取引先が夜逃げで売掛金が貸倒れ|適切な処理について

2018/05/21
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売掛金や受取手形については、期日に入金を約束したものです。一般的には期日に契約した金額が振り込まれるはずですが、必ずしも入金されるとは限りません。取引先の都合で支払いがされない場合があるのです。

取引先が夜逃げをして債権の回収が不能になってしまうこともあります。債権の回収が不能になるということは、損失が発生した、ということになります。損失が発生したのであれば、税金だけでも安くしたい、と思うのは経営者としては当たり前のことでしょう。

しかし適切な処理をしなければ、売掛金の貸倒れ損失が税務署に認められないこともあります。

こちらでは貸倒れが発生した時の適切な処理方法について解説します。また売掛金の貸倒れが発生しないようにするためにはどうしたら良いのかもお伝えします。

 

売掛金の貸倒れが認められる条件とは?

売掛金が期日通りに入金されなかったとしても、必ずしも貸倒れ処理できるわけではありません。一定条件をクリアしていなければ、正当な貸倒れとは認められないのです。正当な貸し倒れと認められない場合には、税金的な優遇は受けられません。

【売掛金の貸倒れの条件】
1.貸倒れ処理する事業年度終了時までに債務者に通知が届いていること
2.返済を受けることが出来ないと認められる債務免除額が合理的であり、明確化されていること
3.債務超過の状態が一定期間以上継続していること

抽象的な表現が多くなってしまうわけですが、上記の条件に当てはまる場合には売掛金を貸倒れ損失してもOKとなります。

まずは通知があります。債務者に対して貸倒れ処理をする旨を通知していなければ、貸倒れ損失は認められません。必ず債務者に対して売掛金を請求しない旨を通知してください。

売掛期の回収不能学についても明確化しておかなければなりません。いくら回収できないのか。そもそもその取引先の売掛金はどの程度あるのか、ということは伝えておかなければならないわけです。

債務超過の期間も重要になってきます。債務超過に陥ってから短期間で貸倒れ処理することは合理的ではない、と判断されてしまいます。債務超過につては一定期間以上続いているという状況でなければ貸倒れ損失は認められないのです。
期間については税務署による判断も関わってくるので、前もって相談しておきましょう。

・売掛金を証明する書類も必要

貸倒れとして計上するためには、売掛金を証明できる書類も用意しておかなければなりません。書類で確実な額を証明できなければ、貸倒れ処理自体が認められないこともあるのです。

【売掛金を証明出来る書類例】
・売買契約書
・納品書
・請求書
・債務者の支払不能を証明する書類・・・決算書や担保不足を証明できる不動産の謄本など
・債権放棄通知書・・・配達証明付き内容証明郵便

債権放棄通知書については、前述した「1.貸倒れ処理する事業年度終了時までに債務者に通知が届いていること」にも関わってきます。売掛債権を放棄することを取引先に告げることで、貸倒れ処理することが相手にも伝わるわけです。
回収できなかったとしても債権を放棄していなければ、まだ売掛金と計上されていなければなりません。損失を確定するためには債権を放棄することが必要になってくるわけです。

・貸倒れが認められないと売掛金はどうなってしまうのか?

条件をクリアできなかった場合などは貸倒れが認められないことになります。
その結果、売掛金の貸倒れは「寄付金」の扱いになってしまうのです。税金的にメリットが無いわけではありませんが、貸倒れ損失よりも効果が薄くなります。

寄付金扱いにされてしまわないように、確実に処理していくことが重要なのです。

 

夜逃げで売掛金が回収できない!貸倒れ損失処理の注意点

取引先が夜逃げしたおかげで売掛債権が回収できないケースにおける損失処理は、極めて難しくなっています。

夜逃げをされた事実だけでは売掛金の貸倒れの処理はできません。売掛金の全額回収が不能である直接的根拠とはされないのです。要は夜逃げをされたことによって売掛金の全額回収ができなくなったことを証明しなければなりません。

・重要なのは回収の努力をしていたかどうか

いきなり夜逃げをする経営者はいないはずです。
すこしずつ経営が悪化して資金繰りに苦労し、取引先への支払いが遅れ始めるわけです。そしてどうしようもなくなって夜逃げをしてしまいます。

要は売掛金の支払いが遅れだした時に回収の努力をしていたのか、ということが重要になります。売掛先へ連絡をしていたでしょうか?督促をしていたでしょうか?法的な対応をしていたでしょうか?

