繰りを悪化させている原因は何なのかを分析・究明し、資金繰りを改善させるためには何が必要なのか、そのために対策を講じて実行することが必要です。

通常、資金繰りを悪化させている原因として挙げることができるのは次のとおりです。

  • ・経営が赤字状態であること
  • ・仕入債務支払サイトと売上債権回収サイト
  • ・過剰に在庫が残っている
  • ・取引先の売掛金の貸し倒れや倒産などの発生
  • ・その他、投資の失敗など

 

赤字経営からの脱却するために

そもそも経営が赤字状態という場合には利益を生むにはどうすればよいかを考える必要があります。

利益を向上させるためには、

  • ・各種利益率を分析した上で改善策を講じる
  • ・固定費の引下げなどコスト削減を検討する
  • ・一部撤退など赤字事業の見直しを行う
  • ・人事や組織の見直し
  • ・市場や製品の見直し

などが必要となります。

 

仕入債務支払サイトは延長、売上債権回収サイトは短縮

資金繰りの悪化を防ぐには、仕入れ先に支払条件の変更を要請するなど、支払期日までの期間を延長してもらうことが必要です。

反対に販売したことにより発生した売掛金については、早期に回収できるようにこちらも取引先への交渉が必要となります。

 

過剰な在庫は処分

在庫は過剰になりがちですが、営業活動において、商品や製品など在庫は多い方がやりやすいことが理由です。ただ、資金を寝かせたままの状態になり、その価値は時間の経過と共に低下していきます。

不良在庫は資金繰りを悪化させる大きな要因となることを認識し、損になる場合でも思い切って換金処分したほうがよいといえるでしょう。

 

取引先に対する与信管理は徹底して行う

資金繰りを改善させる上で欠かせないのが取引先に対する与信管理です。取引先からの売掛金が期日通り回収できなくなったり、万一倒産してしまい貸し倒れとなれば、その影響が自社にまで及び、連鎖倒産してしまう可能性も出てきます。

日常から営業担当者と経理担当者が情報を交換し合いながら、取引先に倒産の兆候が出ていないか、内外からしっかり情報を入手して管理していくようにしましょう。

仮に取引先が危険な状況であると判断できる場合には、掛け取引から現金取引に切り替えたり、新規での取引を行わないなど被害を最小限に抑える策を検討していくことが求められます。

 

無理な投資は行わない

資金繰りを悪化させる要因として、無計画な投資や無理な利益処分、売上予算の甘さによる見込みの立て方などが関係します。

銀行からの融資で設備投資を行う場合には、失敗すれば借金だけが残ります。そのため、各年の留保利益と減価償却費を足した自己金融額の範囲で返済できるように、長期に渡る融資であれば有効であるといえます。また、公的融資制度が利用できる場合には、そちらを活用することを検討するようにしましょう。

 

日本政策金融公庫の公的融資制度

公的融資制度は日本政策金融公庫が行う貸し付けです。その中でも、個人企業や小規模企業向けの融資などもあるので、長期で事業資金を借り入れたい場合には検討してみるとよいでしょう。

日本政策金融公庫が行う融資制度の中でも、中小企業が利用したい制度は次のとおりです。

 

一般貸付

事業を営むほとんどの業種の方が利用できる融資制度であり、設備資金なのか運転資金なのかなど、使用用途により融資期間や据置期間は異なります。

融資限度額は4,800万円(特定設備資金7,200万円)となっているので、様々な用途に利用しやすいでしょう。

 

セーフティネット貸付

経営環境などが変化したことで資金繰りに影響を受けた小規模事業者を対象とした融資制度です。地震や台風、豪雪などの災害のときには、被害を受けた小規模事業者を対象として復旧・復興を支援する制度となっています。

 

新企業育成貸付

創業前や創業して1年以内の企業などに多く活用されている融資制度で、事業再生や事業承継を図る小規模事業者を対象として支援する制度です。

 

まとめ

中小企業は資金繰りが悪化しやすい状況であるといえますが、不足した資金を調達する手段として融資を利用する前に、なぜ資金繰りが悪化しているのか、そのためにはどのような対策が必要になるのかを把握するようにしましょう。

その上で融資による資金調達が必要と判断した場合には、公的融資制度などを活用することをおすすめします。

また、売上債務支払サイトを短縮する方法として、ファクタリングなどを活用することもできます。一時的な資金繰り改善ではなく、長期的に安定させることができる方法なのでぜひ検討してみましょう。

Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on Twitter