事業を営む上で日々の収支を記帳して管理することは大切なことですが、資金繰りについて把握しておくことはさらに重要です。
事業所の規模によって、経費の支払いや借入れの返済、売上の入金など収支の動きを記帳していく経理部門と、資金繰りを担当する財務部門と分かれている場合もありますが、比較的規模が小さい会社などは経理部門が資金繰りまで担当しているでしょう。
しかし資金繰りがしっかりなされていないと、手元の資金は不足することとなり、支払いは滞りいずれ事業継続は難しい状態に陥るため、どのように資金調達するのか考えておかなければなりません。
もし、資金調達に銀行などからの借入れを検討している場合、借入れが結果として資金繰りを悪化させる可能性もあることを把握しておきましょう。
目次
事業を営む上で資金繰りは欠かせない
資金繰りとは、売掛代金の回収と仕入れの支払いなど、それぞれのタイミングを見計らって、もし手元の資金が不足する場合は借入れなどを行い、不足分を補いながら支払い業務を円滑に行うことです。
仮に設備投資を検討している場合など、中長期経営計画と整合性が取れた状況で、資金調達だけでなく返済計画も立てておく必要があります。
設備投資など多額の資金が必要にならない場合でも、毎月の資金繰りについて計画は立てておくことが必要です。資金繰り表を作成し、その中で毎月のお金の動きを把握しておくようにしましょう。
資金繰り表は月次ベースが基本
資金繰り表とは、毎月発生する入金と支払いを予測しながら、資金不足が生じる可能性のあるタイミングと、資金調達する必要がある金額を把握するための書類です。
作成するときには月次ベースであることが一般的ですが、半年程度先まで予測した上で作っておくとよいでしょう。
ただし、資金繰りが厳しい状態であり、現預金残高が少ない場合など、日次ベースでも作成しておくことが求められます。
資金繰りが悪化する理由は借入れに対する無理な早期返済?
資金繰りを行うにおいて、資金に不足が生じたらどのような方法で資金調達を検討するでしょう。多くの場合、真っ先に銀行からの借入れが頭に浮かぶかもしれません。
しかし、中には借入れのない無借金経営を目標にする経営者もいます。当然、借金はないほうがよいといえますが、すでに銀行から融資を受けている場合において、その借入れが低金利で長期の返済期間である場合、無理に余裕資金で返済しようとすることは好ましいこととはいえません。
借入金を早期で繰上返済すれば、総支払額を少しでも減少させることができるので、余計な利息を支払わずにすむでしょう。ただ、業種によっては、入金が多く発生する月もあれば、そうでない月もあるなど、常に業績が好調とも限りません。
万一、業績が悪化してしまったとき、余裕資金を借入れの返済に充ててしまっていては、他の支払いに充てることができなくなってしまいます。
銀行からの融資は様々な書類の作成で手間や労力、時間もかかり、審査もあるので必ず借入れできるとも限りません。そのため、長期低金利で借入れした融資については、あわてて早期返済しないほうがよいケースもあるのです。
無理な投資のための借入れは資金繰りを悪化させる
無借金経営を望む経営者もいれば、多額の借入れをしてまでも自社ビル購入など投資にお金をかけたいと考える経営者もいます。
事業が円滑に進んでくると、それまで賃貸で事務所など借りていたものの、やっぱり自社ビルを購入したいと考え、銀行から借入れを行って無理に自社ビルを購入しようとする経営者もいるようです。
しかし、無理な借金は資金繰りを悪化させる可能性が高まりますので、本当に自社ビルを購入しなければならないのか、自社の利益にビル購入が貢献するのかを考えた上で検討しましょう。
十分な余裕資金がある上で自社ビルを購入するのなら別ですが、多額の借金をしてまで購入することに意味があるのかが問題です。
万一、購入した自社ビルを売却したいと思ったとき、買い手がみつかずに処分できなくなる可能性もありますので、よく検討した上で決めるようにしましょう。
無駄な経費も資金繰りを悪化させるだけ
資金繰りがおもわしくない状況の場合、支払っている必要経費の見直しも行ってみましょう。特に金額が大きい経費については、本当にそれが必要な支払いなのか見極めが必要です。
例えば広告宣伝費など、使えば使うほどよいわけではありませんので、投資による効果を分析した上で必要か見極めが肝心です。
広告にも様々な手法がありますが、得ることができる収益より支払う費用の方が大きいなら、売上を最大化させるよりも利益を最大化することを目標にした広告を考える必要があります。
また、業績が良好で黒字経営の場合、なるべく節税したいからとわざと経費を無駄使いする経営者もいるようですが、間違った節税対策だと認識しておくべきです。
本当の節税方法は無駄使いすることなく行えるもののはずなので、無駄な出費を伴わない経営状況に合った節税方法を模索し、実行するようにしましょう。
資金繰りを行う上で資金が不足しがちなタイミングとは?