特に重要とされるのが、配達証明付き内容証明郵便です。配達証明付き内容証明郵便で売掛金の請求を行っておけば、取引先が督促をされても支払いに対応していない、ということが証明できます。夜逃げ後であっても効果的です。その内容証明郵便を受け取れない、という状況が証明できます。夜逃げの事実が証明できるのです。
配達証明付き内容証明郵便で督促をしたということは、回収の努力をした、というアピールにもなります。回収努力は夜逃げによる貸倒れ損失の一つの条件となっているので、面倒にも感じるかもしれませんが必ず行ってください。

ちなみに夜逃げをした会社に配達証明付き内容証明郵便を送ったとしても受取人不在として返送されてきます。受取人不在で返送されてきた事実が重要なのです。経営者が所在不明、ということになるので回収出来ないことが明らかになります。

【回収努力の経過を証明できるようにしておくこと】
夜逃げされる前に取引先とどのような交渉をしていたかも明らかにしておきましょう。交渉記録簿などを作成しておくことで、より貸倒れとして認められやすくなります。

配達証明付き内容証明郵便だけではなく、債務者への郵便物の控えなども保管しておくといざという時に役立ちます。

回収断念に至った経緯であるとか回収不能であることを立証できるものを用意しておくことも大切です。裁判所などからの通知書や決定書であるとか、債務者や保証人の支払能力などの調査書や決算書も重要な書類となります。

様々な書類から回収できないことが明らかになれば、税務署としても貸倒れ損失を認めざるを得ないのです。

 

夜逃げをされたら興信所に依頼して債務者を探すべきか?

興信所への依頼は、貸倒れ処理をする前の努力の一つとみなされる可能性もあります。
実際に売掛先が夜逃げをしたケースで、経営者を興信所に探してもらう会社も実際に存在しているのです。

興信所に取引先の経営者の所在を探してもらうというのは、それなりの費用が発生します。少なくても数十万円の費用はかかってしまいます。状況によっては長期の調査となるので、100万円や200万円かかってしまうこともあるのです。

費用の面の問題もあるので、貸倒れ処理をする売掛金額によって対応を変えるのもおすすめです。高額な売掛金であれば、費用をかけてでも興信所に依頼して取引先の経営者を探してもらうのも良いでしょう。しかし少額の売掛金の場合は、割にあわないわけです。少額の場合はわざわざ興信所を利用する必要はありません。

取引先の経営者だけではなく、保証人がいる場合には保証人を興信所に探してもらう、というケースもあります。保証人まで夜逃げしてしまう、というケースは少ないとは思いますが、保証人の所在もつかめない場合には興信所の利用も検討しておきましょう。

ちなみに保証人がいる場合には、保証人が自己破産をするケースも珍しくありません。自己破産をされてしまうと、事実上回収はできません。経営者が夜逃げをした上で保証人が自己破産をしたということが証明できれば回収不能を証明できることになるので、貸倒れ損失として計上できることになります。

 

売掛金の貸倒れを発生させないためにはどうしたら良いのか?

