事業を存続させていくうえで、十分な資金は必要不可欠です。しかし、経営上のトラブルや取引先との問題、突然のアクシデントなど、順調に用意していたはずの資金に打撃を与える要因はいくらでもあります。そのようなハプニングに振り惑わされ、肝心の事業にまで悪影響を与えてしまうケースは少なくありません。
このような状態から脱却するには、何らかの方法から資金を調達する必要があります。そこで今回は、資金が不足したときに有効な、資金調達方法と調達計画についてご説明していきます。資金を調達するのにも入念な下準備が求められます。ぜひここで予備知識を身につけ、ご自身の事業再建のためにお役立てください。
目次
1.資金調達の前に押さえておきたいポイント
後にもご説明しますが、資金調達の方法としては「融資」「出資」「つなぎ融資」「社債」などがあり、もちろんそれぞれのメリットは多いもののデメリットが存在しないわけではありません。例えば融資では返済義務と事業計画書の提出が求められ、出資では資金提供側と経営権の共有が必要となる場合があります。また、そのほかの資金調達にも注意点やデメリットが生じてきます。
そのため、資金調達を考える際にはそのようなポイントを抑えたうえで取り組むべきです。無謀な計画は事業を破綻させるばかりか、事業者ご自身の人生にまで影響してくるためです。そこで、資金調達を検討する前に、必ず以下のポイントを押さえておきましょう。
調達金額は最低でも3回は見直しを
調達金額を決める際には、最低でも3回見直して減額ができないかを考えてみましょう。特に融資においては返済の義務が発生するため、返すことが難しい金額は事業者側の負担となり、また審査に落ちるなどして融資を受けられなくなる場合があります。
そのため、なるべく必要最低限の金額で融資の調達を検討しましょう。そのためにも資金繰り表などを作成して入金・支出のタイミングを確認し、ご自身の事業の財政状況を把握する必要があります。
また、「資金がないから事業を発展させられない」という考えは、必ずしも正解であるとは限りません。そのタイミングで必要な資金を用意できないのなら調達が必要ですが、それ以外の余計な出費は控えるべきです。欲しいものが何でも用意できるほど資金が潤沢でないからこそ、創意工夫や経営センスが身についていくのです。資金調達で当面の経営を安定させることはもちろん大事ですが、このような問題解決能力も同時に養っていきましょう。
調達コストを理解しておく
資金調達は事業再建のために大いに役立つ手段ですが、同時にデメリットがあることを理解しておく必要があります。
自己資金からの調達でない場合、融資や出資、社債の発行などの方法があります。これらの資金は基本的に「もらったもの」ではなく、資金提供を受けるからには金利をつけての返済や利益の共有などが見返りとして求められることになります。またそれに値する経営状況と返済能力が見られないことがわかり次第、相手からの信頼を失ったり社会的地位を下げたり、などのリスクも背負う結果になります。
だからこそ、いくら手持ちの資金が足りないからと言って、無茶で無謀な金策は避けるべきです。資金調達を考える際にはいくら必要なのかを算出し、それに対するコストやデメリット、リスクなども押さえておきましょう。さらに、なかには組織としての確かな実態がない業者が融資や出資の提供をしている場合もあるので、業者選びにも慎重になりましょう。
2.資金調達に有効な手段とは?自己資金から融資、出資など
資金枯渇からの脱却するための資金調達法としては、「自己資金」「融資」「出資」などが一般的な方法だとされています。これらの特徴やメリット、デメリットについてご説明していくので、検討前に確認しましょう。
借り入れの負担が少ない「自己資金」
ご自分の貯金や家族、親族からの援助を受けて資金枯渇を抑える方法が「自己資金の投入」です。融資や出資と違って返済する義務がないため、負担を負うことにリスクを感じている場合には有効な手段だと言えます。特に自己資金は事業者であればぜひ押さえておきたいものです。
しかし、返済や利益の共有が義務付けられていないというメリットのため、気軽に資金要請できてしまうが厄介なところです。援助のつもりで資金提供したのにその事業の将来性が感じられなければ、ご自身の信用を大きく落とすことになりかねません。また、何度も援助を受けられるものでもないため、入念な準備と事業計画を用意したうえで援助を募る必要があります。
また、このような自己資金をすべて投入することも、非常に危険性が高いと言えます。「費用が必要だけれど借金をしたくない」との理由からすべて自己資金で賄おうとする事業者が少なくありませんが、事業の結果次第で枯渇する恐れがあります。そのような状態で融資や出資を募っても断られるケースが多いので、自己資金の使い道には十分注意しておきたいものです。
そのため、自己資金の使用は部分的に使い、融資や出資などの手段も別に考えておくことをおすすめします。
銀行などからの「融資」
銀行や信用金庫、組織により資金提供を受ける「融資」は、数々の資金提供のなかでももっともメジャーな方法です。長期的かつ多額の資金を得られるので、当面の運転資金として活かしたうえで、さまざまな経営トラブルの脱却に役立てられます。そのため、資金繰り問題に悩む事業者に多く利用されています。
融資を受けるには事業計画書の提出と面談、2パーセントの金利をつけての返済が条件となります。数日単位での返済遅れでも信用問題に大きく響く可能性があるため、その点に注意して借り入れしましょう。
株式の発行による「出資」
株式を発行して、経営による利益を出資側に提供する方法のことを、ここでは「出資」と言います。融資以外による資金調達法として、非常にメジャーな方法です。
融資では資金提供に応じて金利つけでの返済が求められ、仮に事業に失敗しても借金が残ります。しかし出資においては、事業が失敗して倒産する結果となっても借金は発生せず、株主の地位を出資側に20パーセント与える必要性があらわれます。ここでの出資側の焦点は「自分が提供した資金を相手が返してくれるか」ではなく、「その事業が成功するか失敗するか、そして自分が得をするか損をするか」になっているので、倒産のリスクも踏まえたうえで資金提供をします。そのため、事業が破綻しても借金を返す必要がないことから、ある意味リスクの少ない資金調達法と言えるかもしれません。
