売掛金の貸し倒れに関わる貸し倒れ損失と備忘価額の関係性

2018/08/17
Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on Twitter

売掛金は100%回収が約束されているわけではありません。一応は支払う約束で取引をしています。しかし今後の取引先の経営状態がどうなるかはわかりません。急激に財務状況が悪化して、売掛金の支払いができない、といった状況も考えられるわけです。

売掛金が回収できない場合には、貸し倒れ損失を計上することになります。売上があったのに売掛金が回収できないとなると、実際には利益が出ていないことになります。そこで貸し倒れ損失を計上し、損失を出すわけです。

その貸し倒れ損失と計上する時に大きく関わってくる可能性があるのが「備忘価額」です。

こちらでは売掛金の貸し倒れに関わる会計処理と貸し倒れ損失時の備忘価額についてを徹底解説します。

売掛金の貸し倒れにおける会計処理について

・貸し倒れの危険性が少ない時の会計処理

貸し倒れ引当金が設定できます。ここでは一括評価となります。
例えば貸し倒れ率を5%とするのであれば、保有している売掛金の5%を貸し倒れ引当金として設定するのです。

貸し倒れの危険性が極めて少ないということになるので、こちらの処理については単なる見込みとなります。実際に貸し倒れているわけではないので、会計処理としてはそれほど重要ではありません。

ちなみに貸し倒れ率を5%として、現状で売掛金を総額1,000万円持っているのであれば、貸し倒れ引当金は50万円となります。

・貸し倒れの事実はないが危険性が高い時の会計処理

こちらでも貸し倒れ引当金を設定します。しかし前述したものとは異なり、個別評価をすることになります。

いくつかの取引先がある場合ですが、その中の1社や2社から回収が難しそうな状況になったとします。その1社から2社の売掛金のみに貸し倒れ引当金を設定するわけです。

個別評価となるので、貸し倒れの可能性が低いと思われる業者の売掛金については貸し倒れ引当金を設定しません。

例えば10社と取引しており、売掛金総額は2,000万円とします。そのうち貸し倒れの可能性が高いと判断する業者の売掛金が100万円であるとします。そのケースでは貸し倒れ引当金の設定額は100万円となるわけです。

もちろん貸し倒れの確率が高かったとしても一部は回収できる見込みがある場合もあるでしょう。回収できる見込みがある場合は、その見込額を差し引いた上で貸し倒れ引当金を設定しましょう。

・貸し倒れの事実があった場合の会計処理

これまでとは異なり売掛金が貸し倒れ状態になってしまいました。よって貸し倒れ引当金は計上しません。貸し倒れ損失を計上することになるのです。

貸し倒れ損失に関しては見込み額を計上することはありません。必ず実際に貸し倒れた金額を計上しましょう。

例えばある企業の売掛金150万円が回収できなくなってしまった場合には、貸し倒れ損失を150万円計上することになるわけです(備忘価額を1円計上するケースあり)。

・売掛金の貸し倒れにおける会計処理まとめ

・貸し倒れの危険性が低いケース・・・一括評価による貸し倒れ引当金の設定
・貸し倒れの危険性が高いケース・・・個別評価による貸し倒れ引当金の設定
・実際に貸倒れが発生したケース・・・貸し倒れの事実に基づいた貸し倒れ損失の設定

貸し倒れ損失が認められる3つのケースと会計処理~備忘価額はどのように設定するのか~

貸し倒れ損失が法人税法上認められるケースは3つに分類されています。

①金銭債権の全額が回収不能であるケース
②法律的に金銭債権が消滅するケース
③一定期間取引停止度に弁済がないケース

3つのケースはそれぞれ会計処理の取り扱いに違いがあります。しっかりと理解していなければ、税務署から貸し倒れ損失として認められない、との評価が下されてしまうかもしれません。

こちらでは3つのそれぞれのケースの内容、さらには会計処理方法を解説します。

【①金銭債権の全額が回収不能であるケースとは?】
債務者(取引先)の資産状況や支払能力が大きな判断材料になります。
客観的に見て債務者の資産状況や支払能力から見て売掛金の全額が回収不能のである場合には貸し倒れ損失の計上が認められるわけです。

例えば取引先に資産がほとんどなく、現金もありません。さらに売上もほとんどないということになれば、売掛金を支払う目処もたたないわけです。そういった状況に陥っていると客観的に判断できる場合には、法人税法上は貸し倒れ損失の計上が認められています。

<金銭債権の全額が回収不能であるケースの会計処理>
全額が回収不能であると証明されているので、全額を貸し倒れ損失として計上できるのです。逆に一部だけを貸し倒れ損失に計上する、ということはできません。あくまで全額を損失として処理するのです。

例えば売掛金が200万円なる企業から全額の回収が不能であると判断できる場合には、200万円すべてを貸し倒れ損失とします。200万円のうち100万円だけを貸し倒れ損失として計上する、ということはできません。

【②法律的に金銭債権が消滅するケースとは?】
法律的に金銭債権が消滅するケースはいくつかに分類されています。そのいずれかに当てはまる場合には、貸し倒れ損失として計上できるわけです。

以下が法律的に金銭債権の消滅するケースです。

・再生計画認可の決定がおこなわれたケース
・更生計画認可の決定が行われたケース
・債務者集会の協議決定が行われたケース
・特別清算に関わる協定の認可の決定が行われたケース
・債務超過の状況が長期間継続し、弁済を受けることができず債務免除を書面による通知したケース

債務整理などを行われてしまった場合には、貸し倒れ損失になります。また自社から債務免除を行った場合も貸し倒れ損失計上の条件の一つに入ってくるわけです。

<法律的に金銭債権が消滅するケースの会計処理>
切り捨て額や免除額を貸し倒れ損失として計上することになります。
仮に債務整理を行われてしまったとしても、全額が回収できないわけではありません。回収できる分に関しては貸し倒れ損失としては計上しないのです。

また自ら債務免除を行った場合についても、売掛金を全額免除しないこともあるでしょう。その場合は免除した金額のみを貸し倒れ損失として計上するのです。

【③一定期間取引停止度に弁済がないケースとは?】
2つのケースのいずれかに当てはまる場合に貸し倒れ損失として計上できます。

・売掛金や受取手形で取引停止後1年以上経過しているケース
・債権金額よりも取りたて費用のほうが高額になるケース

取引を以前はしており、現在も売上債権を保有している状態で取引停止が1年以上である場合には、貸し倒れ損失が認められます。取引先に支払いの意志がない、と判断できるからです。
また取り立て費用のほうが回収予定金額よりも高額である場合には回収しても意味がありません。よって貸し倒れ損失として計上できるわけです。

<一定期間取引停止度に弁済がないケースの会計処理>
ここで備忘価額が出てきます。
備忘価額を1円残して貸し倒れ損失を計上することになるのです。

例えば100万円の貸し倒れ損失として計上するのであれば、99万9,999円を貸し倒れ損失とします。そして残りの1円を備忘価額として処理するわけです。

まとめ

会計処理は、売掛金の貸し倒れ状況によって異なってきます。
貸し倒れのリスクが明確でない場合には、一律で貸し倒れ引当金を設定します。リスクが明確になってくると個別で設定し、実際に貸し倒れが発生したら貸し倒れ損失として処理するわけです。

貸し倒れ損失がん認められるケースは3つに分類できます。そのうち「一定期間取引停止度に弁済がないケース」に備忘価額が関わってくるわけです。1円だけ備忘価額を残すことを忘れないでください。残していないと貸し倒れ損失が認められない可能性も出てくるのです。

Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on Twitter