資金繰りを悪化させる要因となる借入れや支払いなどは避け、良好な状況で事業が進むように資金繰り管理を行っていきましょう。
それでも資金が不足するタイミングは出てくるかもしれません。特に、決算を行って2か月以内に納付する税金を支払うときや、年2度、雇用している社員に対して賞与を支払うときは、負担が重くなりがちです。
また、設備投資を検討している場合なども大きな資金が必要になり、資金不足が生じる可能性があります。
銀行から借入れを行うなら
資金不足を補うために、銀行などからの借入れを利用するのなら、どの銀行に借り入れを申し込むのかを検討することからはじめることになります。
取引のあるメインバンクなどに相談を行うことが一般的ですが、中小企業などで銀行から融資が難しい場合は国民生活金融公庫など政府系金融機関から融資を受けることになるかもしれません。
低金利で長期に渡り設備投資資金の融資を受けたいなら、証書による借入れが一般的でしょう。しかし、不動産などを担保に提供しなければならなくなるでしょうし、中小企業の場合は信用保証協会の保証も求められる可能性があります。
借入れも種類はいろいろ
借入れにもいろいろな種類があり、銀行から融資を受ける以外にも手形割引による資金調達なども方法の1つです。
手形割引は、手形の振出人の信用力が高い場合、銀行も貸倒れリスクが小さいと判断するでしょうし、運転資金に対する資金であることが明確なら積極的に応じる可能性があります。
また、借入れではありませんが、手形割引と似た仕組みにファクタリングなども資金調達の方法の1つです。ファクタリングは、ファクタリング会社に売掛債権を買い取ってもらい、支払期日より早期に売掛金を現金化する仕組みです。
無担保ローンは借りすぎると危険
また、ビジネスローンなど、短期間無担保で運転資金を借入れできる金融商品などもあります。ビジネスローンは、決算書などのデータをもとにして、貸倒れする確率を統計的に算出し、融資の可否や貸し出す際の利率などをコンピュータシステムが判定して行います。
ただし、金利が高めに設定されているので、一時的に利用するのみにとどめておかなければ、返済負担が増えて自転車操業を行うことになり兼ねませんので注意しましょう。
借入れの返済計画は後で見直せると安易に考えないこと
多少無理な借入れを行ったとしても、後で返済計画を見直せばよいと簡単に考えてはいけません。
確かに、銀行からの借入れについて、返済が苦しくなったときには、返済が可能となる計画に変更する「リスケジュール(reschedule)」を依頼することもできます。
しかし、このリスケジュールを銀行に依頼した場合、倒産予備軍であると判断されてしまい、新規融資を受け付けてもれえなくなる可能性があります。
リスケジュールを行った場合、銀行から運転資金を借りず、自力で資金繰りを回していくことになりますし、実際、リスケジュール後に税金滞納や給料支払いの滞納などが発生する会社も少なくないのです。
さらに、売上向上につなげるための新規採用や設備投資も難しくなるなど、業績を低迷させることになる可能性に繋がりますので注意してください。
そのため、借入れを行う時には十分な返済計画を立てることが必要であるといえるでしょう。
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