また、出資側はより多くの利益を受け取ろうと事業にあらゆる協力を惜しみません。金銭的援助を受けられると同時に経営的な協力も得られるのが、出資における大きなメリットです。
しかし、成功した場合の利益を見越して出資をするわけなので、事業者は利益をすべて自分のものにはできません。成功したけれどその分出資者と利益を共有しなければならないのが、出資のデメリットです。
「つなぎ融資」「社債の発行」などの方法も
融資や出資以外にも、「つなぎ融資」や「社債の発行」などの方法もあります。
「つなぎ融資」とは銀行や組織などからローンを組んで資金調達をする方法です。長期的な融資よりも審査が通りやすく、スムーズに借りやすいとのメリットがあります。しかし、通常の融資と比べて高金利になるため、借り入れ前には十分な検討が必要です。
また、家族や知人、従業員への「社債の発行」などの方法や、コンテストの賞金、助成金、寄付などの資金調達法もあります。現在では「クラウドファンディング」などの方法も注目度を集めているので、そちらを検討してもいいでしょう。
このように、事業者側が資金調達する方法にはさまざまなものがあります。どれがご自分に合っているかを見極めたうえで、適切なもの選んでいきましょう。
3.融資を受けやすくなる、事業計画書の書き方3選
銀行や信用金庫から資金提供を受ける形の融資は長期的な資金確保につながるため、多くの経営者にとっての救世主です。しかしその分の経営能力と返済能力を示すため、事業計画書の提出が求められるなどの準備が必要になります。
融資の審査に通るかは、事業計画書の内容によって大きく左右されます。そこで、銀行からの融資を受けるために事業計画書の作成を考えている方は、以下のポイントを必ずチェックしましょう。
事業計画書に必ず記載するべきポイント
・展開する事業の経営理念、ビジョン、方向性
・事業計画についての概要(どのようなターゲットや市場にどのような製品やサービスを、どのように提供していくかを明記)
・事業の経験、経歴、これまでの実績
・想定する顧客と市場のニーズ
・展開予定の製品や商品、サービスについての詳細な説明
・事業者としての強み
・展開予定の製品や商品、サービスが競合とどのように違うか、どのような優位性があるか
・製品、商品、サービスをどのように展開していくかの行動計画
・展開予定の製品や商品、サービスによる利益の想定
以上9つのポイントは、返済能力の指針にもなりますので、必ず計画書に盛り込みましょう。細かなポイントが必要になってきますが、ご自身の事業を明確化するためにも大事な作業です。
現実的な事業計画を示せているか
上記のポイントに加え、事業計画には現実的な目標設定と数値が必要です。
・どのようにして目標を達成するか
・市場のニーズに答えられるか
・事業を展開するうえで事業者の「強み」が活かせているか
・リスク対策ができているか
・特許、商標、著作権などへの対策ができているか
などの項目も、必ず盛り込むようにしましょう。
資金提供側が理解しやすいか
事業計画書には詳細な情報が必要となりますが、同時に融資側にとって理解しやすくなければなりません。また面談の際、事業計画について説明する時間は15分程度となりますので、時間的な要素も考えたうえで書類の作成に取り掛かりましょう。
このように、事業計画書の作成には入念な準備と相手のことを考えた対応が求められますので、今回お話ししたポイントをぜひチェックしましょう。
4.より確実な計画を練るのなら、税理士からのサポートを
以上、資金調達の方法やそれぞれのメリット・デメリットについてお伝えしました。これらの情報を得るなかで難解な手続きや準備が必要になることがわかり、「自分の事業には無理なのかもしれない」と思われた方も少なくないでしょう。事業計画書の作成や融資側との面談、調達法の選択などは、ご自身ではなかなか対処しきれないものです。
そのような場合には、税理士などのプロからのサポートを得ることをおすすめします。例えば融資の審査に通らないとその後の資金提供が受けにくくなるケースもなるため、自力ですべてやりきるよりは、プロの協力を得たほうがはるかにスムーズです。
ここで、税理士から得られるサポートの数々をご紹介します。
事業計画書の作成や面談同行などのサポートを得られる
先にもお話ししたように、事業計画書の作成には非常に多くの負担がかかります。資金が必要になる理由や展開予定の製品・商品・サービスについて、また販売計画や利益の立て方などの詳細な情報が必要です。事業者にとっては実に大変な作業となりますが、信頼性と返済能力を証明するには必要不可欠な項目であることには変わりません。
計画書を作成するなかでも、税理士が多様なサポートを提供してくれます。審査に通りやすい計画書の作り方や融資側が注目するポイントを解説し、事業者側も融資側も満足して読める計画書の作成に協力してくれるので、ぜひ活用しましょう。
また、面談への同行や模擬面接などのサポートも受けられます。事業計画書の作成と同様に、融資側との面接はとにかく緊張するものです。その場合にも事前の準備が非常に役立ちますが、税理士が面接の練習に付き合ってくれるので、万全な状態で本番に臨めるようになります。さらに、必要な場合には同行もしてくれることから、何かと心強い存在だと言えるでしょう。
特に事業初心者の場合、自力で資金調達計画を遂行するのは至難の業です。そのときにはプロからのサポートが非常に大きな助けとなりますので、お一人で悩まずに税理士によるサービスを検討してみましょう。
このように、資金調達にはさまざまな方法があり、それぞれにおいて入念な準備が必要になります。闇雲な金策を避け、前の状況確認とプロからのサポートの協力で、スムーズな資金調達を目指していきましょう。
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