・前もって取引先企業を調査すること

上場企業であれば決算書を公表しています。決算書の内容から、取引先の経営状態をチェックするわけです。

債務超過に陥っていることが分かれば、回収できない可能性が高い、ということになります。売掛金が回収できなくなる確率が高いとなるので、取引量を減らしたり取引をストップしたり、といった対処ができるようになるわけです。

上場企業ではない場合であったとしても、取引先企業を調査することは可能です。興信所に依頼する事で、企業の調査を行ってくれることもあります。

取引先企業を調査するのは面倒なことかもしれません。しかし今後の会社の経営を考えると、売掛金や受取手形の回収で手間取ることは避けなければならないのです。本来入金されるはずのものが入金されないとなると、会社としての予定が狂ってしまいます。入金を見越して設備投資をするケースもあるでしょう。そのような状況で入金がされなければ、自社の経営状態が悪くなってしまうのです。

年に1回程度でも良いので、取引先企業を調査しておきましょう。

・ファクタリングを利用する

ファクタリングとは「売掛金の売却」を意味しています。
売掛金はなぜ貸倒れが発生するのでしょうか。それは売上発生時に決済されていないからです。売掛金は売上の発生から1ヶ月から2ヶ月程度かかってからやっとの入金となります。要はタイムラグが発生してしまうわけです。
現金決済であれば、売上と同時に自社に現金が入ります。貸倒れは発生しません。

ファクタリングについては、売上債権をファクタリング業者へ売却してしまうものです。本来であれば、1ヶ月後から2ヶ月後に入金されるものを早期に現金化できます。
最短即日や最短翌日入金も可能な業者もありますよ。

入金が発生する前に売却してしまえば、売掛金はすでに現金化されているわけです。入金されるかされないかわからないものを待つ必要もなくなります。貸し倒れが発生することもありません。

気になるのは、取引先から売掛金が入金されないケースでしょう。しかしファクタリングは基本的に償還請求権が付いていません。償還請求権が付いていないということは、仮に売掛金が入金されなかったとしても自社に請求が来ない、ということを意味しているのです。要は本来であれば貸倒れになるケースであったとしても、ファクタリングを利用していれば貸倒れを免れます。

もちろん償還請求権が付いているタイプのファクタリングがあることも事実です。しかしほとんどは償還請求権が付いていないので心配することはありません。

売掛金が貸倒れるケースが多い企業は、定期的にファクタリングを利用して貸倒れのリスクを軽減させてみるのもおすすめです。

・売掛金の入金が遅れたらすぐに対処すること

回収活動に力を入れることも大切です。
売掛金の管理をしっかりとしていないと、売掛金の入金が遅れていることに気づくのが遅れてしまいます。気づくのに遅れてしまえばしまうほど回収は難しくなってしまうのです。

早めに回収活動を行えば、売掛先にまだ支払能力が残っているかもしれません。全額回収が難しかったとしても、一部の回収には応じてもらえる可能性があるのです。
一方で回収活動が遅れてしまうと、気づいた時には倒産しているかもしれません。夜逃げをされて回収不能になってしまうこともあるわけです。

売掛金の入金の遅れに気づくためには、まずは業者ごとに売掛金を管理するべきです。さらに期日ごとに売掛金を管理するのです。面倒であることは確かですが、業者と期日ごとに売掛金を管理すれば遅れにも早急に対応できるようになります。
理想的なのは、1日でも遅れたらすぐに連絡することです。入金されていない旨を告げて入金してくれるようにお願いしましょう。

お願いをしても入金がなかった場合には内容証明付き郵便で督促を行ったり、法的な対応であったりも視野にいれるべきです。

・お金で回収する以外の方法もある

1.買掛金と相殺する
2.商品を引き上げる

売掛金が回収できない場合には、お金で回収する以外の方法も視野に入れましょう。
取引先に買掛金があるのであれば、相殺で対応する方法もあります。回収されていない売掛金が100万円あり、その取引先に買掛金が100万円あれば回収する必要はありません。買掛金と相殺処理して対応すればよいのです。

販売した商品や製品が残っているのであれば、回収する方法もあります。ただし回収する場合には、必ず売掛先の承諾を貰ってください。勝手に引き上げるのは禁止されています。

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